アメリカ合衆国で、前代未聞の航空機によるテロが起きてから、
もう5年になります。
5年前のその日、私は9月の初めに市長選立候補の意思表示をさ
せていただいて、選挙の準備を始めたばかり、この日も、朝から晩
まで関係者との打ち合わせや、自分の政策づくりで飛び歩いて、夜
遅くなって帰宅、妻と二人でテレビを見ながら食事をしている最中
でした(日本時間は、午後9時46分だったそうです)。
突然、ニューヨーク世界貿易センタービル・ツインタワーから煙
が出ている映像が出て、何かと思っているうちに、もう一機の飛行
機が現れて、ビルの陰に入ったと思ったら、そこからも煙が上がり
ました。何が起きたのか、正直に言ってよく分からなかったのです
が、異常なことが起きたことだけは、直感的に分かりました。
あれがテロだったということがどの時点で分かったのかは、記憶
にないのですが(この時点では多くのメディアが航空機事故として
報じていました)、いずれにしろ、大変なことが起こった、市長選
なんて吹っ飛んでしまうのではないか・・・そんな思いに駆られた
ことを今、思い出しています。
あれだけの大事件にもかかわらず、市長選は平常通りに行われ、
その時点では、市民生活に特段の変化はなかったという記憶があり
ます。選挙の結果にも影響はなかったのではないかと思いますが、
でも一生忘れられない強烈な印象になっています。そして4年たっ
た昨年は、あの事件の影響が何事もないかのように、私にとっての
二度目の選挙も済んでしまいました。
しかし、そのことが世界中、また日本社会に与えた影響は、徐々
にではありますが、本当に大きなものがあったと感じています。
世界の紛争を対岸の火事として見ているわけにはいかない。世界
の平和に貢献するためには、単にお金を出すだけでは駄目、人的支
援を含めて具体的な行動が求められるということで、結局特別法
(注)が作られて自衛隊がイラクへ・・・。
日米安保の同盟国論、憲法改正、集団的自衛権など、少し前なら
ちょっとしゃべっただけで大臣を辞職するような事例がありました
が、世論においても現実性を持って語られる時代になり、テロや弾
道ミサイル等の新たな脅威や緊急事態に対する有事法制の一つとし
て国民保護法が整備され、長野市もそれに伴って条例を整備し、国
民保護計画を策定する状況になっています。韓国・中国・ロシアと
の領土問題や資源問題についても現状ではなかなか交渉にならない、
ある程度の実行力が必要という議論がまことしやかにされています。
国において不断の外交努力を行っていくことは言うまでもないこ
とでありますが、長野市という地方自治体がこういう流れにどう対
処すべきか・・・難しい立場に置かれていると思います。戦争は絶
対にいやです、そんな当たり前のことを言っても何の解決にもなり
ません。こう言ってはなんですが、地方自治体にとっては、切実感
が、あるいは自分のこととしてとらえる感性を持つことが難しいの
です。
国の外交や国家の安全・防衛に関することについて、地方自治体
が自由な意見を主張することは、国論の統一には邪魔になるばかり
と私は思っています。それではいけないと言う方々もいますが、国
の専権事項にどこまで意見を言うことができるのか、また意見は決
して同一にはならないのですから、かえって混乱を引き起こすだけ
だと思っています。
北朝鮮の拉致問題についても、北信越の市長会では、北陸4県は
直接的な拉致被害者が身近にいたこともあり、政府に対して拉致問
題を早期解決するよう意見を採択しました。でも、県内の市にとっ
ては切実感に差があるかもしれないとも感じましたが・・・。
9・11以後、アフガニスタン戦争、イラク戦争、アルカイーダ、
ヒズボラ・・・イギリスでのテロ事件・・・街にあふれるカメラに
よる監視社会・・・最近ではレバノンをめぐるイスラエルとパレス
チナ(PLOが選挙で敗れてハマスが政権掌握、混乱が続いている
ようです)の関係・・・たった5年間ですが、随分いろいろな事件、
紛争が起きています。根本に横たわる問題は、キリスト教とイスラ
ム教の対立と言う方もいますが、世界の動き、特に中東の動きはマ
スコミの報道で知るだけで、分かりません。
9月11日前後の新聞には5年目という節目のせいでしょう。い
ろいろな解説記事が載っていますが、ではどうすればよいかという
ことは、書かれていないように思います。
しかしながら、現実の社会は確実に変わっています。アメリカの
空港での検査の厳しさは私たちが直接感じることですが・・・日本
は入国審査が厳しいから大丈夫なんて言っていられないのではない
か、国内にもそんなことをもくろんでいる人間がいるのではないか、
テロ事件の報道がこれだけ多くなると、日本でも「もしかすると」
と考えざるを得ない状況が生まれていると思うのです。日本人は平
和ボケで、何か起こるまで対応が出来ない民族だといわれています。
起こってから慌てることがないように・・・でも何を?どうするの
か?長野市でも国民保護法に基づく長野市国民保護計画を策定中で
ありますが・・・でも私も含め切実感は薄いのでは、もっと危機意
識を持つべきとは感じていますが。
ただ、地方自治体の危機管理ということでは、震災対策、風水害
対策、火災予防、防犯、そして学校の安全や子供の通学路の安全、
冬の雪害対策、最近では熊やサル、イノシシ・・・さらには環境保
全、水道水の安定確保、そして、感染症対策など、市民の皆さんの
生活により身近なことを、何よりもまず考えなければいけないのが
実情です。
(注)イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実
施に関する特別措置法