2013年9月12日木曜日

9月議会定例会開会~これからの市政運営方針


 私にとって、3期目の任期最後となる市議会定例会が5日に開会
しました。
 思い起こせば、2001(平成13)年12月に初めて議会に出
席して以来、何度、議場の演壇に立ったことか。数えたことはあり
ませんが・・・いつも妻に怒られていることは、下を向いて原稿を
読んでばかり・・・でも私は、「市長としての発言は一つの誤りも
許されない。きちんと伝えることが大切」と考え、妻に「アドリブ
は不要」といつも話してきました。
 開会あいさつでは、8月中の5回のかじとり通信の内容と、これ
からの市政運営方針、そして私の12年間の思いを込めて、お話し
させていただきました。その内容を少し簡略化させていただき書い
てみたいと思いますが、いずれにしても、現在私は市長職にありま
す。最後まで誠心誠意努めてまいります。

(1)平成24年度決算の概要
 一般会計では、効率的な予算執行により、当初予算で予定してい
た34億円の基金取り崩しを6億円にとどめることができました。
また、市債の借り入れの抑制を図り、実質収支額として9億7千万
円余りの黒字決算額を確保することができました。
 これにより行政の財政状況を示す健全化判断比率は、いずれの指
標も国の基準を下回っていますので、本市の財政状況は、健全な状
態を保つことができています。

 しかしながら、「将来負担比率」には、今後、本格化する新市役
所第一庁舎や新市民会館の建設、新斎場、長野駅善光寺口駅前広場、
ごみ焼却施設、南長野運動公園総合球技場の整備などの大規模プロ
ジェクト事業が反映されていません(これは財政のルールです)。
引き続き、各指標の推移に十分な注意を払いつつ、財政の健全性を
保持したい考えです。

(2)公共交通機関の整備
 多くの皆さんに大変好評のバス共通ICカード「くるる」は、来
月でちょうど運用1年を迎えます。来月からは市営バスや乗合タク
シーでも利用可能となりますし、今後も、周辺市町村へのサービス
エリアの拡大や他の交通機関への普及を進めるとともに、公共サー
ビスや商業での利用などの将来展開を視野に入れ、利用促進を図り
たいと考えています。
 また、新交通システムの導入可能性については、バス高速輸送シ
ステム(BRT)や次世代型路面電車システム(LRT)を想定し
て、今後、「長野市公共交通ビジョン」において検討を進めていき
ます。

 北陸新幹線の金沢延伸後も、呼称などに「長野」を残すための要
望活動については、7月31日に、県知事ほか関係者とJR東日本
の社長に直接要望してきました。JR東日本からは「お客さまに分
かりやすく案内をすることが重要で、鉄道事業者として責任ある対
応をしていきたい」との回答を頂きました。私たちと北陸の皆さん
の思い、首都圏からの利用者の利便性を踏まえての結論を導き出し
ていただけるものと期待しています。
 また、北陸新幹線金沢延伸に伴って、しなの鉄道株式会社に経営
移管される北しなの線(長野以北並行在来線)は、開業10年後に
は開業時と比べ需要が約15パーセント減少すると予測されていま
す。本市としては、新駅設置や、しなの鉄道の新企画「観光列車」
などと連携することで、利用者増加と鉄道事業の安定化につなげた
いと考えています。

(3)環境対策の充実、エネルギーの適正利用~環境先進都市を目
指して
 再生可能エネルギーの導入として、小・中学校などの市有施設へ
の太陽光発電システムの設置を行い、昨年度末の累計で37施設と
なり、本年度も7施設に設置します。また、今後整備される新市役
所第一庁舎および新市民会館や南長野運動公園総合球技場にも設置
する予定です。
 昨年度末までの太陽光発電システムの設置補助事業の補助累計は、
個人分と法人分を合わせて約5,800件、発電出力で約2万4千
キロワットと、1メガワットのメガソーラーシステム24基分に相
当する規模となっています。

 省エネルギーの推進状況については、昨年度、小・中学校など
72施設にデマンド監視装置を導入した結果、電力使用量は導入前
と比較して約3パーセントの減、料金では約400万円を削減する
ことができ、本年度は、もんぜんぷら座など8施設に導入しました。

 また、バイオマスタウン構想の推進については、雇用や産業の創
出にもつながる可能性を秘めている木質ペレットの利用拡大に向け、
従来のボイラーやストーブに加え、新たに冷暖房への活用も含めて
検討を進めています。さらに、本年度から新たに信州大学との連携
事業として、高い成長力を持つイネ科作物の「ソルガム」などのバ
イオマス資源作物について、発電や熱利用などを含めた有効活用に
向けた可能性調査に取り組みます。近い将来、中山間地域における
「ソルガム」などの栽培が、農業生産の拡大や雇用の増大につなが
ることにも大いに期待しています。

