11月6日(土)、7日(日)、篠ノ井まつり恵比寿(えびす)
講が開催されました。
6日(土)は、篠ノ井西小学校太鼓クラブと川中島陣太鼓の演奏
などのほか、篠ノ井駅前通りでは、“しののいソーラン”が行われ
ました。本場高知県より「よさこい須賀連」が参加されたこともあ
り、大いににぎわったようです。
7日(日)は、子どもたち集まれということで、“天装戦隊ゴセ
イジャー”の格好良いショーがあり、人気を集めていました。そし
て、駅前通りでは、七福神と山盛りの御供(ごく)を乗せた「宝船」
が街中を練り歩き、集まった皆さんに、たくさんの福をお分けしま
した。「宝船」は、この祭りのハイライトと言うべきなのでしょう。
船の周りは、大変な人出でした。私も七福神のうちの恵比寿さまに
扮装(ふんそう)させていただき、船の上から御供をまかせていた
だきました。
実は、このお祭り、歴史は随分古いのだそうですが、それにして
は市内に知れ渡っていなかったと感じています。昨年、酒井副市長
がやはり宝船に乗せていただき、大変盛大なお祭りで、人出もすご
かったとの報告を受け、“宝船というのは話には聞いているけれど、
乗ったことはないので一度乗せてほしいもんだ”なんて言ったもの
ですから、今年は光栄にも私に声を掛けていただいたようです。
七福神とは、私の恵比寿のほか、布袋(ほてい)、大黒天、福禄
寿(ふくろくじゅ)、弁財天、寿老人、毘沙門(びしゃもん)天で、
それぞれ篠ノ井地区住民自治協議会の役員さん、JAグリーン長野
の理事さん、長野商工会議所の役員さんが扮装して役割を務めまし
た。
大変楽しいイベントで、篠ノ井地区の皆さんにも大いに喜んでい
ただけたのではないでしょうか。ただ、御供をまく七福神としては、
立ったりかがんだり、なかなか大変な重労働。正直申し上げて私は
足の筋肉痛になり、4日間ぐらい、痛くて階段の上り下りができず、
往生しました。
「宝船」以外にも、花火、ジャンボフワフワ、ミニ新幹線、太神
楽(だいかぐら)の競演、華道展、篠ノ井東中学校・篠ノ井西中学
校生徒による吹奏楽の演奏などが行われ、篠ノ井は街中にぎわって
いましたが、私はほとんど動けない状態でした。
篠ノ井地区にこんなに楽しい、にぎやかなお祭りがあることを私
は知りませんでした。篠ノ井地区といえば、昨年、善光寺御開帳で
初めてお目にかかった大獅子もなかなか見応えがあり、記憶に鮮明
に残っています。
そして来年は、篠ノ井イヤーです。キャンペーンイヤーを迎える
に当たり、地区の皆さんには、一生懸命企画を考えていただいてい
ます。先日、私が聞いた報告によりますと、基本コンセプトを「信
州しののい 人・モノ・交流文化のまち」として、次の3つのテー
マを中心にさまざまなプログラムを用意し、「篠(しなやか)な心
とおもてなしの心」で来訪者と交流を図ることにしているそうです。
・書聖 川村驥山(きざん)と交流文化のまち
・咲かせよう 育てよう 花と笑顔 ~みどりと花いっぱい篠ノ井~
・スポーツで 人づくり まちづくり
大いに期待したいものです。
さらに来年は、信州新町イヤーでもあります。こちらも地区の皆
さんが知恵を絞って企画を練っています。こちらのコンセプトは、
「こころ・はずむ こころ・やすらぐ こころ・つなぐ 信州新町」
だそうです。信州新町地区では、合併前、“アート&グルメ”をキ
ャッチフレーズに観光振興に取り組んできました。その成果を基に
して、ジンギスカン・サフォーク料理、左右(そう)高原のそば、
西山大豆などの食文化、琅鶴(ろうかく)湖、北アルプスを望む景
観、地区ゆかりの芸術家など、さまざまな素材を活用したキャンペ
ーンになるのでしょう。
このイヤーキャンペーンをきっかけに、来年は、あらためて信州
新町の魅力を再発見できる年になると思っています。
篠ノ井の恵比寿講に続いて、11月23日(火)、長野えびす講
煙火大会が行われました。
えびす講煙火大会は、以前、毎年11月20日に行われていまし
