3回目の今回は、以前から考えていたことも含め、麻生首相の緊
急経済対策発表以来、私なりに勉強させていただく中で考えてきた
ことを、少しおこがましいかもしれませんが書かせていただきます。
少し前になりますが、読売新聞に「市場大波乱 どう立ち向かう」
と題した連載記事で、3人の識者の見解が掲載されていました。今
回のメルマガの序論として、その一部をご紹介したいと思います。
リチャード・クー氏(野村総合研究所主席研究員)
「日本は株価が急落する一方で、円相場は高くなっている。株と
為替が両方とも下落して苦境に陥っている多くの海外諸国よりま
だまし。世界は日本経済を『まだ余力がある』と見ており、円高
は、『世界の経済がおかしい時は円を買う』という動きの表れ。
(麻生首相が首相就任時に日本経済は全治3年と発言したことに
対して)この3年間、できることは何でもすべき。国内景気を回
復させるには内需拡大が必要。このような景気後退の時に財政再
建という選択肢はない。」
小島邦夫氏(経済同友会副代表幹事・専務理事)
「今の株価は、日本の企業業績や金融システムの現状からはとて
も説明できないほど安い。日本の経済危機ではなく、あくまで株
式市場の危機ととらえるべき。円高も急激な変動は困るが、悪い
ことばかりではない。原材料価格が相対的に下がり、コスト削減
効果が出てくる。」
加藤寛氏(嘉悦大学長、元政府税制調査会長)
「日本は欧米に比べて傷は浅い。必要以上に自信を喪失する必要
はない。今回の金融危機をくぐり抜けた後、日本が世界のリーダ
ーに立っている可能性もないわけではない。」
この3人の方の説は、バブルの崩壊とそこから立ち直った経験を
もつ日本経済は、そんなに弱くはないし、今の状況は必ずしも悪い
材料ばかりではない。そして、必要な対策を講じてこの混乱を脱す
ることが必要、ということでしょうか。
日本経済は弱くないということを裏付けるかのように、現在、日
本の企業は、史上空前の海外企業買収攻勢に出ています。例えば、
野村ホールディングスは、倒産した米国大手証券会社リーマン・ブ
ラザーズのアジア、太平洋、欧州、中東地域の部門を買収したそう
ですし、三菱UFJフィナンシャルグループも、米国大手証券会社
のモルガン・スタンレーに出資し、同社の筆頭株主になったといい
ます。
このほか、医薬品や食品メーカーなども相次いで海外企業を買収
しているそうで、日本企業による海外企業のM&A(企業の合併や
買収)は、今年1月から10月までの累計で、前年同期の3.7倍、
過去最高とのことです。
円高も進んでいます。確か、長野オリンピックの少し前だったと
記憶していますが、1ドルが90円を割ったことがありました。長
野冬季五輪組織委員会では、ドル建てで契約してあったスポンサー
料とテレビ放映権料が目減りしてしまうと、かなり慌てていたこと
を今思い出します。結果は、しばらくしたら円安に振れて、わずか
な損で済んだようでしたが・・・。
基本的に、円高は日本の力が上がっているということですから、
喜ぶべきことと私は思います。確かに輸出産業はつらいし、外国か
らの観光客が減るかもしれないということなどで、短期的には厳し
い時代でしょう。今月17日発表された7~9月期の国内総生産
(GDP、季節調整値)の速報値は、物価変動を除いた実質で、前
期(4~6月期)比0.1%減、年率換算0.4%減となったとの
ことで、四半期連続でマイナスになったのは、約7年ぶりとのこと
です。
ただ、輸出産業にとっても、輸入資材はあるはずですから、その
部分は値下がりするわけです。何年か前、円高が進んだころに、新
日鉄は、円が変動しても会社の利益には関係ないシステムにしてい
る、という新聞記事があったように思います。輸出と輸入の金額を
同じにすれば、理論的には可能ですよね。
また、現に石油価格は、ひところに比べれば大幅に下がってきて
