現在、わが国の経済は、景気の足踏み状態が続き、要となる雇用
環境の面では、若年層を中心に失業率が依然として高水準で推移し
ており、円高の長期化とデフレ経済の進行、加えて、海外経済の減
速などによる景気の腰折れが危惧される中、先行きが不透明で不安
な状況下にあります。
国では、このような厳しい経済情勢と先行きの悪化懸念を踏まえ、
昨年10月の閣議で「円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策」
を決定しました。内容としては、懸案であるデフレからの脱却と景
気の自律的回復に向けた道筋を確かなものとするため、補正予算を
通じて、雇用や人材の育成、新成長戦略の推進・加速、子育て支援
や福祉などの強化、そして公共事業などの地域活性化を柱とした追
加経済対策を強力に推進しようというものです。
この閣議決定を踏まえて成立した国の補正予算では、緊急総合経
済対策として総額4兆8,000億円余りが計上されました。この
中では、地方公共団体への支援策として、「きめ細かな交付金」と
「住民生活に光をそそぐ交付金」という、地域の目線に立った2つ
の「地域活性化交付金」が創設されています。
「きめ細かな交付金」は、地方公共団体が地域の活性化ニーズに
応じて、ハード事業のみならずソフト事業も含めたきめ細かな事業
を実施することにより、地元の中小企業や零細事業者の仕事量を確
保して雇用の拡大につなげ、地域における景気浮揚などを目指すた
めの交付金です。
また、「住民生活に光をそそぐ交付金」は、住民生活に大事な分
野でありながら、光が十分に当てられてこなかった分野を支援する
もので、消費者行政や弱者対策・自立支援、そして“知の地域づく
り”の3つの分野への積極的な取り組みを促し、地域の活性化を目
指すための交付金とのことです。
これを受けて、本市においても、当該補正予算にかかる関連事業
を速やかに実施するため、1月18日に市議会臨時会を招集し、本
市に交付される「地域活性化交付金」の約4億円に、再算定による
普通交付税4億3,000万円余りの追加交付額を加え、これら国
からの交付財源を最大限に活用した、総額12億6,000万円余
りの補正予算案を編成して提出、議決していただきました。
議決していただいた補正予算の概要は、以下のとおりです。
・道路・河川などの整備経費
生活道路のカーブミラーの維持補修、舗装・側溝の改良、排水
機場・雨水調整池の改修、篠ノ井瀬原田沢・信更久保沢の地す
べり対策、地域公園の危険遊具更新など
・社会福祉、商工観光、教育文化施設など、多岐にわたる施設の改
修や機器整備経費
ふれあい福祉センターの倉庫扉改修、湯福老人福祉センターの
床改修、ビッグハットの空調設備改修、若里市民文化ホールの
ブラインド交換、エムウェーブの消防設備改修、小・中学校普
通教室の天井などへの扇風機設置、支所や社会体育館、市営住
宅の屋根改修、防火水槽改修など
・住民生活に光をそそぐ3つの分野の経費
消費者トラブル対策、DV(ドメスティックバイオレンス)予
防、自殺対策、スクールセクハラ防止、小・中学校の図書整備、
中間教室や特別支援教育に必要な備品類の購入、外国籍児童生
徒の学習用備品類の購入、長野市ものづくり支援センターのク
リーンルーム改修、長野図書館・南部図書館の図書整備、環境
衛生試験所の検査機器の更新など
以上、交付金の趣旨を踏まえた経費のほか、国の補正予算に連動
した関連事業として、子宮頸(けい)がんワクチン接種事業などの
実施に要する経費も計上しました。
これらの補正予算計上に当たっては、緊急総合経済対策の実効を
上げるため、早期に(できれば年度内、遅くも新年度前半に)執行
できる事業を選択しています。加えて、その実施においては、前金
払い制度の活用など、経済対策の効果を速やかに波及させることを
念頭に、地域経済の実需を喚起することに重点を置きました。
当然のことながら、切れ目のない政策対応を行うことが重要であ
り、現在編成中の新年度予算と合わせて、本市における経済の安定
と雇用の確保を図り、元気の出る地域社会の実現に向けた地域活性
化への取り組みを、さらに推進していきたいと考えています。もち
ろん国や県との緊密な連携の下に、事業の円滑な執行を図ることも
重要だと考えています。
この市議会臨時会には、補正予算案のほか「長野市民会館等条例
