先週に引き続き、このテーマで書かせていただきます。
日本は、「失われた10年」を、産業再生法の発動と大手銀行に
対して資本注入したことにより立ち直った、と言われています。で
も、今回のアメリカの状況は、日本だけでなく、ヨーロッパや新興
国も巻き込んで底なしの世界恐慌になりそうで、一国だけの問題で
済みそうもないと言われています。ただ、各国とも同じではありま
せんが、過去の日本の前例に倣った政策で、立ち直ろうとしている
ように感じています。
アメリカの上院は、総額72兆円に上る景気対策法案を議決した
ようです。しかし、その中に、アメリカ製品の購入を義務付けるバ
イ・アメリカン条項が入っているとのことから、アメリカで保護主
義が台頭してくる可能性が指摘されており、各国で批判が高まって
います(オバマ大統領がカナダを訪問して、保護主義にはならない
という意味のことを、カナダの首相に語ったという記事が新聞に載
ってはいましたが・・・)。1930年代の世界大恐慌の際にも、
バイ・アメリカン法が成立したそうですが、そのためか、各国とも
防衛のために保護主義的傾向が強まり、結果として、第二次世界大
戦へ突き進んだと言われています。
ただ、1930年代とは違い、各国は連携し協力することの大切
さを知っているはずですし、戦争の愚かさも知っています。また、
どうしようもないほど、経済・社会は入り組んでしまっていますか
ら、一国だけでの独自解決などできるはずがありませんが・・・国
はきっと最良の政策を採用してくれると信じることにしています。
地方自治体としては、もちろん、この事態に対する解決法は、残念
ながら持っていないのですから。
先日の内閣府の発表によると、昨年10月~12月期の日本の国
内総生産(GDP)の成長率は、年率換算でマイナス12.7%に
なるとのことです。世界同時不況と言われる中でのこの数値は、先
進国の中でも際立って高い数字なのだそうで、外需に頼りすぎてい
た日本の経済構造の弱さが表面化した現象とも言われています。
ただ、この数字は、一時期の瞬間風速みたいなもので、あまり過
大に心配するべきではない、円高が進行していることは、日本経済
の健全さを表しているとも言われていますし、金融界の落ち込みは、
アメリカや欧州より少ないと言われているのですから・・・。
問題は分配の問題で、構造改革により“1億総中流社会日本”が
崩壊したという主張は、かなり納得できるように思います。内需拡
大や正規・非正規問題といった雇用問題の解決が政策目標になって
くるのは、当然の帰結だろうと感じています。
先週紹介させていただいた中谷巌氏の著書『資本主義はなぜ自壊
したのか』を読ませていただくと、新自由主義・グローバル資本主
義(市場原理主義)は、果たして日本人を幸福にしたのか、地球環
境の破壊を推し進めているのではないか、中流社会ニッポンが消え
うせた・・・日本の社会から「安心・安全」あるいは「人と人との
信頼関係や絆(きずな)」が失われる事態を引き起こしたなど、い
ろいろな指摘がなされています。私個人としては、これらは理念と
してかなり納得できる説だと感じています。
ただ、中谷氏は次のようにもおっしゃっています。
構造改革には一定の意義があり、「構造改革」そして一連の「規
制撤廃」は、政・官・業の癒着体質を打ち破り、国民の税金や「郵
貯」や「簡保」の資金が意味のない公共投資に垂れ流されることに
対して、くさびを打ち込んだのは間違いのない事実である・・・日
本には改革の余地がたくさん残っていると言っても過言ではない・
・・しかし、これまでの路線で構造改革を続けるということであれ
ば、今や「功」よりも「罪」の方が大きくなってきているのではな
いだろうか・・・。
そして、マーケット(市場)メカニズムも限界を抱えた次善の仕
組みであるということで、イギリスのウィンストン・チャーチル元
首相が民主主義について述べた言葉を引用して「マーケット・メカ
ニズムが完全で賢明であると見せかけることは誰にもできない。実
際のところ、マーケット・メカニズムは最悪の経済システムという
ことができる。これまで試みられてきたマーケット・メカニズム以
外のあらゆる経済システムを除けば、だが」とまで言い切っておら
れます。
中谷氏は、もう一つ、グローバル資本主義がもたらす深刻な現象
として「地球環境の破壊」を指摘しておられます。グローバル資本
主義は、利益追求が最大の使命であるが故に、限られた地域で強い
られる環境破壊への自制は不必要で、環境を汚染し、資源を無駄遣
いしても、それが直接企業経営にマイナスに働くとは限らない・・
