このたび、市民の皆さまの信託を受け、もう一度、長野市政のか
じ取りを担わせていただくことになりました。向こう4年間、一生
懸命に努めます。よろしくお願いします。
このメルマガの配信は、約3カ月ぶりです。現職であるが故に、
市のサーバーを使って情報発信するのは公平性を欠くとのことで自
粛してきたものです。
ただし、私の後援会のホームページには、マニフェストとともに
私のブログを載せてきました。そのほか、インターネット上では反
鷲澤陣営のブログなどもありましたので、大変にぎやかでした。
そういえば、私の後援会の事務所開きに当たって、関係者の皆さ
んに私からお願いしたことがあります。それは、“選挙運動は楽し
くやろう”ということと、“絶対に悪口は言わないでほしい”とい
うことです。
悪口というのは、相手候補に対しては当然ですが、こちらの事務
所内でも、互いの批判めいたことは言わないでほしい、みんな仕事
を持っていて忙しい、政治や選挙の活動より仕事が優先、当たり前
です。これらは守られたように感じています。
選挙期間中、私自身も枝葉末節にはこだわらない姿勢を貫いたつ
もりです。相手候補への反論も広い意味では悪口になると考え、極
力自制してきました(いささかストレスがたまりましたが・・・)。
他方、これは当然ですが、相手候補は、これまでの私の市政運営
に対して異議があるからこそ立候補されたわけですから、私に対し
てはさまざまなご意見を頂くことになりました。ただ、印象として
は、具体性に欠けることがほとんどだったとも思っています。
しかし、その大きさも痛感しているところであり、改めて、責任
の重さに身が引き締まる思いです。さまざまな危機が迫る嵐の時代、
これまでの2期8年間の私の経験を生かさせていただきたい、今後
4年間、元気いっぱい頑張り、長野市のために身をささげていく決
意でいます。
今後4年間で私が実現を目指す政策は、「政策マニフェスト20
09」で発表させていただきました。ぜひお読みいただきたいので
すが、長すぎて全部をきちんと読んでいただけないようにも感じ、
ダイジェスト版もいろいろな形で発表させていただいてきました。
ここで改めてその概要を申し上げさせていただきます。
ということを据えています。そして、市民の皆さまの生活を護(ま
も)ることをすべての基本に、まずは、住民自治協議会を中心に市
民の皆さまの力をお借りして、コミュニティーの再生を目指したい
と考えています。
また、従来から申し上げてきた私の市政運営にあたっての5原則、
すなわち、
(1)入りを量りて、出ずるを為す
(2)市民とのパートナーシップ
(3)簡素で分かりやすい市政運営
(4)民間活力の導入
(5)「無私・利他」の精神
これらについても、これまでどおり貫き通していきます。
その上で、
(1)「少子化対策」として、子育ち・子育て環境の充実を図るこ
と。
(2)高齢者や障害を持つ方が安心して健やかに暮らせる社会を維
持していくために、「福祉・健康」の視点から暮らしのセーフ
ティーネットの充実を図ること。
(3)個性を尊重した教育は、一人一人が人間らしく、自分らしく
生きていくための基本であり、人材育成のためにも教育環境の
充実を図ること。
(4)地方分権の流れの中、自立・自尊の都市経営を目指すために、
産業の強化・育成および雇用と税収の確保を図ること。
(5)世界に誇れる「カーボンニュートラルシティ・ナガノ」の実
現に向けて、すべての政策に「環境」の屋根を架けること。
これらの実現を目指していきます。
さらに、より具体的な約束として、以下の17項目も挙げさせて
いただきました。
約束1 行財政改革の継続と健全財政の維持
約束2 住民自治協議会への全面的支援
約束3 子育ち・子育て環境の充実
約束4 「1200万人観光交流推進プラン」の継続実施
約束5 新たな文化・芸術の発信都市への提案
約束6 雇用機会の創出
約束7 バイオマス資源の活用とエコビジネス創出の支援
約束8 再生可能エネルギーの積極的な活用
約束9 ワンストップサービスを備えたエコ庁舎の実現
約束10 指定管理者により提供されるサービスの向上
約束11 高齢者の皆さんの“元気”を応援
約束12 長野市の玄関である長野駅前広場の整備
