「中山間地域」から連想される言葉にはどんなものがあるでしょ
うか。
「里山」「風光明媚(めいび)」「農家民泊」というポジティブ
なイメージのものから「過疎化」「野生鳥獣対策」「空き古民家」
などといったものまで、多岐にわたりますが、そのいずれの言葉も
中山間地域の実態を表しています。
現在、長野市は2度の平成の大合併により、森林エリアを含む中
山間地域の面積は、市域の4分の3を占めるまでになっています。
また、長野市全体の高齢化率(人口に占める65歳以上の割合)が
約25%であるのに対し、中山間地域では約37%(いずれも平成
22年10月1日現在)となっており、いわゆる市街地と比較して
10年から15年ほど高齢化が先行していると考えられます。
そのような状況の中、市では私が所管する副市長プロジェクトの
一つとして、「中山間地域活性化推進プロジェクト」と銘打って取
り組んでいるものがあり、二つのポイントから侃侃諤顎(かんかん
がくがく)と議論をしています。
中山間地域の皆さんの声を直接お聴きする機会は、地区ごとに開
催する「元気なまちづくり市民会議」や「中山間地域市民会議」な
どがありますが、日頃から中山間地域にお住まいの皆さんと接して
いる職員から情報を得ることも大切だと考えています。私は、担当
する業務内容が異なる職員が寄り合って、それぞれが持つ情報を共
有し、そして互いの意識レベルをそろえていくことが、日頃の業務
の質を高める上でも重要だと考えています。関係部局が一堂に会す
る副市長プロジェクトはそうした側面も持っています。
さて、一つ目のポイントは、文字通り地域活性化という視点から
の議論で、活性化するためには中山間地域の中で、ある程度の収入
が得られる手だてを用意することが重要だということです。
住まいが中山間地域で勤め先が市街地ですと、日々の残業やお酒
の付き合いなどのことを考えると、次第に勤め先近くのアパートに
移り、やがては一戸建て住宅やマンションを購入するというケース
は容易に想像できることでしょう。若者を中心として中山間地域か
ら人々が離れていった事例には、こうしたケースが多いとお聞きし
ています。
こうした中、全国的な中山間地域の活性化の成功例として有名な
のが、徳島県上勝町の「葉っぱビジネス」株式会社いろどりの活動
だろうと思います。この「葉っぱビジネス」とは、日本料理を美し
く彩る季節の葉や花、山菜など「つまもの」を販売する農業ビジネ
スです。テレビのCMでご存じの方もいらっしゃるでしょうが、四
国の小さな町で起きた奇跡の実話として「人生、いろどり」という
映画にまでなったというから正直驚きです。
人口2千人弱、高齢化率約50%の町ですが、葉っぱの収穫に忙
しく、寝たきりの方が非常に少ないとお聞きしています。人生には
何よりもやりがい・生きがいが必要だということを語っている好例
でもあります。
また、長野市でも、成功している事例として篠ノ井信里地区の有
限会社たんぽぽがあります。地元農家の女性たちが中心になって、
地産地消をテーマに地元農産物を加工・販売している会社で、国の
補助事業の導入をしているほか、市としても、資本金への出資とい
う形で支援しています。地元に雇用が生まれ、収入が得られる活動
は、本当に素晴らしいことだと感心しており、とにかく頑張ってほ
しいと思っています。
こうした成功事例に共通しているのが人、すなわちリーダーの存
在です。いろどりにもたんぽぽにも素晴らしいリーダーがいらっし
ゃいます。
そこで、何とかそうしたリーダー、やる気のある人の発掘も含め、
中山間地域の活性化に向けた来年度からの新規事業として、中山間
地域で起業する際の支援制度を創設できないかと検討を進めていま
す。
この制度には二つの顔を持たせたいと考えています。一つは、中
山間地域に愛着を持ち、現に住んでいる住民の皆さん自らのやる気
