2009年12月31日木曜日

年末考


 今日は大みそか。今年もお世話になりました。来年もよろしくお
願いします。
 今年は、市長選もあり、私にとっては、大きな節目の年であった
と思います。直前に行われた衆議院議員総選挙での“Change
(チェンジ)”や“政権交代”の風を受けて苦戦しましたが、幸い、
皆さんのご支援を頂き、辛うじて当選させていただきました。「み
んなの声が“ながの”をつくる」を基本姿勢に、皆さんと約束した
3期目のマニフェストの実行に全力を挙げる所存です。

 今回は、“理念と具体論”について、少し書かせていただきます。
 理念、あるいは理論といったものは、ほとんどの人が納得できる
ものだと思います。ですから、それに対して異論を唱える人は少な
いでしょう。しかし、具体論になると、いろいろな意見が出てきま
す。「総論賛成、各論反対は、世の常である」という状況があるこ
とはよく言われていることです。

 理念・理論はとても重要です。しかし“どんな理論でも、理論的
に正しいからといってそれを徹底していくと、人間社会はほぼ必然
的に破たんする。どの理論が正しいとか間違っているとかの問題で
はない、すべての理論で言えることである”という指摘もあります。
これは、以前から私がご紹介している数学者・藤原正彦さんの著書
『国家の品格』に出てくる一節ですが、私はこの文章に出会って目
から鱗(うろこ)が落ちた気持ちでした。まさにその通りなのです。

 広い意味での理念は、具体的にどのようなものがあるでしょうか。
思い付いたものを幾つか列挙してみます。
・貧困と争いのない平和な世界を実現しよう
・地球環境を守ろう
・すべての国民・市民の幸せを願い、差別をなくし、あらゆる違い
 を尊重し合える社会にしよう
・犯罪や事故のない安全で安心な明るい社会にしよう
・無駄を廃し、有効な資金の使い方をしよう
・真面目に働いている人が、正しく報われる社会にしよう
・弱い立場の人、困っている人が救われる世の中にしよう
・日本一いや世界一素晴らしい、美しい街にしよう

 まだまだたくさんありそうですが・・・すべて大切なことで、ぜ
ひ実現したいことばかりです。恐らく、これらの理念に反対する人
はいないでしょう。
 しかし、これを実現するための具体論になると、さまざまな立場
や考え方があり、完璧な実現を目指そうとすれば、かなりの困難を
伴うはずです(だからと言って、何もしないということではありま
せん。今、最も大切なのは、具体論、具体策です)。

 理念を一生懸命に主張する人の多くは、ポピュリズムに陥ってい
る可能性が高いと思っています。そして、私たちは、そのような主
張に流されやすいことも事実です。
 今の日本の国政は、ポピュリズムに陥っているのではないかと思
うのですが、いかがでしょうか。

 広辞苑では、ポピュリズムのことを「一般大衆の考え方・感情・
要求を代弁しているという政治上の主張・運動」と解説しています。
ポピュリズムは、国民の常識によって政治や権力の腐敗や誤りを是
正するという方向に向かうときは大きなエネルギーになり得ます。
ただし、考え方が偏っていたり、理性的でなかったり、因習などに
とらわれたものであれば、極論かもしれませんが自由や民主主義を
破壊してしまう危険性すらはらんでいるのです。

 日ごろ私は、市町村行政に関係することについての意見は申し上
げていますが、国政・県政などについては、あまり申し上げてきま
せんでした。それは、批判めいたことを言ってみても犬の遠ぼえみ
たいで、あまり意味がないと思っているからです。
 ただ、今回は大みそかですので、今年一年を振り返るという意味
から、市町村行政に非常に大きな関連がある国の政策について、雑
談的に少し意見を書かせていただくことにします。

 「入りを図りて、出ずるを為す」。これは、日ごろ私が一つ覚え
のように繰り返しているフレーズですが、今くらいこの発想が必要
な時期はないと考えています。個人でも、市でも、国家でもそうで
す。
 特に国家は、100年の大計を見渡して、子孫に借金の山を残さ
ないように、最優先で取り組むべきです。その結果、重い負担が生
じるとすれば、国民からは不満が噴出することになるのでしょうが、
これは、実行しなければならないと思っています。ポピュリズムは
廃し、毅然(きぜん)とした態度で臨むべきです。

 その手段の一つには、消費税の大幅アップがあると思っています。
アップした分は国債の返済に充当。消費税1%が約2兆円というこ
とですから、20%上げれば、単純計算で年間40兆円ずつ借金の
返済に充てられることになります。国の借金が全体で800兆円と
すれば、20年で完済できる計算です。
 消費税を税金だと考えれば高いと感じると思いますが・・・少し
インフレになったと考えれば、負担感は和らぐのではないでしょう
か。現在のデフレ環境の中では、採用しやすい施策だと思います
(極論であり、実際には景気悪化を助長することになるので不可能、
との意見はもっともですが・・・)。

