2009年7月23日木曜日

企業誘致フェア


 先週、7月15日(水)から17日(金)までの3日間、東京国
催されました。このフェアは、社団法人日本経営協会が主催してい
るもので、企業を誘致して地域活性化を進めたい地方自治体と、新
たな立地先を探している企業とのお見合いの場とも言えるイベント
です。昨年に続き、2回目の開催になります。

 長野市では、本市の最上位計画である第四次長野市総合計画で
「企業立地の推進」を重点施策に位置付けていることをはじめ、産
業振興部内に企業立地推進室を設けたり、「長野市産業集積・企業
誘致戦略」を策定したりするなど、積極的に企業立地を進めていま
す。そのような中でこのフェアは、長野市への企業立地をご検討い
ただくとても良い機会になりそうだということで、展示ブースを出
展して産業用地やオフィスビルの情報を発信するとともに、私も市
長としてプレゼンテーションをしてきました。

 長野市の製造業の現状について、少しご説明させていただきます。
従業員4人以上の事業所を対象とした「製造品出荷額等」の推移を
見ますと、ピークの平成9年が7,936億円だったのに対し、平
成16年には約半分の4,018億円まで落ち込んでしまいました。
その後は増加傾向に転じ、平成19年には4,903億円まで回復
しましたが、ピーク時と比較して3,033億円、率にして約38
%も落ち込んでいる状況なのです。
 また、従業者数も減少を続けており、出荷額などが持ち直した後
も経営の合理化などに伴い減少が続いている状況です。
 このような状況において、雇用の確保やまちに元気を呼び戻す効
果が期待できる「企業誘致」という政策は、市内の企業を応援する
政策と並んで、長野市にとって大変重要になっています。

 現在、企業へ分譲するために長野市がストックしている産業用の
用地は4区画です。ただ、これでは、スムーズな企業誘致はできま
せんので、川合新田の南部浄化センター跡地と南長池の三菱電機長
野工場の跡地を利用して、新たに産業用地を整備する計画です。
 また、中心市街地では、営業所の統合や撤退によって空室が目立
っているオフィスビルもありますので、ここへの企業誘致もしたい
と考えています。

 ただし、企業を誘致したいということは、事情はそれぞれでも全
国の地方都市に共通する思いであり、近年では自治体間の誘致合戦
が過熱している状況でもあるのです。このような中では、長野市の
魅力をいかにお伝えできるか、ということが大事になってくるので
しょう。7月15日に行ったプレゼンテーションでは、私もさまざ
まな思いを込めながら、最大限アピールさせていただきました。
 私が行ったプレゼンテーションは、おおむね以下のような内容で
す。

優れた交通アクセス
・東京までは、新幹線で1時間30分。北陸新幹線延伸により金沢
 までは1時間。長野市を拠点とした営業エリアがさらに拡大する。
・首都圏、中京圏へは複数の交通ルートがあり、災害時でも容易に
 支援体制が確保できる。
・新潟県上越市の直江津港までは車で1時間。中国・韓国との交易
 に優れている。

都市と自然が共生するまち
・上信越高原国立公園へは、長野駅から車で30分。ここには、飯
 綱高原や神話の舞台にもなる戸隠などがあり、都市機能と自然の
 安らぎが調和している。また、志賀高原や北アルプスも間近に望
 むなど、大自然の魅力に満ちあふれている。
・スポーツ、レジャー、癒やしなど、ワークライフバランスに優れ
 た環境にある。
・善光寺や真田十万石の城下町松代など、伝統・文化の宝庫。周辺
 には、「栗と北斎のまち小布施」や「蔵のまち須坂」、「名月の
 里 千曲」など、歴史や文化の薫るまちがある。

気候(過去30年の平均)
・年間平均気温は11.7度。夏場でも朝夕は涼しい。
・年間降水量は900ミリ前後。全国平均と比較すると半分程度で
 あるが、水源を数多く有しており、水不足の心配はない。
・冬場の最大積雪量は、平地で20センチメートル程度。迅速な除
 雪により、事業活動や日常生活への影響は少ない。

