2013年6月13日木曜日

監査委員、轟光昌さんの視察報告です


 以前かじとり通信で、若槻地区住民自治協議会の「コミわかグリ
ーン倶楽部」が積極的に取り組んでいる、遊休農地を活用した市民
菜園の運営が大変好評であることをお話ししました。同倶楽部の元
代表理事で長野市監査委員でもある轟光昌さんには、わざわざ市役
所までお越しいただき、市部局長に対して、同倶楽部の取り組みな
どについての勉強会も開催していただきました。
 先日その轟さんと、ある会合でご一緒させていただいた際に、
遊休農地の活用先進地を視察したお話をお聴きしました。とても素
晴らしいお話でしたので、ぜひメールマガジンで報告してほしいと
お願いしたところ、ご快諾いただけました。  
 ここからは、轟さんに報告していただきます。

「耕作放棄地『ゼロ』の村がある?!」
=東日本で一番人気の道の駅「田園プラザかわば」も経営=
 監査委員 轟 光昌

 耕作放棄地ゼロの村があると聞き、昨年11月、長野市農林部、
地域振興部の新進気鋭の若手職員2名と群馬県利根郡川場村を訪問
しました。谷田部兼光(やたべ かねみつ)副村長から2時間にわ
たり詳細な説明を受け、村内の複合施設や観光施設を視察しました。
                
○川場村の紹介
 川場村は、関越自動車道沼田インターチェンジから車で10分。
人口3,898人、面積85.79平方キロメートル(うち約86
%が森林)の自然豊かな農山村で、主産業の農業と観光に、環境を
合わせた村づくりを推進しています(川場温泉ほか4つの温泉が村
を潤しています)。世帯数は974世帯ですが、最近10年間で
47世帯増加したというから驚きです(平成22年10月1日時点)。
谷田部副村長から頂いた名刺には、キャッチフレーズ「田園理想郷
農業と自然の里『川場』」とありました。

○田園プラザかわば
 川場村の魅力を一堂に集めた総合複合施設で、敷地面積約5ヘク
タールの大型の「道の駅」です。プラザの土地と建物は村が所有、
運営は村も出資する「(株)田園プラザ川場」が行っています。建
物は全て木造瓦ぶきで(ガソリンスタンドも瓦ぶきです)、田園の
雰囲気が満喫できます。地場産の米類や野菜、フルーツ、食肉加工
品、手作り工芸品などを販売する「ファーマーズマーケット」、地
酒や漬物などの村の特産品が並ぶ「物産館」、地ビールが好評の
「川場ビールレストラン武尊(ほたか)」、石臼ひき地粉が自慢の
「そば処 虚空蔵」をはじめ、プラザ内にある「パン工房」「ミー
ト工房」「ミルク工房」などで生産される新鮮で良質な手作り製品
は絶賛されています。また、「体験工房」では、ジャムやコンニャ
ク作り、陶芸・木工体験も可能で、大勢の参加者がいました。
 また、敷地周辺の小山の一部には、ブルーベリーの木が2メート
ル間隔で整然と植えられていて、7~9月には観光客が散策しなが
ら自由に実を摘むことができて大変好評とのことです。

 訪問したのは平日でしたが、観光バスでの来場者も数多く、各館
とも満員で、レストランもお客さんが列を成していました。
 夕方もう一度立ち寄ると、ファーマーズマーケット内の商品は完
売状態で、さすが人気の道の駅です。年間観光客が100万人を超
える理由が分かりました(レジ通過客のみの集計で、テナント入場
者数を除いています)。

 地産地消を前提としており、特にここで取り扱っているブランド
米「雪ほたか」は、全国でも5本の指に入る人気米(魚沼産と同じ
コシヒカリ)。市場価格と比べて決して安くはありませんが(その
日の価格は5キログラム3,750円でした)、生産地と生産者が
確認でき、また山間地特有の寒暖の差が大きいことによる美味が高
く評価されて、毎日完売状態とのことです。私も購入し早速頂きま
したが、大変美味。
 ブランド米づくりや農産物直売所の運営などの取り組みにより、
耕作放棄の水田はゼロの状態で、急傾斜地の畑でのソバの栽培のみ
が苦労している模様でした。