の一部を改正する条例」も議案として提出させていただきました。
この議案は、市役所第一庁舎および長野市民会館の建て替えに向
け、現在の長野市民会館の供用を本年4月1日から廃止するための
条例改正であり、新年度当初予算に計上する予定の現市民会館の建
物解体費や、新第一庁舎および新市民会館の建設事業費に密接に関
連しています。
本来、この議案は、市民の皆さんへ周知する期間を確保するため
にも、新年度予算案を提出する3月定例会より前の定例会に提出す
べきであったと思っています。しかし、建設地の関係から先の12
月定例会までに提出することができませんでした。今回、国の補正
予算の関係で、臨時会の開催が必要になりましたので、この機会を
捉えて提出させていただいたものです。
すなわち、先月27日に、議会や市民の皆さんのご意見を伺う中
で、「現在地を中心に建て替える」など4つの基本的な考え方に基
づく「望ましい配置案」を取りまとめることができたことを受け、
今臨時会での審議をお願いしたものです。
この長野市民会館の供用廃止条例の議決は、特に重要な施設の廃
止ということで、出席議員の3分の2以上の賛成が必要な特別議決
でした。
私は当初、廃止してもすぐに建て替えるのだから、廃止条例は不
必要ではないかとも思っていました。しかし、地方自治法の公の施
設の廃止に関する考え方としては、「建て替え期間が相当長期にわ
たり、社会通念からして住民の一時的な利用不能と考えるのが困難
な場合は、条例措置をせざるを得ないことになる」と示されていま
す。長野市民会館の場合、建て替え期間は約4年間です。地方自治
法の考え方からすると、この間、市民の皆さんが利用できない状態
が続くことは、一時的とは言えないと判断するに至り、県にも相談
させていただく中で、この廃止条例を提案させていただくことにな
ったものです。
採決の結果、39人の出席議員のうち、32人に賛成していただ
き、長野市民会館の供用廃止が決まりました。十分な賛同を頂いた
こと、感謝しています。
ご賛同いただけなかった議員さんは、長野市民会館の建設そのも
のに反対しておられ、また、議決に当たっての反対討論では、「市
はこの議決により、現市民会館建設を取り壊し、新市民会館を建設
することの同意を議会から得たことになる・・・」との認識も示し
ていらっしゃいました。
廃止条例が可決されたことで、市民の皆さんには、しばらくの間、
長野市民会館がない状態になってしまい申し訳ありません。しかし、
4年後には、きっと素晴らしい市民会館ができるはずです。ご期待
ください。
昭和36年に完成した長野市民会館は、多くの市民の皆さんの思
い出が詰まっている建物です。私的なことで恐縮ですが、長野市民
会館の外壁のれんがは、当時、私の父が経営していた会社の職人さ
んが積んだ物なのです。その点、父の跡を継いだ私としては、ある
意味寂しさも感じていますが、新しく生まれ変わることの意義を大
切にして、期待していきたいと思っています。
平成27年4月供用開始を目指して、今後とも新たな市民会館の
建設に鋭意取り組んでいきます。何とぞご理解くださいますようお
願いいたします。
2011年1月27日木曜日
臨時市議会を開きました
2011年1月20日木曜日
広域行政について
普通地方公共団体には、都道府県と市町村があることはご存じの
とおりです。そして、その規模は、県のような大きな自治体のほか、
県内の市町村では長野市のように人口が40万人近い市も、
1,000人に満たない小さな村もあり、千差万別の状況です。
小規模自治体には、小さいなりの良さがありますが、一方で効率
面、そして人材確保の面から厳しいことも多くあります。
国ではそういう状況を解決するために、広域行政を行うための制
度を整え、効率化を図ろうとしてきたことは事実です。
広域行政には、幾つかの方式があります。
(1)第一には、市町村合併です。
長野市も平成16年度に豊野町・戸隠村・鬼無里村・大岡村の4
町村、平成21年度に信州新町・中条村の2町村、計6町村を編入
合併しました。合併にはメリット・デメリットがありますが、現段
階では順調に推移していると思っています。
全国的に見ると、市町村数がまだ多いとおっしゃる方もいらっし
ゃいますが、平成の大合併が始まる前、全国に約3,000あった
市町村が1,700ぐらいになったようです。
(2)もう一つは、広域連合制度です。