産・学・行の連携が活発
・市内には、長野市ものづくり支援センター、超微細な炭素繊維で
 あるカーボンナノチューブなどの研究成果が注目されている信州
 大学工学部、長野工業高等専門学校(長野高専)、県工業技術総
 合センターなど、産・学・行連携支援機関が集積している。
・長野市ものづくり支援センターには、「クリーンルームシステム」
 のほか、研究者が企業と連携しながら試験・研究・試作を行う
 「レンタルラボ」や産・学・行の交流をもたらす「交流ゾーン」
 などが整備されている。

コンベンション機能が充実
・約7,000人を収容できる宿泊能力、2万人を収容できるコン
 ベンション施設もあり、学会や国際会議などの開催が可能で、助
 成制度もある。

企業立地への支援体制
・研究開発や販路拡大に向けた情報提供を積極的に推進。
・立地後も、企業の求める情報の提供や技術支援などのフォローを
 積極的に実施。
・不動産関係者や金融機関などと連携し、産業用地整備やオフィス
 ビルの情報を発信。

さまざまな助成制度を用意
・工場用地の取得に対する助成
・固定資産税相当額の助成
・貸付特約付分譲制度
・事業用定期借地制度
・事業所税相当額の助成
・雇用創出企業立地支援助成金制度
・施設改修に関する助成

 以上のようなことをアピールさせていただきました。これを契機
に、多くの企業に長野市への立地をご検討いただけますと、うれし
く思います。

 話は変わりますが、今年は4年に一度の市長選挙の年です。長野
市選挙管理委員会では、10月18日告示、10月25日投開票と
いう日程を決定しています。
 私、鷲澤正一は、6月市議会で三選を目指して立候補するという
意思表明をさせていただきました。

 現職としての公務は11月の任期まで続くわけですが、選挙が近
くなるにつれ、候補者としての側面も強くなってきます。それ故に、
市の公の施設(道具)を使って、選挙運動だと誤解されるような行
動をとることは、当然、自粛すべきであると認識しています。
 公職選挙法では、選挙運動と政治活動を区別してはいるのですが、
どこで線を引くのか、必ずしも明確ではありません。しかし、現職
であるが故に、紛らわしいことは遠慮すべきということ、肝に銘じ
ているつもりです。

 従って、市役所のサーバーを使って配信している「かじとり通信」
は、休刊することにし、市役所とは別のホームページを立ち上げて、
私の考えを述べさせていただくことにしました。
 前回、すなわち、私の二期目の市長選の時も、同様の処置をした
と記憶しています。もちろん、このホームページでも選挙運動をす
るつもりはありません。過去と同じように、市政の課題について、
私の考えをきちんと述べさせていただくつもりです。

 この自主規制は、特に法的根拠があるわけではありません。報道
機関では、選挙前3カ月は候補者(その可能性のある方も含む)の
顔写真や記事などを出さないようにしているそうで、その例に倣っ
ているものです。投票日の10月25日の3カ月前と言えば7月
25日前後ということになりますので、今日が最終日ということに
なります。

 以上のように、来週からしばらくの間、私が執筆するメールマガ
ジン「かじとり通信」は休刊させていただくことにします。そのほ
かのコーナー「お知らせ&イベント情報」と「新着情報」は、従来
どおり配信させていただきますので、引き続きご覧いただければ幸
いです。

 なお、投票日以後の最初の木曜日は10月29日です。その時は、
当落に関係なく、私はまだ任期中ですので、再びメルマガを書かせ
ていただく予定です。

追記
 7月9日付けのメルマガ「底割れを防ぐ経済対策」の中でアメリ
カの経済政策は日本の政策を受け継いだ、という趣旨のことを書か
せていただきましたが、少し言葉が足りない面がありましたので、
補足させていただきます。
 民間会社に資本を注入したということは、大きな意味でアメリカ
も日本も同じなのですが、アメリカの場合は、ゼネラル・モーター
ズ(GM)の優良資産だけを引き継いだ新会社、新GMをつくり、
そこへ政府が資本注入したわけです。残された借金など、不良資産
の部分は旧GMに残され、資産売却などを行い清算するそうです。
しかし、これには、かなり大きな財政負担が見込まれるはずで、日
本の場合とはかなり違っています。

