2008年12月18日木曜日

今年一年を振り返って


 少子高齢化の進展や地方分権改革などによる社会構造の変化、国・
地方の厳しい財政状況を見据える中で、「市民が主役」であるとい
うことを常に念頭に置き、市民の皆さまとのパートナーシップによ
り、今年も元気なまちづくりを進めてまいりました。しかし、サブ
プライムローン問題に端を発した経済環境の激変、不況の深刻化に
よって、日本中、いや世界中のすべてが変わってしまった・・・今、
そんな思いに襲われています。

 年末恒例の一年を振り返る時期になったのですが、特に10月以
降の景気の悪化が大きな圧力になっていて、春から夏ごろまでのこ
とは、随分昔のことのようであまり思い出せない・・・そんな中で
はありますが、私として印象に残ったことを書かせていただきます。

 今年は、スポーツに関するさまざまな話題に沸いた年であったと
思っています。
 まず、長野冬季オリンピック・パラリンピックの開催から10周
年を迎え、1月から4月にかけて、さまざまな記念事業が開催され
ました。これらの事業によって、みんなの心にあの感動がよみがえ
り、将来の長野市のまちづくりを進めていくための力が生まれると
いうことを実感しました。有形・無形の素晴らしい財産を残してく
れたオリンピック・パラリンピックを振り返ることは、とても大切
なことだと改めて思っています。

 1月には、「長野かがやき国体」のスケート競技会が、2月には、
全国中学校スケート大会が開催されました。全国中学校スケート大
会は、長野市で10年間継続して開催することになっている大会で、
今年がその1年目でした。長野市が「スケートのメッカ」となるこ
とを目指して、これからどんどん盛り上げていきたいと思っていま
す。

 春の選抜高校野球大会で「長野日大高校」が県勢として17年ぶ
りにベスト8入りを果たしたことや、北京オリンピックに、本市出
身である男子バレーボールの松本選手、自転車の宮沢選手が出場さ
れたこともうれしい話題でした。

 サッカーの「AC長野パルセイロ」の大活躍も印象に残っていま
す。今シーズンは、北信越フットボールリーグ1部優勝、全国社会
人サッカー選手権大会も初優勝し、11月の全国地域サッカーリー
グ決勝大会に進み、あと一歩のところで決勝ラウンドへの進出を逃
しましたが、大健闘でした。来シーズンに向けて頑張っていただき
たいと思います。

 4月には北京オリンピックの聖火リレーも行われました。世界中
から注目される中、無事に聖火を韓国へ引き継ぐことができたと思
っています。でも、あまり話題にはなりませんでしたが・・・あの
とき、地元市長としてのあいさつの苦労を知っていただきたい、実
は、次のような事情もあり、大変難しかったのです。
(1)あのような形で世界中の注目を集めることになるとは、聖火
  リレーをお引き受けした時には、全く想定外のことであった。
(2)聖火リレーが始まったら、ロンドンやパリなどでの騒動が大
  きく取り上げられだした。
(3)長野での聖火リレーには、駐日中国大使が出席することにな
  っていたことに加え、中国の胡錦濤(こきんとう)国家主席が
  来日される直前だった。
(4)チベット問題に直接的に触れることは難しい、でも、人権問
  題に対しては長野市としても何らかの姿勢を示したい。
(5)善光寺さんも、チベット問題への対応として、出発式の会場
  を辞退された。

 このような中で、長野市長として、どうすれば良いか・・・聖火
リレーを担当していた教育委員会との議論の末、国連の人権宣言に
思いが至りました。この宣言は、日本はもちろん、中国も認めてい
る文章でしたので、私のあいさつでは、あえて、うまくはなかった
のですが英語で世界人権宣言を読み上げさせていただきました。今、
思い起こしてみても、これで良かったのではないかと思っています。
ただ、駐日中国大使からは、多少、気にしておられたような発言も
ありましたが・・・。

 このほか、今年も長野マラソンへ大勢の皆さんにご参加いただき
ましたし、全日本フロアホッケー競技大会をはじめ、数々の大会を
長野市で開催していただきました。そして、12月になり、ショー
トトラックとスピードスケートのワールドカップも相次いで開催さ
れました。さらに、来週25日(木)からは、全日本フィギュアス
ケート選手権大会も長野市で開催されることになっています。こち
らには、今、注目の浅田真央選手も出場されるようです。
 また、先日、あいさつに来てくださったのですが、21日(日)
に京都市で開催される全国高等学校駅伝大会に長野東高校陸上部の
女子駅伝チームの皆さんが出場されます。これまで励んでこられた
練習の成果を発揮して、ぜひ上位に食い込んできてもらいたいと思
っています。