た。ある年、20日が日曜日だったことがあり、そのとき市内の車
の流れが格段にスムーズだったのです。それを受け、これからは休
日に開催しよう、それには23日の勤労感謝の日が20日に近く、
開催日を固定するには一番良いのではないかということになり、以
後、23日に行われるようになっています。
犀川の河川敷は、例年多くの露店が立ち並び、大勢の人出でとて
もにぎわいます。
新聞報道によりますと、38万人とのことですが、今年も多くの
お客さんが集まりました。弁当付きの有料観覧席も完売だったよう
です。今年は、長野商工会議所創立110周年記念ということで、
花火の打ち上げ数は、例年よりも多い1万発。花火の質も毎年上が
っている感じで、人気のミュージックスターマインでは、歓声が絶
えませんでした。
冬の花火、ひところは寒いということで評判の悪い時期もありま
したが、最近は空が澄んでいて、花火がとてもきれいに見えるとい
うことで、人気が高まっているようです。煙火師さんにとっても、
夏の忙しい時期に比べれば冬枯れの時期、大いに頑張っていただけ
るのだろうと感じています。
事故の無いように、そしてみんなが大いに楽しめるように・・・
そして、もう一つ、花火の終了時間をもっと遅くすべきだ、との意
見も毎年聞いています。新幹線の終発が過ぎてから終わる方が、経
済効果が期待できるということでしょう。ただし、近隣にお住まい
の皆さんへの影響もありますから、時間を遅くするには難しい面も
あるのだと思いますが、長く滞在していただき、楽しんでいただく
ために宿泊付きのツアーを企画するなど、いろいろ工夫もされてい
るようです。
煙火大会の会場で、東京大学名誉教授の田村昌三さんと、京都の
花火会社社長の國友繁明さんにお会いしました。お二人の話により
ますと、再来年のえびす講煙火大会に併せて、長野市で「国際花火
シンポジウム」を開催したいという意向があるそうなのです。まだ
決定ではないようですが、長野で開催することになれば、さらに、
にぎやかな煙火大会になりそうですね。
同じ日、待望久しかった更北地区の主要地方道長野真田線の4車
線化工事が完了し、開通式が行われました。長野真田線は、長野市
の中心市街地と上信越自動車道長野インターチェンジ、松代方面と
を結ぶ幹線で、市内の社会・経済活動を支えている大変重要な道路
です。4車線化が完成したことにより、車の流れが格段に良くなり
ました。日常生活での利便性向上に加え、善光寺・松代という長野
市にとっての二大観光地間のアクセスが良くなることで、大きな効
果が生み出されるものと期待しているところです。
さらにこの道路は、地蔵峠を経由して上田市へ通じるルートでも
あり、同じ「真田」で結ばれる両市の交流が、ますます深くなって
いくように感じています。
2010年11月25日木曜日
篠ノ井と長野の恵比寿(えびす)講
2010年11月18日木曜日
市役所第一庁舎と長野市民会館について
市が提案してきた市民会館の建設地や在り方に対しては、市民の
皆さんの意見のほか、市議会、長野市民会館建設検討委員会、長野
市民会館市民ワークショップなど、昨年来、さまざまな立場の多く
の皆さんからご意見を頂いてまいりました。これらを踏まえた上で、
先日、現段階における考え方の方向性について市としての結論を出
し、発表させていただいたところです。
今日は、これまでに頂いた市民会館の建設地についての主な意見
をご報告し、次の段階に移るに当たってのまとめとしたいと思いま
す。
(1)市民の皆さんからの意見
権堂B-1地区東街区案・現在地案それぞれに対する意見が
あります。
○東街区案に賛成
・文化・芸術の発信拠点は、街の中心、交通の便の良い所にあ
るべき。
・少子高齢化、人口減少の今、大型施設は市街地へ集中させる
必要がある。
・周辺の映画館や北野文芸座などとの連携を図ってほしい。
・権堂地区なら、高齢者も公共交通機関で行くことができ、商