 ただ、消費税には、所得が低いほど相対的に負担が重くなる「逆
進性」の問題があります。この対策として、国でも「給付付き税額
控除」を今後検討するようですが、私は中谷巌さんの著書から“還
付金付消費税”という考え方を知りました。恐らく、逆進性の問題
は、これで解消することが可能ではないかと思っています。

 中谷さんの案では、例えば消費税を20%に引き上げたとすると、
(1)税率アップと同時に全国民に等しく毎年40万円ずつ還付す
  る制度を導入する。
(2)その結果、年間消費額が100万円の人の消費税負担は20
  万円であるが、40万円還付されるので、消費税率は実質ゼロ
  になることに加えて20万円の所得補てんを受けることになる。
(3)200万円の人の消費税負担は40万円であるが、40万円
  還付されるので、消費税率は実質ゼロ。
(4)400万円の人の消費税率は実質10%。
・・・と、消費額が少ない人ほど実質的な税率が下がることになり、
逆進性が解消されるというものです。

 ガソリン税などの暫定税率廃止も、政策としてはいかがなものか
と思います。結果として、暫定税率を廃止しても税率は変わらない
ことになったようですが、昨年、衆議院と参議院のねじれ現象の影
響により、1カ月間だけ暫定期間が切れ、ガソリンなどの価格が安
くなったことがありました。確かに、家計にとってはその分の支出
が減って良かったのですが、それを手放しに歓迎できるものではな
かったように思いました。
 環境のことを考えれば、化石燃料の使用を減らす努力が当然必要
になります。単純に対策を講じるとすれば、化石燃料の価格を上げ
ることが一番効果的でしょう。
 今後、暫定税率に代えて、環境税の創設を検討するようですから、
大いに賛成です。実質的な税額は同じはずで、新たな負担を国民に
課す話ではないと思います。

 子ども手当は、所得制限を設けないことで決着したようですが、
私は設けるべきだと思います。ただ、厄介なのは、地方自治体とす
れば、所得把握などの事務が増加することで、支給に際して事務経
費が生じます。その経費を国が負担するのであればできると思いま
すが、かなり多額になりますし、難しいでしょうね(麻生政権での
定額給付金の事務経費は、すべて国が負担しました)。
 いずれにしても、地方交付税を総額1兆円余り増額することは大
いに歓迎できますが、引き換えに新たな負担が生じるようなことは
避けていただきたいと思っています。

 ポピュリズムは、大衆への迎合を優先する無責任な政治指導を指
す言葉として用いられることが多いようです。今の日本には、その
ようなポピュリズムではなく、先を見据えてリーダーシップを発揮
する政治が必要だと思います。たとえ一時的に国民を落胆させるこ
とになっても、将来に向けて、もっと戦略的な発想による政策が必
要でしょう。

 大みそかにしては、少々重い話題になってしまいました。お許し
ください。
 今年も1年間、このメルマガにお付き合いいただきありがとうご
ざいました。皆さん、どうぞ良いお年をお迎えください。

2009年12月24日木曜日

閉町村式


 平成22年1月1日、長野市は信州新町・中条村と合併して、ま
た一回り大きな都市になります。

 12月6日、信州新町の閉町式典が行われました。
 信州新町町民体育館に大勢の町民の皆さんが集まり、信州新町の
長い歴史を記録したビデオ「美しいふるさと信州新町」の上映の後、
式典が開式。県知事、国会議員、県議会議員、長野市議会議員、周
辺町村長などが出席し、盛大な式典でした。異色だったのは、有島
生馬画伯の縁で交流のある北海道ニセコ町長さん、鹿児島県薩摩川
内市長さんが、出席されていたことでしょうか。

 以下は、中村町長さんの式辞を要約したものです。
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 信州新町はこの12月31日をもって町の長い歴史を閉じ、長野
市へ合併する。
 顧みると、昭和29年4月1日、町村合併促進法に基づき、上水
内郡津和村と水内村2カ村の合併により久米路村が発足し、同年1
0月1日に町制を施行して新町と改称。翌昭和30年3月31日、
更科郡日原村と信級村2カ村と合併し、上水内郡信州新町となった。
その後、昭和31年9月30日に更級郡牧郷村の大部分を編入合併、
昭和34年4月1日、北安曇郡八坂村の左右地区を編入。これら幾
多の合併を経て今日に至った。