これは、幾つかの自治体が集まって、広域的に実施することでメ
リットがある事業を共同で行うための制度で、長野市も長野広域連
合の一員として事業に取り組んでいます。構成市町村は、長野市、
須坂市、千曲市、坂城町、小布施町、高山村、信濃町、小川村、飯
綱町の9市町村です。
長野広域連合では、老人福祉施設の設置・運営、ごみ処理施設の
建設、介護保険制度における介護認定審査などを行っています。
ただ、これはあくまでも私の見解ですが、この“広域連合”とい
う組織には決定的な欠点があります。それは、構成市町村全てが同
意しないと何事も実行に移せないということです。
この全会一致ということにはかなり無理があります。コンピュー
ターシステムの共同化、教育委員会の共同設置、GIS(地理情報
システム)の共同導入、産業誘致・観光政策の共同実施など、私個
人とすれば、共同でやれば効果が上がるだろうと考えている施策が
いろいろあるのです。しかしながら、それぞれの自治体の歴史、立
場、思惑が複雑に絡み、一致しないため、実施に移すことは難しい
と感じています。
また、地方自治法上では、連合長や連合議会の議員を一般選挙で
選ぶことも可能になっていますが、利用されてはいないようです。
広域連合については、全国的に見て長野県が最も進んでいると言
われてきました。長野県では、県の助言もあり、県内10広域圏ご
とに広域連合が設立され、広域行政に取り組んでいます。全国的に
は、後期高齢者医療や介護保険など、国の施策導入に伴って設立さ
れた広域連合が多く、地域の特有課題を解決するための組織として
は、まだ十分に活用されていないようです。
一方で、長野県では広域連合が有効に機能したために、市町村合
併があまり進まなかったという側面もあるようです。
このほか、市町村が共同で行政事務を実施する方法として、一部
事務組合の設置や市町村相互の委託・受託という方式もあります。
長野市では、し尿処理、斎場、消防業務などでこれらの方式を採用
しています。
(3)新たに「定住自立圏構想」という制度が動き出しました。
正直、私としても理解しきれていない部分もあるのですが、総務
省のホームページなどを参考に紹介します。
この制度は、“都市は都市らしく、農山漁村は農山漁村らしく”
ということで、地方圏において、安心して暮らせる地域を各地に形
成し、地方圏から三大都市圏への人口流出を食い止めるとともに、
三大都市圏の住民にもそれぞれのライフステージやライフスタイル
に応じた居住の選択肢を提供し、地方圏への人の流れを創出しよう
とするもので、総務省が全国的見地から推進しています。平成21
年4月から全国展開されており、各地で取り組みが進み始めている
とのことです。
文言から受ける印象では、すぐにも飛び付いてみたくなるのです
が、具体論では、なかなか難しい面もあるのです。
制度の要綱から、具体的な部分についてお話しします。
まず、以下の三つの要件を満たす市が、「中心市宣言」を行うこ
とが必要です(まだ宣言していませんが、長野市は「中心市」の要
件を満たしています)。
(ア)人口5万人程度以上
(イ)昼夜間人口比率が1以上
(ウ)三大都市圏の区域外にある市
そして、中心市と連携する意思のある周辺市町村の意向に配慮し
つつ、地域全体のマネジメントなどにおいて中心的な役割を果たす
意思を表明することが必要とのことです。
一方、周辺市町村とは、中心市と近接し、経済、文化、または住
民生活において密接な関係を有する市町村で、通勤通学割合10%
圏などの要素も考慮して、関係市町村が判断するとされており、あ
くまで周辺市町村の自主的判断ということのようです。
この中心市と周辺にある市町村が、1対1の関係でそれぞれの議
会の議決を経て「定住自立圏形成協定」を結びます。この協定は、
あくまで自治体と自治体との個別協定であり、広域連合とは大きく
違います。また、協定を結んだ市町村の範囲が“定住自立圏”とい
うことになります。
協定では、「集約とネットワーク」の考え方を基本に、役割を分
担・連携して定住を図るために必要な生活機能を確保するという観
点から、以下の三つの政策分野ごとにそれぞれ一つ以上、連携する
具体的な事項を規定することになっています。
(ア)生活機能の強化
医療や福祉、教育、土地利用、産業振興の取り組み
(イ)結びつきやネットワークの強化
地域公共交通や地産地消、地域内外の住民との交流・移住促進