約束13 活き活き(いきいき)とした中山間地域の維持
約束14 公共交通システムの維持
約束15 地産地消の推進と農業振興
約束16 農を楽しむ大規模市民菜園の整備
約束17 学校施設耐震化の推進
これらのことを実現していくことを通して、今後も引き続き、明
るく確かな未来に向けて健全財政を維持し、魅力あふれ、誰もが安
心して暮らせる元気なまちにしていきたいと思っています。
なお、選挙期間中にも訴えてきたことですが、
(1)集落機能が低下してきている中山間地域を産業振興や魅力を
生かして活性化すること
(2)利用者の減少に歯止めがかからず、民間事業者の経営努力に
も限界がある中、将来にわたり持続可能な交通システムを再構
築すること
この2点については、喫緊の最重要課題だと思っています。全力を
挙げていきますが、いずれもなかなか決め手がない課題です。“み
んなの声が「ながの」をつくる”を基本姿勢に、市民の皆さまと知
恵を出し合いながら解決策を見いだしていきたいと思っています。
どうぞよろしくお願いします。
2009年10月29日木曜日
みんなの声が「ながの」をつくる
2009年10月16日金曜日
都市内分権と住民自治協議会
平成18年度を都市内分権元年と宣言し、国の地方分権の流れの中、
長野市版の地方分権を実現する施策の展開を始めました。
「地方分権」が大切だということは、どなたに聞いても異論はあり
ません。ただ、具体論と国の姿勢があまりはっきりしない、そう感
じる中でのスタートでした。
私は、市長就任後、各支所の状況を確認したり、市民の皆さんのご
不満をお聞きしたりする中で、これまでの行政システムが限界にき
ているのではないか・・・と強く感じるようになりました。
これまでは、公平性・公正性という観点から市内一律の施策を行っ
てきており、地区ごとに異なる施策を行うことはあまりありません
でした。しかし、地区ごとに住民の皆さんの年齢構成や地区の立地
条件などは、当然異なっています。すなわち、画一的な施策だけで
は、地区の住民ニーズや特性に細かく対応することができず、暮ら
しやすい地域づくりができないのではないか、という思いを強くし
たのです。
地区の実情を十分に尊重して施策を展開することができないか、そ
の後庁内でいろいろ議論した中で出てきたのが「都市内分権」の考
え方です。住民の皆さんに市内30地区ごとの「住民自治協議会」
をつくっていただき、住民自治協議会と行政が「協働と創意工夫」
で、より住みやすい地域を実現していこうという考え方です。
住民自治協議会の設立にあたっては、「地区を代表する」「計画性
を持つ」「適切な役割分担で運営する」、この三原則だけは満たし
ていただきたいとお願いしてきました。この三原則以外については、
“地域のことは地域で決める”ということを基本にして、すべて地
域で決めていただいて構わないということも申し上げてきました。
市内30地区すべてで住民自治協議会を設立していただくことがで
きたのは、今年の3月末です。その後、4月20日には、住民自治
協議会と市の協働関係を明確にするために、条例に基づいた基本協
定も締結させていただきました。
来年度からは、「地域の自治の仕組み」「活動の内容」「お金の使
い道」を地域住民の皆さんが決定する住民自治協議会の本格的な活
動が始まることになります。
(1)「地域自治の仕組みを決める」
これまでは、交通安全や青少年の健全育成、環境美化など、課題ご
とに役員を選出していただき、市長が役員として委嘱するとともに、
各地区で課題ごとの団体を組織していただくことで、地域の活動が
進められていました。また、地区ごとの組織の上部組織として、課
題ごとに市全体の連合組織も設けられていました。いわば、縦割り
組織での活動だったと言えます。
来年度からは、市長委嘱制度と各種団体の連合組織は廃止する予定
です。このことによって各種団体の活動は、各地区で仕組みを決め
た住民自治協議会の部会としての活動になり、縦割り組織から横軸
を通した組織に再編されることになります。
(2)「活動内容を決める」
これまでは、市が主導して活動内容を決めていましたから、市から
の依頼事務が多く地区の活動も硬直しがちで、住民の皆さんにとっ
ては多分にやらされ感があったのではないでしょうか。また、地区
