2003年7月24日木曜日

住基ネット離脱問題について(その2)


 先週は、住基ネット(注1)離脱問題における経緯と私の意見を
述べさせていただきました。

 今週は、住基ネットに関連して大きな影響力をもつ、委員会や審
議会のあり方について感じたことをお伝えするとともに、国が進め
るe-JAPAN構想(注2)について触れてみたいと思います。

 現在、住民参加の行政運営においてますます重要性を増している
委員会や審議会は、様々な見地から検討を行うことができる重要な
組織ですが、最近の県における委員の選ばれ方が恣意的すぎるとい
うことは私が前から主張してきたことであります。

 過去の委員会や審議会は、議会論議等でもう一度慎重に検討する
ことができたから良かったのでしょうが、現在の状況は当時と違い、
委員会や審議会が格段に力を持ってしまった(それは田中知事効果
でしょうが)時代になると、委員会や審議会のあり方をもう一度問
い直し、特に委員の選び方を根本的に変える必要があるように思い
ます。ただこれは難しい。

 私も長野市行政を運営するに当たって、委員会や審議会を数多く
設置し、行政を進める上でのご意見をいただいております。この委
員さんの選任権は市長にあるのですが、公正に選任することはかな
り難しい。知っている人を選ぶのは、公正とは言えません。まして
や賛成者ばかりということも許されないのです。

 私は、市長就任以来、1年8か月の間にいろいろな委員さんを任
命させていただきましたが、私から意見を言ったのは1名だけ(こ
の方をぜひ入れてほしいという意味)、その他は、全て担当課が選
んだ方をお願いしています。しかも、長野市にはいろいろ制約があ
って、一人の方がいろいろな委員に選任されることを認めない、あ
るいは女性の登用比率の努力目標もあって、委員を公平に選ぶとい
うのは簡単ではありません。

 ただ、これだけは言えます。その委員会や審議会が仮に紛糾した
場合、多数決で結論を出すことだけは、やってはいけないことだと
思います。なぜなら多数決で良いなら、委員を任命した段階で全て
おしまい、結論は出ているわけです。審議はセレモニーに過ぎない
と思うのです。

 もうひとつ、根本的な問題があります。日本はIT社会の進展に
伴い、e―JAPAN構想を打ち出し、世界に冠たるIT国家にし
ようということを目指しています。住基ネットはそのベースになる
ものでしょう。そして現在、コンピューターのない社会は想像でき
ないほどに私達の生活に浸透してきていると思います。行政だけが
時代遅れのことをやっているわけにはいかない、e―JAPAN構
想は時代の流れを見通した上で、それなりの方針・哲学をもってス
タートした事業であると私は感じています。

 いろいろ問題はあるでしょうが、私達の社会を素晴らしいものに
発展させてくれる道具の一つであるということを、私は信じていま
す。そのことに反対の方々がいらっしゃることは承知しています。
でも、その方々に申し上げます。それならまず国に対しおっしゃっ
ていただき、国の法律を変える努力をすべきであり、それが民主主
義の原点だということです。

(注1)
住基ネット(住民基本台帳ネットワークシステム)=全国の市町村
と都道府県などを専用回線で結び、本人確認情報(氏名・生年月日・
性別・住所・住民票コードとこれらの変更情報)により、全国共通
の本人確認を可能とするシステム。


(注2)
e―JAPAN構想=国内における情報通信ネットワークの普及と
技術向上を図り、世界最先端のIT(情報通信技術)国家となるこ
とを目指す構想