 メルマガの配信後、このことを十分に書かなかったことが気にな
っていたものですから、今回、付け加えさせていただきました。

2009年7月16日木曜日

長野市が提供する市民サービスについて


 市民サービスというと、行政が行う保育園や健康保険などを思い
出される方が多いと思いますが・・・私は、行政が行うすべての事
業が市民サービスだと思っています。
 長野市では、昨年、市が提供しているさまざまな市民サービスに
ついて、市民の皆さんからどのくらいの対価を頂くのが良いのか、
ということの考え方の原則を決めて発表しました。誤解のないよう
にお願いしますが、あくまでも考え方であって、新しい金額を決め
たわけではありません。

 市民サービスを提供する対価として、市民の皆さんからは税金を
頂いているのですが、そのほかにも、サービスの利用者には、税金
とは別に施設などの使用料や講座の受講料などの料金を負担してい
ただいています。
 しかし、ご負担いただいている料金の算定基準は必ずしも統一さ
れておらず、類似するサービスと比較して均衡の取れていないもの
もあり、このような状況に以前から疑問を感じていました。

 そこで、市の行政改革推進審議会に諮問して、サービス利用者に
ご負担いただく金額の考え方の原則をまとめていただきました。
 今後、料金を改定する場合には、この原則に基づいて慎重に検討
し、市民の皆さんからいろいろなご意見を頂いた上で最終的には市
長が決断して議会の了解を得る、そんな手順で実施することになり
ます。現在は、その手続きを開始した段階です。

 今回は、行政改革推進審議会の方々にまとめていただいた考え方
の原則について、私なりにお話しさせていただき、皆さんにご理解
いただきたいと考えています。

 まず、一般的なお話をさせていただきます。
 施設などのハードに関するものでも、診療や保育園運営などいわ
ゆるソフトに関するものでも、市がサービスを提供するために必要
な費用は、市民の皆さんから頂く税金や、サービス利用の際にお支
払いいただく料金などにより賄われています。
 可能であれば、別途、料金などを頂くことなく、税金のみでサー
ビスを提供したいのですが、現実には税金だけで賄うことはできま
せん。また、後で述べさせていただきますが、サービスを利用する、
利用しない、という公平性の観点からも、税金だけで賄うべきでは
ないとも思っています。

 仮に、税金だけで市民サービスすべてを賄おうとした場合には、
税金をもっと頂くか、提供するサービスを減らすことを考えざるを
得ないのです。ただ、これでは、サービスの低下どころか、行政が
成り立たないことは、誰が考えても明らかです。
 必要なサービスを維持していくためには、公平性の観点から見て
も、どうしても利用される方に使用料や受講料などの料金を負担し
ていただくことも必要になってしまいます。
 このことをご説明するために、まず、市が提供している市民サー
ビスを分析・分類してみました。

(1)国が基準を定めて、サービスの提供方法を決めているために、
  長野市として自由に料金を決めることができないものがありま
  す。典型的なものは義務教育で、これは無料です。料金を頂く
  サービスではありませんが、生活保護などもこの区分の中に入
  ります。
   一方で、例えば保育料のように、国が決めた基準があるもの
  の、実際には市が独自の予算を使って保護者の負担を軽減して
  いるようなものもあります。国民健康保険なども同じ区分に入
  るサービスです。

(2)国の補助を受けて整備した施設などで、無料でなくてはなら
  ないと国が規定しているものもあります。図書館、公園などは
  この区分に入るでしょうし、道路も有料道路としてつくったも
  の以外は、当然無料です。

(3)公営企業が提供している市民サービスというものもあります。
  長野市の場合、具体的には上下水道局が提供するサービスです。
  これは、行政が提供するサービスではありますが、企業と同様
  に原価計算をし、利益を見込んで料金を頂いてしっかり経営す
  る、そんなサービスです。

