冬の長野市の魅力を一層高めるのはウインタースポーツです。そ
の代表格は、スケートとスキーではないでしょうか。今回のかじと
り通信は、シーズンまっただ中のスケートとスキーの話題です。
まずは、スケートの話題として、世界トップレベルのスピードス
ケート競技施設エムウェーブを運営する株式会社エムウェーブにつ
いてです。
昨年6月に土橋文行社長が急逝されてから6カ月間、空席であっ
た同社社長に、1月12日、土屋龍一郎氏が就任しました。土屋氏
は、就任直前まで臨床検査業の株式会社ツチヤ・エンタプライズ
(1月1日に社名を株式会社北信臨床に変更)の社長などを務めて
いました。長野冬季オリンピックが開催された1998(平成10)
年に長野青年会議所理事長、2001(平成13)年には日本青年
会議所のトップである会頭を務めたという経歴の持ち主です。
就任当日開いたエムウェーブでの記者会見には、私も株式会社エ
ムウェーブの会長として同席しました。記者会見の中で土屋社長は、
スケート入館者の一層の増加を目指すことはもとより、「スタンド
席だけでも1万人を収容できる、これだけの大規模施設は周辺自治
体にはない。スケート場として利用しないグリーンシーズンは、イ
ベントホールとしての活用を促進し、各種イベント、コンサートの
一層の誘致を図りたい」と話していました。また、長野冬季オリン
ピックの時に、ボランティアとして活動し、「その時の経験が人生
を変えた」とも話しています。
長野冬季オリンピックの象徴でもあるエムウェーブの将来を熱く
語り、また時には、「スケートなら、男女が仲良く手をつないで滑
れる」と記者団の笑いを誘うなど、さまざまな場で豊富な経験を積
んでいるなあと感じました。
株式会社エムウェーブは、ビッグハットと若里市民文化ホールの
指定管理者でもあり、かなり広範囲に経営を手掛けています。また、
長野市で構想を進めている自然エネルギー発電施設や体験エリアの
ある「次世代エネルギーパーク」の整備についても、今後一緒に検
討を行っていきます。
経営者として長年培われた手腕と、青年会議所時代の国内、海外
の人脈、そして何よりも50歳という若さを最大限に生かして活躍
してほしいと大いに期待しています。
エムウェーブでは、1月28日から「全国中学校スケート大会」
のスピードスケート競技が開催されます。この大会は、2007
(平成19)年から10年間、毎年長野市で開催することが決定し
ているもので、今年が5年目となります。
エムウェーブでのスピードスケート競技のほか、ビッグハットで
もフィギュアスケート競技が行われます。過去には、オリンピック
選手の小平奈緒さんや浅田真央さんなども活躍した大会ですので、
トップスケーターを目指す選手たちの応援に、一人でも多くの皆さ
んにお出掛けいただきたいと思います。
また、エムウェーブは、文部科学省から「ナショナルトレーニン
グセンター競技別強化拠点」に指定されていますので、世界大会や
全日本の大会などで活躍している第一線の選手が練習する、大事な
アイスリンクにもなっています。
次は、スキーの話題です。
皆さんもご存じのとおり、今年は、長野県にスキーが伝来してち
ょうど100年です。
1911(明治44)年、新潟県高田町(現上越市)でオースト
リアのレルヒ少佐により日本に初めて伝えられたスキーが、翌年、
現在の飯山市に伝わったのが始まりのようです。その後、スキーは
冬のスポーツ、レジャーとして発展し、1990(平成2)年ごろ
はバブル景気にも乗り、大ブームとなりました。1998(平成
10)年の長野冬季オリンピックが開催されたのも、スキー文化が
醸成されていたからだと思います。
しかし、その後スキー人口は、1992(平成4)年をピークに
減少の一途をたどり、昨シーズンの県内のスキー場利用者数は、ピ
ーク時の約3割の663万人、県内のスキー場数もピーク時の8割
