暮れも押し迫って、本年最後のメールマガジンを書く時期になっ
てしまいました。何を書くべきかテーマが定まらなくて迷ったり、
逆にこのタイミングであれもこれもと欲張ってしまったり・・・・。
週末近くになると「来週の原稿はまだですか?」なんて催促されそ
うで、結構プレッシャーを感じます。「市長週刊日記」のつもりで、
平成14年4月にスタートしたのですが、もう90号(号外は除く)
近くなってしまいました。下手な文章に付き合っていただいた方々
には、ただ感謝あるのみです。
年末ですので、市政のことから多少離れますが、今年読んだ本の
話をさせて下さい。昼間は本を読む時間があまり無く、帰宅後もメ
ールに返事を書いたり、メルマガの原稿を作ったり・・・、寝なが
ら本を読む癖もあったのですが、最近はすぐ眠ってしまう有様で、
雑誌、新聞や小論文以外には、読書の機会はかなり減ってしまいま
した。それでも上京時、往復の新幹線の中や車の中で、何冊か努力
して読みました(以下、恥ずかしながら若干の読後感を入れさせて
いただくことを、お許しください)。
1.塩野七生著「ローマ人の物語」 先ごろ発売された第12巻は
ようやく購入したばかり、まだ読んではいません。でもこの本
は、12年前からの愛読書です。ローマの起源から書き起こし
た大作で、1年に1巻づつ出版されています。第11巻までの
感想とすれば、2000年以上の昔、共和制からなぜ帝政にな
ったのか、なぜあんな大きな帝国が維持できたのか、そして公
共事業とは何か、等々その真髄が見事に描かれている本だと思
います。
2.ビョルン・ロンボルグ著「環境危機をあおってはいけない」
環境重視派の方々にとっては、目を剥くような題名の本ですが、
こういう主張もあることを知っておきたい、と思って買ってみ
ました。国連等の統計資料を駆使して、現在の地球環境は必ず
しも悪くなっていないのではないか、という主張をしている本
でした。京都議定書に懐疑的な彼の主張に、真偽はよく分かり
ませんが、かなりの説得力があるように感じました。ただ地球
温暖化の傾向についてだけは、彼の主張に納得できませんでし
たが・・・・。
3.ジョージ・オーウェル著「動物農場」 この本は私達の高校時
代、英語の原書講読の授業で読んだ本ですが、最近の世情の中
で、何となくもう一度読みたくなって、今度は日本語の文庫本
を買って読んでみました。昔、英語の授業で、先生がCOMRADES!
(同志諸君!)という豚の呼びかけをやっておられたのを懐か
しく思い出しました。社会主義独裁への皮肉がテーマの本です
が、何となくユーモラスで、でも怖い本でした。独裁者のパタ
ーン、そしてその仮面の下の実態が描かれた本です。
4.ジョージ・オーウェル著「1984年」 この題名(昭和59
年)は、まったく無意味だそうです。これも社会主義を風刺し
た本なのでしょうが、なんとも後味の悪いというか、こんな社
会にだけはしたくない、と思わせる内容でした。「動物農場」
を買うとき、この小説の方が有名だということで一緒に買って
読んだのですが、途中何度も止めたくなりました。常時誰かが
見張っている社会、そんな社会はあるはずもないのですが、場
合によっては「国民総背番号制反対」運動の論拠になりそうな
感じはありました。
5.新渡戸稲造著、矢内原忠雄訳「武士道」 明治33年、新渡戸
稲造(38歳)がアメリカ滞在中に、外国人に日本人のことを
理解してもらうために英語で著した原作を、元東大総長が訳し
た有名な本です。日本人の思考法・価値観、あるいは行動規範
を欧米人に分かってもらうために「武士道」とは何か、という
ことを解説された書と言われています。原本をルーズベルト大
統領が読み、友人達に贈ったという逸話が残っているくらい、
確かに素晴らしい本だと思います。若干今の時代では受け入れ
られない部分もあるようには思いますが、現在の日本人が忘れ
ているものを教えてくれる本と思います。その中の一文「武士
道は、我々の良心を主君の奴隷となすべきことを要求しなかっ
た。(中略)主君の気紛れの意志、もしくは妄念邪想のために
自己の良心を犠牲にするものに対しては、武士道は低き評価を
与えた。かかる者は『佞臣(ねいしん)』すなわち腹黒き阿諛
(あゆ)をもって気に入ることを求むる『奸徒(かんと)』と
して、或いは『寵臣(ちょうしん)』すなわち卑屈なる追従に
よりて主君の愛を盗む嬖臣(へいしん)として賤しめられた。
誰かに聞かせたい文章です。
6.童門冬二著「上杉鷹山」 ケネディ大統領が鷹山を知っていた
という話は有名ですが、江戸時代こういう殿様が存在したこと
に感激しました。夜中に読んだのですが、この本は明け方近く
までかかって、一気に読了しました。途中不覚にも、何度か涙
がこぼれて仕方ありませんでした。
7.長 尚著「田中康夫 長野県知事の虚像」 過去、信大の長先
生が、ご自分のホームページで知事批判、脱ダム宣言の不当性
を主張しておられたことは承知していましたが、それをまとめ
て一冊の本にされて出版したものです。新聞や県のホームペー
ジに載った田中知事の言動・行動をきちんと整理され、私達に
も理解しやすくまとめたものです。巻末に公共事業の入札問題
についての提案をされていますが、大変参考になる部分です。
8.矢幡洋著「アイドル政治家症候群」 ある方が「これ面白いよ」
と届けてくださいました。抱腹絶倒、よくもここまで分析して
くれたものだ、と面白く読ませていただきました。
9.佐々木信夫著「市町村合併」 先生は現在中央大学の教授、先
ごろ長野市・豊野町・大岡村・戸隠村・鬼無里村の任意合併協
議会が主催した合併シンポジウムで、記念講演をしていただき
ました。合併協議の中で、大変参考にさせていただいた本です。
文庫本が多くてまとまった物が少なく、お恥ずかしい次第です。
今思い出したのですが、戸隠の村長さんから「戸隠の鬼」という本
をいただき、面白く読ませていただきました。村長さんにお聞きし
ますと、戸隠を題材にした本は山ほどあるそうです。また、年末に
お届けいただいた信大の吉田俊弥名誉教授の「長野県のダム問題を
考える」という投稿記事(建設オピニオン誌)も興味深く読ませて
いただきました。
雪がちっとも降らなくて、スキー場は大変だと心配していました
が、どうやら本格的な冬が訪れました。年末年始は大勢のスキー客
を迎えたいものです。可能なら、私も二、三冊本をもって、温泉の
あるスキー場へ行って、こたつにあたりながら本を読んだり、少し
スキーをやって、酒を飲んで、風呂に入って、そして居眠りして・
・・・、そんなことが出来れば最高だなあなんて夢をみています。
元気で良いお年を迎えられますよう、そして来年も又、メルマガ
をご愛読いただきますようお願いし、年末のご挨拶とさせていただ
きます。