いますし、ほかの原料の価格も下がってきているようです。すでに
高い価格で輸入を決めている業種では、在庫がありますから、すぐ
には値下げできないでしょうが、長期的に見れば輸入価格は下がる
はずです。
前述の加藤寛先生のおっしゃるように、一段落したら、日本が圧
倒的な強さを発揮して世界のリーダーになっている、そんな図式は
まんざら荒唐無稽(こうとうむけい)なことではないかもしれませ
ん。麻生首相の緊急経済対策が功を奏せば、日本経済の未来はそう
悲観したものではないようです。
麻生首相が消費税増税に言及したことに批判も出ていますが、私
は、現在の国の財政状況を冷静に考えてみれば、たとえ選挙に不利
であっても、増税に触れること無しでは、無責任と言わざるを得な
いと考えています。
昭和50年代のことですが、長野市長も務められた故夏目忠雄元
参議院議員が、赤字国債を出していることについて「申し訳ないが
赤字国債の半分はインフレにすることで実質的に消していく、半分
は利益を上げて税金で返す。それが原則だろう」とおっしゃってい
たことが思い出されます。でも結果は、そうならなかった。どうし
ても増税は必要なのです。
麻生首相と自民党総裁選を争った後、経済財政政策担当大臣に就
任した与謝野馨さんは、その著作『堂々たる政治』の中で、「国は
巨大な割り勘組織」という主張をされています。
与謝野大臣は、「勘違いされている方が多い気がしてならない。
国と自分を分けて考えがちな国民が意外と多いのではないか。実際
には、国民と国家はイコールのものだと私は思っている。民主主義
国家においては特にそうである・・・国と国民というのは、字句は
異なるが同義語だということを忘れがちだ・・・国家とは、国民が
割り勘で運営している組織にすぎない・・・国と国民は同義語だか
ら、国の借金というのは国民の借金である」と述べておられます。
さらに、「2011年(平成23年)までに財政健全化の第一歩
を踏み出すという方針が決まった。借金の返済にめどをつけつつも、
社会保障などの制度も維持することになっている。この方針につい
てはそう異論はあるまい。ただし、そのためにはみんなでちゃんと
割り勘分を払わなければ、本当にこの国は支えられない。そこのと
ころをわかってもらわないと駄目だ」とも書いていらっしゃいます。
私はこの“割り勘組織”という言葉に感心しましたし、国民一人
一人が自分の割り勘分を払うことの必要性がよく分かりました。
そして増税の話ですが、私は消費税しか考えられない、いや、そ
れしかあり得ないだろうと思います。特に地方財政については、消
費税を中心にすべきです。
個人市民税や法人市民税など所得に応じて課税させていただく税
は、景気に左右されて変動しますし、地域によって偏在しているこ
とも問題です。さらに、国に対し地方へ金を回せと言うだけでは難
しいでしょうから、法人も個人も含めて所得による税は国にすべて
お渡しし、その代わりに地方が必要とする財源は、消費税から配分
してもらうべきだと私は以前から主張しています。
「地方共有税」というのと同じ発想かもしれませんが、税源とし
ての消費税は、地域による偏在性が少ないこと、極めて安定してい
ることが特徴でしょう。とにかく、住民サービスに直結している地
方としては、収入が不安定では困るのです。なにせ地方は、お金の
印刷機を持っていないのですから。
以上、識者の方々の意見もお借りしながら、年来の私の主張を述
べさせていただきました。
2008年11月27日木曜日
不況対策(3)
2008年11月20日木曜日
不況対策(2)
先週に続き、先月末に麻生首相が発表した緊急経済対策について
書かせていただきます。今週は、首相が一つ目として発表した国民
のための経済対策についてです。
まず、麻生首相から発表があった対策の概要を、「新たな経済対
策に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議」の報告書
