2009年12月17日木曜日

国が行っている事業仕分けと長野市


 先月11日から27日にかけて、国の行政刷新会議ワーキンググ
ループによる「事業仕分け」が行われ、大々的に報道されました。
言ってみればこの事業仕分けという手法は、来年度予算編成に向け
て、これまでは財務省の主計官が密室で行っていた、膨れ上がった
予算要求の査定作業を公開の席上で行った、ということでしょう。
 この光景、最初に見たときはちょっと驚きましたが、実際に仕分
け会場で行われている内容自体は、財政状況の厳しさが増している
地方自治体として以前から常時行っていることだと、しばらくして
から分かりました。

 長野市では、数年前に財政が厳しく、積立金を大幅に取り崩さな
いと予算が組めないという状況に直面した際、事態を切り抜けるた
めに、全庁を挙げて財政構造改革に取り組みました。「入りを量り
て、出ずるを為す」の理念の下、個々の事業の細部にまで切り込ん
で検討した結果、積立金に頼らない財政状況をつくり出すことをほ
ぼ実現しました。
 その後も、行政改革推進委員会行政評価部会が中心になって、既
存の事務事業について常に見直しを行い、無駄を廃した効率的な財
政運営に努めています。

 長野市のやり方と国の事業仕分けとの違いについて、感じたこと
を3つ書かせていただきます。
(1)長野市の予算査定会議には、外部から仕分け人を入れていま
  せん。
(2)けんか腰ではなく、話し合いで検討しています。
(3)長期的な視点として、長野市では持続可能な行政経営の視点
  を取り入れています。

(1)外部の人を予算査定会議に入れること
 このことの是非は、なかなか難しい問題です。ただ、国とは違い、
地方自治体の職員は常に地域の皆さんとの共同作業を行っています。
つまり、地域の要望をよく分かった上で予算編成に臨んでいますの
で、予算査定の段階であらためて外部から意見を求める必要がある
のか疑問です。
 また、“外部から”といっても、公募を含めてどのような人に入
っていただくかということもなかなか難しい問題です。

 長野市では、平成14年度から事務事業評価を行っており、市が
実施すべき事業なのか、民間で同種のサービスが無いのか、などの
視点で各事業を評価し、その結果を予算に反映させています。そし
て、何より市議会は首長のチェック機能として一番大きな役割を果
たしているのです。
 また、市の制度としては、監査委員制度(常勤の代表監査委員1
人、市議会代表2人、民間代表1人で構成)のほか、外部の専門的
な知識を有する方が監査を行う包括外部監査制度もありますから、
予算査定のためにあえて外部から仕分け人を入れる必要はないので
はないかと思っています。

(2)けんか腰の議論
 けんか腰の議論で仕分けが行われている様子には、どうも違和感
を覚えました。確かに、95兆円にも膨れ上がった予算要求から3
兆円を削ることが目的、すなわち最初から減額・廃止ありきの議論
ですから、仕方ないと言えばそれまでです。
 しかし、イソップ物語の北風と太陽の話にもありますが、強引な
査定というのは説得性に欠けますね。糾弾集会ではないのですから、
日本人のメンタリティから言うと、穏やかに話し合う雰囲気が必要
だと思いました。

(3)長期的視点の欠如
 長期的視点が欠如していることについては、誰が見ても明らかで
しょう。ノーベル賞受賞者が、そろって日本の科学技術が遅れる恐
れを指摘しており、鳩山首相もほぼ認めているような感じです。い
ずれにしろ、長期的な視点で考えると、事業仕分けにはなじまない
案件もあるように感じます。

 身近な例では、文部科学省が所管する施策の「地域科学技術振興
・産学官連携」が「廃止」と評価されました。この施策には、地元
企業65社、信州大学、県や長野市など、産学官が連携して進めて
いる「長野県全域知的クラスター創成事業」が含まれています。
 施策の継続については、上田、須坂、千曲の各市長さんと共に4
市長連名で要望書を文部科学省に提出したところですが、この事業
の前身「長野・上田地域知的クラスター創成事業」では、特許出願
233件、論文391件、ベンチャー設立7件、商品化・事業化2
1件、技術移転9件、国・県等支援施策採択数14件など、国際競
争力もある大きな成果を生み出しているのです。仮に仕分けの評価
どおり廃止になれば、科学技術の遅れのみならず、今後の長野地域
の産業振興や雇用確保、人材育成などに与える影響も計り知れませ
ん。

 そのほかにも、仕分けの対象になった事業とならなかった事業と
の区別が分からない、仕分け人はどのように選任されたのか・・・
よく分からないことも多いのです。
 ただ全体としては、公開で行ったことで、国民としてお金の流れ
が少し分かったということは、プラス評価でしょう。

 この事業仕分けにより、具体的に長野市の行政にどのような影響
が出るのかがまだ見えてきません。ただ、現在はまだ単なる仕分け
作業の段階です。今後、実際に予算案が固まるまでには、いろいろ
な折衝が行われ、政治判断も出てくるはずですから、それまでは何
とも言えないでしょう。
 従来であれば、いろいろな陳情活動や事務局の折衝などで、「こ
の予算は大丈夫」とか、「これは無理そうだ」とかの情報が入って
きたのですが・・・今年は情報が少なくて困っています。

 長野市に関係しそうな事業では、市内のバス交通に関する補助金、
まちづくり交付金などが「地方自治体の判断に任せる」という結論
になっています。しかし、この結論には、財源に関する議論が含ま
れていないことから、一体どのように地方に任せられるのか、全く
分かりません。
 さらに、市の収入に占める割合が二番目に多い地方交付税が、
「(抜本的)見直しを行う」となっています。これも、どのように
見直されるのか、増えるのか、減るのか、全く分かりません(“地
域主権”を持ち出した内閣ですから、大幅に「増」ということにな
るのではないかとひそかに期待しているのですが・・・)。多分、
多くの自治体は、来年度予算の閣議決定まで、予算の組みようがな
いと思います。
 ただ、先日決まった第二次補正予算の中に、事業仕分けで削られ
た事業が幾つも復活している、という話もあるようですが・・・。

 いずれにしても、地方に任せるということは、ただ単に事業単位
で振り分けるのではなく、国と地方の役割分担の見直しや権限・税
源の移譲など、その前提になる議論が必要なのだと思います。それ
があって初めて地方に任せるということになるのでしょう。

 話は変わりますが、先週、友人と話をしていたところ、19日の
市内3スキー場のオープンのことが話題になりました。もうすぐだ
ったのですが、待ちきれないということで、週末を利用して足慣ら
しに志賀高原へ初滑りに行ってきました。
 ただ、志賀高原といえども、本格的な降雪はまだですから、雪質
も滑れるゲレンデも十分な状態ではありませんでした。それでもウ
オーミングアップにはなったかな、といったところでしょうか。

 今週は、先週までに比べて冷え込みが厳しくなっていますが、そ
の分スキー場には待望の雪が積もりつつあります。
 今シーズン、戸隠スキー場では、中社第2リフトの架け替えによ
り、中社と越水の両ゲレンデが一体化して、これまで以上にお楽し
みいただけるようになります。また、飯綱高原スキー場では、里谷
多英コースが未圧雪のパウダーコースとして復活しますし、今シー
ズンで営業を終了する聖山パノラマスキー場では、これまでの感謝
の意を込めて“お客さま感謝プラン”などを用意しています。

 あさっての19日には、市内3スキー場がそろってオープンでき
るようになってもらいたいものです。