(4)市が独自に計画し、国や県に依頼して補助金を受けて提供す
  るサービスもあります(補助金を受けられない場合ももちろん
  ありますので、企業に協賛していただけるとありがたいのです
  が・・・)。補助金などの支援が受けられないサービスの典型
  は、スキー場や動物園の経営でしょう(今秋竣工(しゅんこう)
  予定のレッサーパンダ舎の改築には、地方交付税で支援しても
  らえる合併特例債の活用を考えていますが、運営経費への支援
  はありません)。支援が受けられるサービスには、冬の道路除
  雪などがあります。

(5)民間企業に代わって市が提供するサービスもあります。赤字
  などが理由で企業がやむなくサービスの提供をやめてしまう場
  合に、長年利用してきた方々の生活が成り立たなくなってしま
  うことから、行政として取り組まざるを得ないことがあります。
  その場合は、企業に赤字を補てんするための補助金を出したり、
  廃止代替として実質、行政直営でサービスを提供したりしなく
  てはなりません。赤字のバス路線などがその典型です。

(6)公益を追求するサービスと、私益的な利用に提供するサービ
  スということで考えてみますと、こんな考え方もあるでしょう。
  施設サービスの中では、例えば、スポーツ施設や会議場などは、
  私益的なサービスと言えるでしょう。ただ、これらを長野市が
  主催する事業で使用するときは、公益と言えると思いますし、
  市ではありませんが、学校行事や地域行事でお使いになるとき
  も公益的と言えることは当然です。

 市が提供するサービスには、いろいろな形態・考え方があること
がお分かりいただけたでしょうか。
 ただ、すべてのサービスについて言えることですが、お使いにな
るのは市民全員ではない、ということです。それぞれのサービスに
は、利用する(できる)人と、利用しない(できない)人が必ずい
ます。利用しない人の中にも、本当は利用したいけれど、何かの理
由(例えば、遠い、狭い、古いなど)で使えない、使わない、とい
う人もたくさんいるわけです。全市民が同一に利用するというサー
ビスは、実はあまり多くないと言えるのです。
 従って、市が提供するサービスをすべて無料にするということは、
利用しない(できない)人からみれば不公平だということになるで
しょう。無料ということは、すなわち、すべて税金で賄われている
わけですから・・・。

 ただ、利用の有無にかかわらず、消防や救急、義務教育、地区の
公園など、本来、市民の皆さん誰もが利用できるよう、税金で賄っ
て提供すべきサービスもあるわけです。今回は、このような本来行
政が提供すべき公益性が高いものを除いたサービスについて、利用
者負担の割合に関する考え方の原則をまとめたということです。
 言い換えますと、今回、この考え方の原則をまとめ、利用者とし
て応分のご負担をお願いすることは、税負担、すなわち市民全体の
負担を減らすことにつながる、ということをご理解いただきたいと
思います。

 次に、市民の皆さんが一番気にされていると思われる、ご負担い
ただく金額を具体的にどう決めるべきか、という点についてです。
 まず、市が提供するサービスに対して応分のご負担をお願いする
ためには、サービス提供に要するコスト(原価)を明らかにするこ
とが必要ですし、そのコストの算定もある程度統一的な方法で算出
する必要があります(統一的といっても、例えば個々の施設は全部
違いますから、個別に妥当性のある検討が必要なことは当然です)。

 長野市民会館のコストを例にして考えてみましょう。
 まず、基礎的なコストとして、施設をつくるための建設費、用地
費があります。この費用から、施設の耐用年数に基づいて算出した
額を、減価償却に相当するコストとして考えることもできます。た
だし、長野市民会館建設のための借入金返済は終わっていますし、
昭和36年の建設から約50年間使用しているということもあり、
現在のコストとしては、施設建設費用はゼロだと考えても良いでし
ょう。

 このほかのコストには、施設維持や運営に掛かる費用があります。
これらの費用には、人件費をはじめ、保守点検費、修繕費、清掃費、
そして電気・上下水道といった光熱費などがあり、毎年掛かる費用
です。特に光熱費や修繕費などは、施設が古いが故に効率があまり
良くはなく、割高になっていることも事実です。