とアイデアを支援するという面。
そして、もう一つはIターンなどによる地域外からの皆さんを誘
導するための仕掛けという面です。
里山の豊かな自然の中でゆったりとした人生を送りたいという価
値観を持つ人々の存在は、全国各地で語られ始めています。こうし
た人々に長野市の中山間地域に目を向けてもらえるきっかけになれ
ばと思います。
また、市が昨年度から始めた「新規就農者支援事業」を活用され
た皆さんの中からも、中山間地域での営農に加え、農産物加工や農
家レストランなどの事業を起こそうとする方が出てくれればと期待
しています。さらに、現在盛んなIT技術を活用したビジネス起こ
しなどへの活用も大いに考えられると思います。
支援を受けるための基本的な条件を挙げると、中山間地域に
・雇用が創出されること
あるいは、
・農作物など地域資源を活用することで経済波及効果があること
の二点です。
具体的には、事業のアイデアと経営スキームを示していただき、
外部の専門家も加わった審査会で審査し、事業収支など財務計画か
ら現実性の高いものに対して財政支援を行うことを考えています。
中山間地域を元気にする魅力的な提案を楽しみにしています。
もう一つ考えられる雇用創出と収入源確保の方法として、公共施
設の指定管理受託があります。特に、中山間地域には観光施設など
多くの市有施設があり、指定管理者制度を導入しています。
以前から機会あるたびにお話しさせていただいていますが、市有
施設は中山間地域の安定した雇用の場となりますので、地元商工会
などが中心となって指定管理の受託に参加していただければと思っ
ています。
議論の二つ目のポイントが生活支援です。
前にお話ししたとおり、中山間地域は高齢化の進行が著しく、独
居高齢者の割合も比較的高い状況にあります。何かあったときに救
いの手が差し伸べられ、日常生活を安心して送ることができるよう
に、現在、庁内関係部局の間で打ち合わせを行っております。今後、
支所や消防署はもちろんのこと、警察署、郵便局などの公共機関の
ほか、電気・ガス・水道などの検針業務を行っている民間事業者な
どにも広く加わっていただいたネットワークが出来ればと思ってい
ます。
また、買い物にも支障を来たしているとの住民の皆さんの声をお
聴きしており、このいわゆる「買い物弱者」対策も進めていく必要
性を感じています。ただし、この点については地域により事情が異
なっているため、地域ごとにきめ細やかな対応が必要になってくる
と考えています。
現在、関係部局で事業者と意見交換を行っており、「民の力」を
生かし、行政がこれを支援することで、住民の皆さんが安心して生
活できる環境づくりを進めていきたいと考えています。
中山間地域で課題となっている、高齢化に伴う買い物弱者問題な
どは、いずれ長野市全域で発生し得る課題でもあります。中山間地
域で実施した対策は、必ず今後に生きてくるものと確信しています。
ところで、中山間地域の皆さんを悩ませている問題に野生鳥獣被
害があります。中山間地域の人口減少に加え、森林に手が入らなく
なったなどの複合的原因により、長野市ではイノシシやニホンジカ
を中心に被害が増加傾向にあります。現在、中山間地域に設置され
た「有害鳥獣対策協議会(委員会)」と猟友会の皆さんに、市街地
も含む長野市全体の安全を守るべく、防護柵設置や駆除対策などを
中心に懸命な努力をしていただいています。先日も長野市街地でク
マが目撃されたほか、全国的にも「札幌市街地でヒグマが続出」「
上越市高田市街地にイノシシ出没」というニュースがありました。
野生鳥獣対策は他人事ではなく、自らの課題であるという意識をも
って注目していただきたいと思います。
また、中山間地域に根付いている食文化や伝統的な行事は、地域
ならではの多様性を持っています。「○○○らしさ」とは、必然の