 昭和30年代には、基幹産業であった農業の近代化を推し進めた。
とりわけ昭和36年度から実施された、パイロット農業構造改善事
業は、その後の事業と合わせ実に14年間という長い歳月と多額の
投資を行い、基幹産業である養蚕業を中心として、土地基盤整備、
施設の近代化による農業の生産性向上を図り、地域の経済的発展に
大きく寄与した。

 工業面では、高度経済成長時代を迎えた昭和38年に工場招致条
例を施行し、積極的な工場招致を進めた。電気機器、精密機器、製
糸、紡績、木工、食料品、セメント二次製品など、多様な分野の工
場立地がなされ、町産業に占める工業の役割は飛躍的に進展。農業
中心の町経済から農商工、調和の取れた産業構造の町としても発展
してきた。

 信州新町は芸術文化のまちづくりにも意を注いできた。古くから
町を愛する数多くの芸術家が訪れ、町民との交流を深め、それらの
縁によって当時としては先駆的な美術館条例を昭和35年に施行。
美術館、有島生馬記念館、化石博物館とともに一連の博物館施設は、
芸術文化を愛する町民の象徴として大切な財産となっている。
 これらの町の発展・変遷は、先人の皆さま、諸先輩の皆さまの多
大なご尽力、そして町民の皆さまの地域を愛する熱意の賜物(たま
もの)であり、今更ながら敬意と感謝の念を禁じ得ない。

 一方では、苦難な出来事もあった。中でも昭和51年の奈良尾地
区の地すべり、昭和58年の台風10号による新町地区を中心とし
た水害は、今でも記憶に鮮明に残る大災害だった。そのほかにも集
中豪雨による災害にたびたび見まわれてきた。これらの災害も、町
民や企業の皆さま、町消防団、多くの関係機関などのご協力、ご尽
力を頂きながら乗り越えてきた。

 社会経済情勢や行政運営を取り巻く状況が激動する中にあって、
過去も合併によってこの地域の発展を目指したように、半世紀を過
ぎた今、合併に関する住民意向調査の結果と長野市の深いご理解に
より、信州新町は県都長野市へ合併することとなった。遠い将来を
見据えたとき、この合併が必ずや将来にわたるこの地域の発展のた
めの新たな出発点になるものと確信している。

 合併しても信州新町という地域はこれからも永遠に続いていく。
この地域の自然、歴史、伝統文化、大切な多くの財産を守り生かし
ながら、町の発展を営々と築き上げてきた町民の経験と地域を愛す
る情熱をもって、今後は長野市信州新町地区として「~善光寺平に
結ばれる~人と地域がきらめくまち“ながの”」のまちづくりの一
翼を担いながら、さらなる地域の発展と大勢の長野市民に親しまれ
る地域となることを願う。
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 式辞の後、町長さんから多くの町政関係者に表彰状・感謝状が手
渡されました。受け取った皆さんは、それぞれ感慨にふけっており、
その姿が印象的でした。
 式典は、信州新町小学校6年生の皆さんが「故郷(ふるさと)」
を歌う中、町旗が降ろされて木箱に納められ、町長に手渡されて閉
式となりました。

 12月19日には、中条村の閉村式が行われました。
 会場は、中条中学校の体育館です。大勢の村民の皆さんのほか、
県知事、国会議員、県議会議員、長野市議会議員、周辺町村長など
も出席し、こちらも大変盛大でした。

 中条村の式典でも、表彰状・感謝状の贈呈、村旗の降納などがあ
ったのですが、圧巻だったのは、中条村の保育園児、小学生、中学
生152人全員が舞台に上がって合唱を披露したことです。
 曲は「故郷」ですが、それぞれの園歌・校歌が組み込まれ、立派
な組曲になっていました。指揮を執られた先生が作られたのでしょ
うか。とても素晴らしいもので、感心し、また感激しました。一緒
に行われた消防団の解団式も、今まで経験したことがなく、厳粛に、
そして今後は長野市消防団の分団として出発する決意も表明され、
感激しました。

 以下は、久保田村長さんの式辞を要約したものです。
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 長野市長様、長野市議会議長様をはじめ市議会議員様各位、そし
て各市民の皆さまの大きな温かいご理解を頂き、中条村は平成22
年1月1日に長野市と合併する。

 中条村は、昭和30年に町村合併促進法により、栄村と日里村が
合併して発足した。村発足当時は米作、養蚕、酪農など農業を中心
に多くの営みが行われ、行政も農業政策が中心に進められていた。
昭和40年代からは、村内の道路改良整備、上下水道の完備、村営
住宅の建設など生活基盤の整備が進み、文字通り高度経済成長の時
代であった。