 また、役務提供費も掛かります。例えば講演会や講座を開催する
と、講師料や謝金、消耗品費などが必要になります。そのほか、全
体を管理する部門の費用も掛かります。

 このような費用を合計し、サービス提供に要するコストを算出す
る予定です。併せて、税金以外にご負担いただくべき金額をお示し
していきたいと考えています。
 ただ、市が提供するサービスの内容は、大変多岐にわたっている
こと、内容・性質によって利用する人も異なることから、利用者の
負担と税による負担を一律にすることも現実的ではありません。サ
ービスを大まかな類型に分けて、類型ごとに利用者負担の割合を決
めることが、一番合理的なのでしょう。

 以上が、市民サービスの利用者に負担していただく費用に対する
基本的な考え方です。この考え方に基づいて、負担していただく金
額を再検討してみますと、これまでどおり無料のままや低料金で提
供すべきであるというサービスも多いのですが、安すぎるのではな
いかというサービスも結構あるのです。
 市民の皆さんにご負担いただく金額のことですから、当然、さま
ざまな配慮が必要になることは言うまでもありませんが、公平性と
いうことを視点に、市民の皆さん全体の負担を減らしたいというこ
とを考えますと、何とかしなくてはいけないのではないか・・・、
そんな思いも強くしています。

 行政改革推進審議会でまとめていただいた内容は、長野市のホー
ムページにすべて公開しています。今回書かせていただいた原理原
則の詳細は、こちらをご覧いただければ幸いです。

2009年7月9日木曜日

底割れを防ぐ経済対策


 昨年6月、少しおこがましいかなと思いながら3回にわたって
「お金をおもちゃにした“つけ”」というテーマでメルマガを書か
せていただきました。
 私は、経済の専門家でも評論家でもありません。ただ、どう考え
てもおかしい、こんなことが許されて良いはずがないと考えて、サ
ブプライムローン問題について勉強をして書かせていただいたのが
このメルマガです。

 その後、9月になっていわゆる「リーマン・ショック」が襲い、
世界の経済は一挙に大混乱に陥りました。そして、今年に入ってか
ら、ビッグスリーと言われるアメリカの自動車メーカーのうち、ク
ライスラー、ゼネラル・モーターズ(GM)という世界最大級の企
業が相次いで実質倒産するという、今までの常識では考えられない、
とんでもない事態に発展してしまいました。

 日本では、小泉・竹中改革の良い部分が効いてきたおかげで、金
融機関は何とか健全性を保っているように感じています。国による
資本注入という、非常時なので許されたのであろう政策でこれまで
何とかしのいできたということでしょう。
 そして、その政策がアメリカ政府の政策に受け継がれ、膨大な株
式の保有という資本注入によって、GMは国有化されたと言って良
いと思います。

 日本の資本注入は金融機関だけかと思っていたのですが、今年の
4月からは、改正された産業活力再生特別措置法によって金融分野
以外の企業にも許されることになりました。具体的には、エルピー
ダメモリという半導体大手企業への資本注入が決定したようです。
あの日立製作所にも・・・という報道もあったように記憶していま
す。

 このように、国による資本注入という手段が非常時には有効だ、
ということが証明された格好です。ただ、こんなことが長続きした
らどのような社会が生まれるのでしょうか。私には、見当も付きま
せんが、国営企業のまん延は、すなわち、自由な経済活動に行政が
介入するということで、資本主義社会を終えんに向かわせるかもし
れないのです。
 市場原理主義を信奉しているアメリカですら、国が資本注入せざ
るを得なかったように、今回のサブプライムローン問題の影響の恐
ろしさは、計り知れないものがあると感じています。

 アメリカでは、注入した資本はできるだけ早く回収する、つまり、
いったん保有した株式を売ってしまうことで、国は手を引く段取り
を模索する、という話のようです。しかし、そんなにうまく株式が
売れるのでしょうか。それだけの投資家がいるかどうかということ
でしょう。
 ただ、資本注入とか株式保有というのは、補助金とは違い、うま
くいけば返ってくるお金だと言えます。これは、一時的に企業の信
用力を補完し、資金繰りを助け、そして企業を再生させることが目
的ですから、再生した企業が再び利益を上げられるようになれば、
お金はいずれ返してもらえることが期待できるわけです。つまり、
“支出はしても無くならないはずのお金”、とも言えるわけです。

