2013年5月23日木曜日

太陽光発電の先進地視察


 5月2日、環境部の職員と一緒に太陽光発電の先進地である山梨
県北杜市に出掛けました。北杜市一帯は日本でも有数の太陽光発電
の適地(日照時間が長く、気候が比較的涼しいため)とのことで、
太陽光パネルがあちこちに見られました。気候が涼しいとパネルの
温度が上がらないため、発電効率が落ちないそうです。

 特に今回視察した「北杜サイト太陽光発電所(2メガワット級)」
は、国の機関である独立行政法人「新エネルギー・産業技術総合開
発機構(NEDO)」が実証実験のために「稚内サイト」(北海道)
と共に整備したもので、素晴らしいものでした。約10ヘクタール
の広大な土地に設置された施設は、建設に約30億円掛かったとの
ことですが、うらやましいことに、5年間の実証実験終了後は国か
ら北杜市に無償譲渡され、北杜市の市営発電所として稼動し、毎年
約1億円の売電料が入るとのことです。国内メーカーをはじめ、世
界9カ国のパネルメーカーの単・多結晶パネルや、化合物系結晶パ
ネルなど、材質や形状が異なる27種類のパネルが雄大な八ヶ岳を
バックに整然と並んでいる光景は圧巻でした。中には、効率的な発
電を検証するため、パネルの傾斜角度を15度、30度、45度に
設置し比較する実験区画もありました。こうなると、どのメーカー
のパネルが一番優れているか気になるところですが・・・それは公
表しないとのことでした(当然ですよね)。

 県内に戻って、富士見町の「ヘリオスタット(太陽光追尾装置)」
を視察しました。これは、太陽の動きに追従し、直径50センチメ
ートルの反射鏡2,680枚の向きを調整しながら、集光・集熱を
行う装置(250キロワット級)で、閉校となった中学校跡地に
NEDOの補助で設置されたものです。一般的なパネル型とは違う
「集光型」で、視察前のイメージとは違って、かなり高度な仕組み
のものでした。現在は発電ではなく、集光・集熱による蓄熱の実証
実験中とのことで、将来的には、蓄熱したエネルギーで「海水の真
水化」や「酸化マグネシウムを酸素とマグネシウムに分解するリサ
イクル技術の確立」など、さまざまな用途に使えるよう研究してい
るとのことです。

 今回の視察で、大規模な太陽光発電を行う場合、広い敷地の確保
や日照時間はもとより、気温(特に夏場の温度)や土地の形状、ま
た、送電線の有無、パネルの反射やパワーコンディショナー(電気
の変換機器)から発生する騒音対策など、さまざまな検討が必要で
あることを再認識しました。また、現在、多くの企業が太陽光発電
による売電ビジネスに参入を始めている中、売電価格も1キロワッ
ト当たり42円から先月38円に下がりましたし、発送電分離とい
った問題があるなど、今後の動向も気になるところです。

 現在、長野市には、今回視察したような大規模な太陽光発電施設
(メガソーラー)はありませんが、「すべての政策に環境の屋根を
架けよう」と、長野市ではこれまでにもさまざまな取り組みを行っ
てきています。一般住宅や事業所を対象にした太陽光発電システム
の設置補助事業では、昨年度末までの決算見込みで、補助累計件数
が5,748件、補助総額7億4,607万円と、1メガワットの
メガソーラーシステム24基分に相当する規模となっています。
 その他、大岡地区の小水力発電(大岡小・中学校の電力の約3分
の1を賄っています)や奥裾花自然園の小水力・太陽光・バイオデ
ィーゼルによる発電事業の着手、保科温泉への木質ペレットボイラ
ーや市有施設へのペレットストーブの導入、商店街街路灯や各地区
の防犯灯のLED(発光ダイオード)化などの環境政策も積極的に
進めています。
 また、小・中学校や保育所など、37カ所の市有施設に太陽光パ
ネルを設置していますし、現在建設を進めている新市役所第一庁舎
・新長野市民会館、そして来年建設に着手する南長野運動公園総合
球技場などにも設置する計画です。

 以前かじとり通信で、「藻から石油が採れる。日本は産油国にな
れる」といった研究があることをご紹介しました。藻によるバイオ
マス燃料については担当職員が早速視察してきましたが、まだ費用
対効果など研究課題は多いようです。また、特殊塗料で太陽光発電
なんていう研究が進んでいることも聞いています。
 こうした夢のある未来のエネルギーには引き続き注目していきた
いと考えていますし、太陽光発電をはじめとした次世代エネルギー
開発は、アベノミクスが掲げる3本目の矢、「成長戦略」の有力候
補の一つではないでしょうか。

 4月から5月の上旬にかけて、天候が不安定で心配しましたが、
ここに来て、連日暑い日が続いています。市役所では、昨年より3
日早い5月7日から全庁でクールビズを始めました。私もクールビ
ズは夏の正装だと考え、毎日ノーネクタイで仕事をしています。
 環境への取り組みで大事なことは、一人一人ができる小さなこと
を積み重ねていくことだと思います。冷房の温度を高めに設定する。
小まめに電気を切る。LEDなどの節電型の照明を使用する。車の
不要なアイドリングをやめる・・・。こうしたささいな取り組みの
一つ一つが、みんなの意識やライフスタイルを変え、環境の改善に
つながるのです。
 クールビズもささいなことかもしれませんが、今年も率先して取
り組んでいきたいと思っています。