店街の活性化にもつながる。
○現在地案に賛成
・商店街の活性化と一緒に考えるべきでない。
・権堂地区は建設地にふさわしくない。
・現在地は市の土地であり公平性がある。
・現在地は駐車場を庁舎と共用できるが、権堂は交通渋滞が心
配。
(2)市議会の意見
東街区案に反対(市役所第一庁舎及び長野市民会館調査検討
特別委員会)。
現在地とすべき(4会派31人)、対震改修により継続使用
すべき(1会派6人)、東街区案に賛成(無所属議員2人)、
機能を分けて両地区に建設すべき(無所属議員1人)。
(3)建設検討委員会からの意見
東街区で建設する場合の意見(権堂周辺の環境整備や活性化
計画の策定など)を付した上で容認する。
(4)市民ワークショップの提言
勤労者女性会館しなのき、映画館、大型店など、集客施設が
隣接し、北野文芸座などとの文化ゾーン形成も期待でき、東街
区案がより適している。
結果的には、それぞれの立場や考え方で、さまざまな意見があり、
東街区案、現在地案のどちらか一方が優れているとする明確な根拠
は見いだし難いように思われると結論付けました。
市議会議員の皆さんからは、建設地を「東街区」に変更した進め
方についてもご指摘を頂きました。市としては、同じ権堂B-1地
区の中であり、当初「権堂」とした建設地の考え方や効果は同じで
あることから提案したものでしたが、議員の皆さんにとっては違和
感があったようです。市としての説明に、不足があったとすれば、
申し訳なく感じています。
ただ、最終的に市議会の意見と市側の意見が一致しないと、行政
は混乱してしまいます。市民会館の場所を権堂B-1地区東街区と
する案について、市議会の賛同を得られなかったことは残念ですが、
市議会の意見を重く受け止め、市民会館は、第一庁舎と一緒に現在
地を中心に検討を開始することとしました。
今後についてですが、すべての意見を満足させることは困難であ
り、要件を絞って検討する必要があると考えています。ただ、市民
会館と第一庁舎を建て替えることは、市議会3月定例会で関連予算
を認めていただいたことにより決定しているわけで、また、合併特
例債の活用も財源確保の面では欠かせないことから、基本構想に沿
って建設を進めていくことには変わりありません。
市としては、これまでの経過や、市としての説明継続性の面から、
以下の5つの基本的な考え方を踏まえて市民会館・第一庁舎の整備
を検討していきます。
(1)当然のことながら、市民会館は、基本構想に沿って文化芸術
振興が図れる施設とすること。併せて、第一庁舎は使い勝手の
良さを追求すること。
(2)市民会館および第一庁舎の建設地は現在地を中心とすること。
(3)中心市街地の活性化のために、権堂B-1地区の再開発事業
は実現していくこと。
(4)合併特例債を活用して平成26年度までに建設すること。
(5)市役所南部方面への相互通行化を見据え、将来の都市構造に
配慮した道路整備が可能な配置とすること。
以上の5点を主な要件として踏まえながら、市議会と十分に相談
し、お互いに意見を出し合う中で成案とし、12月中旬には決定し
たいと考えています。
基本的な考え方について、少し補足させていただきます。平成
26年度までに建設するとしていることについてですが、これは、
それまでに完成させないと合併特例債そのものが使えなくなってし
まうという事情からです。
また、権堂B-1地区の再開発事業を実現することについては、
この再開発計画は地域の皆さんと時間をかけて検討してきている案
件で、ほぼ全地権者の同意を得ていること、さらには、権堂商店街
や大型商業施設イトーヨーカドーとのコラボレーションによる相乗
効果が期待できること、長野市の都市構造を考えると、欠くことが
できない拠点の一つである、ということなどが主な理由になります。
市民会館と第一庁舎の建て替えの成案については、現在の場所で、
両施設をどんな配置にすべきか、規模はどうするか、将来の道路構