など
(ウ)圏域マネジメント能力の強化
中心市等における人材の育成、圏域内市町村の職員等の交流な
ど
その上で中心市は、定住自立圏形成協定の締結により形成された
定住自立圏全体を対象として、将来像や、協定に基づいて推進する
具体的取り組みを記載した「定住自立圏共生ビジョン」を策定し、
公表することになっています。
以上が、定住自立圏構想の概要です。
この制度に対する長野市の考え方ですが、現状では以下のように
整理しています。
(ア)二度の合併もあり、長野市は長野地域において中心的な役割
を果たしてきていると認識している。
(イ)広域連合のほか、一部事務組合や事務受委託で、必要かつ具
体的な事業を共同で取り組んできている。
(ウ)平成20年度に要綱が示された新たな制度であり、メリット・
デメリットを含め、制度導入による効果が必ずしも明確ではな
く、動向を見極める必要がある。
とにかくこの定住自立圏構想は、中心市が圏域全体の暮らしに必
要な都市機能を集約的に整備するとともに、周辺市町村においては
必要な生活機能を確保し、農林業の振興や豊かな自然環境の保全を
図るなど、互いに連携・協力することによって、定住を促進し圏域
全体の活性化を図ることが目的です。すなわち、中心市と周辺市町
村が結ぶ協定で、いかに具体的・効果的な取り組みができるかとい
うことが重要だと思っています。
実は、今年になって、非公式ではありますが、ある自治体から、
この定住自立圏構想について研究会を設置したらどうかとのお話を
頂いています。長野地域で唯一の中心市要件を満たす市として、ま
た、この地域全体の活性化を図るためにも、研究会を立ち上げて検
討することは大いに結構なことだと考えています。
そのこともあり、今回、あらためて資料に目を通したのですが、
要綱によりますと協定の期間は原則として定めがなく、廃止は一定
の制限はあるものの可能とのことです。一番びっくりするのは、中
心市が属する県とは異なる県に属する周辺市町村とも協定を締結で
きることです。まだまだ理解できない部分もあり、これからも勉強
が必要だと感じています。
2011年1月13日木曜日
新年に考えたこと
暮れから新年にかけて、各地の雪による被害が報じられましたが、
幸い長野市では大きな被害が発生することもなく、無事、新年を迎
えることができました。平地では雪が少なくて除雪費用が掛からず、
スキー場は適度な積雪でお客さんに来ていただける・・・大変あり
がたい状況です(除雪にご協力いただいている事業者のことを考え
ますと、複雑な思いでもあります)。被害のあった地域の皆さんに
は申し訳ありませんが、雪が長野だけ避けてくれたのか・・・そん
な気すらしてしまいます。
年末年始の休みを終えて、再び日本の政治・経済が動き始めまし
た。以前にも申し上げましたが、私は、極力、国政や県政の批判を
しないようにしているつもりです。ただ、新年のマスコミの論調を
見聞きする中で、これだけは言うべきと感じたことがあります。
まず、「迷走日本政治」と題された1月3日付けの読売新聞「社
説」から、冒頭部分を抜き出してみます。
**********
内外の懸案に機敏に対処できない政治体制が続いている。このま
までは国民の政治不信は一層増大し、日本は国際社会の競争からと
り残されてしまう。危機的な状況にあるのに政府・与党には切迫感
がない。
課題は、はっきりしている。
1.米軍普天間飛行場問題を解決し、日米同盟を立て直す。
1.安定した社会保障制度を築くため消費税率を引き上げる。
1.環太平洋経済連携協定(TPP)に参加する。
国の行方を左右する喫緊の課題を、迅速かつ適切に処理できる政
治体制を築かねばならない。衆参で与野党逆転の「ねじれ国会」で
はそれができまい。政界再編が今ほど求められている時はない。
**********
そのほか、「政治とカネ」の問題はまったくの論外としても、与
野党の駆け引き問題、中国やロシアとの外交問題、マニフェストの
見直し問題等々、今の政府・与党、ひいては日本の政治全体がさま
ざまな課題を抱えていると言えます。
全て喫緊の課題です。中でも、消費税率の引き上げは、地域主権
を実現するためにも、そして、TPPに参加して弱点である日本の
農業政策を見直すためにも、さらには、増大する社会保障関連経費
に対応するためにも、そして、ある意味では最大項目と言えそうで