 教育面では、中学校の統合、小学校の統合をはじめ、公民館の建
設など、文化教育施設の充実、資料館の開設など目覚ましいものが
あった。産業面では、工場誘致、オリンピック道路への道の駅の建
設、やきもち家の建設、お菜とりツアー、虫倉山開山祭、むしくら
まつりなどのイベントの開催等々、先人の方々が築かれた功績は、
語り尽くせるものではない。

 このような時期を経て、人々の暮らしは大きく変わり、現在では、
通勤、通学など生活のほとんどが長野市という家庭が多くなってい
る。そのような折に住民の総意は、長野市との合併を選択するとい
う大変大きな、そして大変重い決断を行った。

 私は、議会の皆さん、村民の皆さんのご協力をいただきながら、
その先頭に立って邁進(まいしん)してきた。そして、来年1月1
日からは、県都長野市民として皆さんと一緒に新しい地域づくりに
取り組み、この地域を守り、発展させていかなければならない。こ
のことは、村民一同大きな喜びであり、遠い将来を見据えたとき、
必ずやこの合併がこの地域の発展のための新たな出発点となること
を確信している。

 この中条地区のシンボルは、今までもこれからも虫倉山である。
360度の展望と里山でありながら登山気分を十分に味わえる自然
の良さに加えて、古くから伝わる山姥(やまんば)伝説により虫倉
神社とともに子育ての神様として信仰されている。
 今後は、長野市の名所に加えていただき、中条を子育ての里とし
て愛していただければ、さらにこの地は元気になると思う。この地
域の自然、歴史、伝承文化、人のつながりの強さ、先人の地域を守
る伝統、これらをしっかりと守り、長野市中条地区として、「~善
光寺平に結ばれる~人と地域がきらめくまち“ながの”」の一翼を
担いながら、この中条地域の発展を心から願い、一日も早く長野市
民に溶け込むよう最大の努力をすることを約束する。
 そして、合併が希望と夢に向かっての新たな第一歩であるという
気持ちを持ち、先人が築いてきた思い出をそれぞれの立場で一つ一
つ心に刻みながら力強く前進したい。
**********

 式典では、中村町長さんも久保田村長さんも感極まった感じで、
若干涙ぐんでおられるように感じた場面もありましたが、両町村長
さんはじめ、住民の皆さんの心境をお察しすると、私もあらためて
厳粛な気持ちになりました。

 両町村の式典では、出席された大勢の方々からの祝辞がありまし
た。
 そのうち、県知事さんからの祝辞は、「このたびの合併は、これ
からの地方分権社会、そして少子高齢化社会に対応できる基礎自治
体を目指して、将来を見据え熟慮を重ねた上でのご英断であり、心
から敬意を表する。合併により町や村としての歴史は幕を閉じるが、
これまで培われてきた歴史、文化、自然はこれからもはぐくまれ続
ける。この地の特性を生かし、活力あふれる地域づくりが進むこと
を期待する。」という趣旨でした。

 私も合併先の市長という立場からあいさつさせていただきました。
 私がお伝えしたかったことは、合併はあくまで手段であり、重要
なのは、地域の皆さんが合併して良かったと思えるまちづくりを行
うことです。信州新町や中条村の皆さんが合併を選択されたその思
いを深く受け止め、これまで培ってきた歴史や文化を尊重し、有形
・無形の地域資源を生かし、「人と地域がきらめくまち“ながの”」
を目指して、住民福祉の向上、活力ある地域づくりに取り組んでい
きたいと思っています。

 そして、合併協議を通して、信州新町や中条村から学ぶべきこと
がたくさんあることを知りました。合併後は、信州新町や中条の皆
さんが長野市民として何ができるかを考え、胸を張って、堂々と長
野市の一員として活躍してほしいと考えています。
 以上のようなことは、平成17年の合併に際しても申し上げてき
たと記憶しています。

 そのほか、合併によって、役所が遠くなるということを心配され
ている方もいるようですが、心の距離は皆さんの方から近づいてき
ていただきたいとも思っています。
 地名も、頭に“長野市”が付くと、その分呼称が長くなりますの
で、公式文書以外は“長野市”を付けなくても良いと思っています。
例えば、松代は「信州松代」、戸隠は「信州戸隠」として、“長野
市”にこだわらずに情報発信していることも多いようです。

 さあ、あと1週間で、新しい長野市がスタートします。両町村民
の皆さんの期待にも応えられるよう受け入れ態勢を整え、みんなが
合併して良かったと思えるまちづくりに最大限努力していきましょ
う。