造をどうすべきか等々について、関係機関と話し合いを進めていま
す。
併せて権堂B-1地区の再開発事業についても検討を進めていま
す。また、権堂B-1地区のみならず、権堂アーケード通り、権堂
A地区再開発計画、権堂C地区再開発計画、さらには既に動き始め
た中央通りの歩行者優先道路化も含めた地区全体の将来構想につい
ても、地元の皆さんと連携して策定したいと考えています。そうす
ることで、将来の中心市街地活性化の方向性を、点から線へ、さら
には面の開発へ、構想を広げていけるものと思っています。
詳細については、検討する余地がまだまだありますので、皆さん
からの積極的なご意見をお待ちしています。
2010年11月11日木曜日
3年間でめどを付けなければならないテーマ
本日、11月11日で、私の市長任期はあと3年になりました。
任期いっぱい、皆さんにお約束したマニフェストの実現を目指し
て全力を挙げることは当然ですが、私としてはそのほかの施策も含
め、さらに具体化した目標を持ってきちんとやることが必要だと思
っています。そこで今回は、現段階で今後3年間にめどを付けなけ
ればならないと考えている課題を整理してみました。
(1)コミュニティーの再生、新しい住民自治の確立
まずは、都市内分権の仕組みの充実と住民自治協議会の活動を
軌道に乗せることです。そして、コミュニティーの再生に向け、
住民自治協議会中心の仕組みを確立していきたいと思っています。
コミュニティーの再生は、私にとって市長就任時からの重要施策
であり、40年来の念願です。住民自治協議会の取り組みは、始
まったばかりですから最終形はまだ分かりませんが、戦後、社会
が失った大きなものを再生していきたいと思っています。今後、
若者や企業の参加の可能性を探っていく必要がありそうです。
併せて、市域の4分の3を占める中山間地域を、生活の場とし
て、環境保全の場として、中山間地域ならではの付加価値を加え
る場として、活性化することにも努力したいと考えています。
(2)公共交通の活性化・再生と長野市地球温暖化対策地域推進計
画の目標達成
車社会の進展により、良くなったこともたくさんありますが、
課題も生じています。マイカーの便利さを追求するだけではなく、
バス交通や長野電鉄屋代線など、利用者の減少が続く公共交通を
再生させることも重要です。自転車の積極的な活用促進も検討し
ていかなくてはいけません。
同時に、車社会を見直すことで温室効果ガスの排出削減を実現
し、環境問題にも貢献したいと考えています。
(3)ごみ問題、特に焼却施設の建設・最終処分場の確保と産業廃
棄物問題の解決
現在、近隣市町村と力を合わせて進めている、ごみ焼却施設の
建設と最終処分場の確保については、どうしても実現する必要が
あります。特に、清掃センターの建て替えは、地元の皆さんのご
理解の下、やり遂げなくてはならない政策です。併せて、産業廃
棄物問題を解決することも避けては通れません。
(4)長野市民会館・市役所第一庁舎の建設
合併特例債を活用して、耐震対策を行うとともに市民サービス
の向上と質の高い文化芸術拠点の整備を目指します。併せて、I
T市役所の実現と、IT技術を活用したミュージアム構想も検討
したいと考えています。中心市街地を活性化する視点も重要です。
(5)学校の耐震化
安心・快適な学習環境を整えるため、市立小・中学校81校の
耐震補強、老朽施設の改築を計画的に進めています。
(6)斎場の整備
施設の老朽化と高齢化の進展に伴う今後の火葬需要増加に対応
するためには、施設の更新整備が必要です。
(7)長野市民病院の黒字化
安全で質の高い医療を継続的に提供するためには、健全な経営
が必須条件です。
(8)4年制大学の誘致
地域での人材育成、若者の流出防止などの観点から、必要な政
策だと考えています。
(9)企業誘致、既存地元企業への支援(税収アップ)
企業に元気がなければ、まちの元気も出てきません。
