2010年3月25日木曜日

財政推計に見込んだ今後の長野市の投資予定


 昨日、長野市議会3月定例会が終了、諸議案をご決定いただきま
した。これにより、「環境対策の充実」、「都市内分権の推進」、
「産業基盤の整備」、「中山間地域の活性化」を包括的・横断的に
取り組む“基盤施策”とした上で、“優先施策”として「子育ち・
子育て支援の推進」、「エネルギーの適正利用」、「快適で安全な
教育環境の整備」、「公共交通機関の整備」を位置付けた平成22
年度予算が成立。新年度のスタートに向けた準備が整いました。
 新年度予算では、財源不足を補うために積み立ててある財政調整
基金などからの取り崩しを前年度の半分に減らし、加えて、新たな
基金を積み立てることも予定しています。
 なお、平成21年度決算はこれからですが、健全な財政を堅持で
きる見込みです。

 今回は、予算や決算とは別の話ですが、市民の皆さんがご心配さ
れているであろう、今後予定している本市の大規模プロジェクトに
ついてお話しさせていただきます。

 まず、平成22~31年度の今後10年間で予定している事業で、
10年間に見込まれる事業費が1件30億円を超えるプロジェクト
を、財政部の資料から抜き出してみました。
 以下に列挙したものは、現段階で考えられる大規模事業8件の概
要と今後10年間で見込まれる概算事業費です。もちろん、市議会
での審議・決定を経ているわけではありませんから、今後どう変わ
るか分かりませんし、あるいはもっと違うプロジェクトが生まれる
かもしれません。

(1)新市役所第一庁舎建設事業
 耐震強度の確保と市民サービスの向上を目指し、昭和40年に完
成した現在の庁舎を建て替える事業です。事業には、平成20年度
から積み立ててきた「庁舎整備基金」(平成21年度末で約14億
円)を活用することにしています。新庁舎の建設は平成25年度、
現庁舎の解体とその跡地の駐車場整備は平成27年度の事業完了を
目指しています。
 概算事業費:50億円

(2)斎場新設事業
 老朽化が進んでいる松代斎場、大峰斎場を再整備する事業です。
平成26年度の事業完了を目指しています。
 概算事業費:40億円

(3)ごみ処理施設広域負担金
 長野広域連合が進めているごみ処理施設建設に要する費用のうち、
長野市分の負担金です。平成26年度中の稼働を目指しています。
 概算事業費:110億円

(4)ごみ焼却施設周辺整備事業
 ごみ焼却施設周辺整備事業として、サンマリーンながのに代わる
新たな健康レジャー施設整備のほか、公園整備、資源化施設の改修、
現焼却施設解体などを行う事業です。現在のところ、平成31年度
までに以下の事業費を見込んでいます。
 概算事業費:90億円

(5)長野駅善光寺口駅前広場整備事業
 暫定整備の状態にある長野駅善光寺口駅前広場を完成させるため、
再整備を行う事業です。平成25年度の事業完了を目指しています。
 概算事業費:45億円

(6)長野駅周辺第二土地区画整理事業
 都市基盤を整備して生活環境の向上と防災対策を講じるとともに、
個性豊かな街づくりを進めるため、JR長野駅の東口に位置する面
積58.2ヘクタールの地区を対象に、平成5年度から実施してい
る土地区画整理事業です。総事業費約781億円のうち、今後見込
まれる事業費は以下のとおりです。平成28年度の事業完了を目指
しています。
 概算事業費:190億円

(7)小・中学校耐震化事業
 校舎、体育館などの耐震性を強化するために、平成15年度から
計画的に実施している耐震補強または建て替え事業です。総事業費
約500億円のうち、今後10年間に見込まれる事業費は以下のと
おりです。平成31年度の事業完了を目指しています。
 概算事業費:410億円

(8)新長野市民会館建設事業
 現長野市民会館の課題を改善するとともに、より質の高い文化芸
術拠点となるよう、権堂B-1地区再開発事業予定地(予定)に建
設する事業です。事業には、昭和62年度から積み立ててきた「市
制90周年記念文化施設建設基金」(平成21年度末で約23億
7,000万円)を活用することにしています。平成26年度の事
業完了を目指しています。
 概算事業費:80億円

