2008年11月20日木曜日

不況対策(2)


 先週に続き、先月末に麻生首相が発表した緊急経済対策について
書かせていただきます。今週は、首相が一つ目として発表した国民
のための経済対策についてです。
 まず、麻生首相から発表があった対策の概要を、「新たな経済対
策に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議」の報告書
から抜粋して、以下に記載させていただきます。

●生活者の暮らしの安心
 1.家計緊急支援対策
  (定額給付金支給、賃金引き上げの環境づくりなど) 2兆円
 2.雇用セーフティーネット強化対策
  (雇用下支え強化など)          3,000億円
 3.生活安心確保対策
  (介護従事者の処遇改善、出産・子育て支援、
   障害者・医療・年金対策推進など)    7,000億円
●金融・経済の安定強化
 4.金融資本市場安定対策
  (国際金融資本市場安定化に向けた国際協調推進など)
                       事業費記載なし
 5.中小・小規模企業等支援対策
  (中小・小規模企業資金繰り支援など)21兆8,000億円
 6.成長力強化対策
  (「成長力強化税制」導入、研究開発支援など)
                       1,000億円
●地方の底力の発揮
 7.地域活性化対策
  (高速道路料金引き下げ、強い農林水産業づくりなど)1兆円
 8.住宅投資・防災強化対策
  (住宅投資促進、公共施設耐震化推進など) 4,000億円
 9.地方公共団体支援策
  (地方公共団体の地域活性化取り組み支援など)
                       6,000億円

           合計       26兆9,000億円

 これらの対策のうち、現在は、定額給付金のことばかりが前面に
出て話題に上っていますが、ここで掲げたそれ以降の項目の方がも
っと大切なのではないでしょうか。日本の景気を何とかしようとす
る麻生首相の意気込みが表れていると思っています。
 そして、このような時は、何をやっても、「バラマキ」という評
が出ることは当然でしょう。でも、景気をよくするために急いで何
かやるとすれば、「バラマキ」しかないわけで、私は当然だと思い
ますし、よくこんなに考えられたものだと感心しています。
 ただ、若干言わせていただくとすれば、以下の6つです。

(1)1.家計緊急支援対策の「定額給付金」について
  麻生首相が対策を発表した時には、一世帯当たり6万円の定額
 給付と表現していましたが、先週になって内容が具体的になり、
 支給額は、一人当たり1万2,000円とし、18歳以下と65
 歳以上には8,000円を加算。所得制限を設けるかどうかは市
 区町村の判断に委ねることとし、所得制限を設ける場合の目安と
 して、所得1,800万円を下限とするということになりました。

  この定額給付金について私は、発表があった当初からすべての
 国民に給付するというのは疑問で、所得要件を設けるべきと思っ
 ていました。でも、地方自治体とすれば、その事務作業がとても
 大変なのは事実であり、現状では要件を設けることは難しいと思
 っています。ただ、年間1,800万円以上の収入がある人に、
 一人当たり1万2,000円を給付することにどの程度意味があ
 るのか、とも考えてしまいますが・・・。
  しかし、この給付金を支給することによって、ざっと見積もっ
 て長野市内だけでも50~60億円のお金が流れることになるわ
 けですから、これはとてもありがたいことです。文句を言うより
 もっと歓迎すべきであると思っています。

  なお、これは余談ですが、今月11日に行われた市の定例記者
 会見で、この定額給付金についてのやり取りを記者さんたちとす
 る中で、私は「本来払っていただくべき税金や水道料金が払われ
 てないものがあり、それを差し引かせてもらえるとありがたい」
 という趣旨のお答えをしました。
  ところが、この発言が思わぬ波紋を呼んだようで、東京のテレ
 ビ局から取材の申し入れをいただくことにもなってしまいました。
 このお申し入れはお断りしたのですが、インターネットの掲示板
 でもかなりの量の書き込みがあったようです。ざっと目を通して
 みたのですが、さまざまな意見がある中で、私の発言に賛同する
 意見も随分あったように感じました。もちろん給付金の趣旨と異
 なることは承知していましたが、私とすればごく一般的な発想と
 思っていましたので、この反響は少々意外でした。