(10)いいとき観光エリアの資源活用
まずは、戸隠スキー場・キャンプ場・牧場などの基盤整備を進
め、癒やしの場としての存在感を高めたいと思っています。
(「いいとき」=飯・戸・鬼=飯綱・戸隠・鬼無里の頭文字)
(11)茶臼山地域の活性化
茶臼山動物園開園から間もなく30年。老朽施設更新の時期を
迎えた茶臼山エリアの活性化構想を策定し、一帯を順次再整備し
ていきます。これに併せて、ぜひ、遊園地を新設したいと思って
いるのですが・・・。
(12)オリンピック選手の輩出
本年度創設した「ながの夢応援基金」を最大限活用し、長野の
子どもたちが夢にチャレンジできる環境を作りたいと思っていま
す。スケート選手育成のためには、通年利用できるリンクが必要
かもしれません。また、オリンピック資産を生かすためにも、オ
リンピックを再招致しようという声も聞こえてきています。当面
はユースオリンピック、冬季アジア大会などを視野に入れてはど
うでしょうか。
(13)スポーツによる市民の求心力の創出
市民が心を一つにして盛り上がることができるものをつくりた
いと考えています。サッカー、野球などが候補として思い浮かび
ますが、サッカーが有力だと言えるでしょう。そのためには、グ
ラウンド整備を含む環境整備も重要な要素となります。
(14)国際性の涵養(かんよう)
姉妹都市・友好都市との交流、長野オリンピックを契機とした
一校一国運動などで培ってきた国際性を、もう一段高い位置に押
し上げることは、長野市の将来にとって大きな力になるでしょう。
以上14項目、現在の長野市、将来の長野市にとって必要なこと、
プラスに働くであろうことを市民の皆さんと共有していくことが大
切だと考え、あえて整理してみました。「欲張り過ぎだ」というご
批判は甘んじて受けましょう。もちろん、3年間ですべて実現でき
るとは考えていません。しかし、めどだけは付けたいと思っていま
す。
ただ、このように整理してみますと、すでに手を付けているテー
マが大部分であり、新鮮味に欠ける面もあるかもしれません。そし
て、市民の皆さんの意見をまとめ、財政的にもめどを付け、実現に
結び付けていくことは、容易なことではないとも感じています。
このほか、理念的なことも加えれば、市民すべてが豊かで幸福を
感じる社会、子どもが夢を持てる社会、お年寄りが豊かに生活でき
る社会、働く場がたくさんある社会、音楽や絵画を気軽に楽しめる
社会、スポーツを楽しめる社会、格差が少ない社会、自然を大切に
する社会、歴史文化を大切にする社会・・・まだまだ数え切れない
ほどありそうです。人口が増える、子どもが増えることも理想でし
ょう。
重要性については、人それぞれ考えが違うはずです。また、現実
の話として優先順位も考えなくていけませんし、時間の経過ととも
に、さらに新しいテーマが出てくることもあると思います。長野市
の存在感をさらに高めるために、オリンピックに替わる「新しい旗」
は何だろうかと、私は真剣に考えています。
1998年の長野冬季オリンピック開催に当たって大きな投資を
したことにより、長野市の借金がかなり増えたことは事実ですが、
その反面、長野市のステータスは確実に上がっていると思います。
雌伏13年。努力のかいもあり、当時の借金も順調に減少し、財
政の健全性も維持しています。6町村との合併もあり、長野市の存
在感は一段と上がっていると感じています。現在の長野市には、
14項目すべてのめどを付けるだけの十分な財政力があると思って
います。
ただし、これまでに、国が地方に約束してきた財源、例えば市債
の交付税措置、耐震化工事への補助金、ごみ焼却施設に対する交付
金などの支出がきちんと守られることが前提です。
民主党政権の主張する「地域主権」、「一括交付金」の中身がい
まひとつはっきりしないことから若干の心配はありますが、地域主
権を掲げておられる以上、大丈夫だと私は信じています。
もう一つ付け加えるとすれば、14項目の中には、民間活力を活