すが、財政再建、財政規律を回復するためにも必要な政策でしょう。
そのためにはどうすればいいか。結局、何を言いたいかというと、
“がらがらぽん”つまり、政界再編が必要なのではないかというこ
とです。そして、緊急時ですから、早急な決断と実行が必要という
ことです。
話は変わります。「市町村行政は総合行政である」ということは、
昔から知っていたつもりです。市長になり、実際にそれを経験して
みると、なるほど確かに「総合行政」だということを実感できるよ
うになりました。
「総合」であるが故に、偏った判断はできないなあと思っていま
す。そして、「総合行政」ということを考えれば考えるほど、また、
人の話をお聴きすればするほど、そして、新年の数多い新聞の特集
記事や本を読めば読むほど、あれもこれもやらなくてはならないと
思ってしまい、難しいなあ、長野市には今後も課題がたくさんある
なあ、ということをあらためて痛感しているところです。
昨年11月11日のこのメルマガで、市長任期である今後3年間
でめどを付けたいテーマとして、14項目を列記しました。ただ、
市は「総合行政」ですから、あらゆることを考えなくてはいけませ
ん。そういう意味では、14項目ではとても足りない、ということ
は理解しているつもりです。
他方、14項目だけでも、全てを実現することは難しい、欲張り
過ぎだ、ということもありそうです。だからこそ、何とかめどだけ
でも付けたいと思っているのですが・・・。
あのメルマガ以降に、AC長野パルセイロのJFLへの昇格が実
現しました。14項目のうちの1つに挙げた「スポーツによる市民
の求心力の創出」という面で、パルセイロは求心力になり得る最有
力候補ですから、この機会をしっかり生かしていきたいものです。
ただ、そうなりますと、さらに上へ、つまりJリーグへ昇格する
ための準備を始める必要があります。これはこれで大変なのですが、
めどだけでなく、ぜひとも実現にこぎ着けたいものです。
もう一つ、具体化しようと考えていることが出てきました。それ
は、農業の再生に向けて、具体的に新規就農者を募集していこうと
いうことです。社会を変えるためには、小手先ではなく、時間がか
かっても根本的な解決、すなわち「教育」ということを考えるのが
重要だということに思いが至りました。具体的には、昨年最後のメ
ルマガで書かせていただいたとおりです。
この「農業の再生」ということについては、14項目の中の「コ
ミュニティーの再生、新しい住民自治の確立」に書き込んでいまし
た。そのため、14項目の中では前面に出ていませんでしたが、め
どを付けたいと私が考えていることの重要な1項目であることに変
わりありません。「総合行政」であるが故に、一つの課題を解決す
るためには、さまざまな面からのアプローチが必要で、農業を再生
することも大事な事項の一つです。
「総合行政」であるが故の難しさもあります。
まず、市民の皆さんの多様な意見を一つにまとめることの難しさ
です。全ての市民の皆さんが望む方向性を示すこと、さらにそれを
実現することは、無理なことだなあというのが実感です。
結局、大多数の市民の皆さんの意向を推測して、これが皆さんの
意思だと結論付けるのですが、それが正しい意見だと正確には言え
ない場合がありそうです。
また、ただ単に“市民の皆さんが望んでいるから”、逆に“望ん
でいないから”というだけで政策判断をするのでは、ポピュリズム
(大衆迎合主義)だと批判されてしまうことも事実でしょう。真実
は、あるいは大切なこと・必要なことは、必ずしも市民の皆さんの
支持を得られることばかりではないはずです。「良薬は口に苦し」
ということも心していかなくてはならないと感じています。
例えば、古くなった市営住宅について、「あれはひどいよ!建て
なおすべき!」という意見があります。確かに、古い市営住宅を全
て建て替えれば、住んでおられる市民の皆さんには喜んでいただけ
るはずです。
ただ、行政としては、建設資金が掛かりますし、住んでおられる
人、これから住むことになる人だけが恩恵を受けるわけですから、
家賃は上げさせてもらいたいということになるわけです。でも、そ
れでは困るということになるでしょう。民間で経営しておられる貸
家や賃貸アパートの経営を圧迫する、という側面もありそうです。
市営住宅が次々に建てられたのは昔のことで、当時の国の政策に
より補助金を受けて造ったものです。そして、民間の賃貸住宅が余
