3回目の今回は、以前から考えていたことも含め、麻生首相の緊
急経済対策発表以来、私なりに勉強させていただく中で考えてきた
ことを、少しおこがましいかもしれませんが書かせていただきます。
少し前になりますが、読売新聞に「市場大波乱 どう立ち向かう」
と題した連載記事で、3人の識者の見解が掲載されていました。今
回のメルマガの序論として、その一部をご紹介したいと思います。
リチャード・クー氏(野村総合研究所主席研究員)
「日本は株価が急落する一方で、円相場は高くなっている。株と
為替が両方とも下落して苦境に陥っている多くの海外諸国よりま
だまし。世界は日本経済を『まだ余力がある』と見ており、円高
は、『世界の経済がおかしい時は円を買う』という動きの表れ。
(麻生首相が首相就任時に日本経済は全治3年と発言したことに
対して)この3年間、できることは何でもすべき。国内景気を回
復させるには内需拡大が必要。このような景気後退の時に財政再
建という選択肢はない。」
小島邦夫氏(経済同友会副代表幹事・専務理事)
「今の株価は、日本の企業業績や金融システムの現状からはとて
も説明できないほど安い。日本の経済危機ではなく、あくまで株
式市場の危機ととらえるべき。円高も急激な変動は困るが、悪い
ことばかりではない。原材料価格が相対的に下がり、コスト削減
効果が出てくる。」
加藤寛氏(嘉悦大学長、元政府税制調査会長)
「日本は欧米に比べて傷は浅い。必要以上に自信を喪失する必要
はない。今回の金融危機をくぐり抜けた後、日本が世界のリーダ
ーに立っている可能性もないわけではない。」
この3人の方の説は、バブルの崩壊とそこから立ち直った経験を
もつ日本経済は、そんなに弱くはないし、今の状況は必ずしも悪い
材料ばかりではない。そして、必要な対策を講じてこの混乱を脱す
ることが必要、ということでしょうか。
日本経済は弱くないということを裏付けるかのように、現在、日
本の企業は、史上空前の海外企業買収攻勢に出ています。例えば、
野村ホールディングスは、倒産した米国大手証券会社リーマン・ブ
ラザーズのアジア、太平洋、欧州、中東地域の部門を買収したそう
ですし、三菱UFJフィナンシャルグループも、米国大手証券会社
のモルガン・スタンレーに出資し、同社の筆頭株主になったといい
ます。
このほか、医薬品や食品メーカーなども相次いで海外企業を買収
しているそうで、日本企業による海外企業のM&A(企業の合併や
買収)は、今年1月から10月までの累計で、前年同期の3.7倍、
過去最高とのことです。
円高も進んでいます。確か、長野オリンピックの少し前だったと
記憶していますが、1ドルが90円を割ったことがありました。長
野冬季五輪組織委員会では、ドル建てで契約してあったスポンサー
料とテレビ放映権料が目減りしてしまうと、かなり慌てていたこと
を今思い出します。結果は、しばらくしたら円安に振れて、わずか
な損で済んだようでしたが・・・。
基本的に、円高は日本の力が上がっているということですから、
喜ぶべきことと私は思います。確かに輸出産業はつらいし、外国か
らの観光客が減るかもしれないということなどで、短期的には厳し
い時代でしょう。今月17日発表された7~9月期の国内総生産
(GDP、季節調整値)の速報値は、物価変動を除いた実質で、前
期(4~6月期)比0.1%減、年率換算0.4%減となったとの
ことで、四半期連続でマイナスになったのは、約7年ぶりとのこと
です。
ただ、輸出産業にとっても、輸入資材はあるはずですから、その
部分は値下がりするわけです。何年か前、円高が進んだころに、新
日鉄は、円が変動しても会社の利益には関係ないシステムにしてい
る、という新聞記事があったように思います。輸出と輸入の金額を
同じにすれば、理論的には可能ですよね。
また、現に石油価格は、ひところに比べれば大幅に下がってきて
いますし、ほかの原料の価格も下がってきているようです。すでに
高い価格で輸入を決めている業種では、在庫がありますから、すぐ
には値下げできないでしょうが、長期的に見れば輸入価格は下がる
はずです。
前述の加藤寛先生のおっしゃるように、一段落したら、日本が圧
倒的な強さを発揮して世界のリーダーになっている、そんな図式は
まんざら荒唐無稽(こうとうむけい)なことではないかもしれませ
ん。麻生首相の緊急経済対策が功を奏せば、日本経済の未来はそう
悲観したものではないようです。
麻生首相が消費税増税に言及したことに批判も出ていますが、私
は、現在の国の財政状況を冷静に考えてみれば、たとえ選挙に不利
であっても、増税に触れること無しでは、無責任と言わざるを得な
いと考えています。
昭和50年代のことですが、長野市長も務められた故夏目忠雄元
参議院議員が、赤字国債を出していることについて「申し訳ないが
赤字国債の半分はインフレにすることで実質的に消していく、半分
は利益を上げて税金で返す。それが原則だろう」とおっしゃってい
たことが思い出されます。でも結果は、そうならなかった。どうし
ても増税は必要なのです。
麻生首相と自民党総裁選を争った後、経済財政政策担当大臣に就
任した与謝野馨さんは、その著作『堂々たる政治』の中で、「国は
巨大な割り勘組織」という主張をされています。
与謝野大臣は、「勘違いされている方が多い気がしてならない。
国と自分を分けて考えがちな国民が意外と多いのではないか。実際
には、国民と国家はイコールのものだと私は思っている。民主主義
国家においては特にそうである・・・国と国民というのは、字句は
異なるが同義語だということを忘れがちだ・・・国家とは、国民が
割り勘で運営している組織にすぎない・・・国と国民は同義語だか
ら、国の借金というのは国民の借金である」と述べておられます。
さらに、「2011年(平成23年)までに財政健全化の第一歩
を踏み出すという方針が決まった。借金の返済にめどをつけつつも、
社会保障などの制度も維持することになっている。この方針につい
てはそう異論はあるまい。ただし、そのためにはみんなでちゃんと
割り勘分を払わなければ、本当にこの国は支えられない。そこのと
ころをわかってもらわないと駄目だ」とも書いていらっしゃいます。
私はこの“割り勘組織”という言葉に感心しましたし、国民一人
一人が自分の割り勘分を払うことの必要性がよく分かりました。
そして増税の話ですが、私は消費税しか考えられない、いや、そ
れしかあり得ないだろうと思います。特に地方財政については、消
費税を中心にすべきです。
個人市民税や法人市民税など所得に応じて課税させていただく税
は、景気に左右されて変動しますし、地域によって偏在しているこ
とも問題です。さらに、国に対し地方へ金を回せと言うだけでは難
しいでしょうから、法人も個人も含めて所得による税は国にすべて
お渡しし、その代わりに地方が必要とする財源は、消費税から配分
してもらうべきだと私は以前から主張しています。
「地方共有税」というのと同じ発想かもしれませんが、税源とし
ての消費税は、地域による偏在性が少ないこと、極めて安定してい
ることが特徴でしょう。とにかく、住民サービスに直結している地
方としては、収入が不安定では困るのです。なにせ地方は、お金の
印刷機を持っていないのですから。
以上、識者の方々の意見もお借りしながら、年来の私の主張を述
べさせていただきました。