・とおっしゃっています(言い換えれば、地域に密着した企業は、
地域に縛られているが故に、地域にマイナスの仕事はできない、と
いうことかもしれません)。
若干の異論はありますが、これらのことにはかなり説得力があり、
正直ショックを受けました。私も、基本的には構造改革の支持者で
あり、民営化推進論者だからです。ただし、国家レベルと地方自治
体レベルでは違いがあると考えています。故に、このことに関して
長野市としては、今までの政策は間違っていないと信じており、今
後も信じるところを推進していくつもりですが・・・。
地方自治体に当てはめてみると、例えば大型ショッピングセンタ
ー(SC)が進出すると、周辺の小さな商店はとても大きな影響を
受けることになります。これは経済の論理のもとでは仕方がないこ
とです。しかし、市外の資本による大型SCは、経済環境の変化に
よりあっという間に撤退してしまう可能性もあります。そして、大
型SCがなくなった後には、疲弊した地域が残され、周辺の住民は
買い物にも困ってしまう、そんなまちづくり、規制緩和はできない
と感じています。
そこで、長野市では、市街化区域の出店可能な地域以外への進出
については、遠慮していただくことにしました。でも、地権者の皆
さんからは随分ご意見をいただいていますし、大型SCの利便性を
市民が享受できないことになる面もあるわけで、それは、申し訳な
いことだと感じています。
中谷氏の論点から、関係がないような地域の話になってしまい恐
縮です。要は、地域社会では、徹底して構造改革、規制緩和の方向
をたどってきたわけではありませんから、中谷氏のマクロの視点に
立った反省は、必ずしも当てはまらないと思っています。まだまだ
民営化を含む構造改革は必要なのだということを申し上げたかった
のです。
話は戻りますが、理念・理想論は別として、短期的には景気を良
くしなくては、今の状況が良くならないことは事実だと思います。
地方自治体としては、できることを最大限行います。その上に立っ
て中谷氏の論を十分生かしていきたいと思っています。
現段階では、生産力が内外の需要を上回っているわけですから、
需要が増えてくるまで我慢の時代が続くのかもしれません。でも、
国内大手自動車会社の増産方針や太陽光発電システム関連への増産
投資、金属や化学などの素材産業の減産緩和による工場稼働率の引
上げといった明るい報道もなされています。過去と同じような回復
はあり得ないと思いますが、「朝の来ない夜はない」という言葉も
あるとおり、麻生首相の言う「全治3年」を信じてみるのもよいと
思っているのですが・・・。
2009年2月26日木曜日
構造改革のもたらしたもの(2)
2009年2月19日木曜日
構造改革のもたらしたもの(1)
少し前になりますが、小泉内閣で、総務大臣や金融担当大臣など
を歴任された竹中平蔵氏が、産経新聞の囲み記事で次のような論理
を展開されていました。
「かんぽの宿は“不良債権”」だというのです。
鳩山総務大臣は、かんぽの宿をオリックスに売却することに次の
理由で反対を表明しました。
(1)資産価値が落ち込んでいる今の時期に、急いで売却するのは
適切ではない。
(2)オリックスの宮内会長は、国の規制改革会議の議長で、郵政
民営化による資産処分にかかわるのは「出来レース」的である。
この鳩山大臣の論理に対し、竹中氏は次のような反論をしていま
す。
(1)確かに今の処分価格は安いけれど、経済学の初歩的な概念で
ある「機会費用」を無視した認識である。
(2)宮内氏が、郵政民営化にかかわった事実はない。より重要な
ことは、民間人が政策過程にかかわったからといって、その資
産売却にかかわれないという論理そのものに重大な問題がある。
(3)かんぽの宿という不良債権の処理が遅れれば、資産はますま
す劣化し、国民負担を一層大きくする。早期に一括売却するこ
とこそが、資産価値を最大化する道である。
皆さんも、新聞などでご存じの通り、かんぽの宿の売却は白紙に
戻ったわけですが、実はこの話、バブル時代のツケを精算しなくて
はならない地方自治体にとって(もちろん長野市にとっても)、考
えなくてはならないテーマでもあるのです。
例えば、長野市の戸隠スキー場は、企業会計で運営されています
が、一般会計に対して約10億円の長期債務を抱えています。言い
換えれば約10億円の赤字を抱えているわけです。可能なら、この
資産を売却して民営化し、赤字を解消したいと考え、戸隠地域の方
々で構成された「戸隠スキー場民営化研究委員会」で検討していた
だきました。
