2012年1月19日木曜日

総務大臣と中核市市長との懇談会


 1月10日、東京で開催された「総務大臣と中核市市長との懇談
会」に出席しました。
 この懇談会は、中核市(人口30万人以上が指定要件。現在は全
国に41市あります)が直面する諸課題について、総務大臣と中核
市市長が直接意見交換をする場で、平成9年に始まり、今回で13
回目となります。

 懇談会では、今回参加した17市の各市長の意見を「地方制度」
「復旧復興・防災」「地方税財政」の3つのテーマに分け、市長が
各市の現状を踏まえた課題や提言などを発言し、それについて意見
交換を行いました。
 私は、「地方制度」の中で、「地方自治が発展するための改革に
ついて」と題して、3つの内容について発言しました。

(1)サービス競争の解消について
 社会保障給付サービスの適正水準は、国がその責任において確保
すべきですが、実態としては、地方自治体間で過度なサービス競争
を引き起こしていると感じています。「国と地方の役割分担をきち
んとして、社会保障関係予算のこれ以上の膨張を抑えないとどうに
もならない」と申し上げました。

 現在、地方自治体が担っている社会保障給付サービスの中で、例
えば、子どもへの福祉医療費給付は、少子化対策・子育て支援の役
割も担うものとして、近年、対象年齢の拡大に対するニーズが非常
に高くなってきています。そのため、地方自治体の判断により対象
年齢を引き上げるなどの独自政策が加えられています。対象年齢の
引き上げは、子育て家庭の経済的負担の軽減につながりますが、引
き上げに伴う経費は地方自治体の負担となります。このため、競っ
てこうしたサービスを上乗せすることは、地方自治体の財政に大き
な影響を与えるとともに、地方自治体間での不公平を生じさせる結
果となっています。誰が責任を持って取り組む施策なのか、国なの
か、地方自治体なのか、そして、国民を含めた負担割合をどのよう
にするのか、本来確立されるべきことが確立されていない。国は、
適正な基準、そして地方との役割分担を明確にすべきだと考えてい
ます。このことについては、昨年11月に和歌山市で開催された中
核市サミットでも主張しました。

(2)予算単年度主義の弊害の解消について
 地方自治体が複数年度にわたる大規模事業を計画的に推進するた
めには、国の補助金を含めて安定した財源の確保が必要です。しか
し、近年、事業の2年目以降の補助金交付額が、要望額を大幅に下
回ることがあります。そのため、既に決定している地方自治体の計
画が、円滑に推進できるよう、「国は基金を造成するなどして、必
要な補助金の総額を確保し、翌年度以降も安定した補助金を交付で
きる仕組みを構築すべき」と申し上げました。

 これは、国の補助金が単年度ごとに交付決定されるために起こる
問題であり、交付額が要望額を下回った場合、地方自治体は、事業
期間を延長したり、補助金の不足分を自主財源へ振り替えたりする
などの対応をしなければなりません。このような事案が近年特に多
く見られることから発言したものです。

(3)選挙制度について
 長野市は、平成17年と22年の合併により市域が拡大し、市域
面積の約4分の3が中山間地域になり、そこに人口の約10%が住
んでいる状況です。昨年9月の市議会議員一般選挙の結果を見ても、
こうした地域からは議員が選出されにくいため、「許容される1票
の格差などの基準を示し、複数選挙区を設けやすくする、あるいは
選挙区選出議員と市全域の選出議員の並立制導入を可能にするなど
の柔軟な選挙制度が必要である」と申し上げました。

 長野市は、自分たちの地域は自分たちでつくるという都市内分権
の理念の下で住民自治を進めていますが、中山間地域から議員が選
出されにくい状況で、そこに住む皆さんの声をどう市政に反映させ
ていくか、頭を悩ませている問題です。
 選挙制度を柔軟にし、地方自治体自らが、市議会議員選挙のある
べき姿を議論することは、自らの地域をより深く考えることにもな
ります。各地方自治体の特色に対応した市議会議員選挙制度が構築
できれば、より一層地方自治が進むのではないでしょうか。
 
 なお、平成23年度に創設され、国庫補助金の一部を交付金化す
る「地域自主戦略交付金」については、高松市長さんから発言があ
りましたので、私からは申し上げませんでした。道路や河川整備と
いったまちづくりのための補助金を交付金化することを一層進める
とともに、都道府県と政令指定都市に限られている対象を中核市に
まで拡大してほしいと考えています。
 「ひも付き補助金」を段階的に廃止し、地域の自主裁量を拡大す
るとともに、交付団体を拡大することにより、自由度が高まり、地
方のことは地方で決めるという地方分権が、さらに進むものと考え
ています。

 こうした発言に対する総務省の見解として、選挙制度については、
「行政制度であるとともに政治制度でもあるため、各政党での議論
が必要になってくる。市全域から選出される議員、選挙区から選出
される議員という並立制度は、これまで議論されてこなかったこと
もあり、今後の研究課題としたい。また、現在の選挙制度では、選
挙区は市町村の条例でつくることはできるが、選挙区をつくった場
合には、衆議院・参議院議員選挙と同じように1票の格差という問
題が、憲法上の要請として出てくる。こうしたことも踏まえた議論
が必要」といった内容でした。
 なお、予算単年度主義の弊害の解消やサービス競争の解消につい
ては、あらためて問題の共通認識をしていただけたと思っています。

 また、懇談の締めくくりに福田総務大臣政務官から、「自分たち
の地域において税財源を確保することが大切であり、そのためには
地域活性化が必要」と切り出され、昨年創設された総合特区制度に
ついて話がありました。これは従来の構造改革特区制度とは異なる
もので、「規制の特例」だけでなく、「税制・財政・金融上の支援
措置」など強力な支援を行うもので、先月には全国33カ所の指定
地域が決定したということです。約2,100億円の支援により、
新たな産業の創出や雇用促進に伴う内需が拡大し、5年後には約9
兆1,000億円の経済効果を見込んでいる。この特区を全国的に
展開することで、日本の産業構造の転換が進み、デフレ脱却の道筋
を描くことができるとの内容でした。

 以上、私が発言した内容を中心にお話ししました。いずれにして
も、各市には、さまざまな課題があり、数多くの意見・要望が出さ
れました。しかし、これだけの内容を話し合うのにもかかわらず、
会議時間は1時間45分、また各市長の発言時間が2分では、十分
な意見交換には至りませんでした。サービス競争の解消についても
っと意見を聴きたかったというのが正直な感想です。国としては、
各地方自治体がさまざまな背景から判断し決めたことに対しては、
口出しできないという事情もあると思いますが・・・。消化不良と
いうか、ちょっと残念でした。
 また、今回参加した中核市は、41市中、半分にも満たない17
市。各市長さんも多忙を極めているとは思いますが、1年に1回の
ことですから、できればもっと多くの市長さんに参加していただけ
ればと思います。そう言う私も毎年は参加できてはいないのですが
・・・。そして、もっと議論が深まるような工夫をすることで、地
方の元気につながる懇談会になることを期待しています。