36万票余を獲得して当選。2位の腰原愛正前副知事とは、約5,
000票差という、まれに見る大接戦でした。
選挙運動期間中のことですが、松本候補を応援するインターネッ
トのホームページを読んでいたところ、「残念ながら松本候補は勝
てそうもない。阿部候補に票を移そう」という意味の文章がありま
した。こうした動き、コメントは、真剣に戦っている候補に対して
も大変失礼なことです。
ましてや、これがどの程度効果があったかは分かりませんが、イ
ンターネット利用の選挙運動については、法整備を早くしないと、
真面目な候補ほど不利だなあと痛感しています(まあ、利用方法を
良く知らない面があることも、自覚しているのですが・・・)。
以下は、選挙前にメルマガに書こうと思って書きかけた“望まし
い知事像”に関する文章の一部です(結局、選挙前には書ききれま
せんでした)。
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まずは、市民の皆さんに、一人一人の生活が懸かっている県知事
選挙に関心を持っていただき、投票所に足を運んでいただきたいと
思っています。
次に、地方行政を進める上でパートナーとなる県知事像について、
私としての若干の所見を申し上げさせていただきますと・・・
よく「出たい人より、出したい人を」ということを言いますが、
さまざまな面で県政運営が難しい今日ほど、経験豊富で安定感のあ
る方が求められている時代はないように思うのです。
県政においては、村井知事のご努力により、あの混乱と不信の時
代から抜け出し、厳しい中にも明かりが見えつつあると言っていい
のでしょう。この流れを継続していただくことが長野県の将来にと
って、何よりも必要なことと考えています。
そして、市民の皆さんの暮らしに直結する、待ったなしの案件が
めじろ押しの中で、思い付きでない、現実的で確かな判断を下せる
知事の誕生を切に願っています。
そのための1つ目の要件は、行政経験が豊富なこと。残念ながら、
これから行政のことを勉強して・・・ということを許すだけのゆと
りはありません。
2つ目が、郷土・信州にしっかりと根を張り、長野県のことをよ
く理解していること。良い意味での信州人に期待したいのです。
3つ目が人柄。見た目の派手さではなく、県民の声にきちんと耳
を傾け、市町村長とスムーズな連携を図りながら県政を進められる
方が求められていると思っています。
現在のような、変革期と呼ばれ、閉塞感のある時代には、とかく、
これまでの流れを変えさえすれば、何か良いことが起こるだろうと
考えられがちですが、結果は失望と混乱のみということは、過去の
多くの事例が証明していることです。
繰り返しになりますが、村井県政が耕し、種付けした畑にきれい
な花が咲くように、新たに選ばれた知事さんには、これまでの流れ
を大切にしてほしいと思っています。
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投票日の翌日、阿部守一さんから市役所にいた私に電話がありま
した。「今後よろしく」ということでした。私も素直に祝意を表し
ました。
私は、アメリカの大統領選挙が選挙の理想だと思っています。選
挙はお祭り、陽気に騒いで、楽しむべきなのです。日本のように深
刻なものでなく、勝負がついた時、負けた人が勝った人に電話で祝
意を述べる(もしかすると反対かもしれません)、そんなことを聞
いたことがあります。
アメリカ大統領選挙をみならって、選挙が終ればノーサイド。市
民の皆さんのためになるよう、阿部新知事とは力を合わせていかな
くてはなりません。
4年前のことになりますが、私は、知事に就任されたばかりの村
井さんに、長野市として次のような提言を申し上げました。全部で
20項目ありますので、少し長くなります。
提言1 県と長野市との調整事項(緊急を要する課題)
(1)浅川治水対策と北陸新幹線用地買収問題の解決(確認書問題)
国、県、市の技術者レベルの論議と技術的検証が重要と考え
ています。政治家の好みの問題ではないし、市民の意見も出尽
くしていると思います。
(2)長野以北並行在来線問題
(1)とも絡む問題ですが、これも長野以北の新幹線建設に
当たって、県が沿線市町村と交わした約束があります。いずれ
にしても、並行在来線の経営のめどを付けることが重要で、そ
れにはJR東日本と話し合った上で、実現の可能性を検討し、
新潟県との話し合い、さらには篠ノ井-長野間の問題を解決す
ることが肝要だと思います。
(3)県立高校再編問題
地域ごとに賛成を得られた所は、新年度スタートで良いと思
いますが、反対の多い所は、急ぐ必要はないのではないでしょ
うか?長野市とすれば、長野南高校は人口増加地帯にあり、県
教委の説明も十分でない状況では、統合される理由が分かりま
せんし、納得できません。
提言2 県政運営の基本方針にかかわること
(1)廃棄物対策(一般廃棄物、産業廃棄物)について県の姿勢の
変更
一般廃棄物処理については、廃棄物処理法で市町村の責任で