から抜粋して、以下に記載させていただきます。
●生活者の暮らしの安心
1.家計緊急支援対策
(定額給付金支給、賃金引き上げの環境づくりなど) 2兆円
2.雇用セーフティーネット強化対策
(雇用下支え強化など) 3,000億円
3.生活安心確保対策
(介護従事者の処遇改善、出産・子育て支援、
障害者・医療・年金対策推進など) 7,000億円
●金融・経済の安定強化
4.金融資本市場安定対策
(国際金融資本市場安定化に向けた国際協調推進など)
事業費記載なし
5.中小・小規模企業等支援対策
(中小・小規模企業資金繰り支援など)21兆8,000億円
6.成長力強化対策
(「成長力強化税制」導入、研究開発支援など)
1,000億円
●地方の底力の発揮
7.地域活性化対策
(高速道路料金引き下げ、強い農林水産業づくりなど)1兆円
8.住宅投資・防災強化対策
(住宅投資促進、公共施設耐震化推進など) 4,000億円
9.地方公共団体支援策
(地方公共団体の地域活性化取り組み支援など)
6,000億円
合計 26兆9,000億円
これらの対策のうち、現在は、定額給付金のことばかりが前面に
出て話題に上っていますが、ここで掲げたそれ以降の項目の方がも
っと大切なのではないでしょうか。日本の景気を何とかしようとす
る麻生首相の意気込みが表れていると思っています。
そして、このような時は、何をやっても、「バラマキ」という評
が出ることは当然でしょう。でも、景気をよくするために急いで何
かやるとすれば、「バラマキ」しかないわけで、私は当然だと思い
ますし、よくこんなに考えられたものだと感心しています。
ただ、若干言わせていただくとすれば、以下の6つです。
(1)1.家計緊急支援対策の「定額給付金」について
麻生首相が対策を発表した時には、一世帯当たり6万円の定額
給付と表現していましたが、先週になって内容が具体的になり、
支給額は、一人当たり1万2,000円とし、18歳以下と65
歳以上には8,000円を加算。所得制限を設けるかどうかは市
区町村の判断に委ねることとし、所得制限を設ける場合の目安と
して、所得1,800万円を下限とするということになりました。
この定額給付金について私は、発表があった当初からすべての
国民に給付するというのは疑問で、所得要件を設けるべきと思っ
ていました。でも、地方自治体とすれば、その事務作業がとても
大変なのは事実であり、現状では要件を設けることは難しいと思
っています。ただ、年間1,800万円以上の収入がある人に、
一人当たり1万2,000円を給付することにどの程度意味があ
るのか、とも考えてしまいますが・・・。
しかし、この給付金を支給することによって、ざっと見積もっ
て長野市内だけでも50~60億円のお金が流れることになるわ
けですから、これはとてもありがたいことです。文句を言うより
もっと歓迎すべきであると思っています。
なお、これは余談ですが、今月11日に行われた市の定例記者
会見で、この定額給付金についてのやり取りを記者さんたちとす
る中で、私は「本来払っていただくべき税金や水道料金が払われ
てないものがあり、それを差し引かせてもらえるとありがたい」
という趣旨のお答えをしました。
ところが、この発言が思わぬ波紋を呼んだようで、東京のテレ
ビ局から取材の申し入れをいただくことにもなってしまいました。
このお申し入れはお断りしたのですが、インターネットの掲示板
でもかなりの量の書き込みがあったようです。ざっと目を通して
みたのですが、さまざまな意見がある中で、私の発言に賛同する
意見も随分あったように感じました。もちろん給付金の趣旨と異
なることは承知していましたが、私とすればごく一般的な発想と
思っていましたので、この反響は少々意外でした。
(2)3.生活安心確保対策の「介護従事者の処遇改善」について