っている現在でも、長野市は市営住宅を造るために承認を受けた用
地を保有しています。用地は空き地のままですから、市民の皆さん
から見れば、早く何とかすべきだということになるわけですが、そ
う簡単にはいきません。
確かに、何十年も前ではありますが、市営住宅の建設計画を政策
決定し、大臣の承認まで得たのですから、簡単に変えられないこと
も事実なのです。
ただ、このところの日本の事情と同じように、長野市の事情も変
わってきています。具体的には、人口減少時代に入っている、低成
長時代に入っている、住宅は数の上では余っている・・・さらには、
お年寄り世帯の入居者が増加するなど、市営住宅の果たす役割自体
が変化していることもあり、本当に過去の計画のまま進めて良いの
か、個人的には疑問も残っています。
結局、このことについても、先ほどの政府のことについても、結
論は私がよく引用させていただくフレーズに行き着くと思っていま
す。藤原正彦さんの著書『国家の品格』からの抜き書きです。
「どんな論理であれ、論理的に正しいからといってそれを徹底し
ていくと、人間社会はほぼ必然的に破綻に至ります。」
2011年1月6日木曜日
長野市のスケート文化
新年あけましておめでとうございます。皆さまには、元気で新年
をお迎えになったこととお喜び申し上げます。
今回は、長野市のスケート競技が、長野オリンピック開催から
13年経過する中で、ようやく文化として育ってきたことを、うれ
しいニュースとしてお話しします。
昨年末、ビッグハットでフィギュアスケートの全日本選手権大会
が開かれ、今季のチャンピオン争いと同時に、3月に東京で開催さ
れる世界選手権への出場権をめぐり、真剣勝負が行われました。大
変な盛り上がりになったことは、ご存じのとおりです。
その際、この大会に合わせてお越しになった長野県スケート連盟
の林泰章会長と、長野市や長野県、さらには、日本や世界のスピー
ドスケートの実情や将来について、じっくり懇談させていただくこ
とができました。林さんは、少し前に日本スケート連盟の副会長職
を定年規定により退任されたばかりですから、スケート界のことに
ついては、よくご存じなのです。
今回は、盛り上がったフィギュアスケートではなくて、スピード
スケートのことについて報告します。
開口一番、林さんがおっしゃったのは「市立長野高校の活躍にび
っくりだ・・・」でした。私はあまりよく知らなかったものですか
ら、後で調べてみたのですが、確かに市立長野高校は大活躍をして
います。
昨年12月14・15日に、エムウェーブで開催された長野県の
高校スケート競技会で、男子は総合2位(1位は佐久長聖高校)、
種目別では500メートル、1500メートル、2000メートル
リレーの3種目で優勝。女子は総合4位。加えて、日本スケート連
盟の「ジュニア強化選手B」に奥原綱希さん、宮澤里沙さんの2人
が指定されているとのことでした。
昔、「スピード長野」と言われた時代、スピードスケートは北海
道と長野県が常に覇を争う存在だったことは、多くの皆さんの記憶
にあると思います。
ただ、長野オリンピックが終わった翌年、すなわち平成11(1
999)年の1月、茅野市で開催された県の中学校選手権で、長野
市からの参加選手は“0”だったのです。
当時、私は、株式会社エムウェーブの副会長(会長は当時の塚田
市長)の立場にあり、スケートを盛んにするためには何が必要か、
一生懸命考えていた時期でした。しかし、この“0”という数字に
は、正直びっくりしましたし、参りました。オリンピックを開催し
た都市として、「これは何だ!」という思いでした。
調べてみると、“スピード長野”を支えていたのは、長野県全体
ではなくて、諏訪湖のある諏訪地方と「田んぼスケート」が盛んな
佐久地方が主で、そのほか松本周辺が多少といった程度。長野市に
は、競技を支えるスケート文化はほとんどなかったのです。ですか
ら、選手を育成する上で一番のベースになる中学校にも、スケート
部なんてなかったということでしょう。
そこで急きょ、エムウェーブの副会長として、私が長野市スケー
ト協会の会長職を買って出て、組織・役員の充実、資金集めを行い、
そして中学校の先生の中からスケートの指導ができる方にお願いし
て、スケートクラブの育成に努めていただきました。
しかし、文化がないというのは大変なことです。エムウェーブの