の88カ所にまで激減してしまいました。週末ともなると、市内の
道路がスキーを積んだ自動車で渋滞し、スキー場では20~30分
のリフト待ちが当たり前であった時代がうそのようです。このまま
では、冬季スポーツ、そしてスキー関連産業が衰退してしまいます。
どうにかこの危機的状況を食い止め、新たなスキー市場の創出に着
手しようと、今回の100周年を機に、各スキー場や行政では、あ
の手この手で誘客への取り組みを行っています。
まず、長野県は、昨年9月に「スノーリゾート信州」プロモーシ
ョン委員会を設立し、全県を挙げた事業展開を目指しています。事
業の大きな柱は2つで、一つとしては、「子どもたちを中心とする
スノースポーツ人口の創出」です。県内小・中学校でのスキー教室
の増加、優待企画である信州スノーキッズ倶楽部(くらぶ)の会員
募集、競技選手の育成を目指す「SWANプロジェクト」などを挙
げています。二つとしては、「県内スキー場の利用者拡大に向けた
プロモーションの強化」です。学生を含めた若者層、ファミリー層、
シニア層、そして面白いのが休眠層(以前スキーをしていた人たち)
をターゲットとした、インターネットによる情報の充実、レンタル
用品の質の向上、そして「食」の充実を挙げています。
これに加え、「インバウンドの取り組み」として、海外(特に中
国)からの誘客、留学生による情報発信などがあります。実は一昨
年、市内にお住まいの外国籍の皆さんと戸隠スキー場でスキー・ス
ノーボードを体験して、冬の長野市の観光をテーマに意見交換をす
る国際交流市民会議を開催しました。その時、信州大学工学部に在
学する中国からの留学生も参加されていて、市内留学生とタイアッ
プして海外からスキー客を誘致する企画はないかという話題になっ
たことを覚えています。同大学工学部だけでも約100人の留学生
がいるそうです。若い留学生によるブログやフェイスブックによる
情報発信策は、これからかなり期待できるのかなあと思っています。
市内スキー場でも100周年企画を考えています。
最近よく「女子会」なるものを耳にしますが、戸隠スキー場では、
女性客を対象にリフト券の割引などの特典が付く「女子会プロジェ
クト」を昨シーズンから実施しています。2月4日にはビーチバレ
ー選手の浅尾美和さんを招いて雪上バレーボール大会も予定してお
り、アクティブな女性の皆さんによるにぎわいの創出を目指してい
ます。
また、市内の戸隠スキー場、飯綱高原スキー場と、近隣のいいづ
なリゾートスキー場、黒姫高原スノーパーク、YAMABOKUワ
イルドスノーパークが連携して、プレゼントが当たるポイントラリ
ーを実施しています。
さらに、誘客に向けた取り組みの一つとして、2月4日から1カ
月間、市街地や松代のホテルなどの宿泊者を対象に、宿泊施設と戸
隠スキー場・飯綱高原スキー場とを結ぶ無料シャトルバスが初めて
運行されます。今シーズンは1日1往復ですが、「スキー場へはシ
ャトルバスで楽々移動。アフタースキーはまち歩きが楽しめる」と
好評となり、誘客強化につながればと思います。
やはり、雇用の確保・創出といった点からも、長野市にとってス
キーは大変重要な産業です。スキー復活は、重要なテーマなのです。
これから100年先も、子どもから若者、そしてシニアといった全
ての年齢層の人にスキーが愛され続けることを願っています。
余談ですが、当時のスキーブームの火付け役ともなった「私をス
キーに連れてって」のような映画、どなたか作っていただけません
か。もう一つ挙げれば、映画「黒い稲妻」のトニー・ザイラーも素
晴らしかったですよね(休眠層の皆さんから、賛同の拍手が聞こえ
てきそうです・・・)。
スケートやスキーは、冬場の体力づくりはもとより、家族や友人
と出掛ければ、絆も深まります。寒さに負けず、皆さんもウインタ
ースポーツを楽しみましょう。