によっては、役員の選出にも困難が伴っていました。
来年度からは、市が地区へお願いしていた依頼事務を大幅に減らす
ことにしています。具体的には、これまでお願いしていた68項目
の事務のうち、5項目を廃止し、41項目を必要に応じて地区に選
んで実施していただく「選択事務」にしたいと考えています。その
結果、今後も30地区に共通して市から依頼する「必須事務」は、
22項目になります。
そのほか、地区独自の課題にも発展的に取組んでいただきたいと思
っています。地域の特性・実情に応じた活動が盛んになってほしい
と考えています。
(3)「お金の使い道を決める」
今までは、各種団体ごとに市が補助金や交付金などを交付していま
した。
来年度からは、これらの補助金や交付金を一つにまとめ、「地域い
きいき運営交付金」として住民自治協議会へ一括交付したいと考え
ています。総額は、2億4,400万円余りで、1地区あたり約
260万円から2,000万円になる見込みです。
この交付金は、できるだけ使い道を限定せず、住民自治協議会が柔
軟に運用できるようにして、住民の皆さんの意向を反映した活動が
しやすくなるようにしたいと考えています。
そのほかにも財政支援策を考えています。
一つは、「地域やる気支援補助金」です。これは、より一層の活動
を望む地区への支援を目的に、住民自治協議会から事業提案を受け、
審査をした上で交付したいと考えています。
提案の審査は、市が行うのではなく、NPOなどを対象に交付している
「ながのまちづくり活動支援事業補助金」と同様に、学識経験者な
ど第三者に審査していただく予定です。現在のところ、1地区あた
りの限度額100万円、総額1,000万円を見込んでいます。
もう一つは、「やまざと支援交付金」です。これは、過疎化により
人手不足に悩む中山間地域の自治活動を支援するために交付したい
と考えています。中山間地域特有の課題を解決するとともに地域の
共助機能の拡大を促進する一助として、1地区あたり60万円を、
中山間地域を含む11地区の住民自治協議会へ交付するものです。
いずれの支援策も、年度中に詳細を詰めて来年度予算案に盛り込み、
市議会にお諮りしたいと考えています。
そのほか、住民自治協議会への人的支援策の一つとして、中山間地
域の11地区を対象に、今年度から「地域活性化アドバイザー」を
配置しています。地域活性化アドバイザーは、活性化対策や集落支
援など、各地域の特性に応じて「地域にとって何が必要なのか、何
をしていけば良いのか」を住民自治協議会と一体となって考え、具
体的な活動を通して支援できる立場として配置したものです。
これらの支援を通じて住民自治協議会の活動が軌道に乗り、地域課
題がより解決しやすくなり、これまで以上に暮らしやすい地域が実
現できれば良いと思っています。
ただ、これまで足掛け8年を費やして都市内分権を進めてきたわけ
ですが、まだ完全に詰め切れていない部分も多くあると思っていま
す。新たな取り組みですので、今後もさまざまな試行錯誤があるこ
とを前提に、十分な話し合いを継続し、改めるべきことは改めてい
きたいと考えています。
ここで一つお詫びしなければいけないことがあります。それは、区
長さんへの委嘱の取り扱いについて混乱を招いてしまっているとい
うことです。
市内には460人の区長さんがいらっしゃいます。460人すべて
の区長さんは、二つの立場を合わせ持っています。一つは、区の住
民の皆さんの立場で活動する区や自治会の代表という立場。もう一
つは、市長の委嘱により市の行政事務の一部を行っていただくとい
う立場です。
区長さん方には、この二つの立場で日々活動していただき、地域を
支えていただいているわけですが、区長さんの中からは、仕事が多
すぎて困る、ご高齢の方が多くなり区長のなり手がいない・・・な
どの声も聞こえてきていました。
今回、市が都市内分権推進の一環として、区長さんの立場のうちの
一つ、“市長の委嘱”という立場を発展的に解消することにしてい
ます。このことが、区長制度そのもの廃止と混同されてしまってい
る向きがあるようです。
私とすれば、区長さんの負担を軽減したい、区長さんと対等な立場
で地域のまちづくりを進めていきたい、との気持ちから区長委嘱を