中から生まれた文化に根差したものという考え方があります。中山
間地域を守っていくことは、すなわち「長野らしさ」を守っていく
ことであるとも思います。
中山間地域では毎年、さまざまな行事や工夫に満ちたイベントが
開催されています。皆さんもぜひ足を運んでいただくようお願いし
ます。
2012年10月25日木曜日
中山間地域のこと
2012年10月18日木曜日
秋ですね
猛暑の8月、そして残暑厳しい9月も終わって10月に入り、よ
うやく過ごしやすい秋になったなあと思ったのもつかの間、ここ数
日は、朝夕めっきり寒くなってきましたね。日を追うごとに秋が深
まっているなあと感じていますが、今回はそんな10月の出来事を
紹介します。
2日、富山市に出張し、同市と「集客プロモーションパートナー
都市協定」を締結してきました。これは、新幹線の金沢延伸を
2014(平成26)年度に控え、両市の観光交流を促進するとと
もに、他都市からも多くの観光客を呼び込むために協力し合いまし
ょうというものです。長野市はこれまでに、上越市、金沢市、甲府
市、そして静岡市と同協定を締結しています。海のある富山市、山
のある長野市は、お互いの市民にとって、とても魅力的に感じるこ
とでしょう。富山市民の皆さんには、ぜひとも長野市を訪れていた
だき、善光寺や真田十万石の城下町・松代、パワースポットで有名
な戸隠などを巡って、長野市の素晴らしさを堪能していただきたい
とPRしてきました。
富山市には30年ほど前から何度も訪れていますが、市街地は初
めて訪れた頃と比べものにならないほど大きく変わっています。新
幹線開業を前にしたJR富山駅前の再開発、スタイリッシュな新型
車両が目を引くLRT(次世代型路面電車)など、近未来の都市を
イメージするほどです。戦災で市街地が焼け野原になったとのこと
ですが、そうした歴史と向き合いながら、見事な都市計画を行なっ
ています。富山市に比べて、長野市は幸い戦火が少なかったおかげ
で、古い町並みや小路が今に残っているのでしょう。
10日の早朝、長野交通安全協会、ヤングドライバークラブ、長
野中央警察署などの皆さんに参加いただき、交通死亡事故抑止のた
めの緊急街頭指導を行いました。
長野市における交通死亡事故は近年減少傾向でしたが、今年はこ
れまでに13人の方が尊い命を落とされました。これは、昨年の同
時期と比較して6人も多く、11人の方が亡くなられた昨年を早く
も上回る非常事態と判断し、急きょ、長野市独自で街頭指導を行っ
たものです。
交通死亡事故で亡くなられた方のうち9人が65歳以上の高齢者
です。また、道路横断中や自転車を利用していて亡くなられた方が
7人、交差点付近における死亡事故が9件のほか、体調不良が原因
と思われる単独死亡事故も発生しています。
実施した10月10日は「止まる、止まる」の語呂合わせがある
とのことで、交通死亡事故の発生がこれで「止まる」という期待も
込めた街頭指導でした。引き続き、交通安全意識の高揚と交通事故
の抑止を図りたいと考えています。
同じ10日の午後7時から、AC長野パルセイロが、天皇杯全日
本サッカー選手権大会ベスト16進出を懸けて、JFL(日本フッ
トボールリーグ)に所属する横河武蔵野FCと札幌市で対戦しまし
た。試合は、延長を終えても0対0の均衡が破れずPK戦となりま
した。11人目のゴールキーパー同士の対戦までもつれ込んだ結果、
9対10で敗退してしまいました。試合終了は午後10時近くだっ
たと思います。天皇杯で勝ち上がるのは大変なことだと分かっては
いましたが、同じJFLのチームに負けたことが悔しくて、その日
の寝付きはあまりよくありませんでした。
また、14日に行われたJFLのSAGAWA SHIGA
FC戦では、優勝を狙うために勝ち点3を取ってほしかったのです
