2004年7月15日木曜日

年金改革に思うこと(その3)


 2週にわたり年金問題について書いてきて、たとえ稚拙であって
も、私なりの改革案を書かなくてはならないのではないかと思いま
した。しかし、年金問題を勉強すればするほど私案作成の難しさを
実感させられましたので、今回は年金問題に関する原則的なものを
まとめてみました。決して完璧ではありませんし見当違いの改革案
と言われるかもしれませんがご容赦ください。

 さて、年金問題に対する私の考え方の基本は、
1.年金は、高齢者にとってセーフティーネットであること。
2.年金制度は決して払い損でないことを理解してもらうこと。
3.公的な支援は万人に平等であるべきこと。
 この3点です。

 1.は最低いくらあれば良いかという問題ですから、財政の可能
性も含め、決めればよい話です。2.も若い人が年金を払わないの
は、払えば損をすると感じているからで、それを打破すればよい話
ですから、国が責任を持つと宣言すれば済む話です。

 一番やっかいなことは、3.です。万人が平等であるべきという
点は、総論としては賛成していただけるのですが、実際の場面にな
るとあまりにも違いが大きいために、有利な年金に入っている方か
らすれば、とんでもないという話になるのだと思います。

 年金には大別して、(1)厚生年金(2)共済年金(3)国民年
金がありますが、(1)(2)に比べ(3)が著しく不利であると
いう印象がありますので、若干比較してみました。

1.厚生年金や共済年金は、会社員や公務員が入る年金で、その人
 の所得の約6.8%が給料から天引きされています。すなわち、
 40万円の所得に対し約27,000円の保険料となり、結構大
 きな金額を納めています。国民年金の場合は、所得に関係なく保
 険料として納める制度で、現在は月額13,300円となってい
 ます。

2.現在の制度で単純な計算(20歳加入で40年間保険料を払い、
 65歳から80歳まで受給した場合)を行ってみますと、厚生年
 金や共済年金は受給額が支払額の約2倍なのに対し、国民年金で
 は約1.9倍と私は試算しました(現行制度による試算を行った
 もので、実際には様々な要因がここに加味されると思いますので、
 専門家の皆さんには御不満の声もあると思います・・・)。

3.厚生年金や共済年金では、事業者(企業ないし公共団体等)も
 個人と同額を保険料として負担しているのに対し、国民年金の場
 合は、今回の年金改革関連法で、国庫負担率を平成21年度まで
 に、現在の3分の1から2分の1へ段階的に引き上げるというこ
 とが決定しましたので、厚生年金や共済年金の方が 国庫負担が
 小さいこと思われます。

4.ただし、国会議員年金の場合は、10年在職で15年間年金を
 受給した場合、受給額が支払額の約4.8倍となるうえ、国庫負
 担が3分の2もあるというのは、やはり公平さを欠いていると思
 います。

 さて、具体的に私案を考えてみます。

(1)個人の年金がいくらになるかを検討するとき大切なことは、
   過去自分が積み立てた年金保険料に一定の利息を加えた金額
   は保障されるべきです(この金額をA円とします)。

(2)65歳が受給開始年齢としたら、その時点で個人が積み立て
   た年金保険料とその利息の総額(A)を確定させる。そして、
   我々の平均寿命が80歳であると仮定するならば、平均15
   年間受給するわけですから、A÷15がその人の年間受給額
   の基礎(B)となります。現在受給している方も65歳時に
   さかのぼって計算するものとします。

(3)年金は25年加入していないと受給資格が無いことはやむを
   得ないことと思います。その代わりきちんと義務を果した人
   には、国は必ず報いることが大切です。また、生まれた時か
   ら親が子どもの年金保険料を払っても良いと思います。

(4)ここまでの原則は、あくまで個人の積み立て分をはっきりさ
   せ、国の責務をはっきりさせることです。

(5)次に、セーフティーネットとして、年金の最低額をいくらに
   すべきか、公的資金の投入額をどうするか、という問題です。
   これは難しい問題です。きちんとしたデータに基づいた議論
   が必要で、個人の負担能力、長期の国家財政状況そして最低
   生活費等を勘案して、国が決めるべきでしょう。私の希望的
   な数字を言わせていただけば、(B)+(公的年金)の額が、
   夫婦で月額15~20万円ぐらいになれば、セーフティーネ
   ットとしては、合格ではないでしょうか。

(6)さて、公的資金の原資をどう確保するかですが、それは今後
   50年間ぐらいの財政状況、人口動態を検討して国が決める
   べきです。消費税を年金会計に入れるのは有力な案です(小
   泉首相が自分の任期中は、消費税を上げないと宣言したこと
   は、消費税を年金に入れようということの議論を止めてしま
   ったという意味では問題でしょう。確かに景気のことを考え
   ると、今、増税のことを話すべきではないということも分か
   りますが・・・)。ただし、大切なことは、危機的な年金会
   計のバランスを取り戻すこと、公的支援金額は本来全国民が
   同じ金額であるべきだということです。現役中にたくさん保
   険料を納めている方は、私の案でもそれなりに(B)の部分
   が多いはずですから、悪平等ではないはずです。

(7)もうひとつの重要なテーマは年金の一本化です。一本化の必
   要性は大部分の方が認めていることです。しかし、実際に一
   本化の具体論をやると、損をする人、それも年金が相当減額
   される人が出てきますので、その人たちの説得に時間がかか
   るでしょう。でも、年金会計は待ったなし破綻寸前ですから
   早急に取り組まなければならない重要なテーマです(将来に
   わたった詳細な赤字額を試算し国民に公表すべきだと思いま
   す)。この問題については、あまりにもいろいろな制度が混
   在しているために、調べれば調べるほどその難しさが分かり、
   残念ながら一本化についての私案を作ることができませんで
   した。

 稚拙な考え方をお話しました。自分でも整合性が足りないことは
承知しています。全てのことを考えるのは、情報もありませんし、
制度を全て知っているわけではありませんので、基本的なことだけ
考えてみました。実務的に不可能、あるいは政治的に不可能という
こともあるかもしれません・・・・・・・。

 年金の制度を改めるということは、現在すでに受給している人に
とっては、導入する公的資金の金額によって、受給額が減るのでは
ないかと心配されるでしょうが、一時的な激変緩和処置は別枠で考
えるべきであって、根本的な改革をしない限りどうにもならないと
私は感じています。また、受給資格者で年金以外の収入が多い方も
いらっしゃいますが、その方々に対する減額はやむを得ないのでし
ょう。

 若い方が年金を払わない理由は、払えば損をするという考えが一
因になっているはずですから、やはり年金は得するものだ、少なく
とも損はしないということをベースに、信頼を取り戻す必要がある
と思います(早く亡くなった方については、遺族に対する給付の見
直しという考えも必要かもしれません)。

 具体的に議論することがどうしても必要です。議論のための分か
りやすい数値を示してほしいものです。