2004年7月1日木曜日

年金改革に思うこと(その1)


 今回の参議院議員選挙で、問題になっている年金改革の本質は何
か、これが争点だと言われながら、意外に分かっていないのではな
いか?即ち「国会で新しい年金法が決まった、でも国民に大変な負
担を押し付ける法律だ」ということ。そして新しい法律が成立した
ばかりなのに、これから一本化の話し合いをする。非常に分かりに
くいというのが、実感ではないでしょうか。テレビなどで政治討論
会を聞いても、年金選挙だというばかりで具体論が何も出てこない。

 根本的には財政改革の話につながることは分かっているのですが、
政治家の未加入・未納があったり、一旦合意したにもかかわらず、
その後すぐに反対したり、強行採決したり・・・。国民がきちんと
理解しているかどうか、いや国民というより役人を含む地方の政治
家だって、本当のことは分かっていないのではないでしょうか。首
相の発言だって、国民が本当に分かるようには話していない・・・
と私は感じています。
 
 今日はこの問題について、素人の私が理解した範囲で、2週にわ
たり書いてみたいと思います。

(Ⅰ)年金制度が抱える課題(高齢化と団塊世代の引退)
 
 昭和22年以降の数年間にかつてないほどたくさんの子供が生ま
れました。堺屋太一さんの命名でしたでしょうか「団塊の世代」と
呼ばれていますね。戦後約60年たちますが、日本の社会はこの
「団塊の世代」の動向によって動いてきたと言っても言い過ぎでは
ないようです。すなわち、ベビーブーム、入試競争、結婚ラッシュ
・・・高度経済成長やバブル崩壊も、団塊の世代の動きが世の中を
変えて来た一つの要因だったと私は思っています。

 「団塊の世代」がなぜ生まれたか。それは、戦後、多くの人々が
故国に戻って生活を始め、子供達が生まれた。さらに、現在進行中
の少子化により、日本の人口ピラミッドを特異な形にしたのでしょ
う。

 そして今、リストラを含め、そろそろ団塊の世代が引退期を目前
にしています。60歳定年制のもとで、多くの方がまもなく引退生
活に入ることになるからです。

 年金問題がこれだけ深刻化してきた背景には、少子・高齢化が進
んで、働く世代が相対的に減ったこと、その一方で年金受給者(高
齢者)が増えて年金会計が破綻状態になっているのに、さらに一番
人数の多い世代が一挙に年金生活に入ってくるという現実があるの
です。

(Ⅱ)世代間助け合いの原理

 本来、国民年金制度が発足した昭和36年当時、私たちには世代
間助け合いという意識は薄く、将来の安心を買う、自分の貯金のつ
もりだったことは事実でしょう。

 それがどうもそうではないらしい。自分達の拠出金は前の世代
(この制度の設立時で言うなら、年金を積み立てていない方々)、
に支払われている。それでも人口は増えているし、右肩上がりの社
会で我々の年金は子供達の世代が払ってくれるから大丈夫だろうと
疑わなかったのです。でも現実は、少子化が進行していたのです。

(Ⅲ)バラバラにスタートした各年金制度

 具体的には、公務員の恩給制度が一番古いのでしょうね。この制
度がいつから始まったか正確には分かりませんが、公務員給料から
の天引き積み立てに加えて、国の役人が大きな予算を計上して自分
達の権益を守ってきた、その有利さが世の批判を招いているようで
す。

 公務員は、現役時代の給与水準が民間より低いから、恩給ぐらい
は多くてもいいではないかとか、恩給を受け取るのが役人の唯一の
楽しみだといった言葉を聞いたことがあります。現在は恩給ではな
く、共済年金と呼んでいます。また、地方公務員が加入している地
方公務員共済組合制度がありますが、市長もこの年金制度に自動的
に加入するようです。

 会社勤めの方々を対象にして始まったのが、厚生年金です。これ
は個人の給料天引き分と同額程度を企業が負担しています(企業に
とって社員の厚生年金支払いは義務ですから、本来は会社で社員の
厚生年金を払っていないということは無いはずです)。公務員の共
済年金において、国や地方が半額程度負担しているのと同様に、企
業が同額程度負担していると考えれば、その負担分は企業の法定福
利費として損金扱いされていることで仕方がない面もありますが、
大不況時代、企業にとって負担が大きすぎるということで、正規社
員扱いをやめて厚生年金から脱退させ、国民年金に加入させている
という話も聞こえてきます。また、今後は企業の海外進出で、国内
が空洞になってきて厚生年金加入者が減少することもあるわけで、
厚生年金財政も厳しくなると思われます。

 そして、国民年金です。政治家の未払いが分かって国民の不信を
買っていますが、これは自営業者(政治家も含まれるようです)や
自由業の人、主婦の皆さんが加入している年金です。企業を辞めた
方も60歳以下であれば、この年金に加入しなければなりません。

 この年金制度の運営は、国が行っているのですが、昭和61年4
月から(国・県・市の)議員や主婦が強制加入になりました。また、
平成3年4月からは、20歳以上の人は学生であっても強制加入に
なるなど、途中で制度がいろいろ変わったために分かりにくくなっ
てしまった。あるいは他の年金に比べて掛け金や給付が低く、国の
負担が大きくなかったためか、あまり重要視されてこなかった、と
いうことでしょう。

 厚生年金は給料天引きで自動的に徴収されているのに、国民年金
は加入者個人が手続きをするわけですから、忘れてしまうことや、
お金の都合で払えないことだってあるはずです。

 このほか、批判の多い議員年金もあります。これは国会議員だけ
でなく、県・市の議員にも関係があり、個人積み立て以外に公的支
援も相当大きいらしく、問題視されているようです。しかし、議員
には退職金というものがありませんので、老後の生活保障はある程
度は必要なのかもしれませんが(ただ、地方議員年金と国会議員年
金の二重受給といった不可解な制度にも問題があるように思います
が・・・)また、純粋に民間運営されている年金制度もあり、問題
を分かりにくくしている要因は沢山あります。 

 来週は、私が考える年金制度のあり方について、私案を交えてお
伝えしたいと思います。