介護報酬の改定により介護事業者の処遇改善を図り、介護に携
わる人材を増やすが、これに伴う介護保険料の急激な上昇は緩和
するとのことです。介護報酬額は、介護保険制度の改正のたびに
下げられてきており、介護事業で働く人が生活していけないと言
って、転職していることは事実ですから、超高齢社会における政
策としては必要であり、良かったと感じています。ただ、一時的
な処置では困ります。
(3)5.中小・小規模企業等支援対策について
中小企業の資金繰り対策ということで、信用保証協会による緊
急保証枠を新たに14兆円追加するとともに、政府系金融機関に
よる貸付枠を7兆円追加するとのことです。今回の緊急対策全体
の中で、事業費の約8割を占めるのがこの項目であり、もっとも
重要な対策であると言えるのでしょう。
(4)7.地域活性化対策について
「高速道路料金の値下げ」や、強い農林水産業づくりについて
は、内容のすべてが明らかになっているわけではありませんし、
民主党案の丸のみと言えないことはないのでしょうが、意外な効
果を表すかもしれません。大いに期待したいと思います。
(5)9.地方公共団体支援について
これも内容がまだよくは分かりませんが、ありがたいことです。
ただ、いろいろな制限があり地方の自由にならない“ひも付き”
でないこと、そして地方負担がない100%補助であることを願
うのみです。
(6)3年後、消費税を上げるということも言及されています。こ
れは、やむを得ないことであり、麻生首相だけでなく、誰が首相
をやっても触れざるを得ないことで、そのことに言及することは、
絶対に必要だと私は思っていました。
「ふるさとNAGANO応援団」のお一人で、ジャーナリストの
花岡信昭氏は、ご自分のメルマガで、福島県相馬市長の次のような
コメントを紹介しておられます。
「私は景気対策をするなら、この際地方の社会資本整備を進める
ことを提唱したい。イノベーション(技術革新)に対する投資も中
長期的に見れば確かに必要だが、短期的な経済効果が得られ、中長
期的には地方の生産基盤の強化につながる政策が求められると思う。
国際経済低迷の不安を我々地方都市に投影すれば、避けられないで
あろう企業の収益減や労働分配の低下を政策的に緩和し、企業の業
績好転も含めた将来への希望を企画するという意味でも、港湾や幹
線道路などの社会資本の整備を今こそ急ぐべき時代である。」
私もこの提案にほぼ賛成です。今年の秋口のことですが、私は、
ご案内をいただいた自民党、民主党、公明党それぞれの県連大会に
出席させていただきました。その時、私から申し上げさせていただ
いたことは、「景気浮揚を図るなら、中途半端な規模では駄目。最
大限の規模にすべきである。“兵力の逐次投入はいましむべし”と
いうことわざがある」ということです。
公共事業悪玉論が行き過ぎてしまった結果、地方の道路、下水道
を含め、社会資本の整備は、市民の要望が高いにもかかわらず、随
分遅れていると言わざるを得ない。地方建設業界の不況感は、働く
人員が多い業界だけに厳しい場面を迎えています。
それともう一つ、公共事業は、国が予算をつけてくれた場合に、
必ず地方負担が生じる仕組みになっており、これが地方自治体にと
って大きな負担になっています。あわせて、国の予算はハードだけ
が対象になっていて、ソフトは対象にならない。言い換えれば、修
理費、改修費などメンテナンスや利便性を上げること、あるいは必
要な人材を雇用することには、直接的な予算がつきません。
使い勝手がよく、地方にとって真に必要なことに使えるような支
援をお願いしたいと思っています。
以上、2回にわたり、麻生首相が発表された緊急経済対策につい
て、私なりの感想を述べさせていただきました。
次回は、今回書かせていただいてきたこのテーマの将来展望も含
め、少しまとめてみたいと思います。
2008年11月13日木曜日
不況対策(1)
