本当に早いもので、あの衝撃を受けた3.11東日本大震災と翌
日の栄村を中心とした長野県北部地震から、もう2年以上が経過し
ました。多くのボランティアの皆さんが支援活動で活躍され、また
長野市からも保健師や上下水道局職員、技術・事務職員、そして消
防局職員を被災地に多く派遣しました。特に、消防局職員は総務省
消防庁の要請により発生直後から東北地方に向かい、過酷で危険な
任務を全うしました。今回は、その「消防」に着目し、長野市の消
防・救急・救助分野の動きについて、過去1年間のトピックスを中
心にお話ししてみたいと思います。
まずはハード面についてです。昨年の11月、エムウェーブ西側
に中央消防署東部分署を新設開署、中央消防署七二会分署の救急車
を高規格化、また、本年の2月には松代消防署若穂分署に高規格救
急車を配備しました(この車両はアステラス製薬株式会社から寄贈
されたものです)。この高規格救急車は、救急救命士による処置が
十分にできるように半自動式除細動器、自動人工呼吸器、自動心臓
マッサージ器などの救命用資器材を積載しています。また医師が同
乗して、車内で高度な治療をすることもできます。動く医療機関と
いうところでしょうか。医療機関から比較的距離のある中山間地な
どにお住まいの皆さんにとって、高規格救急車の配備は間違いなく
安心度の向上につながるものと思います。
また、篠ノ井署にはポンプ付救助工作車を配備しました。これは、
消火活動と救助活動の両方の能力を兼ね備えた車両で、人命救助に
関する専門的教育を受けた隊員で編成された「特別救助隊」により
運用しています。
また、本年3月には、大規模災害の発生懸念や東日本大震災など
の経験を踏まえ、緊急消防援助隊出動時の責務を果たすとともに、
通常災害時における消防力を補完するため、長野県の代表消防機関
である長野市消防局へ計3台の無償使用車両が、国から新たに貸与
されました。無線不感地帯の中継や災害現場の画像伝送を行う「無
線中継車」、消防活動やテントなどの必要な後方活動支援資機材を
搬送する「資機材搬送車」、および「人員輸送車」です。現在、既
に貸与を受けている、現場の活動拠点として使用する「支援車」お
よび「燃料補給車」と合わせ、計5台を運用しております。こうし
た一連のハード面の整備により、長野市の消防・救急・救助体制は
以前に増して向上したものと思います。
さて、配置されている各種高性能な消防・救急車両を的確に運用
し、その性能を十分に引き出すためには、消防職員の日頃の訓練が
欠かせません。長野市では、今後発生が予想されている首都直下型
地震や連動型の海洋性巨大地震などに備えるとともに、増加の一途
である救急需要への対応を含め、総合的な消防力強化のために、昨
年度、長野市独自で救急隊員資格取得のための養成講習を行いまし
た。具体的には、信州大学医学部および附属病院、長野赤十字病院、
厚生連篠ノ井総合病院、厚生連長野松代総合病院、長野中央病院、
長野市民病院などの医療機関や長野市医師会、更級医師会の支援を
受け、高規格救急車などに乗車し、応急処置などを実施したり、救
急救命士が行う救急救命処置の補助をすることが許される救急隊員
30人の資格者を4カ月間にわたり、養成しました。この資格は、
救急救命士を目指すための最初の関門です。現在、長野市消防局に
は65人の救急救命士の資格を持つ救急隊員が現場で活動しており、
日々、市民の皆さまの要請に応えて出動しています。
救急救命士は、消防機関の場合は救急隊員として5年または
2,000時間の業務経験を積んだ後、救急救命士の養成所などで、
約7カ月間の研修を受け、国家試験に合格しなければなりません。
さらに、病院で160時間の実習を経て現場の業務に就きます。救
急救命士は、医師の具体的な指示により救急現場で点滴および特定
の医療用薬剤を使用したり、器具を使用した気道確保などの医療行
為を行うことができます。消防局では、毎年4人の職員を資格取得
のため研修所などに派遣していますが、この中で、東京都八王子市
にある一般財団法人救急振興財団 救急救命東京研修所第43期研
修生の一人として、昨年9月から本年3月まで派遣した畑大悟主査
(当時中央消防署に所属)は、大変に頑張ってくれて、全国から集
まった研修生299人中で上位3人の学業成績優秀者に選ばれ、優
秀賞として同財団から長野市に高度救急救命処置の訓練用資器材一
式が贈呈されました。長野県からの派遣生としては初めての快挙と
聞いています。今後は頂いた資器材を活用して、後進の育成指導に
大いに役立ててほしいと思っています。彼を含め4人の職員は4月
に国家試験に合格し、救急救命士の資格を取得しました。
消防団などの皆さんが参加して行われる訓練のことについてもお
話ししましょう。
6月1日、水防訓練が篠ノ井西横田運動場で開催されました。毎
年開催しているこの訓練には、今年、篠ノ井地区住民自治協議会を
はじめ、自主防災会、消防団、長野市建設業協会などから、420
人余りの皆さんが参加され、河岸を守るためのシート張り工法、木
流し工法などの設置訓練の他、さらに防災ヘリによる救助訓練など
も行い、本番さながらの緊張感のある訓練ができたと思いました。
閉会式の挨拶の中でも申し上げましたが、できれば訓練は訓練のま
まで終わってくれることが理想ですが、備えあれば憂いなしという
言葉のとおり、安全・安心の環境づくりのためには、こうした日々
の訓練が極めて重要・有効だと感じたところです。
また、本年8月4日には、飯綱高原スキー場を会場に、消防団員
がその技能を競い合う「第55回長野県消防ポンプ操法大会・第
22回長野県消防ラッパ吹奏大会」が開催される予定です。
約3,000人近くが参加し、各地で勝ち抜いてきた皆さんが真剣
に競技する姿は素晴らしいものです。当日は放水による何本もの水
柱が立ち、一糸乱れぬラッパの音が山間に響き渡るでしょう。
安全・安心のまちづくりは一朝一夕にできるものではありません。
関係者の皆さまはじめ市民一人一人が普段から防災意識を持ち続け、
不断の努力を怠らない結果として得られるものです。いざという時
に慌てないために、備えは万全にしたいと思っています。