が、引き分けに終わりました。ただ、ロスタイムに、それも相手の
オウンゴールでの引き分けですから・・・うれしさ反面、こんなこ
ともあるのかと信じられませんでした。
20日~22日には、いよいよアビリンピック2012(第33
回全国障害者技能競技大会)が開催されます。この大会は、障害の
ある方が職業技能を競い合う大会で、職業能力の向上を図るととも
に、広く障害者に対する社会の理解と認識を高め、障害者の雇用の
促進など、障害者の社会的な地位の向上に結び付けることを目的と
しています。
長野県では初めての開催となり、競技会場はビッグハットとホワ
イトリングです。約300人の選手が、「ホームページ」「コンピ
ュータープログラミング」「建築CAD」「フラワーアレンジメン
ト」「喫茶サービス」など、23の競技種目で競い合います。
5日には、アビリンピックと長野技能五輪に出場される長野市関
係の選手の皆さんをお招きして、壮行会を開催しました。選手の皆
さんは、大会に向けて日々の仕事後の時間などを利用し、厳しい練
習を重ねてきたとのことです。長野市の、そして長野県の代表とし
て頑張ってほしいと思います。
また、前日の4日には、みどりの移動市長室として、アビリンピ
ックのホームページ種目に出場する瀧内さとみさんの勤務先である
社会福祉法人ながのコロニー長野福祉工場を訪問しました。瀧内さ
んを激励するとともに、そこで働く皆さんと、障害者の雇用の場の
充実を図ることの必要性などについて意見交換をしました。
なお、例年若里公園で行っている「ふれあいまつり」は、今年は
アビリンピックの開催に併せて、今週末の21日にホワイトリング
で開催します。同時開催することで、それぞれの催しを盛り上げよ
うと企画しています。たくさんの皆さんにお出掛けいただきたいと
思います。
そのホワイトリングでは、12日・13日に第2回関東甲信越フ
ロアホッケー競技大会が開催されました。フロアホッケーとは、知
的障害者のスポーツとしてスペシャルオリンピックスから生まれた
アイスホッケーに似たスポーツで、室内でスティックを使い、大き
なドーナツ型の柔らかいパックをゴールに入れて得点を競うもので、
22チームが熱戦を繰り広げました。
この他、13日から14日にかけて城山公園ふれあい広場で、が
んの克服を願い、がん患者やがん克服者、家族などの支援者約
800人が交代で24時間歩いてリレーするチャリティーイベント
「リレー・フォー・ライフ信州in長野」が長野市で初めて開催さ
れました。
また、松代藩真田十万石まつりの「松代藩真田十万石行列」、毎
年恒例の「長野市農業フェア」や「善光寺表参道秋まつり」などの
元気なイベントも多数開催されました。
ご紹介した活動や大会、イベントなどは、いずれも長野市の魅力
を高め、安全・安心で、元気なまちづくりのためにとても大切な取
り組みです。特に10月は、これまで取り組んできたこと、準備を
してきたことが成果となって表れる、またはそれを発表するのに最
適な時期ではないでしょうか。皆さんにとって実りの秋となること
を願っています。
2012年10月11日木曜日
くるるカードセンター開所式と篠ノ井中央公園管理棟しゅん工式
9月29日、トイーゴ広場を主会場として、くるるカードセンタ
ーの開所式、続いて新型ぐるりん号の出発式を行いました。
くるるカードセンターは、市内バス交通の活性化を図るため
2009(平成21)年度から準備を進めてきたバス共通ICカー
ド「KURURU(くるる)」の取り扱い窓口で、10月27日か
らのカードの運用開始に先立ってトイーゴ2階に開設し、営業をス
タートしました。また、「KURURU」のデビューを記念して、
5千枚限定の記念カードも同時に発売しました。
「KURURU」は、バスに乗るときと降りるときに、カードを
