2002年5月16日木曜日

浅川ダムの話し(部会での議論)その1


 昨年の田中長野県知事の「脱ダム宣言」以来、もう一年以上経過
してしまいました。永年荒れる浅川をどうやって治めるか、腐心さ
れてきた流域の皆さんとすれば、ダム着工でようやく一つの区切り
がつくと喜んでいたのに、突然の宣言で工事が一時中止ということ
になり、困惑と大きな失望を味わっておられる状況でしょう。長野
市長としても市民の生命と財産を守るということは、行政の最大の
テーマですから、代案も提示せずに(もしダムなし案で安全性を保
証出来るなら勿論受け入れるつもりですが)一時中止というのは、
誠に無責任な話と考えており、行政の空白を生んでいるわけで、も
し今大雨が降って被害が出たら、自然災害ではなくてこれは人災だ
と申し上げ、速やかな工事再開を主張しているわけです。

 脱ダム宣言後、県議会の決議で設置された長野県治水・利水ダム
等検討委員会、そしてその委員会のもとで浅川部会が置かれ、長野
市長もその部会委員として論議に参加しましたので、少し長くなり
ますが、二週にわたってその話をさせてください。

 部会の議論の争点は、主として「1.ダムは安全か、危険か?」
「2.ダムは必要か、不必要か?」という問題です。もちろん他に
も、「浅川と千曲川の合流点問題」、「緑のダムによる治水対策」
とか、「浅川にそそぐ小河川の内水問題」、「都市化問題」などい
ろいろありましたが、大きな対立点があって、意見が一致しなかっ
たのは、1.2.の問題でした。

 まず安全性の問題については、当たり前のことですが、もしダム
が崩れるという危険があるとすれば、長野市とすればダム建設は絶
対に反対です。ただこの議論は、地質とか断層とか第四紀層とか、
素人にとって分かりにくい話で、本来その道の専門家、権威者の意
見・議論で決めるべきことでしょう。我々には分からない議論をす
ることはかえって感情をむき出しにするばかりで、何の益もないと
考えました。ダムの計画段階で日本において権威として認められて
いる専門家10人が集まって検討し、9人が「ダム建設には支障と
ならない」とした、「浅川ダム地すべり等技術検討委員会」の結論、
また、国も安全性を認めているのですから、これ以上のものはない
と考えました。
 日本におけるダムの歴史は約100年ぐらいだと思いますが、地
震等で崩壊したダムは一つもないそうですし、それだけ技術的
には安定したものだそうです。

 緑のダムを育てて洪水を防ぐ、素晴らしい響きです。私もその必
要性を否定するものではありません。ただ日本学術会議でも、緑の
ダムの効果はいわゆるダムに代わり得るものではないと結論付けて
いるようですし、まあそうだろうと常識的には私も思います。同じ
ようなことですが、都市化したが故に降雨がすぐ浅川へ流れ込む、
だから洪水になるという議論ですが、これについては長野市も最大
限の努力をすることを約束しています(校庭貯留、排水路改修、調
整池設置、そして今年から個人住宅へも雨を一時的に貯留する施設
を作っていただくための補助事業の実施を予定しています)。ただ、
それらが浅川の計画流量に与える影響は最大で約5%、しかも基本
的に織り込み済みの数値なのです。これらの議論は努力をしていか
なければならないテーマではありますが、決定打にはならないよう
です。

 ここで誤解があるといけませんので、一つ申し上げます。ダムが
出来たら、100%洪水は起きないか、という問題です。残念なが
らその可能性は否定できないようです。一点目としては、100年
に一度の雨以上の降雨量があった場合、二点目としては、千曲川の
水位が高くなって千曲川との合流点にある排水機場のポンプを止め
ざるを得ない場合や、排水ポンプの能力を超える雨量があった場合、
即ち浅川の水を千曲川に流せなくなったときです。ただこれはいず
れにしろダムが有っても無くても同じこと、起こり得ることだとい
うことで、部会内の議論が対立したということではなく、国に対し、
千曲川の河床を下げるとか、立ヶ花の狭窄部を拡げるとか、問題の
解決を要請すべきということで一致していたように思います。いず
れにしろ自然を相手の仕事ですから100%安全はないということ
でしょう。

 次回はダムが必要か、不必要かについて発信します。