 以上、列挙したプロジェクトの事業費は、合計1,015億円に
もなります。
 しかし、この額すべてを市の一般財源から支出するわけではあり
ません。プロジェクトの実施に当たっては、国や県の補助金を最大
限活用していくほか、事業実施に向けて積み立ててきた基金の活用、
資金(市債)の借り入れも予定しています。
 ただ、市債の借り入れに当たっては、資金を返済する際に国が交
付税で面倒を見てくれる有利な市債(合併特例債など)を可能な限
り活用することが前提です。

 このようなことを踏まえた上で、今後10年間の本市の財政状況
を試算してみました。
 それによると、それぞれのプロジェクトが本格化することで、一
時的に歳出が大幅に上昇し、基金残高が減少、市債の借入額や市債
残高の増加などが見込まれます。
 基金残高の減少や市債残高の増加などにより心配されるのは、自
治体財政の健全性の目安となる“財政健全化指標”のうちの「実質
公債費比率」と「将来負担比率」の悪化です。この二つの指標が一
時的に悪化することは、どうも避けられそうにありません。ただし、
財政的に国からさまざまな制約を受けることになる注意信号“早期
健全化基準”を上回ることはないとみています。

 想定外の事業の発生や、国の政策変更などで試算が狂う可能性も
ありますから、心配がまったくないとは言い切れませんが、現在の
ところ、予定している大規模プロジェクトを実施しても、長野市は
健全財政を維持できる見込みです。

2010年3月18日木曜日

都市内分権は次のステージへ


 平成22年4月1日、住民自治協議会がいよいよ本格的な活動に
入ります。

 平成13年の市長就任以来、私は長野市の地域コミュニティーの
再生を常に念頭に置いて行動してきました。その原点を申し上げれ
ば、昭和40年代の早いころ(もう40年以上前の話です)、長野
青年会議所に所属して勉強する中で考えていたことにあります。
 戦後、経済の再生によって日本社会が発展したことは良かったの
ですが、社会には個人主義がまん延し、「隣は何をする人ぞ」とい
う流れになってしまいました。人と人とのつながりが希薄になって
しまったことを憂い、長野青年会議所時代、そんな流れを何とかし
たいなあと、私はいつも考えていました。

 市長には、さまざまな思いを持って就任したつもりです。でも、
具体的に何をどうするか、就任後しばらくはあまりよく分からず、
無我夢中で走っていました。そんなある時、ふと「青年会議所時代
の理想が実現できる場を与えられたのではないか」ということに気
が付いたのです。

 市長になってから私は、努めて市有施設などを回り、自分の目で
確かめるようにしてきたのですが、支所回りをする中で、市役所組
織の欠点が見えてきました。痛感したのは、行政のセクト主義、す
なわち縦割り組織はどうにもならないということです。別に職員が
悪いのではありません。国の予算、システムから来ている宿命なの
でしょうが、総合的に考えていくとか、統合すればどうなるかとか
を考えることは、まず無かったように思います。そのようなことを
考えること自体、余計なことなのでしょう。
 ある時、何げなく、ある部長に、「昨年まであなたの担当だった
仕事のことだが、このことについてどう思うか」と聞いてみました。
すると、「それは後任の部長のテリトリーですから、私からは言え
ません」という返事。良く言えば「他人の仕事を尊重する」、悪く
言えば「他人のことに口出しはできません」ということでしょう。

 “縦割り組織に、横軸を一本通そうよ”これが私の呼び掛けでし
た。今考えると、分かりにくい表現だったなあと感じていますが、
言い換えれば、他人の仕事でも、良いと思ったら遠慮しないで口を
出そうよ、隣の組織に遠慮せず意見し、手伝おうよ、総合的に考え
ようよ・・・ということだったように思います。

 縦割り組織には、それはそれで良い点もたくさんあります。予算
がきちんと決まり、誰がそれを執行するか、責任は誰が負うのか、
といった点がはっきりしますから、効率も上がるのです。
 一方、“横軸を一本通そう”という総合的な組織は、どうしても
責任があいまいになりがちですし、みんなでワイワイガヤガヤにな
りそうです。でも、その中から何かが出てきそうですし、総合的に
物事を考える癖が付いてくるのではないでしょうか。縦割り組織が
崩れるはずはないと思いながら、でも、必要なことなのだと自分に
いつも言い聞かせていました。
 地域では、市役所のように仕事で役割を決められません。何役も
こなさなくてはならない、行政的に見ても総合行政が必要なのです。

