2003年5月8日木曜日

みどりの移動市長室が始まりました


 「みどりの移動市長室」は、私(市長)が市内各地区へ出向き、
様々な団体の活動や地域の取り組みを視察し、市民の皆さんと直接
意見交換・懇談するものです。

 新年度になっての第1回として松代西条地区、そして第2回とし
て若槻地区を訪問しました。今回は、その時のことを書かせていた
だきます。

(松代・西条地区)
 2月に陳情に来られた松代公民館西条分館建設期成同盟会の皆
さんとの約束(一度、西条地区を見に来て欲しい)を果そうというこ
とで、4月24日、松代西条地区を視察し、松代公民館西条分館で
懇談会を開催しました。

 視察は、まず山寺常山(やまでらじょうざん)(注)邸の復元工事
の現場です。これは国の補助を受けて市が邸跡を買収し、長屋門や
庭園を復元しようというものです。神田川の水を引き入れての池、
そしてそこから下流のお屋敷へ、泉水路を通じて水を供給するシス
テムが残っている珍しい庭が魅力です。「歴史的みちすじ整備事業」
により整備された道の終りで、象山地下壕への入り口に位置すること
もあり、将来の観光拠点になると期待しています。

 神田川上流の「入りダム」も視察しました。下流の松代の都市部
を土石流等から守る大変重要な施設だと思いました。地域の皆さん
がダム周辺に桜を植樹されており、何年か後にはきっと素晴らしい
花見が出来ると思います。

 西条財産区の山林を視察しながら、宮野平(自然の森)まで登り、
宿泊施設も見させていただきました。電気が無く発電機を使っている
そうですが、西条財産区の皆さんの努力で、結構利用者が多いそう
です。あちこちにある行政が所管する青少年の家等、同種の施設が
ほとんど利用されていない現状を考えると、その運営努力には頭が
下がります。

 山を下って開善寺の経蔵を視察。この建物は県宝に指定されてい
て、数年前に県と市が半分づつ負担して、茅葺(かやぶき)の屋根
の修復をしたそうですが、次に整備しなくてはならないのは、経蔵
の中身、すなわち経本の整理です。天海(徳川家康に仕えた高僧)版
とのことですが、私にはその価値はわかりません。当然、学芸員の
調査になるものと思います。

 そしてこの日の視察の一番の目的、西条財産区事務所の視察です。
この建物は、現在も「埴科郡西条村役場」の表札が付いている由緒
ある木造建物で、当時の村長さんの部屋もあります。古い木造作り
で、バリアフリーとはいかないものの、しっかりしていてまだまだ
使えるものと判断させていただきました。現在は松代商工会議所の
倉庫に使っているそうですが、少し整備すれば立派な会議室になり
そうです。

 そのあとの懇談会では、西条地区の諸団体の方々に集まっていた
だき、いろいろなお話をお聴きしました。私からは、
1.西条財産区事務所については、多少の改修費は行政がお手伝い
するから、あの建物は残して分館の分室のようにして使用したらど
うか。
2.西条財産区の元気さは、10ある長野市の財産区の中で一番と
いう定評がある。山の手入れが行き届いているだけでなく、宮野平
の施設を維持されているのは、行政の運営している施設の利用率が
低迷している中で素晴らしいことであり、皆さんの熱意を感じます。
3.開善寺の件は、整備をどうするか研究したい。いずれにしても
貴重な財産であり、朽ち果てるのは困る。
 等々のお話をさせていただきました。

(注)
山寺常山(やまでらじょうざん)=江戸時代末期の松代藩士。松代藩
の町奉行・寺社奉行などを務めた。鎌原桐山(かんばらとうざん)、
佐久間象山と共に、松代三山と言われている。


(若槻地区の文化財を語る会)
 4月25日は若槻地区を訪問しました。若槻地区は、善光寺の北東
に位置する三登山の裾に、旧北国街道が南北に帯のように伸びて
この街道に沿って点在する集落と、これを挟んで東西に整然と軒を
連ねる新興住宅団地が発展している、そんなイメージの場所です。
長野市でも比較的早くから団地開発がされた場所で、コミュニティ
センターなども早くから整備され、理想的な住宅地の一つと思われ
る地域です。

 午前中、郷土史研究会若槻支部長の金子さんのご説明で、稲田の
エノキ(市指定天然記念物・昭和47年指定)、稲積一里塚(市指定
史跡・昭和42年指定)、そして令制東山道、を視察させていただ
きました。いずれも古代からの歴史を物語る文化財で、住宅地の中
ですが、地元の皆さんの熱心な提言があって、小公園の中で保存が
図られており、大変結構なことと認識しました(若槻地区の文化財
については、地元の皆さんが編集された若槻史の中で詳しく記述さ
れているようです)。

 その後、吉にある山千寺へ。「信玄駒つなぎの桜」「観音堂」を
見て、お堂の中で、「若槻地区の文化財を語る集い」ということで、
山千寺観音堂保存会、城跡保存顕彰会、郷土史研究会、そして区の
役員さん方約30名の皆さんと懇談をいたしました。国の重要文化
財の観音菩薩像を間近に拝顔したり、京都の清水寺を模した造りの
観音堂の保存修理が必要なこと、周辺はカタクリの花の群生地があ
り、昨年登らせていただいた若槻城跡や番所跡の遊歩道を延長する
ことにより、素晴らしいトレッキングコースが可能なこと等につい
て懇談いたしました。

 枝垂れ桜の古木も素晴らしいのですが、周りの杉林に遮られ十分
な日光が当たらないとか、素晴らしいお堂もかなり傷んでいて、修
復にはかなりの資金がいるなぁというのが実感でした。市民の皆さ
んはあまりご存知無いようですが、若槻には古い歴史がある。それ
を知る上で大変貴重な文化財がたくさん残っているということを知
り、周辺の里山と共に後世に残すことの大切さを認識した次第です。