 日本の場合、以前、国が金融機関へ注入した資本は、健全化を達
成したところから徐々に返済されているようです。そして、日本の
金融システムも回復してきているようですから、現在のところは成
功だったと言えるのでしょう。

 さて、日本経済の状況ですが、昨年の秋以来、どこも不況、不況
の大合唱で、好況だという業界はあまり無いようです。国は、
100年に一度の経済危機ということで、いろいろな経済対策を打
ち出してきました。それを受け、長野市としても一生懸命、経済対
策に取り組んでおり、関係する補正予算額は88億2,000万円
余りにもなりました。
 長野市が実施してきた主な経済対策は次のとおりです。

(1)定額給付金、子育て応援特別手当
  究極のバラマキ政策と言われましたが、6月末現在で、対象者
 のうち「定額給付金」は約92%、「子育て応援特別手当」は約
 95%の方々に受け取っていただきました。
  まだ「定額給付金」を受け取っていらっしゃらない方には、今
 月中に再度、申請書をお送りすることにしています。また、一人
 暮らしのお年寄りの方などには、民生児童委員さんからも申請の
 呼び掛けをしていただくようお願いしています。
  この二つの給付金の申請締め切りは、10月15日です。何と
 か対象者全員にお受け取りいただきたいと思っています。

(2)中小企業への支援
  中小企業向け融資制度では、新規貸付利率引き下げ、貸付限度
 額拡大、借換時の返済期間延長などを実施しました。平成20年
 度の融資実績は、1,908件、185億6,000万円余りに
 上っています。また、信用保証協会の100%保証が別枠で受け
 られる緊急保証制度は、制度が開始された昨年10月末から4カ
 月間で1,178件もの利用がありました。これらは、企業の資
 金繰りを助け、景気の底割れを防ぐ意味でとても有効だったと思
 っています。
  また、市独自の政策として、7月1日から3年間、資本金
 1,000万円以下の中小企業などを対象に法人市民税均等割の
 税率を標準税率に引き下げることにしました。1企業当たり年1
 万円~2万4,000円の減税になります。

(3)雇用を増やす政策
  国の政策により県が創設した雇用対策のための基金を活用し、
 予定も含め、市として280人分の新たな雇用を創出しています。
  また、介護保険施設などで働く人の待遇を改善し、介護現場の
 人材不足解消と雇用増加を図るため、国は介護報酬を3%アップ
 しました。市では、このことが、皆さんから頂く介護保険料の値
 上げにつながることを抑制するため、国からの交付金で基金を創
 設し、現在の保険料を平成23年度まで維持することにしていま
 す。

(4)公共事業の前倒し
  国の経済対策を受けて、平成21年度以降に予定していた事業
 を前倒しして実施しました(小・中学校の校舎・屋内運動場の耐
 震補強や改築工事、緊急性や優先度の高い道路や排水路、河川の
 改修、防災工事、地上デジタル放送完全移行に備えた小・中学校
 や市立公民館へのデジタル対応テレビの配備など)。

(5)プレミアム付き商品券「ながの“きらめき”商品券」の発行
  長野市独自の対策として、10%のプレミアムを付けた商品券
 を5億5,000万円分発行しました。市内に少しでも多くのお
 金が回って景気を刺激したいということで発行したのですが、幸
 いにも大変な人気で、2日間で売り切れてしまいました。お買い
 上げいただいた方は、ぜひ、有効期限の8月末までに使い切って
 いただきたいと思います。