 そんなことをしばらく議論していたら、職員から「都市内分権」
というのはどうでしょうか、という話が出てきたのです(後で調べ
てみると、そのころ結構有名な先生方が打ち出しておられた考え方
のようでした)。
 私は、その発想に強く引かれ、その話を聞いて「それ面白そうだ、
やろうよ」と乗ってしまいました。地域に根差した組織なら、地域
に密着した組織なら、職員はすべてのことに対応せざるを得ない、
いや応なしにすべてのことを勉強せざるを得ない、総合的に考えざ
るを得ない・・・縦割りのままではいられないはずだと簡単に考え
たのです。

 そのころ、すでに4町村との合併がスケジュールに入ってきてお
り、市域が広くなることが予測できましたし、大きくなった長野市
をどうやって運営するか、考えている最中でもありました。
 そして、平成17年1月1日、4町村との合併が完了。より広域
になった行政にどのように取り組むか、現実の課題はますます大き
くなったのです。

 そしてその後、平成18年度を「都市内分権元年」と宣言。以来、
その基盤になる市内30の地区に、住民自治協議会を設立していた
だくようお願いしてきました。
 各地区の住民自治協議会が発足するに当たり、私は三つの条件を
提示させていただいてきました。
(1)その地区を代表する組織であること
(2)役割分担ができている組織であること
(3)計画性を持った組織であること

 この三つが満たされていれば、あとは自由、地域ごとに決めてく
ださい、ということです。ですから、モデル規約を提示することも
当初は遠慮させていただきました。

 いろいろなご意見があり、混乱もあったことを記憶しています。
ですが、幸い、市民の皆さんのご理解を頂き、目標より1年早く、
昨年3月に30地区すべてで住民自治協議会を設立していただくこ
とができました。
 そして、同じく昨年3月、市と住民自治協議会の関係を規定する
「長野市及び住民自治協議会の協働に関する条例」が市議会の議決
を経て制定。翌4月には、住民自治協議会の会長さんとの間で、こ
の条例に基づく協定の締結式を行うことができました。
 本年1月の合併で誕生した信州新町地区と中条地区でも、つい先
日、住民自治協議会が設立され、協定を締結することができました。
 これにより新年度、4月1日から、住民自治協議会の本格的な活
動が32地区で一斉にスタートできることになったわけです。私個
人としても、長年の夢が一歩進んだと喜んでいます。

 32の住民自治協議会、すべて異なります。たくましく独自性を
訴えておられます。
 一番初めに住民自治協議会が発足した若槻地区と、最後の信州新
町地区・中条地区とでは、4年の差があります。当然、考え方も、
熟度の違いもあるはずです。中心市街地、市街地周辺部、中山間地
域・・・それぞれ違います。でも、その違いこそ、各地区の特徴で
あり、住民自治協議会を組織する意義でしょう。

 これまでに、住民自治協議会を応援するさまざまな施策も準備し
てきました。
 まず、都市内分権元年と宣言した平成18年度には、支所と地域
振興課の業務に地区のまちづくり活動の支援を明確に位置付け、以
来、住民自治協議会の活動を含む地区のまちづくり活動全般を総合
的にバックアップしています。
 そのほか、活動するための資金はどうするのか、という問い掛け
に対しては、「地域いきいき運営交付金」や「地域やる気支援補助
金」といった財政支援策を用意しました。議会の議決はこれからで
すが、総額で2億7千万円弱です。この中には、住民自治協議会が
独自に雇用する職員の人件費(1地区当たり100万円)も含んで
います。

 中山間地域の地区からは、そもそも活動するにしても人材が不足
しているという訴えを頂き、昨年から中山間地域を抱える住民自治
協議会に地域活性化アドバイザーを派遣しています。今年4月から
予定する合併地区も含め、派遣先は全部で13地区です。
 このほか、この13地区には、地域社会での助け合い機能拡大を
促進するために「やまざと支援交付金」(総額780万円)の交付
も予定しています。
 住民自治協議会へは、これからも必要に応じ、追加応援もしてい
くつもりです。

 いずれにしても、これでスタートラインに立てたということでし
ょう。これからは、それぞれどんな運営がされていくのか、そして
どんな活動が始まるのか、私は期待しています。