2009年12月17日木曜日

国が行っている事業仕分けと長野市


 先月11日から27日にかけて、国の行政刷新会議ワーキンググ
ループによる「事業仕分け」が行われ、大々的に報道されました。
言ってみればこの事業仕分けという手法は、来年度予算編成に向け
て、これまでは財務省の主計官が密室で行っていた、膨れ上がった
予算要求の査定作業を公開の席上で行った、ということでしょう。
 この光景、最初に見たときはちょっと驚きましたが、実際に仕分
け会場で行われている内容自体は、財政状況の厳しさが増している
地方自治体として以前から常時行っていることだと、しばらくして
から分かりました。

 長野市では、数年前に財政が厳しく、積立金を大幅に取り崩さな
いと予算が組めないという状況に直面した際、事態を切り抜けるた
めに、全庁を挙げて財政構造改革に取り組みました。「入りを量り
て、出ずるを為す」の理念の下、個々の事業の細部にまで切り込ん
で検討した結果、積立金に頼らない財政状況をつくり出すことをほ
ぼ実現しました。
 その後も、行政改革推進委員会行政評価部会が中心になって、既
存の事務事業について常に見直しを行い、無駄を廃した効率的な財
政運営に努めています。

 長野市のやり方と国の事業仕分けとの違いについて、感じたこと
を3つ書かせていただきます。
(1)長野市の予算査定会議には、外部から仕分け人を入れていま
  せん。
(2)けんか腰ではなく、話し合いで検討しています。
(3)長期的な視点として、長野市では持続可能な行政経営の視点
  を取り入れています。

(1)外部の人を予算査定会議に入れること
 このことの是非は、なかなか難しい問題です。ただ、国とは違い、
地方自治体の職員は常に地域の皆さんとの共同作業を行っています。
つまり、地域の要望をよく分かった上で予算編成に臨んでいますの
で、予算査定の段階であらためて外部から意見を求める必要がある
のか疑問です。
 また、“外部から”といっても、公募を含めてどのような人に入
っていただくかということもなかなか難しい問題です。

 長野市では、平成14年度から事務事業評価を行っており、市が
実施すべき事業なのか、民間で同種のサービスが無いのか、などの
視点で各事業を評価し、その結果を予算に反映させています。そし
て、何より市議会は首長のチェック機能として一番大きな役割を果
たしているのです。
 また、市の制度としては、監査委員制度(常勤の代表監査委員1
人、市議会代表2人、民間代表1人で構成)のほか、外部の専門的
な知識を有する方が監査を行う包括外部監査制度もありますから、
予算査定のためにあえて外部から仕分け人を入れる必要はないので
はないかと思っています。

(2)けんか腰の議論
 けんか腰の議論で仕分けが行われている様子には、どうも違和感
を覚えました。確かに、95兆円にも膨れ上がった予算要求から3
兆円を削ることが目的、すなわち最初から減額・廃止ありきの議論
ですから、仕方ないと言えばそれまでです。
 しかし、イソップ物語の北風と太陽の話にもありますが、強引な
査定というのは説得性に欠けますね。糾弾集会ではないのですから、
日本人のメンタリティから言うと、穏やかに話し合う雰囲気が必要
だと思いました。

(3)長期的視点の欠如
 長期的視点が欠如していることについては、誰が見ても明らかで
しょう。ノーベル賞受賞者が、そろって日本の科学技術が遅れる恐
れを指摘しており、鳩山首相もほぼ認めているような感じです。い
ずれにしろ、長期的な視点で考えると、事業仕分けにはなじまない
案件もあるように感じます。

 身近な例では、文部科学省が所管する施策の「地域科学技術振興
・産学官連携」が「廃止」と評価されました。この施策には、地元
企業65社、信州大学、県や長野市など、産学官が連携して進めて
いる「長野県全域知的クラスター創成事業」が含まれています。
 施策の継続については、上田、須坂、千曲の各市長さんと共に4
市長連名で要望書を文部科学省に提出したところですが、この事業
の前身「長野・上田地域知的クラスター創成事業」では、特許出願
233件、論文391件、ベンチャー設立7件、商品化・事業化2
1件、技術移転9件、国・県等支援施策採択数14件など、国際競
争力もある大きな成果を生み出しているのです。仮に仕分けの評価
どおり廃止になれば、科学技術の遅れのみならず、今後の長野地域
の産業振興や雇用確保、人材育成などに与える影響も計り知れませ
ん。

 そのほかにも、仕分けの対象になった事業とならなかった事業と
の区別が分からない、仕分け人はどのように選任されたのか・・・
よく分からないことも多いのです。
 ただ全体としては、公開で行ったことで、国民としてお金の流れ
が少し分かったということは、プラス評価でしょう。

