私としては、珍しいテーマなのですが、今回は動物愛護週間(9
月20日~26日)にちなんで、動物愛護に関する長野市の取り組
みを紹介します。
ペットブームという言葉を聞いて久しくなります。ストレス社会
に生きる人間にとってペットは癒やしであり、家族同様の存在であ
るようです。わが家にも15年ぐらい前まで愛犬がいましたが、高
齢となってからは、白内障を患い、老いていく愛犬がかわいそうだ
ったのを思い出します。
ペットはかわいいものです。しかし、その裏には、悲しい現実も
あります。「引っ越しなどにより手放さなければならない」「子犬、
子猫がたくさん生まれて飼えない」などの理由により、犬や猫を保
健所へ持ち込む飼い主が後を絶ちません。持ち込まれた犬や猫の多
くは、やむなく殺処分されるケースが一般的です。2008(平成
20)年度の殺処分数は全国で、犬が約8万2千匹、猫が約19万
4千匹で(環境省調べ)、長野市保健所においては、犬が97匹、
猫が265匹、またそれに係る経費は334万円でした。尊い命が、
飼い主の身勝手な都合によって失われる。こうした悲しい現状を改
善しようと、本市保健所では以下のような取り組みを積極的に行っ
ています。
(1)保健所で保護した犬や猫の写真をホームページに掲載して、
お知らせするとともに、犬の登録台帳から該当しそうな飼い主に電
話で確認をして、飼い主の所に返せるよう努める(返還率の向上)。
また、保護期間は設けず、保健所で新しい飼い主が見つかるまで飼
育しながら引き続き譲渡の機会を探す(保護期間を設けないのは、
本市独自のやり方で、大きな方針の転換でした。飼い主が見つかる
まで保健所で飼育するわけですから、飼育管理は以前より大変にな
ったそうです)。
(2)ボランティアの皆さんの協力を得て、月1回の定例譲渡会を
開催する(譲渡数を大幅に伸ばすことができました)。
(3)保健所で引き取る際には、飼い主と徹底的に話し合いをして、
本当に飼育が困難であること、譲渡先がないことをしっかりと精査
する。また、繰り返し子猫を持ち込む飼い主には、本市独自の「ね
この繁殖制限手術助成事業」(雌4,000円、雄2,500円を
助成)の活用を推奨し、不幸な猫を増やさないようにする。
小さな命を救うため、職員がまだ目の開かない子猫を自宅に連れ
て帰り、授乳などの世話をすることもあるようです。こうした地道
な取り組みの結果、2010(平成22)年度は、犬の返還率は
73.5%、譲渡率は86.7%で、いずれも全国108の自治体
(都道府県、政令指定都市、中核市などで動物愛護管理行政を所管
する自治体)の中で1位、猫の譲渡率は50.2%で3位。この結
果、殺処分数は、犬が8匹、猫が107匹と合計数で平成20年度
の約32%にまで大幅に減少し、全国トップレベルになったとのう
れしい報告がありました。また、このことにより、殺処分に係る経
費も大幅に節減でき、平成22年度は平成20年度に比べ約229
万円の節減となりました。
ペットの殺処分数を減らそうという機運が全国的に高まる中、各
地の動物愛護センターの取り組みがテレビで放送されたり、本で紹
介されたりするなどしています。また国においても、動物愛護の観
点から、生後56日を経過しない子犬や子猫は親から引き離すこと
を禁じる「動物の愛護及び管理に関する法律の一部を改正する法律」
が成立しました。親から離れる時期が早すぎると、ほえる、かむな
どの問題行動を起こしがちで、結果的に殺処分されるケースにつな
がりやすいということです。本市には動物愛護センターはありませ
んが、保健所において毎月第1土曜日に動物愛護会の皆さんとの共
催で「犬のしつけ方教室」を開催して、優良な飼い主の育成にも努
めています。犬のしつけは、単に犬の問題行動を解決するだけでな
く、飼い主と犬の良好な関係を築き、地域でのマナーの向上にもつ
ながっていくものです。
今後も現状に満足することなく、大切な命を一つでも多く救うた
め、関係機関、飼い主、そして市民の皆さんと協力して、殺処分数
ゼロを目指したいと思います。
ペットの話題についてもう少し触れてみます。
本市では、市が管理する約700カ所の公園のうち、4公園(長
野運動公園、八幡原史跡公園、真田公園、犀川第2緑地)の指定区
域を除く全ての公園で、犬の散歩を禁止しています。これは、長野
市都市公園条例で、動物を引き連れて入園することを禁止している
ためです。
昨年度行った市民アンケートによると、公園で犬を散歩させるこ
とについて約62%の人が「マナーが良ければ、気にならない」と
回答しましたが、その反面、飼い主のマナーが「悪い」と答えた人
は約51%、今後の公園での犬の散歩をどうすべきかについては
「現状のままでよい」が約46%でした。こうした結果を受け、本
市では公園での犬の散歩を、当面は現状維持とする方針で考えてい
ます。
また、本市では、清掃センターの専用炉でペットの火葬を行って
いますが、本年度、長野市廃棄物減量等推進審議会からペット火葬
費用の引き上げ(現在の3,600~12,000円を4,800
~16,500円に)について答申がありました。付帯意見として、
現在、市内や近隣市の6事業者がペット火葬を請け負っている現状
を踏まえ、将来的には同センターでの専用炉によるペット火葬の廃
止について検討することも求められました。
以上のように、ペットに関わる本市の行政は多様化していますが、
少子化や高齢化、核家族化などの社会的背景から、今後もペットは
人にとって大切な存在であることは間違いないでしょう。ペットと
人はお互いが幸福であり、社会からも認知される良好な関係づくり
が不可欠です。野良猫対策や犬の散歩中のマナーなど、まだまだ問
題はありますが、動物愛護の原点である「おもいやり」の気持ちを
大切にして、ペットと共存できる潤い豊かな長野市を目指していき
たいと思います。