発展的に解消するのであって、決して区長制度そのものをなくそう
としているのではありません。
このような誤解が生じてしまったのは、これまで都市内分権を進め
てくるにあたり、区長さん方のお気持ちや、区長さん方のこれまで
のご尽力に対する配慮が足りなかった面もあったのではないかと反
省しています。
区長さん方には、今後も住民自治協議会の中核として活動いただく
とともに、それぞれの区や自治会の代表者として地域を引っ張って
いっていただかなくてはならないと考えています。また、日々地域
を支えてきていただいている区長さん無しには地域はまとまらず、
住民自治も成り立たないとも考えています。そして、区長さんのリ
ーダーシップ、地域を思う気持ちが活かされる仕組みでなければ、
新たに設立された住民自治協議会の運営も難しい面が生じてくるの
ではないかと感じています。
今後の区長制度のあり方については、さらに区長さん方のご意見を
お聞きし、十分な検討を経た後に結論を出す必要があると考えてい
ます。
2009年10月16日
2009年10月9日金曜日
行政改革について
市町村の行政改革は、時代の大きな要請です。
「小さな市役所であるべき」ということと、「充実した市民サービ
ス」をすべしということ。これは一見、矛盾したテーマに見えます
が、やらなくてはならないことと認識しています。言い換えれば
「行政コストを減らし、費用対効果を上げる」ということです。
全くの私見ですが、私の考えていることを、二つの面からお話しま
す。
まず、組織や人について、どのように考えるべきか、ということで
す。
問題点と思われることをアトランダムに羅列してみますと、職員数、
人件費、定年制、正規職員と非正規職員、成果主義と年功序列主義、
人間の能力・人間性・思想、職種の違い、職制、タテ割り組織・・
・もっとありそうですが、考えるべきことはこのようにたくさんあ
ります。
もう一つは、行政が行う事務事業についてどう考えるかということ
です。基本は「無駄を排する」ということでしょう。
しかし、事業の妥当性、費用対効果、理想論と現実の狭間、市民の
要望、国・県との法律を含んだ関係、自治体の可能性と限界・・・
さまざまな視点があります。地方分権がどこまで進むか、というこ
とも大事な要素ですが、これは、国の政策に大きく左右されそうで
す。
いずれも難しい、考えれば考えるほど迷い道であり、矛盾をはらん
だような話です。だからこそ、考え続けなければならない課題であ
るとも言えます。
私は、行政改革は日常的に取り組むべきテーマだと捉えています。
組織は常に肥大化する癖がありますし、無駄を廃止していくことも
当たり前です。でも、何が無駄なのでしょうか。それを判断するに
は、定期的に仕事を精査して何が必要かを見極めなければいけませ
んし、組織はこのままで良いのか、という視点で見直すことも重要
になります。
具体的には、現在実施している仕事を評価して、
・拡大すべきか
・そのまま続けるべきか
・改善すべきか
・縮小すべきか
・やめるべきか
ということを判断していかなければなりません。
さらに、これから手をつけようとしている新規事業についても、
・目的・趣旨は時代の流れにあっているか
・どのくらい費用がかかるか、それに耐えうる手立ては大丈夫か
・市民の目線に立って考えているか
・本当に必要なことか
・もっと良い事業のやり方がないか
・事業を進めるための組織をどうするか
といったことを事前に判断し、実施することになります。
行政改革の代表的な問題として、ここでは、職員給料について考え
ていることをお話しします。
一般職公務員は、労働三権のうち、スト権を停止されています。そ
の代償として、人事院勧告が行われることになっているのです。
長野市も基本的には、人事院勧告を尊重しています。ただ、考え方
が変わり、国の人事院勧告はあくまで国家公務員に関するもので、
地方公務員の給料の決定は自治事務とされ、地方独自に決められる
ということです。
しかし、地方で決めるには、県や市町村がそれぞれ人事委員会を設
置して、その地域の賃金水準を細かく調べて勧告してもらうことが
必要になります。でも、これでは、大変なコストがかかりますので、
国の人事院勧告や県の人事委員会勧告を準用しているというのが実
