2005年9月26日月曜日

浅川・新幹線



浅川治水問題と新幹線の延伸問題
浅川治水問題は、田中県知事の脱ダム宣言以来、既に4年以上経過しているが、未だに
解決の道が見えない。市長として、どうしようとしているか、過去の経過と考え方につ
いてお知らせしたい。

浅川は県が管理する一級河川である。(国が県に管理を委託したもの)


浅川の治水について、県は昭和40年代、河川の拡幅によって行おうと考えていた。しか
し、川幅が81mにもなってしまうところから、地域の皆さんが優良農地が潰れるとい
うことで、反対した。(県は最初からダム案ではなかった)


昭和50年代に入って、県はやむをえず上流にダムをつくることでの解決を打ち出し、地
域の了解を得た。そして故柳原市長の時代、長野市の水道水の確保(利水)とあわせて
ダム建設について、基本的な合意を得た。(ダム計画は治水だけでなく、長野市の水道
水の確保も考えたものだった)


平成7年、ダムを含む河川の全体計画が国の認可を得た(これが一番重要。現在はこの
認可が生きている状態)。その間、ダム建設予定地に活断層がある等の指摘が出された
ため、検討委員会が設置され、10人の日本の権威者により、ダム周辺の調査が行われ、
9人の方が一致して安全性について問題無しとされた(日本でのダムの歴史は100年以上
あるが、崩壊したという例は聞いたことがない、それだけ安全性は高いと考えられる)


平成12年、全ての準備が整い、県議会の予算決定を受けて工事会社と工事契約が締結さ
れ、浅川ダムの本体工事が着手されました。


直後、田中県知事が誕生。ダム工事を停止する(県議会の決定を無視した、知事の独断
で、地方自治法上は、知事の行為は許されるようですが、行政の継続性と言う点ではい
かがなものか。最低限中止を議会に諮って賛同をうることは必要ではないでしょうか)


平成13年2月、県議会で脱ダム宣言がなされる。


県議会の提案で、「県ダム等検討委員会」が決議されて設置され、県知事によって委員
が任命されました。その下部組織として「浅川部会」が置かれました。(長野市長は浅
川部会に、関係行政機関委員として参加しました。私は11月市長就任し、塚田前市長か
らこの委員を引き継いだわけですが、この部会の様子については、過去のメルマガで報
告させていただいていますのでご参照下さい。問題点を若干指摘させていただきますと、
浅川部会での論点はダムが危険か、安全か、基本高水流量450tは過大かの2点に集約
されると思います。そして、ダム反対論者の方々は、代替案を出すといいながら具体的
に根拠のある案は出さなかったこと、事務局を務めた県当局も本来出すべき代替案を、
出す立場にないと称してださなかったことです。特筆すべきは、基本高水を下げること
を唯一の目標にして長野に乗り込んで来たと思われる新潟大学の大熊教授が「浅川の基
本高水は、特別高いわけではなく、他の河川と同じ方式で普通のやり方です」と語った
ことと私は思っています。


浅川部会での結論は、結論が出せないまま、両論を併記して上位の委員会に委ねました。
(一時、多数決で結論を出そうかとも考えましたが、部会のメンバーの顔ぶれから、必
ずしも勝てないという判断もあって、両論併記して上位委員会に委ねざるを得なかった。
要は、部会の議論は、互いに信じることを言い合うだけで、意見を変えた方はいなかった、
お互い説得は出来なかったということです)。


ダム等検討委員会の議論の中身はわかりませんが、委員会の中の多数決で「ダム無し」
治水を答申しました。(この多数決が問題です。浅川部会から託された二つの論点をた
だ併記しただけで、何の論評、意見も加えず、ただ委員会において多数決で決めたとい
うことです。確かに民主主義の原則からすれば、多数決は仕方ないと思いますが、何ら
かの意見を付して、例えば「ダム無し案」が「ダム有り案」より優れている何らかの理
由をつけて多数意見として決めるなら、わかりますし、そのことに対する意見を又言え
るのですが・・・多分委員長さんは、分からなかったのでしょうね。そして脱ダム宣言
だけを科学的根拠が無く認めたということでしょう。この結論で良いなら委員が任命さ
れたときに分かっていたはずです。


県知事はこの委員会の答申を受けて、浅川ダムの中止を正式に決定しました。(これ
も私から言わせていただくならば、委員会を隠れ蓑にして自分の意見を正当化しただけ)


そして、県議会の反発を受け、6月議会で不信任案が可決されました。そして普通は議
会を解散するという常道をとらず、自ら辞表を提出、再出馬すると云う奇策により、ダ
ム代替案はあると称して、再選されました。


その後、この三年間、県がどんな動きをしているか、正確には私たちにはわかりません。
ダム無し案を何とかまとめようと苦労しておられることは分かります。具体的な動きと
しては、浅川の現状を愁うる県議会議員や地元住民の国への働きかけが功を奏し「従来
の全体計画(ダムを含む)に基づく河川改修を、手戻りの無い範囲で行うことを認めて
もらい」県は浅川の河川改修に取り組んでいます。(このことは、浅川の治水安全度が
少しでも上がることですから、私としても歓迎しています。そしてその外にも、いろい
ろな案のようなものを出してきます《例えば溜池利用、田圃利用、遊水地、河道内遊水
地等》が、いずれも中途半端なもので根本的な解決にはなりません。それどころか、打
つ手が無くなったからでしょう、知事の戦略は基本高水を下げることに焦点を絞ってい
る感があります。基本高水を下げるということは、それなりの期間を経て合理的な理由
が無い限り認められない、即ち国は河川整備計画として認可しないということは、明々
白々であり、無駄です。市民の生命と財産を守る立場から言うと、基本高水を下げるな
んて話は論外です。市民の皆さんにもっと怒って欲しい)


浅川問題のもう一つの側面、それは北陸新幹線の延伸問題に影響が出てきたことです。
この問題は、長野新幹線の車両基地を長沼地区に作るにあたって、地元の皆さんが洪水
の常習地帯ということで大反対運動を展開された。そこでいろいろな調整が行われ、当
時の日本鉄道建設公団、長野県、長野市と地元の長沼地区新幹線対策協議会の4者が作成
した確認書がありますが、そこには、平成12年頃を目途として、早期に浅川ダムを作
ることが、約束されているのです。それが未だに出来ていないわけですから、地元は硬
化するのは当たりまえ、約束を守れということです。そして現段階新幹線の工事は県内
だけでなく、県外も金沢に向かって着々と進んでいるのに、長野市内分約3.3㎞は、
まだ土地買収すら出来ない状況です。(この問題については、出直し知事選の直後、平
成14年9月に知事が長野市役所へ来られたとき、私から「ダムを止めたとすれば一日
も早く解決してください」と申し上げてありますが、未だに何の手も打ってない、行政
の信頼を大きく損なっている問題です。北陸新幹線の完成までには、まだ若干の余裕が
あるのかも知れませんが、県も鉄道建設・運輸施設整備支援機構から、相当責められて
いるはずであり、北陸地方の皆さんも漸く事の重大性に気が付いたようです。)



以上、浅川問題の諸々の問題について、説明させていただきました。この問題について、
長野市が能動的に動けない事情をお汲み取りいただきたいと思います。