2010年3月11日木曜日

方向性が決まっていない悩み


 行政には、常に悩み事があります。しかし、その悩みも基本的な
方向を定めることができれば、その方向へ市民の皆さんと市職員が
一緒になって粛々と努力することで実現できるのです。もちろん、
相手のある話も多いわけですから、どうしても理解が得られず、結
果として断念せざるを得ないこともあります。でも、方向さえ決ま
っていれば、道はあると信じることができるのです。

 今回は、方向性が決まっていないことから、現在、長野市が悩ん
でいる問題についてお話しします。先日もこのメルマガで少し触れ
させていただいた長野オリンピック記念基金に関することです。
 長野オリンピック終了後、40億円余りの余剰金(最終的には4
6億8,422万円)が残りました。先日も書かせていただきまし
たが、余剰金とは言え、オリンピックでもうかったわけではありま
せん。国も県も市町村も莫大(ばくだい)な負担金を支出していま
すし、テレビ放映権料やスポンサー収入、寄付金、あるいは人員派
遣などで、企業や団体など多くの皆さんに支援していただきました。
さらには、多くの皆さんが購入してくださった観戦チケット代も大
きな財源になり、長野オリンピックは大成功となったのです。

 その余剰金をどうするか。NAOC(財団法人長野オリンピック
冬季競技大会組織委員会)では、考えた末、県が管理する基金をつ
くり、スポーツの振興に寄与することにしたのです。基金と言って
も、金利が安い時代ですから利息を当てにするのではなく、元金を
年間4億円ずつ使い、おおむね10年間で使い切ろうということが
合意されたようです。基金を運営するために、長野オリンピックム
ーブメント推進協会も設立されました。

 市にとってこの基金は、大変有効な働きをしてくれました。年間
約4億円の助成金のうち、半分の約2億円が長野市に関係する事業
に助成されてきたのです(残りは、長野市以外の県内・県外のスポ
ーツ振興に使われたようです)。
 スピードスケートやフィギュアスケート、ショートトラックスピ
ードスケート、リュージュ、スケルトン、バレーボールなどの世界
選手権・ワールドカップ、長野オリンピック記念長野マラソン、長
野灯明まつり、オリンピックデーラン・・・毎年、数多くの事業に
助成していただきました。長野市は、そのおかげで地方都市として
は有数の国際的スポーツ都市に成長したと言っていいでしょう。
 そういえば、つい最近行われた国際アイスホッケー大会「長野カ
ップ2010」や、フィギュアスケートのエキシビション「NAG
ANO MEMORIAL ON ICE 2010」も基金の助
成対象でした。

 今年、助成開始から12年を迎え、基金を活用した助成事業が終
了します。今後、基金の残金約3億円を県と市に配分し、基金を運
営してきた長野オリンピックムーブメント推進協会は解散すること
になるようです。
 ただ、基金残金の配分額は、毎年2億円前後の助成金を頂いてい
たことからすれば、比較にならないことは当然で・・・さて、どう
したらいいか、困っています。

 オリンピック開催後、市はこの基金に随分助けていただいてきま
した。今後は、この助成に代わる新たな資金を、毎年2億円は無理
としても半分ぐらいは用意して、スポーツの振興やオリンピックで
活用した施設の維持を図らないと、オリンピックを開催した長野市
の使命は果たせないと考えています。

 では、資金集めをどうするか・・・景気が悪い時期ですから、な
かなか大変です。
 一つのアイデアは、オリンピック施設のネーミング・ライツ(命
名権)の売却です。ネーミング・ライツについては、2年前にもオ
リンピック10周年ということで、施設のメンテナンス費用を生み
出そうと考え、検討したことがあります。
 当時、JOC(日本オリンピック委員会)からは、その場合はオ
リンピック・シンボルマークや長野オリンピックのエンブレムすべ
てを下ろすことが条件にされました。想定されたことではありまし
たが、ちょっと決断することができなかった、というのが本音です。

 当時は、長野オリンピックからまだ10年しか経っていないと考
えるか、あるいは10年も経っていると考えるか・・・市民の皆さ
んがどう思われるかと悩みました。
 しかし、今回は、オリンピック記念基金が終了したという事実を
前に、背に腹は代えられないと感じています。オリンピック遺産を
守るためにも、ネーミング・ライツは、挑戦したい、お許しいただ
きたいプロジェクトです。