専用の読み取り機に軽くタッチするだけで自動的に運賃の精算がで
きる優れ物で(小銭を用意する煩わしさがありません)、大都市な
どで使われている「Suica(スイカ)」や「PASMO(パス
モ)」の地方版を目指しているものです。
あらかじめカードにお金をチャージしておけば、1枚のカードで、
長電バス、アルピコ交通、ぐるりん号の路線バスに乗車することが
できます。今後は、市営バス、乗合タクシーへの利用の拡大はもち
ろん、買い物や有料駐車場など、生活のさまざまな場面で利用でき
るようにすることと同時に、利用回数に応じてサービスを付加する
ことなども検討したいと思います。さらに、図書館などの施設でも、
利用者証などとして使えるようにできたらいいなあと考えています。
ぜひ多くの皆さんに「KURURU」をご購入いただき、市内公
共交通の中心的な存在である路線バスを、今まで以上に利用してい
ただきたいと思います。
開所式に続いて、中心市街地循環バス「ぐるりん号」の新型車両
の出発式を行いました。
ぐるりん号は、2000(平成12)年の運行開始から12年間、
中心市街地における市民の皆さんの「足」として親しまれ、実績も
上がり、他の地域で運行されている循環バスの先駆けにもなりまし
た。
これまで小型バス3台で運行してきましたが、ノンステップバス
4台を導入することでバリアフリー化を図るとともに、運行間隔も
20分から15分に短縮しました。また、始発時間の繰り上げと終
発時間の繰り下げにより運行時間を延長し、1日の運行便数もこれ
までの27便から44便に大幅に増便して、より便利になりました。
ラッピングも新しくなりましたので、「KURURU」の普及と併
せて、一層市民の皆さんに愛されるバスにしたいと考えています。
10月1日、篠ノ井中央公園の管理棟がしゅん工し、完成記念式
典を行いました。
式典には、関係市議会議員さん、地区の皆さん、工事を行ってい
ただいた皆さんなど、大勢の方々にご出席をいただきました。特に、
篠ノ井中央公園建設委員会の皆さんには、大変お忙しい中、公園の
建設開始当初から多くの貴重なご意見をいただき、当日もご臨席い
ただいたことに心から感謝しています。
篠ノ井中央公園は、計画面積が約6ヘクタールの規模で、約3分
の1の区域の整備が完了し、残りの区域についても順次整備を進め
ています。本市の緑化推進の柱である「緑育」の拠点として位置付
けるとともに、地域の皆さんの防災の拠点としても重要な場所にな
るものです。このたび、管理棟がしゅん工したことで、実質的に利
用開始となりました。
「緑育」という言葉は、緑を育てるという単純な意味にとどまら
ず、緑を育てることで人も育つ、また地域も育つという、まちづく
りのキーワードでもあります。
緑育の推進に当たっては、昨年4月に市内の緑化や造園に関わる
皆さんと協働して「ながの緑育協会」を設立し、「NHK趣味の園
芸」などテレビで活躍する矢澤秀成(やざわ ひでなる)さんを職
員として招くなど、体制を整えてきました。
協会の愛称を「ながの花と緑そして人を育てる学校」とし、今年
4月から緑育を担う人材を育成するために「ながの緑育マイスター」
養成講座をスタートしたところ、想定していた定員の80人をはる
かに上回る240人の方からご応募いただき、急きょ、講座数を増
やして全員を受け入れることにしました。遠くは兵庫県から受講さ
れる方もいるとのことで、うれしい限りです。
当日は、講座を受講している皆さんにも、たくさんご参加いただ
きました。講義内容を生かし、本市の緑育の推進にぜひご協力いた
だきたいと思います。また、完成した管理棟では、今後ながの緑育
協会を主体に、さまざまな活動やイベントが企画されています。楽
しみにしていてください。
なお、公園内には、長野市民会館や長野駅の善光寺口駅前広場に
