2010年6月10日木曜日

公共交通活性化・再生へ向けて具体的に動き始めました


 6月1日、「信里地域バス・乗合タクシー」の出発式に出席させ
ていただきました。
 この日を迎えるに当たり、行政側の取り組みは当たり前ですが、
地域の皆さんのご尽力には大変なものがあったそうです。

 発端は、平成20年6月に川中島バスから、廃止や運行ダイヤの
効率化など、不採算バス路線の見直しについて協議したいという申
し入れを受けたことにあります。
 廃止の申し入れがあったのは市内4路線で、その中に篠ノ井信里
地域を走る「青池線」も含まれていたのです。長野市としては、当
面、「青池線」を存続させるため、赤字損益分を補助する「廃止代
替バス」として運行してきましたが、当然のことながら、遅かれ早
かれどうするかを考えなくてはならないテーマでした。

 一方、信里地域では、「行政だけに頼っていては駄目。我々も努
力しよう」と廃止代替バスに代わる交通手段の導入に向けて、検討
委員会をいち早く設置。先進地視察やアンケートを実施するなど、
1年以上にわたり検討を重ねていただきました。

 その結果、今年2月、「信里地域バス運行委員会」が設立され、
朝夕は「スクールバス一般客混乗方式」、日中は「予約制の乗合タ
クシー」を運行することを決定。しかも、運行経費として地元が自
主的に1世帯当たり年間500円を負担することも決め、地域内輸
送だけでなく、地域外にある病院や駅への乗り入れも実現しました。
 検討の過程では、もう少し高額の地元負担でも良いという意見も
あったそうですが、結果的に今回は、500円とすることに落ち着
いたようです。もちろん乗車に際しては、大人1回200円(おで
かけパスポートの場合は100円)の運賃をお支払いいただくこと
になっています。

 この“信里モデル”は、市内の交通不便地域における先駆的事例
として、他の地域でも大いに参考にしていただける方式でしょう。
使いやすくなった公共交通機関が地域のインフラとして機能するよ
うになり、さらにそれが地域の活性化につながることを期待したい
と思っています。

 一昨年以降、関係者が集まり、「地域公共交通の活性化及び再生
に関する法律」に基づいて二つの協議会を立ち上げ、市全体のバス
交通の再生と長野電鉄屋代線の活性化方策についていろいろ検討・
議論してきたことは、以前ご報告させていただきました。
 その成果として、総合連携計画ができ、公共交通の活性化・再生
に向けて平成22~24年度の3年間にわたり各種事業を行うこと
にしているのですが、この「信里地域バス・乗合タクシー」もその
中に位置付けられた事業の一つです。

 一連の事業ではこのほか、ゴールデンウィーク初日の4月29日
から運行を始めた松代地区の史跡を巡る「松代観光地路線バス」を
はじめ、6月1日からは川中島地区、篠ノ井地区、朝陽・大豆島地
区で「地域循環バス」、古里地区で「通勤時間帯バス」、6月2日
からは篠ノ井共和地区、安茂里地区、西長野・上松地区で「乗合タ
クシー」の実証運行をそれぞれスタートさせています。また、長沼
地区では、既存路線の運行日、運行本数などを拡充しました。

 循環バスは、中心市街地を走る「ぐるりん号」が原点です。その
後、「東北ぐるりん号」「若里・更北ぐるりん号」の運行も始めて
いますが、今回の実証運行を機に、さらに必要な地域に広げていき
たいと考えています。
 今週の初め、今回実証運行を始めた「地域循環バス」の「川中島
線」と「篠ノ井線」に乗ってみました。運行開始からまだ1週間で
したが、そこそこご利用いただいているという印象です。乗車した
区間だけで、10人の利用がありました。車内で何人かとお話しさ
せていただきましたが、便利にお使いいただいているとのことです。
 さらに多くの皆さんにご利用いただくには、まだ日も浅く、十分
に認知されていない面もあるでしょう。存在が知られてくる今後に
期待したいと思っています。

 乗合タクシーなども含め、実証運行で良い成績を収めて、ぜひ本
格運行に移行できるようにしたいものです(本格運行へ移行する基
準として、1日当たりの利用者が循環バスで20~40人、乗合タ
クシーで23人を目安にしたいと考えています)。
 そういえば、同じ6月1日、信州まつもと空港でもフジドリーム
エアラインズ(FDA)が就航しましたが、同時に長野市から空港
への直行バスの運行も始まったようです。
 そして、長野電鉄屋代線に関しても、7月から実証運行を始める
ことにしています。
 いずれも、ご利用いただかなければ廃止されてしまうかもしれま
せん。ぜひ、乗って残しましょう。

 実は、今回始めた総合連携計画による事業について困っているこ
とがあります。それは、国からの補助金の減額です。
 長野市としては、国の指導もあって法定協議会を組織し、総合連
携計画を作って実証運行などをスタートさせたのです。そして、事
業費の半分は、補助金として国から頂けるということが当初の枠組
みのはずでした。
 しかし、新年度になって個所付けが発表されたところ、国の補助
金が半分以下になってしまっているのです。すなわち、市とすれば
国の方針に従って予算化したはずが、実行段階になって大幅に減額
されてしまったのです。
 加えて、この補助金の根拠となる国の「地域公共交通活性化・再
生総合事業」そのものが、省庁版事業仕分けである「行政事業レビ
ュー」でいったん廃止することに決まった、という情報まで聞こえ
てきています。

 本年度だけではなく、3年計画の事業ですから、果たして今後予
定通り行うことができるかどうか、心配の種が増えてしまいました。