2012年2月16日木曜日

「明日のしののい」を語る


 地域の潜在的な魅力を掘り起こし、ブランド化を目指す、観光誘
客キャンペーンとして本年度実施している「2011篠ノ井イヤー」
と「2011信州新町イヤー」も残すところ1カ月半となりました。
両キャンペーンとも地域の魅力・個性を思う存分引き出したさまざ
まな企画やイベントを行い、地域の活力アップに貢献しています。
こうした中、「信州しののい 人・モノ・交流文化のまち」を基本
コンセプトに展開されている篠ノ井イヤーの1年を振り返り、そし
てこれからの篠ノ井のまちづくりをどのように進めるかをテーマに
した「2011篠ノ井イヤー記念フォーラム」が2月4日、篠ノ井
市民会館で開催されました。

 会場入り口には、これまで行われた数々のイベントの写真パネル
が展示されていました。4月の「オープニングセレモニー」に始ま
り、うららかな春の日差しの中の「合戦場めぐりと桃・桜花見コー
スのウオーキング」、5月の「春の篠ノ井フェスティバル」、7月
の「建具組子細工・竹工芸の職人展」、炎天下の中、長野市近郊か
らも獅子が集まった「獅子の祭典」、秋の「書道パフォーマンス」
「少年サッカー大会」など、私もできる限り参加させていただきま
したが、1枚1枚の写真がとても懐かしく、そして同時に「よく、
やったなあ」と皆さんの努力に感謝の気持ちでいっぱいになりまし
た。まさに、2011篠ノ井イヤー実行委員会の渡邉一正(わたな
べ かずまさ)会長さんはじめ、篠ノ井地区の皆さんの総力の結集
だと感動しました。

 しかし、「長い道のりだった。篠ノ井地区としては前例がない中、
最初は手探りの状態であった」と渡邉会長さんは振り返ります。篠
ノ井の魅力とは何なのか。そこで、最初に行ったのは住民の皆さん
へのアンケート調査で、地域の魅力を掘り起こすことから始めたそ
うです。そうしたところ、何と1,000を超える項目が出され、
検討に検討を重ね37項目に絞り、事業化にこぎ着けたとのことで
した。フォーラムの中でも、これまで実施した全ての事業がスライ
ドショーで紹介され、会場にお集まりの皆さんも思い出がよみがえ
り、感慨深くご覧になったと思います。

 フォーラムでは、「明日のしののい」をテーマにパネルディスカ
ッションが行われました。パネリストの皆さんを紹介しますと、地
域プランナーで、エコール・ド・まつしろ2004のアドバイザー
としてご支援いただいた、株式会社おくとプロ代表取締役社長の上
村道正(かみむら みちまさ)さん(辛口コメンテーターとも紹介
されていました)。子育て支援・男女共同参画社会の推進に活躍さ
れている、財団法人21世紀職業財団長野駐在代表の宮本照子(み
やもと てるこ)さん。育苗家で、NHKの「趣味の園芸」をはじ
め多数のテレビ番組などに出演されていて、篠ノ井中央公園の整備、
茶臼山自然植物園の再生や緑育を推進している矢澤秀成(やざわ 
ひでなる)さん。そして、渡邉会長さんと私。コーディネーターは、
ラジオ番組などで皆さんおなじみの武田徹(たけだ とおる)さん
でした。 
 
 ポスト・イヤーキャンペーンをどうするか。パネリストの皆さん
から、それぞれの立場、経験から大変参考になるたくさんの提案が
出される中、私は、「篠ノ井には、以前からたくさんの魅力があっ
た。しかし、昭和41年の長野市との合併以来なかなか表に出てこ
なかった。それがようやく今回のイヤーキャンペーンで花開いたと
思っている」と申し上げました。そして、これからの篠ノ井の新し
い魅力として、「矢澤さんの緑を育てる活動」と「サッカーのAC
長野パルセイロ」の二つを挙げました。

 その矢澤さんからは、「植物と花」をキーワードに、すてきなお
話を頂きました。今年の4月に「ながの花と緑そして人を育てる学
校」が篠ノ井中央公園に開校します(校長は、矢澤さんです)。
「学校は2年制で、2年間学んだ人にマイスターの資格を与え、篠
ノ井中央公園などで活動してもらうとともに、身近な公園をそれぞ
れ特色のある公園にする。そして、篠ノ井中央公園から篠ノ井駅前
までの商店街、さらに茶臼山自然植物園を花でつなぎ、ガーデン都
市・篠ノ井を目指してはどうか」と、とても魅力的なお話をお聞き
することができました。また、矢澤さんが、子どもたちを対象に開
催している「育種寺子屋」では、花と花を交配させ、できた種を育
て、世界に一つだけの花を咲かせる取り組みを昨年から行っていま
す。「種から花を育てるには時間がかかる。しかし、できた花を見
るよりもできるまでの期間が大事。篠ノ井中央公園も、出来上がっ
た後より、造る過程を楽しんで、みんなで素晴らしい公園にしよう」
とお話しされました。