 以上、これまでに国や県、そして市が取り組んできた主な経済刺
激策を書き出してみましたが、新年度になり、国では、さらに総額
13兆9,200億円余りの大型補正予算を組んでいます。これま
での補正予算が、主に緊急的な施策だったのに比べ、今回はやや長
期にわたる施策がプログラム化されていると言って良いようです。
 このうち、地方へは、総額1兆4,000億円の「公共投資臨時
交付金」と総額1兆円の「経済危機対策臨時交付金」が配分される
ことになっています。長野市への配分は、これまでに決定した分だ
けでも15億円余りです。これらを最大限利用して地域経済のさら
なる活性化に取り組むため、先日6月市議会定例会が終わったばか
りですが、7月17日に市議会臨時会を開催し、長野市としての新
たな補正予算を決定したいと思っています。

 さらに、国が来年度予算に向けてのシーリングを決めたという報
道もありました。シーリングとは、予算編成に向けて各省庁の要求
枠が無制限に大きくならないよう、あらかじめ限度額を設けること
です。来年度予算のシーリングでは、従来とは違って制限枠をかな
り緩めたようです。来年度も景気拡大型の予算を組むという姿勢の
表れでしょう。

 これだけの景気刺激策を行っていますので、景気が良くならない
はずは無いと考えていたのですが、最近になり、景気が上昇してき
たという新聞記事もようやく見られるようになってきました。
 もっとも、マクロとミクロの経済では、かなりずれがあるはずで
すし、時期、業種、地域などによってもずれるのは当然ですから、
景気が回復した部分と、まだまだという部分があることは避けられ
ないとは感じています。
 ただ、このまま景気が回復したとしても、今までと同じような経
済状況には戻らないと思っています。危機を乗り越えた新しい時代
にふさわしい、新たな経済社会が生まれてくるのでしょう。

2009年7月2日木曜日

長野市の上下水道事業(2)


 今回は、長野市の上水道事業の統合についてご報告します。
 長野市営の水道事業は、昨年度4つに統合(上水道事業、戸隠簡
易水道事業、鬼無里簡易水道事業、大岡簡易水道事業)するまでは、
14もの事業(上水道1、簡易水道事業10、飲料水供給施設1、
簡易給水施設2)があったのです。

 なぜ、14もの水道事業があったかと言いますと、平成17年に
合併した際に、それぞれの旧町村が運営していた簡易水道など13
事業を引き継いだことに原因があります。
 合併と同時に一元化すれば良かった、と言ってしまえばそれまで
なのですが、公営企業(上下水道局)で運営している長野市の財産
管理の方法や基準と、旧町村営での基準が一致しなかったことから、
それができなかったのです。
 そのため、これらの事業をいったん環境部で引き継ぎ、公営企業
の基準に合わせるための準備を進めてきました。このたび、それが
整ったことで、統合できることになったのです。

 なお、平成17年の合併を経験して、私も初めて知ったことなの
ですが、同じ水道でも水道法という法律によっていろいろな区別が
あるのです。いずれも水源から取水し、水道管を通じて各戸へ給水
するという仕組みは同じですが、以下のような区分になっています。
(1)上水道(給水人口が5,001人以上)
(2)簡易水道(給水人口が101人から5,000人まで)
(3)飲料水供給施設(給水人口が50人から100人まで)
(4)簡易給水施設(給水人口が20人から49人まで)
 このうち、「飲料水供給施設」と「簡易給水施設」というのは、
水道法による水道に当たらないそうで、保健所において「要綱」を
定め、指導を行っているというものです。

 合併まで十分に意識していなかったことで、もう一つ驚いたこと
があります。それは、水道事業には、行政ではなく、地区や住民の
皆さんによる組合が運営している民営の施設があることで、市内に
は27もあるのです。いずれも飲料水供給施設や簡易給水施設など
の小規模施設が多いのですが、戸隠地区の中社区のように簡易水道
を運営しているところもあります(これらの事業は、地区特有のも
のですから、料金体系は地区ごとに違っているでしょうし、維持管
理経費も当然地区の負担のはずです)。

 ただ、合併旧町村ばかりでなく、篠ノ井、川中島、更北地区にも
数多く存在しています。これは、この地域の県営水道の給水開始が
昭和41年からと遅かったことで、それ以前に集落ごとに整備した
施設が現在も使われている、ということのようです。