 長野広域連合が大豆島地区に建設を計画している「広域ごみ焼却
施設」については、都市計画決定に向け、素案の閲覧を先月末から
開始しました。今後、計画案の縦覧などを経て、年内に決定したい
と考えています。
 本市が行う周辺環境整備事業のうち、健康・レジャー施設、複合
施設整備については、年内の設計業務委託契約締結に向け、また、
大豆島地区住民自治協議会から要望を頂いた地域公民館整備などに
ついては、地域の皆さんと十分に協議を重ねながら、大豆島地区の
発展につながるよう進めていきます。

(4)文化芸術活動への支援と文化の創造
 新長野市民会館の運営を担う長野市文化芸術振興財団の10月1
日の設立に向け、現在、財団の理事など役員の選任、定款・規程の
作成などの準備を進めています。また、同会館と新市役所第一庁舎
の安全祈願祭が8月23日に行われ、いよいよ本格工事に着手しま
した。市役所をご利用される皆さんには、工事中ご迷惑をお掛けし
ますが、安全には十分留意して着実に進めていきます。

(5)中山間地域の活性化
 前回のかじとり通信で、「里山資本主義」なる発想や、国が取り
組む「地域おこし協力隊」を紹介しながら、中山間地域の持つ可能
性について書かせていただきましたが、中山間地域では、有害鳥獣
による被害が大変深刻化しています。こうした中、松代地区では、
約40キロメートルに及ぶ防護柵を設置し(国の補助を利用し資材
を購入しましたが、設置作業は地区の皆さん総出で行ったそうです)、
若穂山新田地区においても電気柵3.2キロメートルの設置が行わ
れています。

 長野駅善光寺口駅前広場の大庇(ひさし)、列柱には、大量の市
内産の間伐材を使用しますが、現在、そうした間伐などにより搬出
された木材の需要拡大が課題となっています。建築用材のほかバイ
オマスエネルギーなどへの有効活用を推進し、林業振興を図ります。

(6)産業基盤の整備
 日本無線株式会社の新工場の建設が稲里町に計画されていて、第
一期分は来年10月に完成予定とのことで、第二期分の工場建設も
検討されています。従業員数は約千人とのことですので、ご家族も
合わせるとさらに多くの人が長野市に転入されることになり、受け
入れ態勢を万全に整えたいと考えています。

(7)子育ち・子育て環境の整備などの保健福祉施策
 「長野市版放課後子どもプラン」は、全55小学校区のうち現在
51校区において校内施設などを活用して実施しています。活動場
所の広がりとともに、趣味や特技を生かして放課後の活動を支援し
ていただく登録制のアドバイザーも増え、現在は約680人の皆さ
んに登録していただき、子どもたちのより充実した放課後活動にご
協力いただいています。

 また、長野市社会事業協会が設置、運営する児童発達支援センタ
ー「にじいろキッズらいふ」が7月1日に開所しました。市として
も、児童専任の相談員を配置しており、障害児を支援する拠点とし
ていきたいと考えています。

(8)観光交流の推進
 9月21日から23日まで「全日本エンデュランス馬術大会」が
戸隠、飯綱高原一帯の特設コースにおいて開催されます。これまで
北海道で開催されていたこの大会を初めて長野市に誘致することが
でき、関係の皆さんのご努力に敬意を表するとともに、観光資源の
魅力に乗馬を新たに加え、いいとき(飯綱、戸隠、鬼無里)構想の
発展、戸隠、飯綱高原の一体的な振興につながればと思っています。

 豊野地区にある「りんごの湯」については、湯量の不足のため露
天風呂の営業を休止していましたが、管の洗浄作業を行った結果、
元の湯量に戻りましたので、6月から営業を再開しています。再開
後、何度かりんごの湯の前を公用車で通りましたが、いつも駐車場
はほぼ満杯。多くの皆さんが再開を心待ちにしていたんだなあと感
じています。

(9)茶臼山公園一帯の整備
 4月に運行を開始した茶臼山モノレールは、8月末までに4万5
千人を超える皆さんにご利用いただいており、新たな名物になって
います。動物園の入園者数も昨年の同時期と比べて約7,500人
上回っていて、うれしい限りです。また、篠ノ井地区から発信を続
けている緑育の推進については、矢澤秀成さんを中心に、花や緑を
育てるだけでなく、人や地域も育てる活動を積み重ねています。こ
うしたさまざまな要素が一体となって地域の活性化につながること
を期待しています。