 スポーツを振興したり、オリンピックで活用した施設を維持した
りするための費用ですから、行政が資金を負担しなければならない
ことは、理解しているつもりです。ただ、市だけで負担するにはあ
まりにも高額です。ぜひ、民間企業の皆さん、個人の皆さんにもご
賛同いただき、ご協力をお願いしたいと考えています。単年度の話
ではありません。少なくとも10年単位で持続できるスキームをぜ
ひ作り上げたいのです。それが、今を生きる私たちの責務ではない
かと思っています。

 新年度、長野オリンピック記念基金の清算が完了し、基金の行方
が確定した段階で私は行動を起こし、皆さんの了解を求めていきた
いと考えています。

 この問題のもう一方の側面として、エムウェーブとスパイラルが、
国のナショナルトレーニングセンター(NTC)競技別強化拠点と
して継続指定されるか、ということにも影響があるかもしれません。
現在のところ、NTC指定期間はバンクーバーオリンピックまでと
なっていますので、今年の3月が一つの期限なのです。

 そんなこともあり、私としては、バンクーバーオリンピックでの
日本人選手の成績がとても気になっていました。幸い、エムウェー
ブを拠点に練習してきたスピードスケートの選手の皆さんが大活躍
をしてくれたことで、ホッとしています。もちろん、スパイラルで
練習してきた選手の頑張りもありました。安心はできませんが、必
ず国は指定を継続してくれるものと信じています。

 夏季オリンピックの主な種目のNTCは、東京都北区の西が丘に
立派な施設があり、北京オリンピックなどで大きな力を発揮したと
されていますが、冬季競技のNTCは、各地の施設を利用して指定
することになっています。エムウェーブとスパイラルは、それぞれ
スピードスケート競技、ボブスレー・リュージュ競技のNTCに指
定されているのですから、これからも大切にしていきたいものです。

2010年3月4日木曜日

公共交通


性化とともに、喫緊の課題として取り組むとした重要項目です。
 一昨年12月と昨年5月、多くの委員さんをお願いして「地域公
共交通活性化・再生法」に基づく二つの協議会を立ち上げ、実態調
査、アンケート、そして議論を重ねて、このたびようやく市内の公
共交通機関の活性化に向けた総合連携計画が、それぞれまとまる運
びになりました。
 今月中にこの計画に基づく事業計画を国へ申請し、来年度以降3
年間、補助事業として国の支援を受けながら、実証実験などに取り
組む予定です。

 取り組む柱は二つ、長野市全域のバス交通と長野電鉄屋代線の活
性化です。自家用車の隆盛、人口減少などの結果として乗客が減り、
なっているわけですから、これを再生するには難しい問題がたくさ
んあります。市民の皆さん、沿線の皆さん、ぜひ「乗って残す」こ
とにご協力いただきますようお願いします。

 以下、平成22~24年度に取り組むことにしている施策を列記
します。
計画」に掲げた施策の概要です。“人と環境にやさしく地域の生活
に使える「都市の装置」に変ぼうする”という基本理念の下に、全
33事業があります。

(1)「生活を支える」バスに
  ・市街地バス路線網の再構築
  ・中心市街地循環バスの充実
  ・地域拠点や生活拠点を循環するバスの導入
  ・交通空白地域における乗合タクシーなどの再編、導入
  ・中山間地域輸送システムの再編、導入 など

(2)「使いやすい」バスに
  ・ICカードの導入
  ・100円ゾーンの見直しや乗継割引制度などの整理、充実
  ・上限頭打運賃制度の導入に向けた検討
  ・増便、終発の繰り下げ、休日便の増発
  ・ハイグレードバス停の整備
  ・「パーク・アンド・バスライド」の実施
  ・「サイクル・アンド・バスライド」の実施
  ・ノンステップバス車両の充実 など

(3)「分かりやすい」バスに
  ・バスロケーションシステムの導入
  ・路線図、時刻表などを掲載したバスガイドブックの全戸配布
  ・観光用バスマップ、時刻表の作成
  ・WEB/携帯による案内システムの導入
  ・バス路線のイメージカラーの設定 など

