11月3日、文化の日。紅葉が映える伝説の里・鬼無里へ出掛け
ました。第16回の「鬼無里ランランカーニバル」の開祭式に出席
し、併せて奥裾花自然園のブナ林をゆっくり体験してみようという
ことで、市の産業振興部や企画政策部の職員と一緒に出掛けました。
ランランカーニバルは、鬼無里村時代の平成3年に始まったイベ
ントで「誰でも参加でき、誰でも楽しめるマラソン大会を開催した
い」ということで、地元の有志が中心になって立ち上げたもので、
以来毎年11月3日文化の日に開催しているのだそうです。平成3
年と言えば、イギリス・バーミンガムで長野オリンピックの開催が
決定した年ですから、あれからもう15年も経っているんですね!
今年も長野市内外から500人を超える多くの皆さんが参加されま
した。
昨年の第15回大会は、鬼無里村と長野市の合併記念大会として、
名誉大会長である瀬古利彦氏にもご来場いただき、参加者の皆さん
と一緒に走っていただくなど盛大に開催されたそうです。今年も3
キロ、5キロ、10キロの各コースに瀬古利彦杯を設け、優勝者に
は瀬古利彦名誉大会長からご寄贈いただいたトロフィーのレプリカ
をお贈りすることになっていました。瀬古さんは昔、中距離ランナ
ーからマラソンに転向して一世を風靡(ふうび)した名ランナーで
すよね、早稲田大学の競走部時代から中村清監督との師弟コンビ・
・・私の憧れの方で、ぜひお会いしたかったのですが・・・。
他にも「ペアペア3000」という、ペアで3キロを走るコース
や、歩くコースも設定されていまして、「パノラマ歩け歩け
4989」とか「歩け歩け3000」というコース名がついていま
した。4989は四苦八苦ですかね。私はスターターを務めさせて
いただきました。参加者の皆さんは、絶好のマラソン日和に恵まれ、
紅葉の中を走ったり歩いたり、その後は、きのこ汁を味わうなど、
大いに楽しんでいただいたようです。
皆さんのスタート後、奥裾花自然園へ向かいました。鬼無里の素
晴らしさを満喫するだけでなく、今後「鬼無里イヤー」に取り組む
ためにも、実際に自然林の中を散策して、その魅力を確認しようと
いう意図もあり、市の職員10人ほどが同行しました。
今年は気候のせいか、全般に紅葉はあまり綺麗(きれい)ではな
いと言われていますが、奥裾花ダムの辺まで行くと、大変美しい紅
葉を見ることができました。鬼無里の別名は「谷の都」ということ
ですが、確かに裾花川やダムの魅力は、紅葉の時期にはとても大き
くなることを実感しました。昔、上高地へ行ったとき、梓川沿いの
道で素晴らしい紅葉に出会ったことがありますが、鬼無里の紅葉も
まさに「谷の都」の名前に恥じない素晴らしい景色でした。
自然園を案内してくださった人はガイドボランティアの宮沢さん
で、二時間半ぐらい、ブナ林の中を歩きながら、ブナの木、ミズナ
ラ、コナラ、いろいろな雑木林について知ることができました。山
の話、風倒木の話、小さな花、クマの話、雪が7メートルぐらい積
もるとのこと・・・宮沢さんの話に、私はすっかり魅せられてしま
いました。
北側の山際で崩落が起きたため、その復旧の工事が必要で、その
ためダンプが通行可能な道路が出来ていました(舗装などはしてあ
りませんが)・・・災害を防ぐ工事のためには仕方ないことですが、
自然を壊しているみたいで、ちょっと残念な風景でした。でも上部
の崩落は、遠くから見ただけですがかなり大きく、放っておくこと
はできない規模でした。
鬼無里の案内パンフレットによりますと、昭和43年に明治
100年記念事業の一つとして、長野県内の代表的な自然を保護し、
自然教育の場とするために「自然園」が設けられたのだそうです。
奥裾花自然園は標高1250~1280メートルで、面積
122.6ヘクタール、日本の温帯林を代表するブナの原生林の中
にあります。今池湿原のミズバショウは、周囲1000メートルの
池の範囲に密生しており、5月上旬の雪解けとともに白い花が咲く
ミズバショウの群生地としては尾瀬などより大きく、本州随一とい
われています。
ブナ林のなかにある吉池は小さな池ですが、イモリ・クロサンシ
ョウウオ・モリアオガエルが生息しているそうです。5月下旬には
池の中にクロサンショウウオのマユ玉の卵塊がたくさんみられます。
モリアオガエルは池の上に伸びた木の枝に産卵する習性があるそう
ですが、蛙(カエル)合戦もかなり華やかに繰り広げられるのだそ
うです。鬼無里はミズバショウで有名ですが、宮沢さんの話では、
「6月、ブナ林の芽吹きの頃が一番素晴らしい」とのこと、別の方
は「いや、夏がベストだ」とおっしゃっていました。私は「秋の紅
葉の頃も良いですねえ」と申し上げましたが・・・。
今池湿原のミズバショウの群生地まで戻ってから宮沢さんに聞い
た話ですが、ミズバショウは太陽の光を嫌うのだそうで、あたり一
面背丈ぐらいの高さにカヤが生い茂っている、そのカヤがミズバシ
ョウを守っているのだそうです。見通しが悪いからとカヤを刈った
りすると、ミズバショウはドンドン小さくなってしまうということ
でした。
そういえば、今年はクマの出没事例が多いそうです。これも宮沢
さんいわく「クマに出会ったら、死んだふりをしても駄目、木に登
っても相手の方が木登り上手、逃げても4つ足にはかなわない」の
だそうです。じゃあどうするのですかとお聞きしたら「出会わない
ようにするしか無い」そうです。鈴を持ったり、ラジオをかけたり、
大きな声を出してみんなで騒ぎながら行くのが、コツだそうですが
・・・何だか心細い話でした。
散策を終えて、観光センターのところで昼食をとりました。きの
こを主体にした珍しい山菜料理に舌鼓を打ちました。特別に出して
いただいたマツタケより貴重な「ツガダケ」と言う珍味もいただき
ました。
食堂を経営しておられるご夫婦は、ここで30年前から商売をし
ており、冬になればお店を閉じるのだそうで、今年は11月5日だ
そうです。昨年は11月3日に50cmも雪が積もったそうですが、
今年は雪の兆しがない(11月3日時点の話です)ようです。
鬼無里のミズバショウ、ブナ林は有名ですし、私も何度か訪れた
ことがありますが、今回は新しい発見が随分ありました。平成20
年度に奥裾花自然園への大切な道路、県営林道大川線の大規模改修
工事が終了する予定ですので、平成21年度を「鬼無里イヤー」に
しようと産業振興部では計画を立てています。鬼無里には自然だけ
でなく、素晴らしい文化、歴史、そして優しい人たちがいらっしゃ
います。素晴らしい年にしたいものですね。
今回、素晴らしい経験ができたのは、ボランティアのガイドをや
っていただいた宮沢さんのおかげが大きいと思います。私がいつも
言っていることですが、観光地には「語り部」が必要ということ
を実感させていただいた案内であり、見事な語りでした。宮沢さん
ありがとうございました。