(10)スポーツを軸としたまちの活性化
 南長野運動公園総合球技場の整備については、8月から既存施設
の撤去が始まり、来年1月から建設工事に着手する予定です。また、
スタジアム完成までの間、AC長野パルセイロのホームゲームは、
今シーズンの残りゲームを佐久市の佐久総合運動公園陸上競技場で
行い、来シーズンは同競技場と東和田の長野運動公園陸上競技場を
併用して開催される予定です。佐久市での開催は、パルセイロのサ
ポーターやファンを東信地域まで広げる良い機会ですし、8月11
日の佐久市での初試合には3,200人近い多くの観客の皆さんに
お越しいただき、本当にうれしく、そしてありがたく感じました。

 なお、パルセイロは、8日の天皇杯全日本サッカー選手権大会2
回戦で名古屋グランパスと対戦し、なんとJ1チームを相手に2対
0で快勝しました。すごいことですし、天皇杯、そしてリーグ戦が
ますます楽しみです。ただ・・・実はこの日、公務が一つも入って
いない日曜日で、こんな日は本当に珍しいのですが・・・それ故
「名古屋まで応援に行けばよかった・・・」と、ちょっと、いや、
かなり残念に思いました。

(11)中心市街地の活性化
 権堂B-1地区市街地再開発事業の施設建築物工事は6月から本
格着工し、現在基礎部分の工事を順調に行っています。一方、権堂
商店街などでも、すでに定着した「ごんバル」や飲食店以外のお店
を対象とした「ひる(昼)バル」など、まちを元気にするイベント
が開催されています。篠ノ井駅前の「しの駅バル」や「軽トラ市」
なども順調で、こうした各地区での主体的な取り組みは、とても大
切だと感じています。

(12)行政改革の推進
 老朽化が進む公共施設やインフラ資産に係る維持・更新費用の増
大は、現在進行中の大きな社会問題となっています。オリンピック
施設を抱える本市にとっても重要な課題で、現在、市有施設の現状
と課題を把握するため、「公共施設白書」の作成に取り組んでいま
す。来月初旬の公表を予定しており、将来人口や財政推計などを勘
案しながら、公共施設の再配置計画、長寿命化計画の策定を行いま
す。

 以上、9月市議会定例会の私のあいさつから、その概要をまとめ
てみました。

 私は常々、長野市をこうしたいという「夢」や「理想」をもつこ
との大切さと、その実現のためには、理念だけではどうにもならず、
具体的な議論が必要であると申し上げるとともに、市長就任以来、
「元気なまち ながの」の実現を目指し、「入りを量りて出ずるを
為す」、「市民とのパートナーシップ」、「簡素で分かりやすい行
政」、「民間活力の導入」、「無私、利他の精神」、この五つの原
則を信念として、今日まで、全力を挙げて市政の舵(かじ)をとっ
てきました。

 この間、厳しい経済情勢の下ではありましたが、財政の健全化、
生活環境の保全、産業の振興、文化芸術・スポーツの振興などに加
え、都市内分権の推進、中心市街地の再生、民間活力の導入、周辺
町村との合併など、市政の各分野において一定の成果を上げること
ができたと思っています。

 平成27年には、善光寺御開帳と北陸新幹線の金沢延伸に合わせ、
長野駅善光寺口駅前広場整備、中央通り歩行者優先道路化、新市役
所第一庁舎や文化芸術振興拠点となる新市民会館が竣工(しゅんこ
う)する予定で、長野市は冬季オリンピック開催以来の変革のとき
を迎えます。そして日本全体に目を向ければ、2020年の夏季オ
リンピック・パラリンピックの開催地が東京都に決定したことで、
さらなる大きな波が地方にも押し寄せるでしょうし、それを絶好の
チャンスとしなければなりません。長野市は、東京から新幹線で約
1時間30分で結ばれていますし、また、酷暑の東京に比べれば、
格段に涼しい気候です。もちろん長野市はオリンピック・パラリン
ピックを経験しています。東京の補完的な役割を十分持ち合わせて
いる長野市が、東京オリンピックに積極的に携わることができたら
と思っています。

 昨日私は、一般質問の答弁の中で、今期限りで市長職を退任する
ことを表明させていただきました。
 残された任期を、悔いの残らないよう全力で取り組んでいきたい
と決意しています。