役員会などでは、長野市を「日本のスケートの拠点にしたい」など
と主張していましたが、すぐに実績を上げるようなことはできませ
んでした。それでも指導者の育成や雇用、エムウェーブスケートク
ラブの育成など、少しずつではありますが前進してきたように思い
ます。
皐月高校が市立長野高校に移行した際、当時の校長先生と相談し
て、スケート部を本格的につくることになりました。それから3年。
林さんをはじめとした皆さんの支援で素晴らしい指導者をお迎えす
ることもでき、少しずつではありますが、部員が増えてきました。
平成20年度(創部1年目)部員数男子3人、女子2人
平成21年度(創部2年目)部員数男子6人、女子4人
平成22年度(創部3年目)部員数男子7人、女子6人
数が全てではないと思いますが、部員が増えるに従って、成績も
徐々に上がり、前述の成績につながってきたようです。
小学生が主体ですが、エムウェーブスケートクラブも徐々に会員
数が増えて、平成19年度35人、20年度43人、21年度59
人、22年度は62人となり、盛んになってきています。
10年間、長野市で開催することになっている全国中学校スケー
ト大会も、今年で4年目。ようやく長野市出身の選手が出場できる
ようになってきたようです。
この大会を10年間も長野市で開催できることは、市内の中学生
スケーターにとって大きなメリットであり、長野市のスケートを強
くするための絶好のチャンスと考え、この機会を何としても活用し
たいと思っています。
そして、
(1)大会が開催されるとき、エムウェーブを観客でいっぱいにし
たい。
(2)強い選手を育成して、長野市へ行けば強い選手と対戦できる
という期待感を全国の中学生スケーターに持たせたい。
(3)優秀な中学生スケーターには、市立長野高校へ進学してスケ
ートを継続してもらいたい。
(4)高校球児の憧れが甲子園であるように、エムウェーブを中学
生スケーターの憧れの場にしたい。
そんなことも夢見ています。
実は、林さんとエムウェーブとは深いつながりがあります。
長野オリンピック開催よりかなり前の話になりますが、長野市に
造られるオリンピック施設の後利用を検討する「オリンピック施設
運営検討委員会」がつくられ、私もそのメンバーの一人でした。
当時、施設の後利用で一番大きな問題だったのが、大アリーナで
あるエムウェーブをどうすべきか、ということでした。委員会とし
ては、ホワイトリング、ビッグハット、エムウェーブ、アクアウイ
ングの4カ所もスケート場は要らない、特にエムウェーブは、大き
な施設だから、氷を使うものでなく、違う目的に転用すべきである
という意見にほぼまとまりかけていたのです。
そこへ、長野県スケート連盟の会長で、当時、岡谷市長だった林
さんが委員会に乗り込んでこられ、力説されたのです。
それは、「オリンピック遺産は、まさにエムウェーブである。他
の小さなリンク(30メートル×60メートルのリンク)は、東京
をはじめ“どこにでも”と言っていいくらいにある。岡谷にもある。
小さなリンクを長野に残しても何の特徴にもならないし、なくても
困らない。屋根付きのスピードスケート会場であるエムウェーブこ
そ、スケート場として残すことが必要な政策である」という趣旨だ
ったと記憶しています。
この演説により、エムウェーブはスピードスケートの会場として
残すべき、ということが、委員会での意見の主流の考え方になった
のです。私は、政治家の迫力ある弁舌にびっくりしたことを思い出
しています。
結果としてエムウェーブは、当時、国内唯一の400メートルダ
ブルトラックを持つ屋内リンクとして存続し、日本一、いや世界一
の存在に成長したと言って良いのではないでしょうか。
このような経過もあり、林さんは、エムウェーブの運営について
心配をしておられるのだと思います。林さんには、大会誘致や指導
者育成、加えて、このたびの「ながの夢応援基金」設立へのご協力
等々、大きな応援をしていただいており、私も感謝しています。
スピードスケートは、まだまだマイナーな競技です。これをメジ
ャーな競技に育て上げるためには並大抵の努力では難しいと思って
います。行政の支援、資金集め、選手集め、指導者の育成・・・そ
して、競技者としてスケートをしっかりやった後に勤める企業や組
織も必要です。オリンピックを目指して、みんなが協力し努力する
体制が欲しいのです。皆さん、ぜひご協力をお願いします。