2009年1月15日木曜日

新しい年(2)


 先週は、雇用問題について考えてみましたが、今週は、もう一つ
の大きな課題である環境問題について、農業を雇用のセーフティー
ネットにつくり直すということも視野に入れながら、書かせていた
だきます。

 ひとくちに環境問題と言っても範囲が大変広い分野ですから、そ
の対応は一律ではありません。なかでも地球温暖化を防ぐことは、
人類の生き残りをかけた挑戦ということですし、そのためには、化
石燃料の使用をどこまで減らせるかが、重要な焦点の一つであると
言われています。

 では、長野市としてどうするか。地球温暖化対策として市では、
太陽光発電設備を一般住宅に設置する際に費用を補助する制度を設
けているほか、市有施設への設置も進めています。特にこれから造
る施設については、すべてに太陽光発電設備を設置することにして
います。そのほか、小水力発電設備の設置やさまざまな省エネルギ
ー対策も進めてきました。

 しかし、今後は、このように技術的に安定し、すぐに取り組める
施策だけではなく、多少遠回りでも、市内の雇用増加や農業の再生
につながる環境施策が必要なのではないかと思っています。特に中
山間地域での働き口をつくって雇用を増やし、活性化させることは、
環境問題の解決に大きな効果があると考え、次のような総合施策を
私なりにまとめてみました。そして、実際に取り組んでいくために、
「みらい政策研究会議」(政策課題を調査研究するために設けた市
の内部組織)に対し、施策としてまとめるよう指示しました。

(1)中山間地域と都市部の交流
 豊富な自然や都市部にはない景観など中山間地域が持つ資源を生
かし、次のような施策により都市部との交流人口をもっと増加させ
たいと考えています。
 ○グリーンツーリズム
   農村観光の展開、修学旅行の誘致を積極的に進めるために、
   コーディネーターを育成して受け入れ態勢を整備し、営業活
   動を展開
 ○観光資源の有効活用
   いいとき観光エリア活性化構想により、スキー場、牧場、観
   光施設などを活用(いいとき=飯綱・戸隠・鬼無里の頭文字)
 ○中山間地域の住民自治協議会での雇用増
   農作業支援や冬場の雪かきなど、市農業公社との連携も視野
   に入れ、中山間地域の人材不足を補うために雇用
 ○公共交通体系の整備
   昨年立ち上げた「長野市公共交通活性化・再生協議会」によ
   り総合連携計画を策定し、具体的な事業を展開(中山間地域
   での移動手段の確保は重要課題)

(2)農林業の再生
 市農業公社と連携し、これまでの農業・林業を活性化させること
で、中山間地域での生計維持を容易にするとともに、雇用の増加に
も結び付けたいと考えています。
 ○既存農業のリニューアル
   マーケティングの充実と生産者グループの法人化、地産地消
   の推進などにより、もうかる農業を強化
 ○木材の利用促進による雇用増
   森林間伐の促進、木工やバイオマスなどへの木材利用促進、
   植林、林道整備
 ○中山間地域での薬草栽培
   県の計画に連動した積極的な取り組みとして、薬草栽培に適
   した中山間地域の気候や土壌を生かした薬草生産と供給
 ○耕作放棄地の活用

(3)新たな産業の育成
 長野市の自然環境に適した新たな産業を育成し、新たな雇用を創
出できるのが望ましいことは言うまでもありません。具体的には、
観光も含め、素晴らしい自然環境を生かすことができ、中山間地域
で展開できる産業だと思っています。
 ○新エネルギー・自然エネルギーの産業化
   バイオエタノールや亜臨界水(※)の研究、薄膜型の太陽電
   池や色素増感型太陽電池、小水力・風力を利用した発電(た
   だ、以前の調査によると、風力発電の適地は市内にないよう
   なのですが・・・)
 ○バイオトイレの実用化
   中山間地域でのトレッキングの利便性確保と自然環境を守る
   ためにバイオトイレを実用化
 ○中山間地域への企業誘致
   薬草栽培に関連した健康食品産業、信州新町との合併を視野
   に入れたサフォーク牧場など(サフォーク牧場が実現できれ
   ば、これまで林業などの利用に限られていた山間地を牧場と
   して利用することもできると考えています)
 ○雇用・人材の確保
   中山間地域で新たな雇用や人材を確保するためには、空き家
   の活用、田舎暮らし用の住宅を確保することなども必要

(4)施策を実現するために
 ○大学や企業と協働、市も投資
   これらの施策を実現するための技術・方法を確立するには、
   研究機関や企業と協働して事業化することが必要であり、市
   として投資することも考慮(特に県テクノ財団や市ものづく
   り支援センターとの連携が重要)
 ○中山間地域等直接支払制度の維持、新過疎法制定への期待
   中山間地域の農業・農村を維持するための国の支援として
   「中山間地域等直接支払制度」の継続、平成17年に合併す
   る前の旧長野市内の地域単位でも過疎指定が受けられ、現過
   疎法と同等の支援が受けられるような新法制定が必要

 これらのことに加え、新たな産業を育成することについて考えて
いることがあります。長野市域の7割は中山間地域ですから、平坦
で広い土地を必要とする産業は、長野市には向いていません。また、
現段階では、労働力の余剰もそれほどは無いと思っていますし、
「海無し」県であるが故に、大量輸送が必要な企業も無理がありま
す。そして、地勢が内陸型ということを考慮すると、長野市には環
境型の産業が一番適しているのではないかと思うのです。

 また、これからのことを見据えると、大学などの研究機関や行政
と協働できる高付加価値型の業種がぜひ欲しいですし、できれば行
政も協力でき、ベンチャー型で将来性のある企業が望ましいとも思
っています。

 このように考えると、バイオエタノールに大いに期待したくなっ
てきます。特に、草木やごみを利用したセルロース系のバイオエタ
ノールの生産が可能になれば、中山間地域はもとより山に囲まれた
長野市にはとても適した産業になり、雇用の増加にも結びつくので
はないでしょうか。間伐材の新たな活用策として、林業の再生にも
結び付くはずです。ただ、早急に実現することが難しそうだ、とい
うことだけが残念ですが・・・。

 現段階では、以上のようなことを簡単にまとめ、市の部長に私が
プレゼンテーションしただけで、今後の研究を待つ部分も多いとい
う状態です。しかし、本年の基本施策として、雇用問題と農業・中
山間地域再生にかける私の意気込みは、ぜひ、ご理解いただきたい
と思います。

 ※ 亜臨界水:高温・高圧により、気体でも液体でもない状態と
  なった水。廃棄物処理やバイオエタノール製造への応用が研究
  されています。