用できる事業、あるいは行政と民間が共同で行える事業もありそう
です。いや、むしろその方が多いようにも感じています。
行政がすべてをやる時代ではない・・・ということは、私が以前
から申し上げてきていることです。指定管理者制度の導入は随分進
んだと感じていますが、一方で、完全民営化が進んでいないという
ことも、現段階での私の反省事項です。
2010年11月4日木曜日
市民会議の新しい形式と海外視察
「元気なまちづくり市民会議」は、市内32地区ごとに、各地区
の主催で開催していただいていることはご存じのとおりです。6月
27日の篠ノ井信里地区から始まった本年度の会議もあと4地区を
残すだけとなりました。会議は、今年4月の住民自治協議会の活動
本格化を受け、本年度からすべての地区で住民自治協議会の主催に
なっています。
住民自治協議会の主催になり、会議の進め方も少しずつ変わって
きました。各地区の独自色が出てきていると感じています。
そのような中で、他地区との違いが際立っていたのは松代地区の
市民会議です。ここでの会議は、昨年度に引き続きパネルディスカ
ッション方式でした。
この方式の市民会議は、地区の課題を深く共有するには良い方式
だと思っています。また、これまでの会議とは違う新鮮味もあるで
しょう。ただ、まったく別分野の提案をしたいと思っている皆さん
もいるでしょうから、そのような皆さんには物足りなさを感じる面
があるかもしれません。
今回、松代地区の会議では、私もパネリストの一人として参加さ
せていただき、「農業振興による松代地区の活性化」をテーマに約
2時間、しっかり討論させていただきました。
討論のコーディネーターは、松代地区住民自治協議会区長会副会
長の北原正雄さん、私以外のパネリストは、農業委員の半田孝一さ
ん、松代地区住民自治協議会区長会会長の中島嘉一郎さん、長野県
農業会議事務局長で松代町柴区特別会計の白石芳久さん、専業農家
の花見敏史さんです。
討論の柱にしたのは、「遊休農地・耕作放棄地」、「有害鳥獣被
害等」、「収益を生む農業」、「新規農業従事者を探る」の4点で
す。これらのことは、松代地区のみならず、全市的、さらには全国
的な課題でもあり、すぐに決定的な結論が出るような内容ではあり
ません。
しかし、だからこそ、市民の皆さんや行政などが一緒になって地
道に課題を出し合い、解決策を探り、試行錯誤を繰り返す以外に方
法がないと思っています。その面では、今回のこの会議は有意義だ
ったのではないでしょうか。
以下は、今回の討論の中で出されたことの抜粋です。
遊休農地・耕作放棄地について
・荒廃農地を復元したら、その後作付けした作物に応じて一定の所
得が確保できることが大事であり、荒廃農地対策には販売面のフ
ォローが必要。
・ソバは、中山間地域だけでなく、基盤整備された平地でも作れる。
農地は、荒れることなく作付けできているということが大事。
・野菜生産組合に所属する人を中心に農業生産法人をつくり、契約
栽培でタマネギを作付けしたい。また、農産物加工施設を造り、
販売できる会社と提携したい。
・戦後の農地解放の影響からか、公が関与しないと農地の貸し借り
が進まない。市農業公社の組織を強化したらどうか。公社の松代
支所があってもいい。
有害鳥獣被害等について
・徹底的に防護柵で囲うことが必要。電気柵で囲ってから被害はな
い。ニホンジカは柵を飛び越えるので、今とは違う防護柵が必要。
・薬草は被害に遭わない。イノシシは見向きもせずにまたいで行く。
ただ、栽培技術が確立し、普及するまでの間は「戸別所得補償」
的な支援ができないか。
・猟友会が高齢化して駆除が難しい。
・有害鳥獣は、農地だけでなく、生活の場にも危害をもたらすよう
になってきた。農家だけではなく、住民総意で取り組むべき。
・イノシシ牧場のような場所を作り、不要な農産物をそこに出し、
食べに来たイノシシを一網打尽にしてはどうか。
収益を生む農業について