 矢澤さんの話に宮本さんも、「花と緑のあるまちは、文化の薫り
がする素晴らしいまちになる」と賛同され、さらに世代間の交流が
できる場は、地域文化の継承にとても重要だと提案されました。2
年前に篠ノ井に引っ越してこられた宮本さんは、先日絵画展に行か
れたそうですが、「澄ました雰囲気ではなく、『この絵はどういう
思いで描かれたのですか』と、作者と見た人がそんな会話で交流で
きる絵画展はどうか」などと、住民の目線から具体的な事例をお話
しされました。イヤーキャンペーン事業の一つ「こねつけコンテス
ト」にも参加され(惜しくも最優秀賞は逃しましたが、優秀賞だっ
たそうです)、その経験から、「イベントを『してもらう立場』で
はなく、自ら参加して『する立場』になれば、やりがいが見つけら
れる。そうした人がもっと増えればいい」とも話されました。また、
先日篠ノ井市民会館で小学生も出演した落語会があったそうですが、
残念ながら観客が少なくてもったいないと思ったそうです。コーデ
ィネーターの武田さんも落語を聴きに来ていたそうで、「笑って涙
を流したほど面白かった。もっと声を掛け合って多くの人が参加で
きればよかった」と感想をおっしゃいました。

 上村さんからは、「こうした地域イベントは、1年目に行政が種
をまき、2年目から市民がそれを育てることが大切。そして、もう
一つのポイントは、子ども。矢澤さんの花を育てる活動を中心にし
て、子育てにつなげてはどうか。子育て支援策ということであれば、
行政もお金を出しやすいですよねえ、市長さん」と話を振られ、会
場から大きな拍手が沸き起こったのには、頭をかいてしまいました。
 そしてもう一つ、「世の中どこに行っても観光だらけ。篠ノ井は
観光地ではない。みんなが住みたくなるまちを目指すべき。住みた
くなるまちには若い人が集まる。そして、花と緑と子どもに着目し
て、園芸甲子園といった企画はいかがか。更級農業高校といった立
派な環境がある」と政策的な視点からのお話がありました。そして、
やはり篠ノ井は、書家・川村驥山(きざん)ゆかりの地であり、
「書のまち」を目指してはどうかと皆さんから提案を頂きました。

 また、渡邉会長さんは、「篠ノ井には、病院や老人ホーム、学校
は比較的多くあるが、駅前商店街の活性化が課題だ。そうした中、
駅前通り沿いに開設した篠ノ井イヤー案内所『およんなし亭』や、
ひと月に1回行われた『ながの軽トラ市in篠ノ井』は将来の方向
性を見いだした。まちづくりの動機付けにはみんなを引っ張るリー
ダーが大事だ」と話されました。

 最後に私から篠ノ井地区の夢のあるプロジェクトとして、茶臼山
公園一帯にモノレールを造りたいといった話と、AC長野パルセイ
ロへの応援の話をしました。サポーターとして、また観客としてス
タンドに足を運んでほしいと、篠ノ井地区を挙げた応援をお願いし
ました。そして、何よりも地域全体で盛り上げる、そのパワーが大
切であることを話しました。

 今回のパネルディスカッションは、「花」、そして次世代を担う
「子ども」がキーワードであったと思います。会場から何度も賛同
の、そして励ましの拍手を頂き、終始アットホームな雰囲気で、
「明日のしののい」について語り合いました。
 ところで、フォーラムの中で、篠ノ井音頭が披露されました。昭
和41年の長野市との合併以降途絶えていた踊りを復活したもので
すが、4月のオープニングセレモニーでは踊っていなかった小学生
の女の子たちが、今回は大人に交じって踊っていました。こうした
若い世代の皆さんが、伝統を引き継いでいくことが大切だと感じて
います。

 いよいよ2011篠ノ井イヤーも大詰めです。残すは「信州しの
のい 川村驥山展」と「冬の古道めぐり」の2事業となりました。
最後まで皆さんで盛り上げていただき、これからの篠ノ井地区の発
展と振興につなげてほしいと願っています。