2009年2月12日木曜日

広域行政の動き


 市町村がそれぞれ取り組んでいる事業のうち、幾つかの市町村が
共同して行う方が、より効率的だと考えられる事業については、以
前からかなり広く共同で実施しています。代表的な形態は、広域連
合、一部事務組合、市町村相互の委託・受託などです。その中でも、
新たに計画する事業、さらに拡大していこうとする事業もあります
し、役目が終わったということで、共同関係を解消していこうとい
う事業もあるのは、当然のことかと思います。

 農業共済も長野市を含む9市町村が共同で実施している事業です。
長野地区農業共済事務組合の再編については、以前(平成19年8
月)のメルマガで詳しくお知らせしたことがありましたが、1月
23日に最後の「再編整備協議会」が開催され、本年4月1日の北
信農業共済組合との統合に関するすべての準備が整いました。

 農業共済事務組合は、農家が受けた自然災害による損害を補償す
るために、法律で定められた保険制度を運営する組織で、農作物や
果樹などの共済事業を行っているいわゆる保険屋さんです。この組
織の運営基盤強化を図り、加入農家へのサービスを向上させるため、
平成19年から、中野市や飯山市など6市町村を区域とする北信農
業共済組合と統合するための協議を進めてきたのです。

 昨年8月21日、長野地区農業共済事務組合と北信農業共済組合
との「再編整備に関する覚書」の調印が行われました。しかし、そ
の後、北信農業共済組合の組合長である青木前中野市長が急逝され
るという悲しい出来事があり、その後が心配されたのですが、作業
は滞りなく進み、構成市町村の議会の議決も済みました。これによ
り、両組合の統合が確定し、あとは事務的な作業を残すのみです。
いよいよ4月1日からは、15市町村を区域とする新たな「北信農
業共済組合」がスタートします。

 なお、一部事務組合である長野地区農業共済事務組合では、建物
や農機具共済は扱うことができなかったことから、これまでは、
「長野地区任意共済推進協議会」という組織を別につくり、これら
の共済事業をしていました。今度は、新「北信農業共済組合」が直
接取り扱うことができるようになりますので、この協議会も3月
31日をもって解散することになります。

 次に消防広域化です。
 昨年10月、東北信地域の消防広域化研究協議会が設立され、私
は会長に選任されました。近年、災害や事故などは、複雑多様化し
ていることから、これに的確に対応できる消防体制の整備・確立が
求められています。そのため、平成18年6月に消防組織法が改正
され、全国で消防広域化の議論が進められているのです。

 長野県でも昨年1月に「長野県消防広域化推進計画」が策定され
ました。この計画では市町村消防のさらなる広域化の必要性を示す
とともに、広域の対象地域を県内全域とし、「東北信」と「中南信」
の2本部体制を推奨しています。

 しかしながら、消防広域化の枠組み、すなわち消防本部の規模に
ついて、長野市としては、消防活動上の適正な規模というものもあ
るのではなかろうかと考え、県内4本部体制を主張してきたところ
です。また、考え方としては県内1本部体制もあると思っています。

 市民の皆さんの中にも、広域化に対する懸念をお持ちの方もいら
っしゃると思います。
 この協議会の中には、幹事会や専門部会を設けており、調査研究
や他県の状況の視察も行っています。これらを通じて、消防の現状
や課題、将来見通しなどを検証するとともに、関係者でしっかり協
議し、この地域における、よりよい消防広域化の方策を見いだして
いくことが重要であると考えています。

 いずれにしても、市町村消防の使命・責務は、少子高齢化による
人口減少や厳しい財政状況の中でも、大規模災害や複雑多様化する
事象に的確に対応し、住民の生命、身体および財産を守ることです。
そのためには、消防体制の一層の充実・強化が必要であり、消防の
広域化は避けられないということでしょう。

 次は、広域連合の在り方です。
 このメルマガの冒頭で、広域行政の代表例として「広域連合」を
挙げましたが、この「広域連合」の在り方も、今後、変化していく
ことになりそうです。

 これまで国では、「広域行政圏施策」として、一定の圏域で市町
村をまとめた「広域行政圏」の形成を促進して、広域的な地域づく
りなどを進めようとしてきました。長野市が所属する長野広域連合
でも、この施策に基づいて基金を設置し、事業を行ってきたところ
です。
 しかし、昨年末、国からこれらの「広域行政圏施策」を廃止する
との連絡があり、今後は各市町村の事情に応じて行うこととなった
のです。

 長野広域連合で行っている事業には、特別養護老人ホームの運営、
介護保険の要介護度の認定審査、ごみ処理施設建設に向けての準備
作業など、各市町村が行うことを広域連合が引き受けて実施してい
る共同処理事務もあります。こちらは、今回の見直しと直接は関係
しませんが、今後、国の広域行政の進め方によっては、形を変える
ことになる可能性もありそうです。

 私とすれば、将来的には、連合長や連合議会の議員の一般選挙の
実施のほか、さまざまなコンピューターシステムの共同化、教育委
員会の共同設置など、事務共同化の流れをだんだん増やしていきた
い。そうすれば、いずれ市町村の大合併の機運が出てくるのではな
いか・・・そんなことを考えていたことも事実です。

 ただ、日本全体を見ると、広域連合システムは、必ずしもうまく
機能しているとは言えない状況だと聞いています。長野県がもっと
も進んでおり、うまくいっているが故に、市町村合併が進まないの
ではないか、との評もあったようです。
 ただ、広域連合の一番の欠点、というより制度的弱点は、全員賛
成が原則という点でしょう。何かをしようというときには、その都
度、構成市町村すべてが合意しないと進まないため、スピード感の
ある事業展開ができないのが実態なのです。

 国が従来の「広域行政圏施策」を廃止する理由には、市町村合併
の進展に伴い、広域行政圏の市町村数が著しく減少した圏域や、広
域行政機構を有しない圏域が広がった、ということなどがあるよう
です。担当の総務省では、「広域行政圏施策」が当初の役割を終え
たものと考え、この3月31日をもって要綱を廃止し、新たに、中
心市と周辺市町村が1対1で締結する協定に基づいて役割を分担し、
相互に連携する「定住自立圏構想」を推進するとのことです。

 この「定住自立圏構想」について、私としては、若干戸惑いがあ
ります。市長に就任した当時、何が何だか分からないままに、長野
広域連合の連合長に選出されて以来、私は一生懸命に努めてきたつ
もりです。確かに広域連合は、今のルールの下ではあまり有効では
ありませんが、改革していけば十分機能するし、効率化できる。市
町村合併となると、なかなか進まないから、広域連合を変形して連
邦都市をつくったらどうか、なんて構想をかつて申し上げたことも
あるくらいです。

 現在、長野広域連合が実施している事業は重要ですので、すぐに
やめることはできません。しかし、国が従来の広域行政の仕組みや
手法を見直してきていることは事実ですから、いずれにしても、今
後の長野広域連合の在り方については、何らかの改革が必要になる
でしょう。

た。