その結果、「売却できれば、経営の自由度も増してさらに良いス
キー場になるかもしれない。ただ、反面では、長野市や地域の意向
が運営事業者に伝わりにくくなり、経営状況が悪化した場合には転
売される恐れもある。そして、どうも思うような価格(10億円以
上)で売却できそうもないし、将来の発展を期して資本投下するよ
うな民間企業者が出てきそうもない。」ということで、資産は長野
市が所有したままで民間事業者に管理・運営を任せる、いわゆる指
定管理者制度を導入することになったのです。
運営は、いろいろ検討した結果、社団法人長野市開発公社に任せ
ることにしました。開発公社は民間経営(行政ではないという意味)
ですから民営化にはなりますが、実質は直営とあまり変わらないと
いうことで、思い切った手を打てない可能性もあり、心配される向
きもあるかもしれません。
しかし、市民の財産を不当に安く(?)処分せず、将来に可能性
を残すということで、許していただけるのではないかと考えていま
す。徹底した経営改善をしつつも、皆さんに満足いただけるサービ
スが提供できるよう、開発公社の頑張りに期待しています。
次に、趣旨は違いますが、読売新聞に載った中谷巌氏の論理につ
いてです。
中谷氏は、早くから構造改革の必要性を訴えていた経済学者で、
一橋大学教授でした。小渕内閣では、首相の諮問機関である「経済
戦略会議」の議長代理を務め、ソニーの社外取締役(国立大学の教
授が民間企業の取締役になることは異例で、当時は反響を呼びまし
た)、多摩大学長などを歴任され、現在は、三菱UFJリサーチ&
コンサルティングの理事長を務めておられる方で、私たち素人にも
分かりやすい論理で構造改革を提言されていたと記憶しています。
その中谷氏が、“構造改革路線の罪として、格差を拡大させ社会
を分断した。それにより棄損された日本社会が持っていた温かさを
どう回復するか”ということに思いをいたし、自身が構造改革の推
進役だったことに自戒の念を込めて発言されたのです。
中谷氏は、“グローバル資本主義により、世界経済が年率5%に
も上る急成長を遂げた。欧米流のグローバル・スタンダードに合わ
せることは、日本経済の活性化に不可欠だと信じていた。しかし、
この急成長の末に待っていたのは、とてつもない「しっぺ返し」だ
った”ということを指摘されています。
この軌道修正が話題を呼んでいます。昨年12月に出版された
『資本主義はなぜ自壊したのか』という著書の中で、“「構造改革」
だけで人は幸せにならない。「功」よりも「罪」の方が大きくなっ
てきている”ということで、長年の主張を方向転換されたのです。
素人の私たちにとって、竹中氏や中谷氏の説を論評する資格はな
いかもしれませんが、現在の経済不況が、社会を暗くし、やり場の
ない鬱積(うっせき)した気持ちをまん延させていることは、事実
でしょう。それが構造改革のせいかどうか・・・私には分かりませ
ん。
ただ、いつも申し上げていることですが、グローバル・スタンダ
ードを目指した以上、日本は変わらざるを得なかった。すなわち、
構造改革は、その時点では必要だったのでしょう。
具体的には、
(1)アメリカのレイ・オフをまねて、労働者派遣法を拡大せざる
を得なかった。これをやらなかったら、日本企業の海外流出は
もっと進んだはずです。
(2)金融のグローバル化が進んできて、日本は金融鎖国ができな
かった。すなわち、国際的な投資競争のため、必然的に日本の
銀行は不良債権の基準を大きく変えざるを得なかった。
というようなことなどです。
そして、サブプライム問題など、楽をしてもうけようという金融
界の姿勢が問題を大きくしてしまったのではないでしょうか。モノ
づくりの代表企業と思われていたアメリカ最大の自動車メーカーゼ
ネラルモータース(GM)も、GMACという金融子会社をつくっ
て自動車版サブプライムに手を染めていました。すなわち、住宅だ
けでなく、自動車業界もサブプライムに毒されていたようです。言
い換えれば、金融工学なるものに乗ってすべてが砂上の楼閣で浮か
れていた、と言えるのではないでしょうか。
ここで、また例の論理が思い出されます。
『どんな論理であれ、論理的に正しいからといってそれを徹底して
いくと、人間社会はほぼ必然的に破たんに至ります。言うまでもな
く、論理は重要です。しかし、論理だけではダメなのです。どの論
理が正しくて、どの論理が間違っているかということでもありませ
ん。これは日常用いられるすべての論理に共通した性質です。』
やりすぎたのだ、と言うことは簡単です。でも、どうやってこの
事態に対処するのか、識者は誰も処方せんを提示していないのでは