先月末、麻生首相が、自ら、不況克服のための緊急経済対策を発
表しました。「現在の経済は、100年に一度の暴風雨が荒れてい
る。金融災害とでも言うべき、アメリカ発の暴風雨と理解している
・・・」という冒頭発言に始まる言葉は、基本的には地方自治体に
身を置くわれわれの認識と一致していると感じています。
国家経済は国政で対応すべき問題であり、地方自治体が意見を言
うことは犬の遠ぼえみたいで、私はあまりしたくない、地方自治体
は所与の条件の中で最大限の努力をすべきなのだ・・・と考えてい
ますが、今回は、地方自治体にとっても大きな影響があることです
ので、あえて書かせていただきます。
本年6月に、3回にわたって「お金を「おもちゃ」にした“つけ”
はどうなるの?」と題して、このメルマガでサブプライムローン問
題を取り上げたことを覚えていただいているかもしれません。今回、
麻生首相が緊急経済対策を発せざるを得なかった問題の根源は、こ
のサブプライムローンにあることは事実でしょう。でも、私がメル
マガ原稿を書いた6月の時点では、まだ、国際的な金融世界の問題
で、実体経済にどんな影響が出るかはよく分かっていませんでした。
当時は、世界的な株式相場の減速がきっかけで、原油を筆頭に、
食料などの資源価格が暴騰するという事態に遭遇していました。こ
れは、株に投資していた資金が、株は駄目だということで原油や食
料に向かったとか、中国やインドなどの新興国家の経済が発展して
資源を大量に使うようになった、などと説明されてきましたが、本
年9月、問題の震源地である米国の大手証券会社リーマン・ブラザ
ーズの破たんを引き金にして世界同時株安が加速し、ついに実体経
済に深刻な影響が出始めたということでしょう。
今までは、景気が悪くなると、企業の業績や雇用の問題はもちろ
んですが、「今後、地方の税収が減るだろうなあ」と、地方自治体
としての収入面を心配していました。今回は、どうもそれだけでは
済みそうもなく、地方自治体にも具体的にいろいろな影響が出てき
そうな様子です。6月の時点でメルマガに書かせていただいた意見
は、今でも特に変える必要はないと思っているのですが、現在の事
態が6月に書かせていただいた内容の延長上にあるということもあ
り、もう一度、書かざるを得ないと考えました。ですので、今回は、
その続編ということでご理解ください。
10月に入って、景気が急速に落ちてきたようです。先日、ある
会社の社長さんとお話しする機会があったのですが、その際の話で
は、「当社の9月末の中間決算は増収増益で好調。でも10月に入
ってから急速に悪化している」とのことでした。普通の企業にとっ
ては、9月末の中間決算ですら相当深刻なのに、それ以後、急速に
悪化しているということですので、来年3月の決算数字はもっと悪
くなる可能性が高いと予想され、心配です。
それまで好調であった業績が、10月に入って急に悪くなること
は、考えにくいと思うのですが、景気は、心理的要素が大きいとも
言われていますので、サブプライムローン問題に加え、証券会社や
銀行の破たん報道が続いて、もしかすると日本も・・・そんな心理
が働き、買い控えや設備投資の抑制など、景気後退への動きが出て
きたのでしょうか。
麻生首相は、「選挙より経済」として、予想されていた総選挙を
延期しての緊急経済対策の発表となりました。ねじれ国会の下です
から、すぐできる政策と、国会の議決に時間を要する政策がありそ
うですが・・・確かに過去に例を見ない大掛かりな政策であると私
は感じました。
麻生首相の発言を追っていくと、対策は大きく分けて二つです。
一つ目は国内でできること。それは生活者の安全保障であり、金
融の安定ということで、考えられる限りの大胆な対策を、経済対策
としてまとめた、とのことです。
二つ目は、国際的にしなければならないことで、金融安定化のた
めに、国際協調を進める、とのことでした。