態です。
従業員(市職員も同じ)の立場になれば、誰でも給料は高いほうが
良い、と考えていると思います。これは当たり前です。
ただ、企業には、経営不振による株価の暴落や倒産がありますから、
一蓮托生の労働組合側にもおのずと自制力が働きます。
しかし、公務員の場合はその感覚が薄い。だから、暴走させないた
めに、人事院勧告で大枠を抑えているということでしょう。
長野市では、手当に関して一つ問題があります。国(人事院勧告で)
が地域手当という考えを示したことです。地域によって賃金水準に
格差があるから、それを補うために、賃金や物価などが高い地域で
は地域手当を支給しようということで、長野県内の4都市(長野市・
松本市・諏訪市・塩尻市)が3%の地域に指定されました。
これは妙な政策だと感じています。長野市の職員は、隣の飯綱町の
職員より3%高い給与を得るということは、どうも違和感がありま
す。実際には給料表のあり方などで、すでに差があるのでしょうか
ら、さらにそれを助長するような政策は疑問です。一般的に言って
長野市職員の給与が、民間と比較して低いという話も私には聞こえ
てきません。
長野県人事委員会では、県職員の在勤地の割合を調べた結果、本庁
などの3%地域に勤務する職員と、加算の無い地域に勤務する職員
は、ほぼ同数であると考え、全職員に1.5%の地域手当を支給す
べきと決めたとのことです。
長野市でも、消防職員が周辺市町村にある消防署に勤務することが
ありますし、広域連合などでは、逆に長野市に勤務する周辺市町村
の職員もいるわけです。こう考えますと、この3%は慎重に判断し
なければなりません。
長野市では、県が県内全域を一律に1.5%としていることや、今
後の広域行政の展開を考え、現時点では1.5%が適正であると判
断しています。
人件費の話はこのくらいにしますが、行政改革と言ってもいろいろ
な問題を含んでいるということを市民の皆さんにも理解していただ
きたいという思いから、このブログを書かせていただきました。
2009年10月9日
2009年10月6日火曜日
文化・芸術、そしてスポーツで誇れるまちを
長野市には、善光寺御開帳はじめ、善光寺門前の各町が誇る絢爛豪
華な屋台巡行や大岡の道祖神祭りなど、数多くの伝統行事がありま
す。真田十万石の城下町・松代には、八橋流筝曲や大門踊りなどの
伝統文化が、あるいは飯綱・戸隠には飯綱大権現、戸隠神社群を中
心とする地域独自の文化が継承されています。
こうした伝統行事・文化が着実に継承され、一層花開いていくこと
は、長野市の存在感を高める上で重要なことだと思います。また、
どんど焼きなど、地域のコミュニティが中心になって行われるお祭
りや行事も、大切な伝統文化だと言えるでしょう。
芸術という面では長野市は昭和48年から、これまでの35年間、
「豊かな自然の中で 文化の香り高い 彫刻に出会うまち ながの」
をコンセプトに野外彫刻の整備を進めてきました。
才能あふれる多くの芸術家たちの137点もの作品が、街の風景に
溶け込み、間違いなく都市の品格を高めています。街のたたずまい
に彩りを添えているこれらの作品群に、私たちはもっと誇りをもっ
ていいと感じています。
市民の皆さんが趣味として親しむ芸術活動も大変盛んです。毎年、
音楽や絵画、伝統芸能の大会・発表会が数多く開催され、私が招待
状をいただくものだけでもかなりの数で、さまざまな芸術分野で多
くの方々がご活躍されていることを実感しています。
スポーツに目を向けますと、地域密着型のスポーツチームの代表的
なチームとして、サッカーのAC長野パルセイロ、野球の長野県民
球団信濃グランセローズが活躍しています。
こうしたチームの活躍は、私たちの胸を躍らせてくれますし、多く
の子どもたちに夢を与えてくれるとともに、長野のシンボルとして、
知名度やイメージアップにつながります。
スポーツは、することで心と身体の健康を養い、見ることで私たち
に感動を与え、そして支えることで地域の一体感や活力が生まれま
す。スポーツ交流による経済効果など地域活性化も期待され、市民
の気持ちを明るくし元気度を大きくしてくれます。
1998年の長野冬季オリンピックは、アスリートが輝くだけの舞
