長野県の本人確認情報保護審議会(住基ネットにおける本人確認
情報の保護について調査審議する審議会)が、住基ネットからの離
脱を中間答申したという報道にびっくりしました。
今回は、この住基ネット離脱の問題と答申に至るまでの疑問点に
ついて、2回に分けて配信したいと思います。
住基ネット離脱問題は、当初、単なる審議会の意見であり、それ
を受けた県がどうするか、という問題であり、市町村の立場とすれ
ば、県がこのような答申をまともに受けるはずはないと考えていた
のですが、その後、状況が変わる可能性もあるようなので、あえて
私の意見を表明させていただきます。
住基ネットは、国が定めた「住民基本台帳法」に基づき、市町村
が制度を整備しなくてはならない事務事業であり、県は国と市町村
との中間で、市町村のデータをまとめて国に渡す部分を担当する責
務があります。
法律で定められている行為ですから、日本国民である以上、まし
てや地方自治体が勝手に止めるということはできないはずです。し
かもここ数年、県当局が、国の指導に基づき県内市町村の住基ネッ
ト整備について、指導してきており、市町村はその指導に従って、
莫大な費用(長野市の場合1億2,000万円)をかけてきたわけ
ですから、その責任はどうするのでしょうか?本当に離脱するとす
れば、あまりにも一貫性が無く、あきれてしまうばかりです。
離脱答申の新聞記事を読んで、ひとつだけ私も気になった部分が
あります。それは住基ネットがインターネットにつながっている自治
体があるという点です。
私もすぐ担当者を呼び、長野市の方式については、完全に離れて
いることを再確認してホッとしました。ただ、つないである自治体も
二重のファイアウォール(インターネットを通じた不正アクセスか
ら住基ネットを守る障壁)でガードしてあり、国、県がそれでよろ
しいということで認め、指導してきたとのことです。
私には分かりませんが、インターネットには絶対に安全というこ
とはないそうで、ファイアウォールが破られる可能性があるという
ことが言われていることは承知しています。しかし、行政の担当者
にすれば、法律が決まって、県から指導されれば、その通りやるこ
とは当たり前でしょう。
また、審議会の中間答申の元になった、各自治体の担当者を対象
としたアンケート調査についても確認しました。大変失礼ですが、
完全に誘導質問だなと思いました。
まず結論ありきで作られたアンケートであり、私も担当者として
の答えを聞いて、当然と思いました。そんなアンケートを元に「離
脱せよ」という話しは全くナンセンスだと思います。
アンケートにもいろいろありますが、公正な世論調査をするなら、
例えば世論調査協会等、第三者機関がきちんとしたかたちでやらな
くては、恣意的といわれても仕方ないでしょう。単なる意見を聞い
てみる程度の発想なら結構ですが、アンケートに答えた担当者も、
「このアンケートが元で「離脱」とは・・・」とびっくりしていました。
長野県の一審議会とすれば、もし危険性があるということでした
ら「インターネットにつなぐことは危険があるので、切り離すよう
に指導すべきであり、国にもそのことを提言すべきである」と提言
するのが、本来の姿勢でしょう。県の指導で8月から住基ネットの
第二次稼動に向けて準備している市町村に対し、いたずらな混乱を
引き起こすことは避けるべきです。中間答申を受けた県の反応が気
になります。
あえて申し上げるとすれば、住基ネットの情報のうち、住民票コ
ードと変更情報以外の4情報(住所、氏名、生年月日及び性別)に
ついては、手続きを行えば誰でも閲覧ができる情報であり、住基ネ
ットの安全性確保のために、莫大な金をかけるということには、矛
盾や疑問を感じます。
もうひとつ、情報漏れというのは、ほとんどの場合それを扱う人
間の問題であると様々の事件報道を見ていて感じます。保護すべき
情報はもちろんありますし、それが外部に漏れないようにガードを
固めることは大切ですが、情報漏れを防ぐ重要な鍵は、人間教育だ
と私は思います。
いずれにしろ、長野市として法律違反はできません。予定通り進
めます。
来週は、審議会のあり方やe-JAPAN構想について、私の考
えをお伝えしたいと思います。
(注)
住基ネット(住民基本台帳ネットワークシステム)=全国の市町村
と都道府県などを専用回線で結び、本人確認情報(氏名・生年月日・
性別・住所・住民票コードとこれらの変更情報)により、全国共通
の本人確認を可能とするシステム。