私は、ここで不思議に思うことがあります。一つ目のことについ
ては、報道各社や政党関係、経済団体などのコメントがいろいろな
角度から、論じられており、分析がされていますが、二つ目につい
てはどこも取り上げていないように思うのです。
私は、麻生首相の記者会見の中継をテレビで拝見していて、二つ
目の部分に“なるほど”と感じたのですが、その後の新聞報道に全
くと言っていいほど現れてこない、これは変だと思っています。根
源的な問題ですから、もっと解説なり、批評があってしかるべきで
はないでしょうか。
実は、このメルマガを書くために、新聞報道を改めて見返してみ
たのですが、二つ目として発言があった経済対策の内容は、とうと
う発見することができませんでした。仕方がないので、インターネ
ットで首相官邸のホームページを開き、記者会見の項目の中からよ
うやく見つけることができたのです。
私はあえて、麻生首相のおっしゃる二つ目から考えてみます。
金融機関に対する監督と規制の国際協調体制について、サブプラ
イムローン問題に端を発した金融危機の問題には、以下の三つの問
題があると、麻生首相は指摘しておられます。
(1)貸し手側が行ったずさんで詐欺的な融資
(2)証券化商品の情報が不透明
(3)格付け会社の格付け手法に対する疑問
これらのことは、失礼ながら、私が6月のメルマガで指摘させてい
ただいたことと同じであり、当然のことです。
麻生首相は、「こうした証券化商品が世界中の投資家の投資の対
象になったことで、危機が全世界に広まってしまった。金融機関と
いう、本来、厳格な規制が必要とされる分野で、ここまで大きな問
題点を見過ごした監督体制について、反省すべきである」というこ
とを指摘しておられます。そして、「このことは、各国当局がおの
おの監督を行う仕組みでは不十分で、いかに国際協調を構築するか
が大切で、金融に関するいわゆる首脳会議において議論をしよう」
と主張しておられます。
私は、麻生首相の意見には大賛成です。が、仕方ないことではあ
りますが、表現が随分穏やかすぎると感じています。米国の責任を
もっと糾弾してもよかったのではないでしょうか。補償を求めても
良いぐらいです。倒産したリーマン・ブラザーズの最高経営責任者
は昨年、最も優れた経営者として表彰されているのだそうです。冗
談でしょうと言いたいところですし、金融工学と称する経済分野で
ノーベル賞を取った学者さんも、確かアメリカ人だったような記憶
があります。
続いて、格付けの在り方についても指摘しています。「格付け会
社は、債権市場発展には不可欠なインフラであるが、深刻な問題が
あったことは否めず、世界的な金融不安を増長した。こうした影響
力を有する格付け会社に対する規制の在り方がどうあるべきか、ま
た、アジアなどローカルな債権の格付けを行う地場の格付け会社を
育成する必要がある」と主張し、これも国際会議の場で議論したい
とおっしゃっています。
この点について、私は納得がいきません。格付け会社は「債権市
場発展に不可欠なインフラ」という認識がどうも分かりません。格
付け会社というのは、要は投資会社が自己責任を放棄して、安易に
投資ができるようにするためにあるのだと私は思っていますから、
そのようなものは不必要ではないかと考えています。投資会社は、
自己責任で投資先を調査して、自己責任で投資すべきということは、
当たり前ではないでしょうか。
さらに、会計基準の在り方についても言及しています。「今回の
ような金融市場が大きく乱高下する状況において、すべからく時価
主義による評価損益の計上を要求することが、果たして適切だろう
か。時価主義をどの範囲まで貫徹させるべきか、さらに有価証券を
売買するか、また、満期まで保有するのかによって、いかなる評価
方法が適切であるのか。国際的な合意を目指して議論したい」との
ことです。
この点についても、私は疑問があります。有価証券は変動する商