 この事業仕分けにより、具体的に長野市の行政にどのような影響
が出るのかがまだ見えてきません。ただ、現在はまだ単なる仕分け
作業の段階です。今後、実際に予算案が固まるまでには、いろいろ
な折衝が行われ、政治判断も出てくるはずですから、それまでは何
とも言えないでしょう。
 従来であれば、いろいろな陳情活動や事務局の折衝などで、「こ
の予算は大丈夫」とか、「これは無理そうだ」とかの情報が入って
きたのですが・・・今年は情報が少なくて困っています。

 長野市に関係しそうな事業では、市内のバス交通に関する補助金、
まちづくり交付金などが「地方自治体の判断に任せる」という結論
になっています。しかし、この結論には、財源に関する議論が含ま
れていないことから、一体どのように地方に任せられるのか、全く
分かりません。
 さらに、市の収入に占める割合が二番目に多い地方交付税が、
「(抜本的)見直しを行う」となっています。これも、どのように
見直されるのか、増えるのか、減るのか、全く分かりません(“地
域主権”を持ち出した内閣ですから、大幅に「増」ということにな
るのではないかとひそかに期待しているのですが・・・)。多分、
多くの自治体は、来年度予算の閣議決定まで、予算の組みようがな
いと思います。
 ただ、先日決まった第二次補正予算の中に、事業仕分けで削られ
た事業が幾つも復活している、という話もあるようですが・・・。

 いずれにしても、地方に任せるということは、ただ単に事業単位
で振り分けるのではなく、国と地方の役割分担の見直しや権限・税
源の移譲など、その前提になる議論が必要なのだと思います。それ
があって初めて地方に任せるということになるのでしょう。

 話は変わりますが、先週、友人と話をしていたところ、19日の
市内3スキー場のオープンのことが話題になりました。もうすぐだ
ったのですが、待ちきれないということで、週末を利用して足慣ら
しに志賀高原へ初滑りに行ってきました。
 ただ、志賀高原といえども、本格的な降雪はまだですから、雪質
も滑れるゲレンデも十分な状態ではありませんでした。それでもウ
オーミングアップにはなったかな、といったところでしょうか。

 今週は、先週までに比べて冷え込みが厳しくなっていますが、そ
の分スキー場には待望の雪が積もりつつあります。
 今シーズン、戸隠スキー場では、中社第2リフトの架け替えによ
り、中社と越水の両ゲレンデが一体化して、これまで以上にお楽し
みいただけるようになります。また、飯綱高原スキー場では、里谷
多英コースが未圧雪のパウダーコースとして復活しますし、今シー
ズンで営業を終了する聖山パノラマスキー場では、これまでの感謝
の意を込めて“お客さま感謝プラン”などを用意しています。

 あさっての19日には、市内3スキー場がそろってオープンでき
るようになってもらいたいものです。

2009年12月10日木曜日

景気が心配です


 現在の不況は何が原因か、多くの識者は「需要不足」を指摘して
おられます。私も同感です。ただ、不足している需要をどこで生み
出すのか、これが問題です。エコカー減税やエコポイント制度など
の効果で、多少は需要が出ているようですし、「住宅版エコポイン
ト制度」も創設されることになり、期待が膨らみそうですが・・・。

 鳩山内閣の最初の方針は、投資や輸出に頼る経済成長ではなく、
民生の安定による内需主導の経済成長が必要、ということでした。
私もそれができるなら大賛成と感じたことは事実です。
 しかし、よく考えてみると、経済の基盤や仕組みが内需主導型に
なっていないとできない、すなわち、方針どおりに需要を増やすこ
とはできないのではないかと感じています。国民は今どうしても買
わなくてはいけないものがあまり無いのではないか、たとえ欲しく
ても買う余裕がないのではないか、結局のところ輸出や公共事業に
頼らざるを得ないのではないか、そんな不安がよぎります。

 今や景気は二番底に入るのではないかと心配されています。
 景気を良くするには、世の中に需要が生まれてモノの売買が盛ん
になり、資金が回らなければいけません。そして何よりも、将来に
向けて国民が明るい展望を持てることが必要です。

 公共事業不要論に乗って、予算の重点を変えて公共事業を激減さ
せてきた・・・これは民主党の政策だけではなく、自民党もその道
を歩いてきたわけです。
 しかし、いまさらではありますが、世の中に資金を回す方法は、
広い意味での公共事業がやはり有効なのではないかと思うようにな
りました。公共事業や民間投資などが激減していることにより、そ
れらを受注する企業の淘汰(とうた)はすでに始まっています。で
も、現段階であればまだ公共事業の受注基盤が残っており、世の中
に資金を回すことができると思うのです。
 今後、過度に企業の淘汰が進むと、このような基盤すら無くなっ
てしまうのではないか、そんな心配もしています。