ないでしょうか。麻生首相は、日本経済は全治3年と言っておられ
ますが、その程度で収まるかどうか・・・。日本を代表する経済諸
機関がいろいろな提言を発表してはいますが、いずれもマクロの話
で、地方自治体がどうすべきか、具体論では提言していないような
気がしています。
このことについては、もう少しお伝えしたいことがありますので、
来週も、このテーマで書かせていただきます。
2009年2月12日木曜日
広域行政の動き
市町村がそれぞれ取り組んでいる事業のうち、幾つかの市町村が
共同して行う方が、より効率的だと考えられる事業については、以
前からかなり広く共同で実施しています。代表的な形態は、広域連
合、一部事務組合、市町村相互の委託・受託などです。その中でも、
新たに計画する事業、さらに拡大していこうとする事業もあります
し、役目が終わったということで、共同関係を解消していこうとい
う事業もあるのは、当然のことかと思います。
農業共済も長野市を含む9市町村が共同で実施している事業です。
長野地区農業共済事務組合の再編については、以前(平成19年8
月)のメルマガで詳しくお知らせしたことがありましたが、1月
23日に最後の「再編整備協議会」が開催され、本年4月1日の北
信農業共済組合との統合に関するすべての準備が整いました。
農業共済事務組合は、農家が受けた自然災害による損害を補償す
るために、法律で定められた保険制度を運営する組織で、農作物や
果樹などの共済事業を行っているいわゆる保険屋さんです。この組
織の運営基盤強化を図り、加入農家へのサービスを向上させるため、
平成19年から、中野市や飯山市など6市町村を区域とする北信農
業共済組合と統合するための協議を進めてきたのです。
昨年8月21日、長野地区農業共済事務組合と北信農業共済組合
との「再編整備に関する覚書」の調印が行われました。しかし、そ
の後、北信農業共済組合の組合長である青木前中野市長が急逝され
るという悲しい出来事があり、その後が心配されたのですが、作業
は滞りなく進み、構成市町村の議会の議決も済みました。これによ
り、両組合の統合が確定し、あとは事務的な作業を残すのみです。
いよいよ4月1日からは、15市町村を区域とする新たな「北信農
業共済組合」がスタートします。
なお、一部事務組合である長野地区農業共済事務組合では、建物
や農機具共済は扱うことができなかったことから、これまでは、
「長野地区任意共済推進協議会」という組織を別につくり、これら
の共済事業をしていました。今度は、新「北信農業共済組合」が直
接取り扱うことができるようになりますので、この協議会も3月
31日をもって解散することになります。
次に消防広域化です。
昨年10月、東北信地域の消防広域化研究協議会が設立され、私
は会長に選任されました。近年、災害や事故などは、複雑多様化し
ていることから、これに的確に対応できる消防体制の整備・確立が
求められています。そのため、平成18年6月に消防組織法が改正
され、全国で消防広域化の議論が進められているのです。
長野県でも昨年1月に「長野県消防広域化推進計画」が策定され
ました。この計画では市町村消防のさらなる広域化の必要性を示す
とともに、広域の対象地域を県内全域とし、「東北信」と「中南信」
の2本部体制を推奨しています。
しかしながら、消防広域化の枠組み、すなわち消防本部の規模に
ついて、長野市としては、消防活動上の適正な規模というものもあ
るのではなかろうかと考え、県内4本部体制を主張してきたところ
です。また、考え方としては県内1本部体制もあると思っています。
市民の皆さんの中にも、広域化に対する懸念をお持ちの方もいら
っしゃると思います。
この協議会の中には、幹事会や専門部会を設けており、調査研究
や他県の状況の視察も行っています。これらを通じて、消防の現状
や課題、将来見通しなどを検証するとともに、関係者でしっかり協
議し、この地域における、よりよい消防広域化の方策を見いだして
いくことが重要であると考えています。
いずれにしても、市町村消防の使命・責務は、少子高齢化による
人口減少や厳しい財政状況の中でも、大規模災害や複雑多様化する
事象に的確に対応し、住民の生命、身体および財産を守ることです。
そのためには、消防体制の一層の充実・強化が必要であり、消防の
広域化は避けられないということでしょう。
次は、広域連合の在り方です。
このメルマガの冒頭で、広域行政の代表例として「広域連合」を
挙げましたが、この「広域連合」の在り方も、今後、変化していく
