2003年10月30日木曜日

全国史跡整備市町村協議会に参加して(その1)


 少し前の話になってしまいますが、7月17日(木)・18日
(金)の2日間にわたり、石川県加賀市(山代温泉)で全国史跡整
備市町村協議会(全史協)北信越地区協議会総会が開催されました。

 私はこの協議会の会長ということで参加してきましたので、その
報告を書かせていただきます。

 全史協というのは、主として史跡・名勝または天然記念物を有す
る全国の市町村が結束して、その整備・保護に努めようということ
で、年一回全国と地区で総会を開き、文化財保護の重要性の確認、
市町村の職員(主として学芸員)の研修、その地域の文化財保護の
現状視察、併せて国に対し文化財保護のための予算増額を要望して
いく、そんな組織です。不況で国の予算が補助金を中心に減額され
る中、文化財の保存のための予算も厳しくなっているのが実情です。

 全史協の全国組織の会長は奈良市の市長さん、北信越の会長は平
成11年度から長野市長が務めています。長野市では柳原市長さん
の時代に全国の会長を務めたこともあるようです。

 さて総会では、地元加賀市の大幸(おおさか)市長さんの挨拶。
印象的だったのは、地元の文化財を三つ(九谷焼、蓮如を中心とす
る一向宗関連、そして北前船)に大別され、保存に力を入れたいと
いう話でした。

 記念講演では、文化庁記念物課主任文化財調査官・坂井秀弥氏
(新潟市出身)が、「文化財を慈しみ、わが町を育む」と題してお
話しされました。戦争直後、静岡市の登呂遺跡発掘が、敗戦で打ち
ひしがれた国民に自信を植え付けた、という話から、市町村職員の
中で文化財保護の専門官が4,400人になったこと、そしてまち
づくりという観点から文化財を眺める視点(文化的景観)の大切さ
を強調されました。私も勉強になりました。

 確かに現在のように税収が落ち込んでいる時、市町村単独での文
化財保護は、緊急性という点から言うと後回しになる可能性はあり
ます。でも、それでは文化財が失われていくことを防げないでしょ
うし、先人の遺産を将来の子どもたちに引き継ぐことが出来ないこ
とも事実です。国が市町村を励ます意味で保護予算を付けてくれま
すと、市町村もやらざるを得ない、ある意味で大義名分が出来るこ
とは事実でしょう。予算というのは、結局「優先順位」を決めるこ
とですから、難しい問題です。

 翌日は、市立の九谷焼窯跡展示館と県立の九谷焼美術館を見学し
ました。九谷焼の歴史、現在に繋がる窯元を育てた先人の歴史、技
法の進歩、芸術性、分からないながら色々と勉強させていただきま
した。九谷焼美術館は素晴らしい公園の中にあって、隣には市立図
書館があるという環境が羨ましかったです。お聞きしたところによ
ると、企業が撤退した敷地を市が買い取って整備したとのこと、理
想的な場所という感じがしました。

 帰途、高岡に立ち寄って、「イオン高岡ショッピングセンター」
を視察してきました。この店舗は長野県では佐久のインターのそば
にあるものと似ていますが、確かに広い売り場面積で、一つの街が
出来たようなものです。

 いろいろなお店が入っているだけでなく、レストラン、喫茶店、
話題の(注)シネマコンプレックス(8館)もあり、料理教室では
奥さん方が大勢習っておられました。買い物に来るというより、1
日を楽しみに来る、そんなお客さんが多いように感じました。

 平日の昼間からあれだけのお客さんがいるというのも、驚きでし
た。昔、アメリカの小売業を視察したとき、これと全く同じような
ショッピングセンターを見て、車社会であるが故に、場所を選ばず、
こんな場所で可能なのだろうと思ったことがありますが、今や日本
にも本格的に登場したということでしょう。ここに無い業種を一生
懸命考えたのですが、葬儀屋さんぐらいしか思いつきませんでした。

 長野にも計画があるそうですが、市長の立場は複雑です。消費者
の立場から言えば欲しい、でも既存の商店街とすればそんな大規模
なものが出てきたら困る、行政の立場から言えば、都市の魅力の一
つとして欲しい、でも既存の商店のことを考えると・・・・、税収
も増えるだろうけれど、既存の商店からは・・・・・、出店に関す
る許可権限が市長にある訳ではないのですが、悩みは深いのが実情
です。

(注)シネマコンプレックス:一つの映画館の内部を区切り、複数
  のスクリーンを設置して、複数の映画を上映するシステム