2011年2月10日木曜日

「中山間地域市民会議」と「教育委員さんとの懇談」


 1月27日、中山間地域市民会議を開催しました。恒例になった
この会議、中山間地域の活性化について意見を交換する場として、
多くの市民の皆さんに参集していただけるようになったと思ってい
ます。
 会議の参加者は、市内の中山間地域13地区の住民自治協議会の
会長さんをはじめとした各地区の皆さん、市議会議員の皆さん、地
域活性化推進員、支所長などで、100人ほどの規模になりました。

 本年度は昨年度とは趣を変えて、中山間地域共通の悩みである
「野生鳥獣対策」にテーマを絞って開催しました。

 会議では、まず信州大学農学部の泉山茂之教授を講師にお迎えし、
野生鳥獣に関する講演をしていただきました。講演の中で泉山教授
が強調されていたのは、地域が一体になっての取り組みの大切さで
す。主な論点を、以下の4点に整理されていました。
(1)誘引する原因をなくす
  収穫されなかった野菜など、餌になる物を畑に残さない
(2)必ず田畑を防御する
  緩衝帯の整備、柵・電気柵の設置、モンキードッグ(農地にや
  ってくるサルなどを追い払うために訓練されたイヌ)の利用な
  ど、どんな方法を使ってでも必ず防御する
(3)集落全体で取り組む
  対応にむらがあると付け入られる
(4)必ず「追い払う」
  野生鳥獣が畑にやってきたら、必ず、人間が追い払う

 また、「総合的防除」、つまり、できることは何でも実践すると
いうことで、次の3点を強調されていらっしゃいました。
(1)当事者になる
(2)地域ぐるみで取り組む
(3)決して「あきらめない」
 以上、いろいろなアドバイスを頂きました。

 続いて、事例発表として、松代地区住民自治協議会副会長で区長
会長の中島嘉一郎さんに素晴らしいお話をしていただきました。お
話によりますと、中島さんが自治協の副会長になって松代地区内を
歩いてみたところ、野生鳥獣による被害の大きさ、区民がいかに悩
んでいるかを知り、これは何とかしたいと考えて取り組みを始めた
とのことでした。

 昨年度までは、松代といえば文化・観光について語ることが自治
協の通例でしたが、本年度は農業、それも野生鳥獣対策。これにつ
いて、自治協を挙げて取り組みを始めたとのことで、正直びっくり
でした。

 中島さんは、この取り組みについて、情熱を込めて語られました。
住民の意識改革を手始めに、さまざまな対策を講じた意欲的な取り
組みに感心しましたが、それ以上にびっくりしたのは、これまで農
業には縁がなかったはずの中島さんが取り組んでいるということで
す。自治協の副会長になり、早期に実情を把握して、何とかしなく
てはと思い立ち、地区を挙げて取り組む体制をつくり上げたという
中島さんの姿勢と努力に敬服しています。

 講師の泉山教授の意見とともに、松代の皆さんの実践力が、中山
間地域全体に広がることを期待したいと思っています。

 中山間地域市民会議よりだいぶ前のことになりますが、年明け早
々に長野市の教育委員の皆さんとの懇談会を行いました。
 市の教育委員会は、昨年末の小泉教育委員長の退任により、新た
に近藤教育委員長をお迎えしています。また、堀内教育長の就任か
ら1年を過ぎたところでもあり、市長として教育委員会の中心とな
る新たなお二人の意見を十分お聴きする良い機会、そして私の考え
方を知っていただく大切な懇談になったと考えています。
 懇談会では、お二人だけでなく、夏目委員さん、塚田委員さん、
藤澤委員さんの5人全員の皆さんとじっくりお話しすることができ、
とても有意義でした。

 教育委員の皆さんからは、以下のことについて提言がありました。
(1)小・中学校の耐震化事業について
(2)小・中学校校舎大規模改造について
(3)新教育課程教科書・補助教材について
(4)学校図書館運営事業について
(5)第四学校給食センター建設事業(案)について
(6)文化芸術の振興について
(7)公民館の建設・改修について
(8)放課後子どもプランの推進について
(9)重要伝統的建造物群保存地区選定について
(10)大室古墳群アクセス道路の整備について
(11)市立博物館の展示改善および館内改装について
(12)博物館学芸員の増員について
(13)スポーツ環境の整備・充実について
(14)スポーツ振興基金について

 いずれも重要な項目であり、従来から懸案になっていることも多
いのですが、大規模な予算措置が必要な事業が多いので、なかなか
実現が難しいテーマだと思っています。

 ご存じのとおり教育委員会は、行政委員会の一つとして市長部局
とは一線を画しており、独立した存在です。ただし、予算の編成・
提案権については、地方公共団体の一体性を確保するという趣旨か
ら、独立した権限を持っていません。このため、ご提言頂いた事項
を実現していくためには、市長部局に予算要求し、市議会での議決
を経る必要があります。

 随分前の話ですが、故柳原市長さんの時代、私が市PTA連合会
の会長をしていたときのことです。当時、私は、会長として市長陳
情をする機会が何回かあったのですが、私の意見が強硬だったせい
でしょうか、柳原市長さんから「それは市民税とは別に、教育税を
集めて、独自にやっていただくより仕方ないですね・・・」と言わ
れてしまったことがあります。そんなことを懐かしく思い出しまし
た。

 今回の懇談を通して、教育委員の皆さんからは、さまざまなご提
案を頂くことができました。それに対して市長の立場から申し上げ
たことは、「ご提案はどれも大切な事業ですから、いずれは全てや
らなくてはならないと思いますが、予算に限りがありますので、全
体のバランスを見ながら、優先度も考えて、判断させていただくこ
とにしたい」ということです。
 今回の懇談会では、以前の私のような強硬意見はありませんでし
たので、当時の柳原市長さんのような発言をせずに済みました。