11月1日、長野県関係の外郭団体見直し専門委員会に出席しま
した。県市長会会長の佐久市長さんをはじめ、6市町村長が市町村
の代表として出席したものですが、この専門委員会の概要は、現在、
県が見直しを検討している54団体のうち、市町村から存続の要望
が多かった4団体について意見を求められたものです。
市町村から存続の要望の多かった4団体とは、1.(社)県林業
コンサルタント協会、2.(財)県建設技術センター、3.(財)
県下水道公社、4.特別法法人県住宅供給公社でした。
長野市として申し上げた意見の概略は、以下のとおりです(当日は
時間の制約があり、必ずしも充分申し上げられなかったこともあり
ますが、整理してみました)。
イ)全ての組織について言えることですが、組織維持のために補助
金が出ている組織については、その組織の必要性について充分
検討する必要があり、役割が終わった組織、あるいは必要性が
薄れた組織については、当然やめるべきでしょう。
ロ)ただ、それぞれの組織は、過去その必要性に迫られてつくられ
たものであり、その必要性については充分検討すべきです。特
に、小さい市町村で直接的に担当する職員がいない、あるいは
持てないという理由で委託などをしている外郭団体については、
合理化は良いけれど、その機能は残すべきでしょう。そうでな
ければ廃止することは、市町村への負担の押し付けになるでし
ょう。
具体的な選択肢として(1)県が直接やる(費用は高くつくし、
サービスは低下するでしょうね)(2)民間委託する(積算や
会計検査院対応まで行える民間会社が育っているかどうか疑問
のようです)。
ハ)社団法人や財団法人は、本来、民間組織ですから運営補助をし
ていないとすれば、県は最初の基本金を出しているだけの話で
すから、存続かどうか県が決めることではないでしょう。やめ
たかったら、県は自らの発注をやめればよい話で、市町村が発
注するかどうかは、市町村が独自に決めればよいのです。それ
こそ市町村の自主的判断です。当然、もっと安くきちんとやっ
てくれる所があればそちらへ発注するでしょう。結果、仕事量
が減って組織が存続できなくなったら、組織はリストラするな
り、営業努力をもっとするなり・・・・・あるいは自ら解散す
べきです。
ニ)外郭団体の中には、業務の類似した団体があります。リストラ
を含め類似団体の統合も一考かと思います。例えば、同じ建設
関連の組織を統合して技術集団として存続することも必要では
ないでしょうか。
ホ)専門委員会の席上、委員の方のご意見で気になったことがあり
ます。それは組織検討の問題と入札における落札価格問題を結
びつける考え方です。しかし、それは入札制度の問題であって、
外郭団体の存続の是非とは分けて議論をすべきです。
入札については公平、自由競争ということが重要ですが、それ
は発注者の問題であり、応札する人の問題です。設計を誰がや
るか、市町村に全て行う能力があるか、という問題とは違うよ
うに思います。
更に申し上げれば、小さな市町村にとって、この入札問題は地
域社会の産業問題であり、働く場の確保につながっていく重要
問題です。県発注の工事を発注者である県が方針を決めてやる
ことに、現段階で異論は申し上げませんが、市町村にとって地
域産業が衰退していく中で、地元企業をどうすれば発展させら
れるか、地域の雇用の場をどうすれば確保できるか、そのこと
と公平性をどう担保するか・・・市町村の首長が一番苦しんで
いる問題です。
ヘ)県下水道公社については、長野市としては千曲川流域下水道の
上・下流処理区終末処理場でお世話になっていますが、これは
既に維持管理が主体業務になっていますから、民間委託は充分
可能でしょう。長野市も既に運転業務については一部民間委託
を行っていますし、包括民間委託も視野に入れて検討していま
す。また公社の業務の中に、従事者の資格試験業務や講習業務
がありますが、これは民間委託で充分可能な業務と思います。
ト)県住宅供給公社については、民間でも充分出来るという意見が
一般的です。確かに数量的には住宅が余っている時代ですし、
国も自ら公営住宅をさらにつくる必要は無いとしているようで
すから、県営住宅、市営住宅ともに量的な拡大はいらないと思
います。ただ長野市としては、県住宅供給公社の融資によるリ
バース・モーゲージ(注)を検討しています。高齢者が住宅を
造る、あるいは改修する場合、民間金融機関はどうしても融資
に二の足を踏むようで、資金力がある何らかの機関が関与すべ
きところであり、この役割を担えるのは県の住宅供給公社しか
ないと主張しました。高齢化率が高くなる今の時代、他市町村
でも必要性は増すと思います。また、民間企業が大規模開発な
ど元気が出ない時代、市街地の中で、果たしていただく役目は
いくらでもありそうです。
会議の終わりに自由討議があり、この中で(特)県農業会議とい
う組織について委員から質問が出ました。結果として、法で決めら
れた役割があるということで存続するようですが、農業関係につき
ましては複雑なシステムが今でもたくさんあるというのが実感です。
私見ではありますが、県外郭団体等の見直しに関連して申し上げ
るならば、日本の人口は、3年後をピークに人口が減少する時代を
迎えると言われています。若い世代の労働力の減少や年金の負担が
増すことが予想されることからも、少なくとも65歳、できれば70
歳ぐらいまでは働くことのできる環境を整備すべきであると思いま
す。高齢者の持つ技術や経験を発揮する機会を確保することは、社
会にとって重要な資産であるとともに、人口減少時代における労働
力確保と社会システムを維持向上する上で、今後ますます重要とな
ってくるはずです。組織として必要性がありコストを抑えながらや
りがいのある組織であるなら、今後も残すべきではないでしょうか。
以上、先日の会議について、長野市の主張したことについて整理
をしてみました。気になることは、この会議の後、午後の専門委員
会でいくつかの組織を廃止するという決定がなされたことです。私
達は組織の存廃はどうでも、機能は残してくださいと申し上げ、そ
れに対する答えがどうなったのか、はっきりしないことが心配です。
委員の方々がわざわざ市町村長の意見を聞きたいとおっしゃった
こと、私達もそれに真摯にお応えしたつもりですが、それが結論に
どのように反映されたのか、新聞記事だけではよく分からないとい
うのが実感です。
(注)リバース・モーゲージ:高齢者が居住する住宅や土地などの不動
産を担保として、一括または年金の形で定期的に融資を受ける制度。
利用者の死亡、転居、相続などにより契約が終了した時に担保不動
産を処分することで、受けた融資を元利一括で返済する仕組み。