品ですから、時価をきちんと把握しておくことは、正しいと思って
います。まあ、売買用の証券か、保有用の証券かを分けて、保有用
については何らかの対策をとるような合意はなされるかもしれませ
んが、あくまで時限立法の範囲にしておくべきではないでしょうか。
以上が、麻生首相が発表された二つ目の経済対策についての私の
感想です。
次回は、一つ目の対策について、新聞報道などを参考にしながら、
書かせていただきます。
2008年11月6日木曜日
元気なまち「長野」の秋10月のイベント(2)
先週に引き続き、この秋、市内で行われたいろいろなイベントに
ついて、私が出席させていただいたものを中心にご紹介させていた
だきます。
・10月5日(日)「ノーレジ袋店頭強化キャンペーン」
「ながの環境パートナーシップ会議」の皆さんが取り組んでおら
れるこのキャンペーンに、長野商工会議所の加藤会頭さん、市議会
福祉環境委員会の議員さんと一緒に参加させていただき、店頭でチ
ラシを配ってPRしました。
全国地球温暖化防止活動推進センターによると、レジ袋や過剰包
装を断ることで年間に一世帯当たり58キログラムの二酸化炭素の
削減になるとのことです。一人一人にとってはわずかな量でも、多
くの皆さんに取り組んでいただくことが大きな成果につながります。
市民の皆さんに少しでもご理解いただき、ご協力いただければと思
います。
・10月10日(金)、11日(土)「産業フェア in 善光寺
平 2008」
長野法人会を中心に、長野市を含む3市1村、県テクノ財団善光
寺バレー地域センター、信州大学など、産・学・官の積極的な連携
により開催しました。「地域ブランド」とも言えるさまざまな産業
や企業を紹介し、その技術や製品を広くPRすることで、販路開拓
や新事業の創出を進めていこうとするもので、加えて産業の担い手
となる学生層の関心を高め、雇用にもつなげることを目的にしてい
ます。
いろいろなセミナーをはじめ、個別マッチング商談会、信州「食」
の商談会、企業ブース出展など、直接ビジネスに結びつくプログラ
ムに加え、サイエンスショー、エコな乗り物試乗コーナー、産業ク
イズラリー、長野高専ロボットパフォーマンス、おもしろ“ものづ
くり”体験ランド、そば打ち教室など、市民の皆さんにもお楽しみ
いただけるイベントがたくさんありました。
・10月11日(土)「2008長野市農業フェア in エムウ
ェーブ」
この「農業フェア」は、生産者と消費者、市民が、一緒に農林産
物の収穫を祝い、地元で採れたものを地元で味わう喜びを分かち合
うことを目的に開催しているもので、今年のテーマは「安全・安心
!!とれたてNAGANO 大集合」でした。今年の農作物の生育
状況は、大きな災害もなく、これまでのところ順調で、価格の低迷
が心配されるものの、文字通り「豊作の秋」を迎えたとのことでし
た。
毒入りギョーザや事故米の不正規流通問題、ミルクへの有害なメ
ラミンの混入事件など、「食の安全」に対する信頼が失われかねな
い昨今の食糧事情の中で、安全で安心な農林産物による地産地消の
拡大は、ますます重要になっていることを痛感します。
今回は特に、「長野市地産地消推進協議会」に参加いただき、地
産地消特選コーナーを設けて、地元食材を利用した料理と試食など
で地産地消をアピールする試みも行われました。
・10月12日(日)「松代藩真田十万石まつり」
鎧兜(よろいかぶと)を着用し、白馬に乗って、松代町内を練り
歩きました。真田家14代当主の真田幸俊さんも真田信之役で参加
され、私は真田幸隆役で参加させていただきました。大勢の観客の
皆さんの声援をいただきながら、馬上から見る松代のまちは、いつ
もと違う目線で見るせいでしょうか、また違った楽しさがありまし
た。
同日、長野駅前で「如是姫(にょぜひめ)まつり」、中央通りで
は「2008善光寺表参道秋まつり」が行われました。私は、松代