あったイチョウやシナノキなどを移植しました。新しい場所で新た
な歴史をつくってくれることと思います。
また、「NPO法人CO2バンク推進機構」さんから、公園内に
「ピンオーク」の木(耳慣れない名前ですが「アメリカガシワ」と
いう和名があり、奇麗な紅葉が楽しめるとのことです)をご寄付い
ただきましたので、式典の中で同機構理事の宮入賢一郎様に感謝状
を贈呈させていただきました。
このように、篠ノ井中央公園の整備が着々と進む中、同じ篠ノ井
地区にある茶臼山自然植物園も矢澤さんの指導の下、ボランティア
の皆さんによる植栽イベントなどにより植栽の充実が図られ、新し
い魅力が加わり始めています。地元の株式会社中嶋製作所さんから
は、これまでに植栽整備費として2千万円の寄付をいただき、ツツ
ジを約4,700本、その他ハナモモなどを植栽しました。本年5
月に私が視察したときは、素晴らしいツツジの花が咲き乱れていま
した。
篠ノ井の地が、花と緑によるまちづくりによって一層発展するこ
とで、「緑育発祥の地」として、広く全国にその名をとどろかせる
ことを願っています。
話は少し変わりますが、新しい取り組みとして、中心市街地にお
ける「Wi-Fi(ワイファイ)」環境を利用した観光情報の配信
が9月27日から始まりました。市内では現在約250カ所にWi
-Fiスポットがあるということで、私も実際にそのスポットに行
って体験してみました。また、松代の観光情報を提供する「信州松
代まち歩きNavi(ナビ)」というスマートフォン用のアプリケ
ーションによるサービスも始まっています。
市民の皆さんの生活がより便利に、より快適に、そして心豊かな
毎日となるための事業が、一つずつ確実に成果となって表れていま
す。
2012年10月4日木曜日
動物愛護~長野市の誇れる取り組み
私としては、珍しいテーマなのですが、今回は動物愛護週間(9
月20日~26日)にちなんで、動物愛護に関する長野市の取り組
みを紹介します。
ペットブームという言葉を聞いて久しくなります。ストレス社会
に生きる人間にとってペットは癒やしであり、家族同様の存在であ
るようです。わが家にも15年ぐらい前まで愛犬がいましたが、高
齢となってからは、白内障を患い、老いていく愛犬がかわいそうだ
ったのを思い出します。
ペットはかわいいものです。しかし、その裏には、悲しい現実も
あります。「引っ越しなどにより手放さなければならない」「子犬、
子猫がたくさん生まれて飼えない」などの理由により、犬や猫を保
健所へ持ち込む飼い主が後を絶ちません。持ち込まれた犬や猫の多
くは、やむなく殺処分されるケースが一般的です。2008(平成
20)年度の殺処分数は全国で、犬が約8万2千匹、猫が約19万
4千匹で(環境省調べ)、長野市保健所においては、犬が97匹、
猫が265匹、またそれに係る経費は334万円でした。尊い命が、
飼い主の身勝手な都合によって失われる。こうした悲しい現状を改
善しようと、本市保健所では以下のような取り組みを積極的に行っ
ています。
(1)保健所で保護した犬や猫の写真をホームページに掲載して、
お知らせするとともに、犬の登録台帳から該当しそうな飼い主に電
話で確認をして、飼い主の所に返せるよう努める(返還率の向上)。
また、保護期間は設けず、保健所で新しい飼い主が見つかるまで飼
育しながら引き続き譲渡の機会を探す(保護期間を設けないのは、
本市独自のやり方で、大きな方針の転換でした。飼い主が見つかる
まで保健所で飼育するわけですから、飼育管理は以前より大変にな
ったそうです)。
(2)ボランティアの皆さんの協力を得て、月1回の定例譲渡会を
開催する(譲渡数を大幅に伸ばすことができました)。
(3)保健所で引き取る際には、飼い主と徹底的に話し合いをして、
本当に飼育が困難であること、譲渡先がないことをしっかりと精査