ことになりそうです。
これまで国では、「広域行政圏施策」として、一定の圏域で市町
村をまとめた「広域行政圏」の形成を促進して、広域的な地域づく
りなどを進めようとしてきました。長野市が所属する長野広域連合
でも、この施策に基づいて基金を設置し、事業を行ってきたところ
です。
しかし、昨年末、国からこれらの「広域行政圏施策」を廃止する
との連絡があり、今後は各市町村の事情に応じて行うこととなった
のです。
長野広域連合で行っている事業には、特別養護老人ホームの運営、
介護保険の要介護度の認定審査、ごみ処理施設建設に向けての準備
作業など、各市町村が行うことを広域連合が引き受けて実施してい
る共同処理事務もあります。こちらは、今回の見直しと直接は関係
しませんが、今後、国の広域行政の進め方によっては、形を変える
ことになる可能性もありそうです。
私とすれば、将来的には、連合長や連合議会の議員の一般選挙の
実施のほか、さまざまなコンピューターシステムの共同化、教育委
員会の共同設置など、事務共同化の流れをだんだん増やしていきた
い。そうすれば、いずれ市町村の大合併の機運が出てくるのではな
いか・・・そんなことを考えていたことも事実です。
ただ、日本全体を見ると、広域連合システムは、必ずしもうまく
機能しているとは言えない状況だと聞いています。長野県がもっと
も進んでおり、うまくいっているが故に、市町村合併が進まないの
ではないか、との評もあったようです。
ただ、広域連合の一番の欠点、というより制度的弱点は、全員賛
成が原則という点でしょう。何かをしようというときには、その都
度、構成市町村すべてが合意しないと進まないため、スピード感の
ある事業展開ができないのが実態なのです。
国が従来の「広域行政圏施策」を廃止する理由には、市町村合併
の進展に伴い、広域行政圏の市町村数が著しく減少した圏域や、広
域行政機構を有しない圏域が広がった、ということなどがあるよう
です。担当の総務省では、「広域行政圏施策」が当初の役割を終え
たものと考え、この3月31日をもって要綱を廃止し、新たに、中
心市と周辺市町村が1対1で締結する協定に基づいて役割を分担し、
相互に連携する「定住自立圏構想」を推進するとのことです。
この「定住自立圏構想」について、私としては、若干戸惑いがあ
ります。市長に就任した当時、何が何だか分からないままに、長野
広域連合の連合長に選出されて以来、私は一生懸命に努めてきたつ
もりです。確かに広域連合は、今のルールの下ではあまり有効では
ありませんが、改革していけば十分機能するし、効率化できる。市
町村合併となると、なかなか進まないから、広域連合を変形して連
邦都市をつくったらどうか、なんて構想をかつて申し上げたことも
あるくらいです。
現在、長野広域連合が実施している事業は重要ですので、すぐに
やめることはできません。しかし、国が従来の広域行政の仕組みや
手法を見直してきていることは事実ですから、いずれにしても、今
後の長野広域連合の在り方については、何らかの改革が必要になる
でしょう。
た。
2009年2月5日木曜日
臨時市議会を開催します
国会で第二次補正予算が決まったことを受けて、それを執行する
ため、そして、その準備もあることから、本日、急きょ市議会臨時
会を開催することになりました。景気が極端に悪化、さらに急速に
落ち込んでいくという予測もある中で、長野市として何ができるか
悩んできたわけですが、市町村の力でできることは、規模も小さく、
限られてしまうということで、迅速な手段はなかなかとれない状況
が続いてきました。
そこへ、国の第一次に続いて第二次補正予算が決まったのですか
ら、政策の当否は別として、とにかく早く取り入れて、少しでも生
活の安定と景気の回復に役立てたい、そんな思いで取り組んできた
わけです。
景気の悪化について、若干状況をお話しします。
1年前の今ごろ、確かにサブプライム問題は表面化していました
が、景気の落ち込みはそれほどでもなく、雇用問題もそれほど深刻
では無かった、今とは全く違う状況でした。6月ごろでしたか、私
にも、このメルマガで、サブプライム問題について生意気な議論を
する余裕があったように思います。
9月にアメリカの大手証券会社リーマン・ブラザーズが倒産した
ことが直接のきっかけだったでしょうか、アメリカだけでなく、日
本、ヨーロッパ、そしてアジアの新興国まで、経済状況は大変なこ
とになってきました。
デカップリング論というのがあるそうです。アメリカの景気が悪
くなっても、中国、インド、ブラジルなど、新興国の経済は好調で
