昨年10月の選挙で幸いにして当選させていただき、11月11日
から市長の任期が始まりました。それから半年、浅川ダム問題や
長野センタービル(旧ダイエー長野店)などの大型プロジェクトを
研究する中で、市長の仕事はあちこちに関連があって難しいものだ
と実感しています。ただ、市長になるまでの私は、長野市のことを
ある程度知っているという自負があったのですが、実際に市長とし
てその中に入り、いろいろな側面から考えて最終責任者としての判
断を下す立場になったとき、今まで私が理解していた生半可な知識
は役に立たないということを痛感させられているというのが実感で
す。
私は市長就任以来、一貫して常用してきた財政運営上の言葉があ
ります。それは、「入りを量(はか)りて出(い)ずるを為す」と
いうものです。この言葉は、収入をきちんと推計して、支出はその
範囲でやりましょう、という意味で使っています。
行政は、多様な市民要望を実現するために、一般的に借金体質に
なっています。すなわち、収入よりたくさんの支出をしている。その
極めつけは国家財政ですが、地方自治体も例にもれず借金が多い。
長野市もオリンピックという大イベントをやったわけで、施設費等
を公共事業で行っていますので、どうしても借金は大きい。しかし、
その割には長野市の財政は悪くなってはいないというのが、市長に
就任以来、内容を精査して分かってきました。でも借金の絶対額は
かなりの金額で、一般会計規模の1.5倍ぐらいの借金がある。こ
れを何としても減らさなければならないというのが実感でした。
そこで初めての予算編成にあたっても、まず収入をよく見て固く
見積もり、そして借金も返済するときには国が交付税で面倒をみて
くれる、いわゆる良質の市債を発行して収入を確保することに努め
ましたし、支出も無駄を省くように最大限の努力をしたつもりです。
でも残念ながら、14年度の長野市の独自財源(市税)は、13年度
に比べ約19億円減少し、最盛期に比べ約63億円減ってしまって
いますので、大変厳しい予算組みになってしまいました。
63億円といえば、今話題になっている小学校を一つ造っても50
億円ぐらいですから、これはかなり大きな金額です。ですから、現
段階はつらくても我慢し、力を貯める時期、すなわち借金を減らす
時期と考えています。「中心市街地に1,000億円ぐらい投下し
て街をつくりかえてしまうぐらいの構想を打ち出すべき」という方
もいらっしゃるのですが、ちょっとその度胸はありませんし、今は
その時期ではないでしょう。
現段階は力を貯める、行政は民間活力が発揮しやすい環境を整え
て、民間と行政のパートナーシップで頑張るのが最良の判断と思っ
ています。
していこうということですが、同じような言葉で、「入りを図りて
出ずるを制す」という言葉もあるようです。これは企業経営の要点
でして、企業が儲けるためには、これしかないのです。この「図る」
ということは「企(くわだ)てる」と同じような意味で、いろいろ
投資をして収入を増やしていこうという前向きの発想が入っている
と私は思います。長野市の財政もいつの時点か、「入りを量りて」
から「入りを図りて」に転換したい、と私は考えています。