 このように、この一年、さまざまなスポーツ大会の開催により、
まちのにぎわいも生み出していただきましたし、地元チームや選手
の皆さんの活躍により、大いに元気づけていただきました。

 また、今年は長野市立長野高等学校(略称「市立長野(いちりつ
ながの)」)が、男女共学の単位制総合学科の高校として開校した
年でもありました。4月の開校後、市立長野では、信州大学教育学
部や清泉女学院大学・短期大学、産業界などのご協力をいただく中
で、生徒が自らの進路の学習を深めるために、大学訪問やインター
ンシップなどを行うなど、市立長野ならではの特色が出せているよ
うです。部活動では、新たに設立したスピードスケート部が活動を
開始しており、今月開催された長野県高等学校総合体育大会スケー
ト競技会に公式戦初参加を果たしました。今後の活躍が楽しみです。

 観光の話題では、「1200万人観光交流推進プラン」の3年目
として、今年は、「飯綱高原」と「善光寺界隈(かいわい)」で集
中的な観光キャンペーンを展開しました。善光寺では、山門の大修
理が終わり、山門へ登楼して内部を参拝することができるようにな
りました。歴史的な建物ですから、バリアフリーというわけにはい
かなかったのですが、違った視点で長野市の門前町を見ることがで
きる素晴らしいスポットになったと思っています。
 また、飯綱高原でもさまざまなイベントが開催され、大勢の人に
訪れていただきました。
 11月には、信越本線開業120周年を記念して、蒸気機関車D
51がJR長野駅と黒姫駅の間を走りました。郷愁を感じさせる汽
笛の音や、石炭を燃した煙のにおい。懐かしく往時を思い出したひ
とときでした。

 市内30の地区で地区ごとに設立をお願いしている住民自治協議
会ですが、今年は、新たに、戸隠、更北、七二会、吉田、若穂、篠
ノ井、芋井、柳原、芹田、信更、三輪の11地区で立ち上げていた
だきました。住民自治協議会は、市が「都市内分権」を進める上で
欠かせない組織として、平成18年度から設立をお願いしており、
これまでに22地区で設立していただいています。残りの8地区に
ついても来年3月までの設立を予定されているとのことで、大変う
れしく思っています。

 信州新町、中条村との合併協議も進みました。2月に両町村から
合併協議の申し入れがあった後、事務レベルでの調査研究を経て、
市民会議などで市民の皆さまからご意見をお伺いしてきました。9
月には、合併協議会の設置について市議会の議決をいただき、10
月に3市町村による合併協議会を設立しました。現在は、まだ協議
を進めているところですが、これまでに、合併期日を平成22年1
月1日とすることなどが決まっています。

 これらのほか、1月に長沼地区で北陸新幹線の設計協議が整った
ことにより、年末までに市内ルート全線で工事が始まったこと、長
野市版放課後子どもプランがスタートしたこと、もんぜんぷら座の
全館利用が始まったこと、戸隠地質化石博物館がオープンしたこと、
市農業公社により「ながのいのち」ブランド事業が始まったことな
ども印象に残っています。

 しかし、うれしいことばかりではありませんでした。「中国・四
川大地震」「岩手・宮城内陸地震」などの大地震、事故米・汚染米
の不正転売や相次ぐ食品偽装など、暮らしの安全・安心を脅かす大
きな災害や事件もありました。そして、ガソリン税などの暫定税率
の失効に代表される政局の混乱、サブプライムローン問題に端を発
したアメリカ発の世界規模の金融危機、原油・原材料の高騰、さら
に円高。日本経済を大幅な後退局面へと向かわせる大変な年となっ
てしまいました。
 100年に一度の大不況を何とか吹き飛ばしたい、そんな思いを
強く感じた年末です。内需拡大、新しい経済秩序の確立に全力を挙
げたいと考えています。

 私が市長に就任してから7年余が経過し、任期も残すところ1年
を切りました。来年も、私の行政経営の「核」とも言うべき5つの
原則、「入りを量りて出ずるを為す」「市民とのパートナーシップ」
「簡素で分かりやすい行政」「民間活力の導入」「職員の意識改革
を図り、きちんとした行政を遂行すること」を基本として、長野の
将来を思う心を抱き、第四次長野市総合計画の目標である「善光寺
平に結ばれる~人と地域がきらめくまち“ながの”」の実現に向け、
元気なまちづくりを進めていきたいと決意を新たにしている今日こ
のごろです。