数年前から、サブプライムローン問題のことが新聞紙上をにぎわ
せています。この問題については、世界中の経済学者が知恵を絞っ
ても解決策が見いだせない、そして、いまだに底が見えない、今後
まだ深刻化するとも言われています。
この問題について、私なりに本や新聞、雑誌を読んでみました。
もちろん解決策なんて分かるはずもないので、評論家的発言になら
ざるを得ないのですが、この問題により、言ってみれば、本来ある
べき資本主義経済の社会がめちゃくちゃにされてしまうのではない
かと危惧(きぐ)しています。
そして、次の2点がどうしても納得できません。
(1)お金を貸しても、その債権を売ってしまえば、回収責任はな
いとはどういうことなのか?まったく訳の分からないルールが
横行しているということ。
(2)格付け会社という存在は、一体何なのだろう。何の資格があ
って、いいかげんな“格付け”をしたのか。しかも、多くの金
融のプロをなぜだますことができたのかということ。
サブプライムローンとは、所得の低い人や返済延滞を繰り返す人
など、いわゆる信用力の低い個人を対象とした米国の高金利型住宅
ローンのことです。欧米などの金融当局者は、この問題が「世界大
恐慌の引き金になるかもしれない」と心配しているようですが、こ
れまで日本への直接的な被害はあまり多くないと言われていました。
しかし、最近の報道によると、時間の経過とともに、日本国内の被
害もだんだん大きくなっていることが明らかになってきているよう
です。
日本では、「バブル崩壊後の空白の10年」をようやく脱したの
ですが、世界中がこの問題で悲観論に陥っていることで日本も自信
を失っており、株価低落、円高など景気減速にさらされていると言
ってよいのでしょう(ただし、円高は輸出企業にとっては、大変で
すが、輸入資材が値上がりしているこの時期、一般的には歓迎すべ
きかもしれません。また、株価の変動については、多少上昇気運も
出てきているとも言われています)。
そして、この問題の影響としてもっと深刻なことは、世界的に株
式相場が減速したため、今まで株式市場で運用されていた巨大な資
金が、より高い運用益を求めて、原油市場はもとより、資源や食料
の先物市場に流れ込んでいることです。その結果、これらの商品価
格が大変な勢いで高騰してしまいました。また、家畜の飼料の価格
も高騰していることから、酪農製品の値上がりや品不足にも拍車を
かけており、市民生活に、大きな影響を与えてきています。すなわ
ち、金融の世界だけでなく、実態経済に影響が出てきているのです。
食料価格高騰の原因は、とうもろこしや小麦などの穀物類を、バ
イオエネルギーの原料に使うという、米国のブッシュ大統領の演説
にもあると言われています。加えて、地球温暖化の影響なのでしょ
うか、オーストラリアなどの穀倉地帯で干ばつが続いており、穀物
などの収穫量が激減していることや、経済的な発展で中国などの国
内需要が伸びて、従来の食料輸出国が食料輸入国に変わってきてい
ることなど・・・いろいろな原因が複雑に絡んでいることは確かな
ようです。
しかし、サブプライムローン問題も、先物市場に投機資金を呼び
込んで、食料価格高騰のきっかけをつくってしまったことは、間違
いないようです。
一体、どうしてこんなことになってしまったのでしょうか?この
問題には、大きくとらえて次の4つのポイントがあると私は思いま
す。
(1)支払い能力や信用力が低い人に対し、最初は低い金利で借り
やすくし、一定期間がたつとその分金利が急激に高くなる仕組
みの住宅ローンが組まれた(こんなローンが存在すること自体
が、おかしいと思います。このローンの目的は、家が欲しい、
でも所得が低いのでローンを組めない、そんな人に対する政策
であったようです。ですから当初の目的は、収入が低くても、
まじめに返済しようとする人向けのローンだったはずですが・
・・)。
(2)このローンが成立する論理の根本には、住宅価格は右肩上が
りに上がるので、ローンが返済できなかったら担保物権の家を
取り上げて転売すればよい、担保はしっかりしているという発
想があった(まさに住宅バブルで、住宅価格がドンドン上がっ
ていたときの発想です)。
(3)ローンを組んだ後、ローン会社が、このローンの債権を売り
払った。売り払った時点で、ローン会社には債権を回収する必
要も責任もない。このローン債権の転売という、金融工学とい
う新しい理論を駆使して編み出したというこの手法、すなわち
不良のローン債権を小口に分割して分からなくし、ほかの優良
債権と組み合わせてあたかも優良な債権であるかのごときお化
粧を施して売り出した(まさに詐欺まがい行為、それも確信犯
ではないでしょうか)。
さらに格付け会社と称する会社が、そのローン債権に“A”
とか“AA”とか“AAA”とかの高いランクを付け、お墨付
きを与えた。投資家はその格付けを信頼して債券を購入した
(短期的には、利益が上がる仕組みではあったようです)。
(4)しかし、住宅バブルが崩壊して、下がるはずがないと信じら
れていた住宅価格は下がってしまった(日本の土地神話と似て
います)。家を購入しても住宅ローンを返済できない人が破産
し、担保物権である家を追い出され、家は競売にかかる。しか
し空き家が増えて、ますます住宅価格は下がり続けるので、債
権を回収できないばかりか、ローン債券の価値も暴落を続け、
投資家は莫大(ばくだい)な損害を出している。そして、いま
だに底が見えない状況にある。
この4点について、おかしな話、というより経済の原則を無視し
た話、少なくとも、私が会社経営をしていた7年前ごろには考えら
れなかったことがあると思えるのです。
少し長くなってしまいますので、このことについては、次回述べ
させていただきます。