2004年7月8日木曜日

年金改革に思うこと(その2)


 前回のメルマガでは、年金制度が抱える課題(高齢化と団塊世代
の引退)、世代間助け合いの原理、バラバラにスタートした年金制
度・・・等について、(Ⅰ)~(Ⅲ)として私見を述べさせていただき
ました。今日は前回指摘できなかった問題点を、もう少し指摘した
上で、ではどうするか・・・・を書いてみたいと思います。

(Ⅳ)運用を間違えたのに、責任をとらない

 年金制度には、国民の怒りをかっている問題がもう一つあります。
年金として集めたお金の運用を間違ったことです。

 公的年金の積立金を使い、全国に建設された大規模保養施設「グ
リーンピア」や厚生年金福祉施設などがその例です。この計画が立
てられた70年代は、年金財政が今ほど厳しくなく、自治体も地域
活性化のために誘致を進め、政治家も後押しをしてきたのです。
しかし、その後の年金財政の悪化とバブルの崩壊により、累積赤字
が膨らみ経営難に陥りました。

 バブル崩壊で不動産会社やレジャー関係に投資した会社は大部分
大損しているのですから、ある程度は仕方ないと言えるかもしれま
せんが、民間会社の場合は倒産したり、経営者交代により責任をと
らされケジメをつけているのに、年金資金を使ったこれらの施設の
破綻には、政治家や官僚を含め誰も責任をとったという話を聞いて
いません。

 その外にも、保有株式の値下がりや含み損といった問題もあり、
結局は国民の税金で穴埋めせざるを得ないということなのでしょう
か。もちろん何らかの資金運用をしない限りお金は増えませんので、
多少のリスクは仕方ないのですが、これらの問題は、年金資金を本
来の目的以外に流用することの危うさを教訓として残しました。

 余談ですが、私はバブル崩壊による土地の急激な値下がりは、一
種の国家犯罪だと思っています。確かに日本の土地価格の異常な値
上がりは大問題でした。でも国も税収があがり、その恩恵をかなり
受けていたことは事実で、その時赤字国債を返済するとかの引き締
め政策をすべきだったのでしょう。ところが、国も民間と一緒にな
って有り余る税収を使うことに専念し、一方で極端に土地いじめを
行った。土地神話の崩壊が起きたのです。

 住宅金融専門会社(住専)問題の時、住専から金を借りて大儲け
した後、土地が値下がりして返済できなくなった社長が、証人とし
て国会に呼ばれ、土地価格の急激な値下がりは国家犯罪だという意
味のことを言っていましたが、私は妙に共感を覚えた記憶がありま
す。

(Ⅴ)制度設計の誤算

 もうひとつ、制度のスタートに当たって根本的な誤りがあったの
ではないでしょうか?

 公的年金の制度改正は、国立社会保障・人口問題研究所が公表す
る将来の人口推計に基づいて行われます。ところが、その推計で出
生率が将来どこまで下がるかの見通しが常に甘すぎたうえ、日本人
の平均寿命が急激に伸びたことにより、年金制度は少子高齢化への
対応が遅れてしまいました。

 もちろん、長寿者が増えたこと自体は素晴らしいことであり、日本人の
生活習慣や健康志向、医療制度や社会福祉制度が格段に進歩したこと
の証明ではありますが、年金制度の運用が実態に即していなかったこと
が、制度設計という面からいえば、大誤算となってしまったのでしょう。

 また、終身雇用、年功型賃金体系の崩壊など、常に所得が増える
時代ではなくなったことも誤算の一つかもしれません。

 以上、問題点の羅列はこのくらいにして、年金一本化の話に移り
ましょう。

 年金を一本化するという総論は、多分大部分の人が必要だと感じ
ていると思うのですが、各論に入るとどうしようもなく、難しい、
利害関係が生じるのです、でもやらなくてはならない・・・・。
税金で賄うと言っても、財政悪化問題は別にして、過去の負担の不
公平をどうするか、現在受給している高齢者層をどうするか・・・・
簡単には解決できない、解けない方程式を解こうとしているように
思えるのです。

 決定した年金改革を批判することは簡単です。でも一本化という
だけでは何も解決しないので、具体的な施策で、ぜひ納得のいく再
改革を望みたいものです。

 年金改革はやらなくてはならない大きな問題なのですが、でも難
しい問題であることは、ご理解いただけたと思います。今回決まった
年金改革は国民に大きな負担をかける内容ですが、通過しなくては
ならない一つの過程かなと思っています。でも根本解決にはほど遠い
内容でしょう。

 今回で年金改革については完結させる予定でしたが、年金問題に
係るさまざまな問題点を述べているうちに、ついつい長くなって
しまいました。そこで、来週、年金改革に係る私案を掲載させてい
ただきたいと思います。