 世の中に資金を回すもう一つの方法として、投資の面で今まであ
まり厚遇されてこなかった中山間地域に新しい産業を興す、という
ことがあると考えています。中山間地域に資本を投下して、もうけ
ることができる地域にしていかなくてはならないと思うのです。そ
の筆頭プログラムは、付加価値の高い農林業の育成、観光・交流業、
そしてバイオマス関連事業への投資だと思っています。ただ、今す
ぐ大規模な需要を生み出す即効性はありませんが・・・。

 強行採決で衆議院を通過した中小企業等金融円滑化法(返済猶予
法)が、先月30日、参議院で可決、成立しました。借入金の返済
延期だけで、どの程度の効果が出るかは分かりませんが、それでも
一定の効果は見込めると思います。ただ、この法律で新しい需要が
生まれるわけではありませんし、企業の財政規律心の劣化や金融機
関の体質弱化が心配です。そもそも企業の願いは、金融よりもモノ
(仕事)が欲しいということにあるのだと思います。

 “埋蔵金”を予算に組み込む話も、行政刷新会議の「事業仕分け」
により現実的な話になってきました。
 確かに、一時的には有効な手段かもしれませんが、次年度はどう
するのでしょうか。この“埋蔵金”は、独立行政法人などが過去に
ためてきた資金ですから、その法人の体質が弱くなるのは当然とし
て、二度は使えない手段であることも確かでしょう。
 あえて予算に組み込まなくても、省庁の予算から関係法人に支出
される補助金を削り、“埋蔵金”である法人の内部留保を使うよう
に促がせば、同じ効果が得られるはずです。

 「子ども手当」の創設も素晴らしい発想ですが、麻生政権が実施
した定額給付金などと同種のバラマキ政策であることに変わりあり
ません。ただ、一度だけの支給でない点は大きな違いです。また、
地方自治体としては、新たな負担を国から求められる心配もありま
す。
 高速道路の無料化も、既存の経済秩序で頑張っている、例えばフ
ェリーや新幹線・在来線などの公共交通機関の経営にどんな影響が
出るか、高速道が低速道にならないか、地球温暖化への影響は大丈
夫か、心配は尽きません。

 個人的な見解ですが、究極の“バラマキ”は、日本の山林すべて
を国が買い上げることではないかと思っています(山林に限定しな
くてもいいかもしれません)。価値が無いと判断したのでしょうか、
実質的に相続放棄されている山林も思いのほか多いようです。社会
主義的な発想で面白くないと思っている部分もあるのですが、買い
上げができれば公共事業などが実施しやすくなるという効果もあり
ますし、自然環境の保全にも大きな役割を果たしそうです。地方に
任せてもらえれば、どんどん進めていきたいと思っています(英国
に始まったナショナルトラスト運動につながるといえば、そうかも
しれません)。

 先月、政府は、現在の日本経済がデフレ状況にあるという認識を
示しました。デフレの反対はインフレですが、私の記憶の中でイン
フレがひどい時期といえば、終戦直後は別とすると、昭和48年の
第一次オイルショック前後の時期です。当時、私はすでに、早世し
た父に代わって会社を経営する立場にありましたので、インフレ手
当てとして社員の給料を30%近く上げざるを得なくなり、苦しん
だことを記憶しています。
 いまさらながらに思うのですが、よく倒産しなかったものです。

 そのころ、デフレなんて想像もできませんでした。デフレは物価
が下がりますから、消費者として一時的には喜べるでしょう。ただ、
その反面で、企業は利益が出なくなりますから、結局は給料が下が
ることにつながります。さらに物価が下がれば、企業は経費を削る
ために人員整理をせざるを得なくなり、結果として税収も下がって
行政も困り、景気が悪くなって、さらに人員削減、需要不足が起こ
る・・・いわゆるデフレスパイラルです。これが、今日本で起こり
つつあるのだと思います。そしてこれは、現在の日本人にとって、
初めての経験と言っていいのでしょう。

 資本主義の社会では適度なインフレが望ましい姿であると、識者
から教えられたことが今あらためて思い出されます。

2009年12月3日木曜日

今年も12月になってしまいました


 12月、何となく気ぜわしい時期になりました。12月のことを
「師走」と言いますが、何となく分かる気分です。この場合の「師」
は、先生という意味でしょうか、それともお坊さんを意味している
のでしょうか・・・。

 11月中は、選挙明けということで、ひと息入れたい気持ちもあ
ったのですが、投票日の翌々日には初登庁になってしまいました。
その後、松山市へ出張したり、アスペース篠ノ井や川中島小学校で
移動市長室を行ったり、市立高校の創立90周年記念式典への出席、
戸隠のトレイルランレースのスターター、都市デザインフォーラム、
長野市民会館を建て替えるか否かについての市民会議、茶臼山動物
園のレッサーパンダの森完成記念式典・・・。