台ではありませんでした。同時に行われた文化プログラムで「アス
ペン音楽祭」やオペラ「信濃の国・善光寺物語」、開会式の「芦ノ
尻の道祖神」といった長野ゆかりの演目が披露されただけでなく、
世界中の芸術家、子供たちが展覧会等に参加してくれました。
そして、スポーツには、長野パラリンピック大会やスペシャルオリ
ンピックス長野大会での日本選手団の活躍でも明らかなように、障
がい者の自立や社会参加を支援する力があり、結果として障がい者
と健常者とが共に生きるノーマライゼーション社会を構築していく
役割も持っています。
長野は、オリンピック、パラリンピック、スペシャルオリンピック
スの3つのオリンピックの開催都市として、これらの分野を引き続
き世界に発信していく義務があると感じています。そして、そのこ
とは、長野の元気に大きく貢献するものと信じています。
長野市としては、これまでにも増して文化芸術及びスポーツで誇れ
るまちづくりを進めたいと願い、その基本条例となる「長野市文化
芸術及びスポーツの振興による文化力あふれるまちづくり条例」を
制定しました。行政としての基本姿勢を明確にお示しし、行動計画
で具体的な事項を示していきます。
例えば、文化・芸術分野では、市民の文化活動の意欲、楽しみをよ
り磨いていくことを、奨励しようということですが、市内のカルチ
ャーセンターや習い事の教室は、とても盛況だとお聞きしています
し、その集大成とも言える長野市文化芸術祭は毎年華やかに行われ
ています。もちろん各教室や絵画の発表会も盛んで、プロとして飛
躍していく方々も現れているようですから、多いに元気付けていき
たいと思っています。
音楽関係の皆さんからは、発表の場だけではなく、練習する場がほ
しいとの要望をいただいています。数年前、もんぜんぷら座の地下
に練習室を設置しましたが、予約満杯でまだ足りないそうです。
(仮称)東部文化ホールがようやく竣工しますので、少しは解消に
つながるはずです。
スポーツの面でも、小・中学校やクラブチームの全国大会出場等の
報告は、毎年多くなってきていますし、高校生や社会人のクラブも
力を上げてきているように思います。
いずれにしても指導者の力の大きさ、そして継続の大切さをいつも
痛感しています。
そのほかの市民スポーツも盛んになっています。バレーボールや早
起き野球などの大会には、お招きを受けて参加させていただいてい
ますが、皆さん元気ですし、市民の健康増進には多いに貢献してい
ると思います。スポーツによる交流の増加は、コミュニティの再生
にも効果がありそうです。
プロスポーツの分野でも頑張りがはじまっています。サッカー、野
球など、関係者は新しいビジネス・モデルとしてぜひ長野に定着さ
せたいと意気込んでいます。プロスポーツの魅力は、市民の気持ち
を一つにして盛り上げる力があることで、野球、サッカー、そして、
スケートなどが候補でしょうが、多いに頑張って、盛り上がってほ
しいものです。
プロとアマチュアの区別は、一般的には技術の高低でイメージされ
るのでしょうが(「あの人はプロ並みだ」という表現がなされるよ
うに)、最近ではアマチュアでも非常にレベルが高くなってきてお
り、そうした分け方が難しくなっています。観戦料を頂くのがプロ、
無料で見ていただくのがアマチュアということぐらいかなと感じて
いますが、そのくらい市民スポーツの全体的な力が上がっていて、
差が小さくなっている。でも、両方とも大切だなあと感じています。
専門的にやっておられる方が、その道で生活できるような収入をあ
げられるかも、一つの区別でしょうね。
話は変わりますが、善光寺・松代・戸隠などの伝統文化の持つ魅力、
これは長野市独自のものです。善光寺のもつ発信力は、春の御開帳
で十分堪能させていただきました。松代もハード整備が進んでいく
に従って、エコール・ド・まつしろをきっかけに、松代の文化面の
魅力が増進されてきていますし、戸隠神社の伝統の力も大いに感じ
ています。
そういえば、以前、善光寺の本堂でクラシック音楽の演奏会やコン
サートが行われるなど、ユニークな試みが評判になりました。過去
にも、太鼓の演奏や声明(しょうみょう)もありましたし、境内を
利用した映画上映が行われたこともあります。ハードを活かすソフ