 4月から上下水道局で担当することになった市営の4つの水道事
業ですが、今後、導水管の新設などにより水源や浄水場の統廃合な
どを進め、平成28年度末までにすべて上水道事業に一本化するこ
とにしています(前述の通り、民営のものは別です)。

 ただ、それでも県営水道の問題は残ります。篠ノ井、川中島、更
北地区と信更地区の一部は、市営水道ではなく、県営水道の供給区
域なのです(この県営水道は、長野市南部地域だけでなく、千曲川
流域の千曲市、坂城町、上田市の一部にも供給しています)。
 従って、料金体系も市営水道とは違いますので、市民の平等とい
う観点からは問題が残ります(ただし、県営水道の給水地域でも下
水道は長野市の事業ですから、こちらは同料金です)。
 この点について、県では水道の広域化を計画しているようです。
将来は県営水道と長野市上下水道局が合併することになるかもしれ
ません。

 もう一つの問題は「おいしい水」の問題です。最近、ペットボト
ルに入った水を買ってお飲みになる方も多いと思います。ちなみに
あの水は、1本当たりに換算してみますと、水道水の約1,100
倍もの値段になるそうです。上下水道局としては、せっかくの需要
を取られてしまっているわけですから、飲料水を供給する義務があ
る同局にとってこの水は、大変な強敵だと言えます。上下水道局の
売り上げが下がっている原因の一つと申し上げても良いでしょう。

 数年前から、当時の水道局には、「もっと水道水を飲んでいただ
けるような政策をとるべきだ。私の経験から言えば、東京の水道水
はまずいけれど、長野の水はおいしい。十分太刀打ちできるだろう」
と私は主張してきたのですが・・・。
 このメルマガを書くに当たって、上下水道事業管理者から話を聞
いたのですが、「市長の経験はもう古い。現在の東京の水はおいし
い。東京都は大きな投資をして、高度浄水処理(オゾン処理、活性
炭処理、膜ろ過処理)という処理をして、異臭味などのない水をつ
くっており、昔とは違う。それと、水は冷やして飲めばおいしい」
とのことでした。「じゃあ、長野市でもその高度浄水処理を取り入
れよう」と言ったのですが、ばく大なお金が掛かるようです。

 実は、年々水道水の需要が減ってきており、公営企業が行う水道
事業の採算性が悪化しつつあることも問題なのです。人口減少の時
代、節水機器の普及、前述のペットボトル入りの水、企業や団体の
地下水利用・・・地球環境を考えた場合、節水は良いことではある
のですが、上下水道局の経営を考えると頭が痛いことでもあるわけ
です。将来、水道料金の見直しが必要になるのかもしれません。

 また、いずれは公営企業という経営形態の問題も議論になりそう
です。実質的には市の直営なのですが、公営企業ということで、企
業と同じように収入と支出をきちんと計算し、採算を取らなくては
なりません。これは当然です。
 ただ、公営企業の採算のとらえ方には、これまでずっと疑問を感
じてきました。公営企業では、資産形成のため、企業債という借金
をすることがあります。ところがその借金は、資本に組み入れるこ
とになっているのです。もちろん借金ですから返済はしていくので
すが、本来的には負債として計上すべき性質のものであり、資本を
返済するというのは、どうも私の感覚からは理解できないのです。

 先ごろ総務省では、公営企業の会計基準の見直しを打ち出しまし
た。具体的にどのように変更されるかは、まだ分かりませんが、少
なくても資本や負債のとらえ方は一般企業と同様にしてもらいたい
と思っています。
 この見直しにより、公営企業独特の会計基準が改正できるとすれ
ば、外部資金を導入することも考えられるようになるかもしれませ
ん。将来的には、公社などの独立法人化、あるいは、もう一歩進め
て株式会社化して株式を上場する、なんてことが起こる可能性もあ
るのかなと感じています。

 すなわち、外部から資本出資をしていただき、公営企業から別の
法人形態に移行することで経営を安定させる、ということも将来の
問題として考えておく時期なのかもしれません。