 田園プラザかわばの存在は大きいもので、生産者自らが価格付け
をし、生産者名を貼り付けて持ち込むため、輸送費の低減と中間マ
ージンなしという点は、生産者にとって大きなメリットとなってい
ます。さらに個性味ある生産と、自分で行う価格設定は、やる気を
引き出すシステムで、村民に大変喜ばれています。「(株)田園プ
ラザ川場」にとっても、販売のみに注力でき利益率も上がる好循環
となっています。

 村内は大変きれいで、清潔感十分。道路沿いなどに外来植物の
「セイタカアワダチソウ」は皆無で、農家の境界沿いには、花(秋
につき菊の花)が植えられていました。景観条例が厳しく商業用看
板ゼロで、公共施設の案内板のみ。湧き水を求めて来村する人も多
いとのことです。
 キャッチフレーズ「田園理想郷」にたがわぬ美しい村づくりに村
民全体で取り組んでいることがよく分かりましたし、豊かな自然と
日本の原風景を求める観光客が殺到している状況を目の当たりにし
て、小さな村の取り組みに感動しました。

 特色のある観光施設も視察しました。
○世田谷区民健康村
 川場村は、東京都世田谷区と「縁組協定」を結んでいて、交流を
深めるなどの活動拠点としています。世田谷区と村の共同出資によ
る株式会社が運営し、建物は世田谷区所有、村には固定資産税相当
額が入る仕組みです。
 現在、春と秋の2回に分けて、世田谷区の小学校5年生全員が2
泊3日の移動教室に参加します。農業体験(農家の人が先生役です)
などを行い、64校の約7,000人を受け入れています。川場村
は世田谷から車で約2時間の距離ということもあり、土、日曜日は
区民の宿泊利用も多いとのことです。
 都市と農村の交流事業が31年を経過し、当初の行政レベルでの
交流から、文化、教育、スポーツ、産業、福祉など幅広い分野にお
ける村民と区民同士の交流へと発展し、つながりが生まれています。

○川場温泉かやぶきの源泉湯宿「悠湯里庵(ゆとりあん)」
田園風景が広がる川場村に懐かしい日本の原風景を再現したかや
ぶき家屋の湯宿で、民間事業者が経営し、宿泊棟は4棟で部屋は8
室です。1泊一人3万円ですが、稼働率は高く、約97%とのこと
でした。

 そのほか、「SL D51」プラス「助手席」(日本に2台のみ)
の乗車体験や子供向け鉄道模型(プラレール)で遊べる「ホテル
SL」、なでしこリーグ、少年少女、ユース利用のサッカー場(本
物志向で、あえて管理の大変な天然芝のサッカー場です)を視察し
ました。

 最後に、谷田部副村長についてお話しします。東京都職員で世田
谷区に出向し、健康センター、臨海学校、林間学校などの業務に長
く関わってきた方で、5年前に関清(せき きよし)村長に口説か
れて、副村長に就任されました。とても気さくな方で、「山間地だ
からこそおいしい米、野菜ができる」「山間地を逆手に取って事業
を進める。美しい田園の理想郷をこれからもつくり続けたい」「村
民は、老いも若きも元気。自信と誇りを持っている」と、村経営に
熱心に取り組む様子などを一生懸命話される姿は自信に満ち溢れて
いて、印象に残りました。

 以上が轟監査委員さんからの報告です。大変参考になりましたし、
長野市においても、このような取り組みが、それも住民自治協議会
が主体となってできれば素晴らしいことです。さしずめ、旧合併町
村の戸隠、鬼無里、大岡、信州新町、中条地区が候補ではないでし
ょうか。もちろん、松代、若穂地区なども有力です。住民自治協議
会と支所を中心に、企業も巻き込んだ組織の力も必要ですし、行政
が補助する仕組みも必要でしょう。そして何より、事業に果敢に取
り組む地域の中心人物、「リーダー」の存在が重要だと強く感じて
います。

*轟監査委員さんから視察の様子が分かる写真も頂きました。長野
市ホームページにある私の「フォトレポート」に掲載させていただ
きましたので、ぜひこちらもご覧ください。
http://www.city.nagano.nagano.jp/site/shicyo/69447.html