トの重要性を認識させていただきました。
もう一つ、文化芸術とは違いますが、長野がもつ自然の雄大さ、私
は、これが何にも優る長野の財産だと思っています。この自然を市
民みんなが大切にしながら活用することが重要です。この自然こそ
が、短歌や俳句、絵画、音楽の題材となるなど、長野の文化芸術の
重要な基盤の一つとなっているのでしょう。
一昨年、市政施行110年の記念事業として、各地のお宝を集めた
こと、ご記憶にあると思います。各地域の文化・歴史を示すお宝が
ずらりと並びました。これを今後にどう生かすか、これも考えるべ
きテーマだと思っています。
民謡・舞踊・童謡、書道、絵画、俳句、短歌といった文化芸能、ま
た、マジックや大道芸もその一種でしょう。秋祭りなどに神社に奉
納される神楽、神輿、さらに、このところ各地で盛んになっている
太鼓も素晴しい文化です。あらゆる分野で、長野の文化を高めてい
ただいていると感じています。
市内には、このブログでは書ききれないほど、たくさんの文化があ
ります。全て、長野の文化力につながるすばらしいものばかりだと
感じています。
なお、思いつくままに、アトランダムに書いてきましたので、書き
漏らしてしまったこともあるかと思います。何卒お許しください。
いずれにしても、これらの分野については、市民の皆さんの元気、
長野の元気を表現する場として、多くの皆さんが楽しまれ、また活
躍をしており、行政としてもできる限り応援していきたいと考えて
います。
2009年10月6日
2009年10月2日金曜日
合併の話、そして広域行政
平成17年1月1日、長野市が豊野町・戸隠村・鬼無里村・大岡村
を編入合併してから、もう5年目を迎えています。
この合併は、現段階では良かったと評価しています。地域審議会や
元気なまちづくり市民会議などの場で、合併地区の市民の皆さんの
意見を十分お聞きして市政に反映していますし、合併協議で話し合
われたことは、実現に向かって順調に動いています。
財政的には、借金が増えるのではないか、との心配もありました。
確かに一時的には増えましたが、借入金の総額はすでに合併前の水
準以下になっており、この問題は克服しています。
長野市全体として考えてみますと、新しく長野市になった地域の
“財産”が素晴しいと感じています。ここでは、一つ一つ申し上げ
ませんが、豊野・戸隠・鬼無里・大岡の4地区には、素晴しい景色、
人情など、有形、無形の魅力的な“財産”があり、その“財産”が
それぞれの地区の個性を引き立てています。そして、各地区では、
その個性を発揮しつつも長野市の一部としての一体感は増してきて
おり、全体として「長野市」の存在感を大きくしていると感じてい
ます。これは、合併によって得られた大きなメリットだと言えるで
しょう。
長野市全体として受けるメリットは、このほかにもいろいろありま
すが、財政面でのメリットも大きいと思っています。
全国の多くの市町村は、国から地方交付税の交付を受けています
(地方交付税は市町村にとって、独自の税金と同様、自己財源とし
て算入できる重要な財源です)。例えば、長野市と合併した旧町村
への交付税は、それまで別々に算定されて交付されていました。こ
れが、合併により一つになるわけですから、国としては、一つの自
治体として算定することで、交付額を減らすことができるようにな
ります。これは、国にとって大きなメリットです。
一方、合併した市町村側としては、交付額が減ってしまうわけです
が、その分、組織や歳出などの合理化、合併によるスケールメリッ
トを活かすことで十分にカバーできます。行財政改革の面でも市町
村合併の効果は、とても大きいということでしょう。
ただ、今回の合併では、国の合併促進策として、この地方交付税の
減額がこの先10年間猶予されることになっています。つまり、交
付税の算定に当たっては、平成26年度まで合併がなかったものと
見なして、旧町村別々に算定した交付税が長野市に一括して交付さ
れることになっています。10年分を合計すると、かなりの金額に
なりますから、長野市にとって、これも大きなメリットだと言える
でしょう。
でも、10年後には交付税が減ってしまうというご意見があります。
それは事実です。ですが、その後もさらに5年間の激減緩和措置が