多極化している、だから問題ないと言う説だそうです。しかし開け
てみたら、アメリカの輸入量にみんなが頼っていた、まさに一極集
中だったことを証明してしまったわけです。
麻生首相がダボス会議で、アジアの成長力を強調されていますが、
それが現実になるには、まだ時間がかかるというのが実感です。
この不況は、特にモノづくりの現場に強く現れているように思い
ます。流通業は、ある品物が売れなくなれば何とか売れるものを探
す努力をして、付加価値を上げ、生き残りを目指すことが可能かも
しれません。しかし、モノづくりの現場には生産設備がありますか
ら、簡単に転業はできません。好調な時は利益が上がりますが、注
文がなくなると利益は極端に減ってしまう、親会社の動向によって
はゼロになってしまうことさえ考えられるわけです。モノづくり企
業の難しいところでしょう。
もちろん輸出企業にとっても、円高が進行していますから(円高
だけでなく、世界不況で需要が落ちていることもありそうです)厳
しい状況です。モノづくり・輸出産業・・・これが日本の中心産業
と言っても言い過ぎではないのですから、日本全体が苦しくなって
しまったと言ってよいのでしょう。
不景気の波は、長野市にも当然押し寄せてきています。長野県の
スケールで見ると、中南信の不況は長野市より深刻なようです。そ
れは、モノづくり産業が圧倒的に多いからだと言われています(山
高ければ谷深し、ということかもしれません)。
そういう意味では、長野市はモノづくりが弱かったが故に、中南
信と比較すれば、今のところ不況の影響は少ないとも言えるのでし
ょう。
しかし、1月末になって、ある金融機関のトップが来庁され「長
野にも容易ならざる事態が起きている、企業にお金が無くなってき
ている、『New Money』を用意できないだろうか」との相
談がありました。金融機関のトップが乗り出してこられるというの
は、おそらく初めてだろうと思います。それだけ深刻であると、私
も認識しました。
今回提案する補正予算には、長野市として精一杯の景気対策(も
ちろん国の政策の応援もあってのことです)を盛り込んだつもりで
す。ただ、景気を良くするためには、市内のお金の回りを良くする
と同時に、広い意味での公共事業の拡大が一番効果があると思うの
ですが、これは、急には難しいということを理解していただきたい
と思います。
なぜなら、公共事業は、例えば道路一つとっても、その必要性の
検討・合意、地権者交渉、設計、入札など、工事開始前に十分な準
備をしないとならないのです。ましてや、これから建て直そうと考
えている市役所第一庁舎は、景気を考えれば一日も早く発注したい
のですが、おそらく、準備に2年ぐらいかかるのではないかと感じ
ています。
すなわち、準備が完了しているものしか発動できないが故に、新
年度予算で計画している事業を前倒しして、ここで補正予算に入れ
ることが精一杯ということになるわけです。
問題の定額給付金ですが、以前のメルマガでも書かせていただい
たとおり、政策の当否は別として、緊急事態にあるわけですから、
市民のためには一日も早く給付すべきです。故に、国会のねじれ現
象から実現にはまだ時間がかかりそうですが、可能になったらすぐ
給付できるように、準備のための予算を補正予算に組み込みました
(後で国が補てんしてくれるはずです)。
この給付金には、子育て応援特別手当もあって、長野市全体では
約61億円に上るとのことです(前に書いたときは、58億円余と
申し上げたかと思いますが、それは子育て応援分を含んでいない数
字でした)。
政府は、何をやっても、多分“ばらまき”と批判されるのですか
ら、こうなれば自信を持って、できるだけ早く市民の皆さんにお届
けできるようにしていただきたい。効果が無いなんてことは、絶対
に無いと思います。
この定額給付金について、一つお願いがあります。予算が執行さ
れましたら、遠慮なくお受け取りください。分かりづらい話で申し
訳ないのですが、これは市民お一人お一人に給付されるものですか
ら、もし、遠慮されて受け取らないという方が出ますと、その方の
分は長野市のものになるのではなく、国へ返金することになってし
まうのです。ですから、そんなお気持ちがある方は、受け取った上
で有効にお使いいただくか、長野市にご寄付いただければ(ふるさ
と納税制度もご利用いただけます。そのほか、福祉団体などでも結
構です)、それはそれでありがたいなあと思っています。
そのほか補正予算には、中小企業の資金繰りに対する応援分も含
んでいます。そして、補正予算の総額規模は、15億7,608万
円です。