(2)3.生活安心確保対策の「介護従事者の処遇改善」について
  介護報酬の改定により介護事業者の処遇改善を図り、介護に携
 わる人材を増やすが、これに伴う介護保険料の急激な上昇は緩和
 するとのことです。介護報酬額は、介護保険制度の改正のたびに
 下げられてきており、介護事業で働く人が生活していけないと言
 って、転職していることは事実ですから、超高齢社会における政
 策としては必要であり、良かったと感じています。ただ、一時的
 な処置では困ります。

(3)5.中小・小規模企業等支援対策について
  中小企業の資金繰り対策ということで、信用保証協会による緊
 急保証枠を新たに14兆円追加するとともに、政府系金融機関に
 よる貸付枠を7兆円追加するとのことです。今回の緊急対策全体
 の中で、事業費の約8割を占めるのがこの項目であり、もっとも
 重要な対策であると言えるのでしょう。

(4)7.地域活性化対策について
  「高速道路料金の値下げ」や、強い農林水産業づくりについて
 は、内容のすべてが明らかになっているわけではありませんし、
 民主党案の丸のみと言えないことはないのでしょうが、意外な効
 果を表すかもしれません。大いに期待したいと思います。

(5)9.地方公共団体支援について
  これも内容がまだよくは分かりませんが、ありがたいことです。
 ただ、いろいろな制限があり地方の自由にならない“ひも付き”
 でないこと、そして地方負担がない100%補助であることを願
 うのみです。

(6)3年後、消費税を上げるということも言及されています。こ
 れは、やむを得ないことであり、麻生首相だけでなく、誰が首相
 をやっても触れざるを得ないことで、そのことに言及することは、
 絶対に必要だと私は思っていました。

 「ふるさとNAGANO応援団」のお一人で、ジャーナリストの
花岡信昭氏は、ご自分のメルマガで、福島県相馬市長の次のような
コメントを紹介しておられます。
 「私は景気対策をするなら、この際地方の社会資本整備を進める
ことを提唱したい。イノベーション(技術革新)に対する投資も中
長期的に見れば確かに必要だが、短期的な経済効果が得られ、中長
期的には地方の生産基盤の強化につながる政策が求められると思う。
国際経済低迷の不安を我々地方都市に投影すれば、避けられないで
あろう企業の収益減や労働分配の低下を政策的に緩和し、企業の業
績好転も含めた将来への希望を企画するという意味でも、港湾や幹
線道路などの社会資本の整備を今こそ急ぐべき時代である。」

 私もこの提案にほぼ賛成です。今年の秋口のことですが、私は、
ご案内をいただいた自民党、民主党、公明党それぞれの県連大会に
出席させていただきました。その時、私から申し上げさせていただ
いたことは、「景気浮揚を図るなら、中途半端な規模では駄目。最
大限の規模にすべきである。“兵力の逐次投入はいましむべし”と
いうことわざがある」ということです。
 公共事業悪玉論が行き過ぎてしまった結果、地方の道路、下水道
を含め、社会資本の整備は、市民の要望が高いにもかかわらず、随
分遅れていると言わざるを得ない。地方建設業界の不況感は、働く
人員が多い業界だけに厳しい場面を迎えています。

 それともう一つ、公共事業は、国が予算をつけてくれた場合に、
必ず地方負担が生じる仕組みになっており、これが地方自治体にと
って大きな負担になっています。あわせて、国の予算はハードだけ
が対象になっていて、ソフトは対象にならない。言い換えれば、修
理費、改修費などメンテナンスや利便性を上げること、あるいは必
要な人材を雇用することには、直接的な予算がつきません。
 使い勝手がよく、地方にとって真に必要なことに使えるような支
援をお願いしたいと思っています。

 以上、2回にわたり、麻生首相が発表された緊急経済対策につい
て、私なりの感想を述べさせていただきました。
 次回は、今回書かせていただいてきたこのテーマの将来展望も含
め、少しまとめてみたいと思います。