する。また、繰り返し子猫を持ち込む飼い主には、本市独自の「ね
この繁殖制限手術助成事業」(雌4,000円、雄2,500円を
助成)の活用を推奨し、不幸な猫を増やさないようにする。
小さな命を救うため、職員がまだ目の開かない子猫を自宅に連れ
て帰り、授乳などの世話をすることもあるようです。こうした地道
な取り組みの結果、2010(平成22)年度は、犬の返還率は
73.5%、譲渡率は86.7%で、いずれも全国108の自治体
(都道府県、政令指定都市、中核市などで動物愛護管理行政を所管
する自治体)の中で1位、猫の譲渡率は50.2%で3位。この結
果、殺処分数は、犬が8匹、猫が107匹と合計数で平成20年度
の約32%にまで大幅に減少し、全国トップレベルになったとのう
れしい報告がありました。また、このことにより、殺処分に係る経
費も大幅に節減でき、平成22年度は平成20年度に比べ約229
万円の節減となりました。
ペットの殺処分数を減らそうという機運が全国的に高まる中、各
地の動物愛護センターの取り組みがテレビで放送されたり、本で紹
介されたりするなどしています。また国においても、動物愛護の観
点から、生後56日を経過しない子犬や子猫は親から引き離すこと
を禁じる「動物の愛護及び管理に関する法律の一部を改正する法律」
が成立しました。親から離れる時期が早すぎると、ほえる、かむな
どの問題行動を起こしがちで、結果的に殺処分されるケースにつな
がりやすいということです。本市には動物愛護センターはありませ
んが、保健所において毎月第1土曜日に動物愛護会の皆さんとの共
催で「犬のしつけ方教室」を開催して、優良な飼い主の育成にも努
めています。犬のしつけは、単に犬の問題行動を解決するだけでな
く、飼い主と犬の良好な関係を築き、地域でのマナーの向上にもつ
ながっていくものです。
今後も現状に満足することなく、大切な命を一つでも多く救うた
め、関係機関、飼い主、そして市民の皆さんと協力して、殺処分数
ゼロを目指したいと思います。
ペットの話題についてもう少し触れてみます。
本市では、市が管理する約700カ所の公園のうち、4公園(長
野運動公園、八幡原史跡公園、真田公園、犀川第2緑地)の指定区
域を除く全ての公園で、犬の散歩を禁止しています。これは、長野
市都市公園条例で、動物を引き連れて入園することを禁止している
ためです。
昨年度行った市民アンケートによると、公園で犬を散歩させるこ
とについて約62%の人が「マナーが良ければ、気にならない」と
回答しましたが、その反面、飼い主のマナーが「悪い」と答えた人
は約51%、今後の公園での犬の散歩をどうすべきかについては
「現状のままでよい」が約46%でした。こうした結果を受け、本
市では公園での犬の散歩を、当面は現状維持とする方針で考えてい
ます。
また、本市では、清掃センターの専用炉でペットの火葬を行って
いますが、本年度、長野市廃棄物減量等推進審議会からペット火葬
費用の引き上げ(現在の3,600~12,000円を4,800
~16,500円に)について答申がありました。付帯意見として、
現在、市内や近隣市の6事業者がペット火葬を請け負っている現状
を踏まえ、将来的には同センターでの専用炉によるペット火葬の廃
止について検討することも求められました。
以上のように、ペットに関わる本市の行政は多様化していますが、
少子化や高齢化、核家族化などの社会的背景から、今後もペットは
人にとって大切な存在であることは間違いないでしょう。ペットと
人はお互いが幸福であり、社会からも認知される良好な関係づくり
が不可欠です。野良猫対策や犬の散歩中のマナーなど、まだまだ問
題はありますが、動物愛護の原点である「おもいやり」の気持ちを
大切にして、ペットと共存できる潤い豊かな長野市を目指していき
たいと思います。