あり、急激に減額されないことになっていますから、本来の算定額
になるのは15年後の平成32年度からです。当然、合併により増
えた歳出もあるわけですから、それまでにしっかりと行財政改革を
実施して、減額に耐えうる体質にすることが重要だと思っています。
前述のとおり、合併によって増えた借金には、5年を経たずに返済
し、解消できました。合併によって増えた職員の数も15年かけれ
ば適正数にできると考えていますし、さまざまな諸施策もスケール
メリットを活かせば、対応は可能です。
そして、来年の1月1日、長野市は、新たに信州新町と中条村を編
入合併します。
1年半におよぶ長い合併協議を経て、合併調印、市町村議会の議決、
県議会の議決、そして、県知事から総務省へ届出され7月31日に
総務大臣による告示が行われたことで正式決定しました。
長野市とすれば、過去の経験を生かし、きちんとした体制で取り組
んでいきたいと考えています。市民の皆さんには、もう一段大きく
なる長野市に多いに期待していただきたいと考えています。
合併とは違いますが、自治体同士が協力しあって事務事業に取り組
むことができるよう、国ではいろいろな広域行政システムを示して
います。地方自治体は、それぞれ独立した存在であって、お互いに
不可侵であることは当たり前です。ただし、小さな自治体では、ス
ケールメリットが働かない分、どうしても不利になることもありま
す。
そこで、共同で取り組んだ方が効率の良い事業については、この広
域行政システムを利用して、幾つかの自治体が集まって事業を実施
しています。
まずは、「広域連合」です。長野市が長野広域連合に属しているこ
とは、私もメルマガで何度かお知らせしましたので、ご存じだと思
います。長野広域連合で行っているのは、特別養護老人ホームの運
営、介護保険の要介護度の認定審査、ごみ処理施設建設に向けた準
備作業などの事業です。広域連合ごとに実施している事業は異なり
ますが、このような広域連合は、県内に10あります。
そのほか、県内で1つしかない「長野県後期高齢者医療広域連合」
という組織もあります。後期高齢者医療広域連合は、都道府県ごと
にすべての市町村が加入する広域連合を設けることが法律で定めら
れていることから、長野県でも県内全市町村で一つの広域連合を組
織したのです。
私も創立期の2年間、市長会長であったが故に連合長を務めたので
すが、すべて国が決めた通りに仕事を進めただけで、典型的な“形
式だけの地方自治”だと感じました。これでは、広域連合ではなく
県の業務とした方が効率的ではないか、というのが私の率直な感想
です。
広域連合に似たようなシステムですが、「一部事務組合」という仕
組みもあります。広域連合が幅広くいろいろな事業に取り組めるの
に対し、一部事務組合は、特定の事務について協力し合うための仕
組みです。例えば長野市では、し尿処理や火葬場などの設置運営の
一部を近隣の市町村と共同で実施しています。
ちなみに、市町村(長野市を含めて)は「普通地方公共団体」です。
それに対して、広域連合や一部事務組合などは、「特別地方公共団
体」と言われています。
事務事業を「委託」するという仕組みもあります。消防・救急業務
を例にしますと、長野市では、委託を受けて周辺5町村の消防・救
急業務も行っています。この場合、長野市は受託して費用を頂いて
いる立場ですが、共同で特別地方公共団体をつくるのではなく、応
分の費用を負担して普通地方公共団体に委託することで、広域行政
を実施する方法もあるのです。
さらに総務省では、今年度当初から「定住自立圏構想」という仕組
みを本格的に推進しています。これは、広域連合でも一部事務組合
でもなく、中心になる市と周辺市町村が1対1で締結する協定に基
づいて役割を分担し、相互に連携する仕組みとのことで、これも広
域行政の一つと言えるでしょう。
言葉だけでは、なかなか難解な部分もありますが、今年度から全国
22圏域で先行実施するとのことですから、長野市にとって必要か
どうかの検討も含め、今後の動向を見極める必要がありそうです。
このように、さまざまな選択肢がありますが、市域を超えて実施で
きる行政のスリム化、効率化があるということもご理解いただきた
いと思います。
2009年10月2日