行う事業であって、県はそれについて技術的援助をすると決め
られています。県で制定を検討している条例は、法の権限を越
える内容であり、市町村から要請があった場合のみ、その問題
について援助する、あるいは一緒に解決するという姿勢を堅持
すべきだと思います。県知事との事前協議を義務付ける必要は
ないはずです。
産業廃棄物等最終処分場の設置について、県は廃棄物処理事
業団を設置し事業を推進してきましたが、公的関与を見直し建
設中止としています。県はもっと積極的に推進すべきであると
考えます。
(2)市町村合併について県の姿勢の変更
合併については、県が指導力を発揮し、促進すべきです。国
が定めた指針にのっとり、新合併特例法に基づいた合併構想を
つくるべきです。また、県が約束した合併特例交付金の交付を
保障し、合併特例債の使い勝手も良くして、市町村のインフラ
整備に協力していただきたいと思います。
(3)県の審議会、検討委員会の委員について
「長野県調査委員会」など、特別な事案を検討する委員会に
関し、県外委員の選出や都内での開催の傾向が見られますが、
委員の主力は長野県内から選ぶべきではないでしょうか。まし
てや大部分が東京在住ということで、東京で委員会を開くとい
うことは好ましい話ではないし、コストが掛かり過ぎると思い
ます。
また、長野オリンピックは素晴らしい大会であり、有形無形
の財産を残しました。これまでマイナスイメージを持たせる行
動ばかり目立っていて県民益に反します。むしろ開催地として
良いイメージを有効活用するよう考えるべきです。
(4)県と市町村の間の対話復活
県と市町村の担当課同士が事務的に話し合うことが大切です
し、広域連合単位ぐらいで知事と市町村長がざっくばらんに意
見交換をする会合を開くことも有意義だと思います。
車座集会は、県は国と市町村の中間組織であることを考える
と、必ずしも適当ではないと思いますし、市町村が加わってい
ないことも問題があると思います。しかし、直接民主主義の流
れからすると、県施策の説明、あるいは反対意見を聴くことは
大切だとは思いますが、反対者の意見を聴くことは、実際には
なかなか難しいと思います。
(5)安全・安心の県土づくり
安全重視の県土づくりをお願いします。基本的には、長野県
の特殊性にかんがみ、土木事業(道路を含む)の充実を考える
べきだと思います。
(6)企業誘致施策の充実
平成13年に比べると、県内では事業所数や雇用が減ってい
ます。企業を育てるには時間がかかることから、雇用を増やし
ていくためには当面は企業誘致だと思います。長野県は人件費
が高いといった問題もありますが、県に企業立地のための制度
が少ないとか、対象業種や対象地域が限定されているといった
こともあるので、県にもぜひ企業誘致施策の充実を図っていた
だきたいと思います。
提言3 県政への事業提案(すぐにできることではないかもしれま
せんが、検討していただきたい事項)
(1)市町村の広域連合と県の現地機関等の統合
実現できたら県と市町村の協力体制の象徴になりますし、地
域住民に直結する行政サービスを一元的に提供する組織体制の
構築・行政組織の簡素化などが実現できるのではないでしょう
か。
ただし、この提案は長野広域連合内での検討はしていません。
現段階ではあくまで長野市の意見です。
(2)県立短期大学の4年制移行
長野市にある県立短大は長い歴史があります。そして過去、
卒業生を中心に、ぜひ4年制へ移行したいという願望が強く出
されていました。現在、短大は専門学校に押されてあまり元気
がないとも言われています。そして、“長野市に大学を”とい
うことは故夏目市長のころからの悲願であり、そのための準備
基金としてわずかですが、積み立てをしてきています。財政が
厳しい時期ではありますが、地方独立行政法人としてやるなら
可能性があるのではないでしょうか。長野のレベルアップのた
めに、長野の若年人口を増やすためにも、ぜひお願いしたい、
長野市としても協力させていただきます。
(3)公共交通機関の再生
高齢社会になって、移動手段を確保することが大切です。し
かし、市町村が、それぞれで取り組むことには限界があります。
市町村の垣根を越えていくためには、県の取り組みがぜひ必要
です。
提言4 その他諸課題について
30人規模学級の協力金について、コモンズ支援金について、
広域消防の在り方について、看護師養成学校について、長野県
勤労者福祉センターについて、長野養護学校について、県道改
良・県営中山間地域総合整備事業の進ちょくについて、長野県
青少年保護育成条例(仮称)の制定について
以上が、4年前に村井知事に申し上げたことの概略です。これら
の中には、すでに実現したり、方向が決まったりしたこともありま
すし、まだ課題として残っていることもありますが、復習の意味で
あらためて書き出してみました。ただ、4年間で事情が変わったこ
とも事実ですので、再度検討してみる必要もありそうです。
いずれにしても、長野市が抱えている課題について、新知事にも
ご理解いただきたいと考えています。