(4)「利用してみようかな」と思えるバスに
  ・ノーマイカーデーの実施
  ・「モビリティ・マネジメント」の実施
  ・さわやかエコパークの実施
  ・低公害バス車両の導入 など

 以上、大きく区分すると4つの施策です。いずれも実施に当たっ
ては、お金もかかりますし、時間もかかります。しかし、「公共交
通は都市のインフラである」と主張してきた私としては、ぜひ実現
したい施策です。持続可能なシステムにできるかどうか、実証実験
などに取り組む3年間の試行期間が大切です。

 次に、「長野電鉄屋代線総合連携計画」に掲げた施策の概要です。
“地域みんなで支え育てることで、地域を支える持続可能な公共交
通機関として再生する”という基本理念の下に、全27事業があり
ます。

(1)日常の生活行動で抵抗なく使えるサービス水準の向上
 ア.移動時間の短縮
  ・運行頻度の増加(現有施設での増便、バスによる増便)
  ・しなの鉄道との接続改善、直通運転
  ・長野電鉄長野線との接続改善 など
 イ.アクセス利便性の向上
  ・「パーク・アンド・ライド」駐車場の整備
  ・「サイクル・アンド・ライド」駐輪場の整備
  ・昼間時のサイクルトレイン
  ・バスとの接続改善
 ウ.運賃の割高感の軽減
  ・持参人式通勤定期および年間通学定期の販売
 エ.移動可能時間帯の拡大
  ・最終便の繰り下げ
 オ.快適性・安全性の向上
  ・トイレの改良、駅周辺における夜間照明の強化
 カ.利用者ニーズに対応した継続的なサービス向上
  ・利用者モニター制度によるサービスの維持、向上 など
 キ.情報提供の充実
  ・駅および列車内の案内表示の充実、時刻表の配布

(2)屋代線を活用した人の動きの創出
 ア.観光客の沿線への誘導
  ・屋代線を利用する周遊割引切符の販売
  ・イベント列車の運行
  ・地域文化を生かした駅舎の改良やイベントの実施
  ・地域文化を反映したデザインによる車両のシンボル化
  ・自動車利用観光客向けの「パーク・アンド・ライド」と割引
  切符
  ・観光軸の形成に向けた上田、軽井沢、小布施との一体的PR
  (観光直通列車の復活) など

(3)地域が一体となった鉄道を支える仕組みづくり
  ・通常より割り引いた回数券を家庭や企業へ配布
  ・住民組織による地域ボランティア活動の促進(美化活動など)
  ・学校教育などにおける活用促進 など

 バス交通の計画に比べ、なかなか重いプロジェクトですが、屋代
線の長い歴史を思い、何とか再生する方法がないかと、みんなで知
恵を絞った方法論です。いろいろなアイデアが盛り込まれています
ので、よくお読みください。そして、この仕組みをどの程度利用し
ていただけるか、試行期間が重要になるでしょう。

りない利便性、自由度にどんどん押されてきた結果でしょう。
 しかし、そんなにスピードは要らない、のんびりでいいのだとい
う人にとって、あるいは、車の運転ができない人にとって、バスや
鉄道は必需品ですよね。今や、過疎化や高齢化の進行により、公共
交通機関が無ければ生きていくことすら危ぶまれる、という社会情
勢だって生まれています。

すれば、乗る、乗らないに関係なく、存在しなくてはならないもの、
ということになるのですが・・・やはり限界もあるでしょうね。

 また、環境問題の重要性から、ガソリンを大量に使う自家用車の
使用をあまり増やすべきでない、ということもすでに一般的な考え
方になりました。乗ってさえいただければ、鉄道やバスによる大量
輸送は、一人当たりの化石燃料を使う率がかなり低いわけです。今
こそ、鉄道の良さ、バスの良さをあらためて見直すべき時期だと言
われています。
 過去に私が訪問した高知市や長崎市、松山市、富山市などでは、
路面電車を廃止しなかったおかげで便利に使われているだけでなく、
素晴らしい観光資源にもなっている、そんな印象を受けました。真
正念場を迎えています。

各計画の詳細は、こちらをご覧ください。
  http://www.city.nagano.nagano.jp/pcp_portal/contents?CONTENTS_ID=19580
・長野電鉄屋代線総合連携計画(素案):
  http://www.city.nagano.nagano.jp/upload/1/kotuseisaku_nagaden-soan.pd