で馬に乗って行列に加わっていましたので、残念ながら参加できず、
副市長や部長に代わってもらいましたが、大変なにぎわいだったと
報告がありました。
・10月18日(土)「ながの花と緑大賞2008表彰式」
花と緑に囲まれた潤いのあるまちづくりを進めることを目的に、
市民の皆さんの優れた花づくりや緑化活動を顕彰するもので、今年
も多くの皆さんから応募をいただきました。
この日は、「緑化活動」、「花づくり(個人の部・団体の部)」、
「事業所緑化」、「緑の写真」の部門ごとに、作品を映像で拝見さ
せていただきながら、入賞された方々に私から賞状と賞金をお渡し
させていただきました。
長野市は、四方を山に囲まれていますので、緑には恵まれている
ように感じがちですが、市街地を見ると意外に緑が少ない状況です。
入賞された皆さんをはじめ、賞にご応募いただいた多くの皆さんの
活動から、花と緑の輪が大きく広がっていくとうれしく思います。
同日、「永井由比フルートコンサート」が若里市民文化ホールで
開催されました。このコンサートは、日ごろクラシック音楽に触れ
ることが少ない方にも気軽にお出掛けいただけるよう、市の音楽文
化活性化事業として平成18年から毎年企画しているもので、3回
目の今年は、桐朋学園芸術短期大学非常勤講師でフルート奏者の
永井由比さんをお招きして開催したものです。
私は、コンサートに出掛けることはできなかったのですが、17
日(金)に市長室で永井さんとお話しさせていただく機会がありま
した。市長室では、ごあいさつのように、突然フルートで一曲演奏
してくださり、予期しない出来事に少し驚きましたが、とても澄ん
だきれいな音色で、心地よいひとときを味わいました。
・10月25日(土)、26日(日)「全国路地サミット2008
IN 長野」
全国各地から200人余りの参加者をお迎えし、6回目となるサ
ミットが善光寺界隈(かいわい)や松代の路地を舞台に行われまし
た。私は、交流会で開催市市長としてあいさつさせていただき、そ
の後、しばらくの間、路地の魅力を熱く語る皆さんとご一緒させて
いただきました。長野には、大林宣彦監督撮影の映画「転校生」や、
吉永小百合さん出演のテレビCMでも取り上げられた善光寺門前町
の路地、また、松代の閑静な武家屋敷や町屋など、味わい深い空間
がたくさんあります。ぜひ、市民の皆さんにもまち歩きの魅力を楽
しんでいただきたいと思いました。
まだまだ、たくさんありそうですが・・・あまりに多すぎてご紹
介し切れなかった部分もあります。お許しください。
なお、今年は、本年度の観光キャンペーン「飯綱高原イヤー」を
実行委員会の皆さんと共に繰り広げています。このキャンペーンで
は、「オトナリ高原いいづな」というとても親しみのわくキャッチ
フレーズとともに、4月から、音楽や自然観察、農業体験など、さ
まざまなイベントが開催されてきました。
私は、4月に行われたオープニングセレモニーをはじめ、「飯綱
火まつり」、先週ご紹介した「NAGANO飯綱高原健康マラソン
大会」などに参加させていただきましたが、実行委員会の精力的な
取り組みで、数多くのイベントが、毎週のように開催されています。
10月26日(日)には、多くのボランティアの皆さんの協力に
より、5月から大座法師池近くに建設していた飯綱高原ビジターセ
ンター「オトナリハウス」が完成したそうです。今後、ここを訪れ
る観光客と地元の人が交流する拠点として、さまざまな利用が期待
されるところです。
これからも、まだまだ、たくさんのイベントが予定されています。
ぜひ、皆さんも「オトナリ高原」へ足を運んでみてください。
「長野では、毎日どこかで何かやっているよ」と言うことができ
るまちにするのが目標です。でも、そこまではなかなか難しいので
しょうが、「元気なまち」を目指している私とすれば、少しずつで
はありますが、実現していると信じています。