・「定時」、「定量」、「定質」がないと産地間競争に負けてしま
う。契約栽培、地産地消など多様な販売方法を構築していかなけ
ればならない。
・JAの直売所ができてから意欲が出てきた。自分で売ってみるこ
と、販路確保が大事。
・観光資源がある松代の中心地区で販売拠点を確立して農産物を売
りたい。加工所も併設したい。ロスがない販売ができれば、農家
も育つし、若い世代も出てくる。B級グルメはどうか。
・市が奨励作物へ補助することは素晴らしいが、補助金単価が下が
ってやっていけない。販売も含めて市でコーディネートしてもら
えれば独立できる。
・地元にいながら地元の優れた農産物を知らない。地産地消で地元
の農産物を消費することが大事。
新規農業従事者について
・就農者が絶対的に足りない。Iターンも含めた若者を受け入れる
システムが必要。国や県でも多くの支援策があるが、市として地
元として、地元でなければできない支援が不十分ではないか。
これらのことについては、市としてもさまざまな支援や対策を進
めています。
例えば、遊休農地対策の一つとしては、市農業公社で遊休農地を
借り上げて集積し、貸し出す事業を始めていますが、なかなか農地
がまとまらないのが実情です。有害鳥獣対策では、わなや防護柵の
設置、駆除、緩衝帯整備などに対する補助制度を用意しているほか、
駆除したイノシシを食肉加工して販売することも研究しています。
本来、農業はとても付加価値が大きな産業です。市内には“8桁
(けた)会”、すなわち年間1千万円以上の収入を得ている農業者
だけのグループもあるのですから、条件を整えて苦労をいとわなけ
れば、十分収益を得られるはずだとも思っています。そのために、
法人化の支援もしています。
ただ、いずれも、一朝一夕でできることではありませんし、確実
な決め手もありません。あらゆる手段を講じていくことが大切です。
これからも、市として必要な施策を進め、少しでも前進できるよう
にしていきたいと考えています。
住民自治協議会の話題でもう一つ。鬼無里地区の皆さんを中心に
した有志21人が、“ソフトモビリティー(環境に優しい交通手段)”
の研究のため、自費でオーストリアのザルツブルク州ベルフェンベ
ンク村へ視察に行ってこられたとのことで、先日、その報告のため
に、市役所へお越しくださいました。
ベルフェンベンク村は、アルプスのふもとに位置しており、標高
は900メートル前後、人口は900人余り。日本で言えば、典型
的な中山間地域で、限界集落とも言えそうなのですが、人口は増加
傾向で、10年前より約200人も増えているそうです。そして、
住人の平均年齢は36.5歳というのですから、驚いてしまいます。
村の主な産業は、農業と民宿業。この村には、滞在型の旅行者が
多く、1週間から10日間程度滞在して軽い登山やウオーキングな
どを楽しんでいくそうで、農家は酪農と民宿で生計が立つそうです。
そして、この村の売りは、徹底的な環境対策にあります。村では、
観光客の移動手段として電気自動車、電動アシスト自転車、馬車な
ど、ソフトモビリティーを用意して、自家用車を使用させないよう
にしているそうです。また、住民自身も暖房などには薪(まき)を
利用し、電気も村内の太陽光発電所や、木質バイオマスにより発電
した電力を使用しているというのですから、徹底しています。景観
が良いことに加え、環境の良さからも人口が増えているのでしょう。
村外に通勤している住人もいるようです。
視察してこられた皆さんは、鬼無里地区でも環境に配慮した移動
手段を普及し、観光の目玉にしていきたいと考えています。ミズバ
ショウやブナ原生林など、自然を売りにしている鬼無里地区ですし、
市としても奥裾花自然園への小水力発電施設設置を検討していると
ころですから、ベルフェンベンク村は良いお手本になるかもしれま
せん。
いずれにしても、自費でオーストリアまで視察に行ってこられた
という熱意には、敬意を表する次第です。