2003年7月3日木曜日

Eメール碁の楽しみ


 7月1日(火)、長野ホテル犀北館で、囲碁タイトル戦「第28期
碁聖戦五番勝負第一局」が行われました。碁聖・小林光一九段に対
し依田紀基名人が挑む、この対局は信濃毎日新聞創刊130周年の
記念行事として行われたもので、囲碁ファンにとっては、文字どお
り夢の対局といってもオーバーではない組み合わせでした。

 私は前夜祭にご招待いただき、ご挨拶をさせていただきました。
両対局者は北海道の出身とのことですが、大盤解説を担当される
小林覚九段はじめ、皆さん長野県には大変深いご縁のある方という
ことで、奇縁を感じました。歴史を誇る信濃毎日新聞さんの素晴ら
しい企画に感謝、感激でした。

 この大勝負とは関係ありませんが、今回は、私の趣味でもある囲
碁について書かせていただきます。 

 先日、「信州囲碁新報」という日本棋院県本部の機関紙を読んで
いましたら、「囲碁往還」という囲み記事の中で、「パソコン“ゴ”
に挑戦しよう」という記事がありました。内容は、最近囲碁の世界
で若手の台頭が著しいのは、コンピュータ時代のなせる現象という
ことで、「囲碁に強くなるために時代に即した、パソコン“ゴ”に
挑戦しよう」とありました。

 ある意味では、我々の年代の奮起を促した文章と拝読しました。
そんなことで、「パソコン碁について」の私の考え方を聞いていた
だきたいと思います。

 最近の囲碁の流行は、“ヒカルの碁”という漫画の影響もあるそ
うですが、子供たちの間でかなり盛んになっているようです。テレ
ビゲームに夢中になるより、“碁”の方が考えるし、相手との会話
やコミュニケーションがとれるなど、教育の一環としても良いので
はないかと言われています。

 また、高齢者を中心に囲碁は盛んなようで、老人憩いの家などで
は、そのためだけではありませんが、囲碁をやる方が多いので部屋
を増築して欲しい、といった陳情もありましたし、子供たちと高齢
者のコミュニケーションの手段としても、囲碁は大きな役割を果た
しているとお聞きしています。

 県内では大町市が「囲碁によるまちづくり」に取り組んでいるこ
とは有名です。各種の大会や囲碁教室が開催され、世界中から囲碁
をやる人が町にやってくるようです。観光施策の一環としても有効
と判断され、取り組んでおられるようです。

 私も囲碁は大好きです。でも忙しいものですから、碁を打つ時間
はほとんどとれないのが実情です。そこで、インターネットのEメ
ールを使った碁を、結構楽しんでやっています。

 囲碁の対戦ソフトを私も利用したことがありますが、コンピュー
タ相手では、本当の囲碁の醍醐味を味わえないという感じでした。
コンピュータ相手の囲碁ではなくて、人間相手の対戦の場として
(コンピュータを使うことには変わりはないのですが)インターネ
ット上に「囲碁道場」のような場が設定されています。

 多分最近は色々なシステムが開発されていると思いますが、私の
知っているものは、そのサイトを運営している方々が、誰でも参加
できるように工夫してあり、登録すると棋力等を勘案し相手を探し
てくれるもので、その組み合わせで囲碁を楽しむ。当然個人の棋力
に応じた力の差は出るわけで、通常の対局とほとんど変わりなく対
局できるわけですし、終われば「さようなら」ということで、まことに
嬉しいシステムでした。ただ私は、顔も知らない方と囲碁をやるの
はどうも気が進まないし、結局一局終わるまである程度、時間的に
拘束されるわけで、あまりやる気にはなりませんでした。

 長野オリンピックが終わったころ、友人から「囲碁をやりましょ
うよ」と誘われ、インターネット利用の碁盤をメールで送ってもら
いました。碁盤といっても、画面上に361個の┼、├、┤・・・・
を組み合わせた碁盤で、あまり美しいとは言えないものですが、使
ってみると、大変面白い。以後すっかりはまってしまいました。

 その盤上に一手▲を入れて送る。すると相手は一手△を打って返
してくる。次は自分が前に打った▲を●に変えて、次の▲を打って
返す。すると相手も前の△を○に変えて、次の△を打ってくる。こ
の繰り返しです(△、▲は自分の打った手を示す意味で、必要で
す)。一日一手の場合もありますし、休みの日にお互い家にいて、数
手進むこともあります。一局終わるのに、最短でも3ヶ月はかかり
ます。

 随分悠長な話とお感じになるでしょうが、このメール碁で一番有
り難いのは、時間の制約がないことです。例えば私などは、夜中に
メルマガを書きながらでも、相手から送ってきた盤面に一手加えて
送信すればよいだけですから、1分もあれば充分、良い息抜きにも
なっています。もう一つの素晴らしい点は、会話が出来ることです。
何の制約もないメールですし、相手も親しい人ですから、碁盤と一
緒に、いくらでも文章を書いて送ればよいのです。

 碁好きで議論好きな人は、延々と文章を書いて、その下に碁盤を
つけてくる。遠く離れた人と近況を報告し合うこともありますし、
楽しく、素晴らしい情報源です。加えて友達さえいれば、何人とで
も、お金が全然かからないで楽しく遊べるということでしょう。
高齢者が多い時代にはピッタリのシステムと考えています。

 欠点を申し上げますと、碁盤を作るのが意外に面倒なことと、返
信を忘れてしまうことがあることです。碁が難しい局面では、もう
少し考えてから・・・。すると、そのうちに忘れてしまうのです。
返事をよこさない人には、催促する意味でもう一度同じ盤を送るこ
とが必要でしょう。

 海外へ長期出張するときなど「明日から出かけるので、しばらく
お休み」なんてメールがついてきて、出張から帰ってくると、お土
産話がついた盤面が送られてきます。「なぜパソコンを持って行か
ないのですか?」なんて冗談を言ったこともありました。

 友達の中には、夜、自分のパソコンを開くとき「恋文がきている
かなと胸が躍る」なんて言う方もいます。なかなか楽しいですよ。