 23日には長野えびす講煙火大会におじゃまさせていただきまし
た。広く日本中からお客さんにお越しいただき、30万人を超える
人出があったとのことです。確かに犀川河川敷は、大変な人込みで
したし、花火もミュージック・スターマインをはじめとして素晴ら
しいものでした。
 今年は不況の影響で、全国的に中止または縮小に追い込まれてい
る花火大会が少なくないようですが、主催した長野商工会議所と長
野商店会連合会にお聞きすると、長野は盛大な冬の花火で心意気を
示そうと、昨年より多い7,500発を打ち上げたのだそうです。

 政権交代した後、私にとって初めてとなる国への要望・提案活動
にも出掛けました。すでに3回になりますが(全国史跡整備市町村
協議会、北陸新幹線関係都市連絡協議会、道路関係期成同盟会)、
これらもすべて11月中でした。
 結構慌ただしい日程をこなしてきています。

 さて、12月。忘年会がたくさんありそうですね。お酒は飲み過
ぎると体に良くありませんが、人と人とのコミュニケーションのた
めには、優れた効果を生み出します。また、お酒の席には「雑談」
も付き物です。日ごろ私がよく言っていることですが、「雑談」の
中にこそ素晴らしいアイデアが詰まっている可能性が高いのです。
お酒の席の効用は、まさにこの「雑談」にあるのかもしれません。
 私の普段の仕事の中では、会議や懇談、打ち合わせなど、さまざ
まな方と会話をする機会が数多くありますが、それらの中に「雑談」
の時間はほとんどありません。いずれも市長という肩書を外してと
いうわけにはいきませんし、それぞれ目的があり、時間的な制約も
ありますので仕方ないのでしょう。
 そのような中ですから、たまに気の合った仲間や家族とお酒の席
で談笑する・・・私は至福の時を感じます。そして、このような中
で生まれるアイデアや気付きも案外少なくないと思っています。

 本日12月3日、市議会定例会が始まりました。この定例会では、
長野市民会館や都市内分権についていろいろ議論されることになる
と思います。
 長野市民会館については、11月16日の「市役所第一庁舎・長
野市民会館に関する市民会議」で出された意見や、「長野市民会館
建設検討委員会」の意見、市民の皆さんの意見を基にして、私から
市議会にご提案したいと考えています。その上で、議員さんからの
意見を慎重にお聞きしてまいりたいと思っています。
 結果は、あらためて皆さんにご報告したいと考えていますが、い
ずれにしても期限のある話ですから、いつまでも検討しているわけ
にいかないことは事実です。

 12月19日には、市内3スキー場のオープンを予定しており、
待望のスキーシーズンが始まります。今シーズン、特に戸隠スキー
場では、中社ゲレンデのリフトを架け替えるなど、リニューアルに
取り組みました。
 このリニューアルは、スキーの持つ素晴らしい魅力を多くの市民
の皆さんに満喫してほしい、心身の健康に役立ててほしいという思
いとともに、中山間地域と都市部との交流人口を増やすための重要
な施策として実施したものです。

 長野県にとって、冬の観光にスキーが果たしてきた役割はとても
大きなものがあります。長野市にとっても当然で、何としてもスキ
ーを冬の観光の目玉に復活させ、観光客・宿泊客の増加、お土産品
販売や地元レストランの繁盛、地元雇用の増加等々を図りたいと、
かなり欲張っています。
 リフトやゲレンデの整備も大切ですが、歩くスキーも力を入れて
みたい分野です。また、グリーンシーズンでは、ノルディックウオ
ーキングやトレイルランニングもいいと思っています(先日、戸隠
診療所の佐々木先生に誘われてノルディックウオーキングに参加し
てきました。健康にも良いそうですから、今後さらに人気が出るで
しょう)。

 確かに現在、スキーは冬の時代と言われ、スキー場全体に元気が
ありません。地球温暖化で雪が不足がちであることや、娯楽が増え
て人間の行動が分散しているからスキーの復権は難しいという方も
いらっしゃいます。
 しかし、そんな時だからこそ、リフトの架け替えをきっかけにし
て、“戸隠スキー場は頑張っているぞ”という発信力を高め、そし
て何より“いいとき(飯綱高原、戸隠、鬼無里)観光エリア”の目
玉として、存在感を増していきたいのです。

 皆さん、19日の戸隠のスキー場開きには、ぜひ、お仲間、ご家
族等々おそろいで来場いただき、前途を祝していただきたいと思い
ます。そして、飯綱高原スキー場、聖山パノラマスキー場にもぜひ
お出掛けください。