2004年5月27日木曜日

「長野市障害ふくしネット」について


 障害者の「支援費制度」をご存知ですか?今まで障害者支援は
「措置」ということで、基準に基づいたサービスを受けていたので
すが、平成15年度から支援費制度が始まり、制度の根幹が変わっ
たわけです。すなわち障害者は自分にとって何が必要なのか、どん
なサービスがどれぐらい必要なのかを自ら判断し、その意思を伝え
ていく制度になったのです。

 この制度が始まって1年が経過しました。障害者が自分で事業者
を選び、契約することによってサービスの提供を受けているわけで
す。始まったばかりの制度ですから、いろいろ問題もあるとは思い
ますが、新しい時代のシステムとして議論しながら、より良い制度
にしていくのが我々の責務と思います。

 今年の3月25日、ノルテながののホールで「長野市障害ふくし
ネット・当事者部会」主催の「市長となんでも話そう」というフォ
ーラムが開催されました。出席者は約70人ぐらいだったでしょう
か。障害者とそのご家族、そしてボランティアの方々が参加され、
日ごろの生活ぶりや考えを知って欲しい、そして今後の市政に反映
させて欲しい、そんな趣旨の懇談会であったように感じました。

 懇談会の進行は、当事者部会の羽入田部会長さんの司会で始まり、
「こんなふうに生きたい(わたしの暮らし・可能性)」ということ
で、会場の方も含め10人ぐらいの方の意見発表がありました。全
てをご紹介することはできませんけれど、皆さん、将来の夢や期待、
日ごろ生活する中で感じていること、そして行政への要望を語って
くださいました。

 アパートに住んでいてテレビを見たり音楽を聴いたりして楽しん
でいる、読書が趣味で書店の店員になりたい、養鶏場で鶏の世話を
したい、福祉工場で30年勤務できたこと、アメリカ西海岸での経
験、30年余り精神の病と付き合ってきたこと・・・、等々いろい
ろな経験談をお聴きしました。

 行政や企業への要望もいろいろありましたが、大別すると 

 (1)働きたいけれど仕事が無い
 (2)バリアフリー、ユニバーサルデザインにもっと力を入れて
    ほしい 
 (3)障害者を特別視しない啓発教育に力を入れてほしい

 ということでしょうか。

 確かに経済状況が厳しい現在、一般の就職もなかなか厳しい状況
にあるということは認識していますが、障害者の就労を専門に担当
する職員を任命するなど、努力する必要性を感じました。また新し
い施設はバリアフリーが当たり前ですが、古い建物などの場合は改
造が難しいしお金もかかることから、なかなかバリアフリー化が進
まないという悩みがあって、行政としてはさらに努力しなくてはな
らないテーマです。

 そして障害者への理解の促進など、市民の意識を変える努力がま
だまだ足りないことも痛感しました。障害者週間など機会を捉えて
啓発に努めることが大切でしょう。

 「ヒューマンネットながの」の島崎さんが「移・職・住・遊・学」
という話をされていました。「移」とは移動手段だそうです。「職」
「住」はすぐ分かりますよね。「遊」は街の中での交流や遊び、
「学」が学校のユニバーサルデザインのこと。障害者が人間として
尊重される社会をつくっていくための要素であると教えていただい
た感じがします。

 最後に部会長の羽入田さんが、この懇談会の趣旨を次のとおり述
べられました。

 『自分の意思でサービスを決めて契約すると言っても、いろいろ
な事情からそれは難しい場合もあるでしょう。また、決めたとして
も、その中で様々な問題が発生してくる場合もあるでしょうし、そ
の中には人間関係についてなどの複雑な問題も起きてくるかも知れ
ません。生活の中で起きてくるそんな困難な問題に対して関係機関
の力を集め、幅広い観点から問題を抱えた当事者や家族の支援をし
ていくことを目的として、昨年9月に「長野市障害ふくしネット」
が設立されました。』とのことです。

 この当事者部会を含む「長野市障害ふくしネット」は、長野市を
中心とした身体障害・知的発達障害・精神障害のそれぞれの施設や
事業所など関係機関が手をつなぎ、互いの情報を交換し合い協力し
合って、当事者の生活を支援していこうという福祉の大きなネット
ワークです。行政としては大いに連携していかなくてはならない組
織と認識しています。

 もう一つ、啓発活動という意味では大変大きな意味があると思う
のは、2005年2月26日(土)~3月5日(土)に行われる
「2005年スペシャルオリンピックス冬季世界大会」です。これ
は知的発達障害のあるアスリートが世界中から集まって開かれるも
うひとつのオリンピックとでも言うものでしょうか。本年2月に行
われた国内大会では約1,000人のアスリートと5,000人の
ボランティアが長野に集い、感動的な場面を演出してくれました。

 来年は世界大会です。オリンピック、パラリンピック以来の大き
なイベントと言えるかもしれません。そこで行われる冬季競技は、
きっと観客に感動の姿を見せてくれるに違いありません。