6月市議会定例会冒頭の議案説明で、私はこの度の知事の住所決
定に対する対応について「知事の住民基本台帳法に基づく住所の決
定を取り消す」ことと、「平成15年9月26日から平成16年3月26日
までの田中康夫氏の住所は、長野市にあると認める」ことを求めて
提訴する考えを示し、そして長野市議会の議決を経て、6月23日、
長野地方裁判所に提訴しました。市議会の審議では多くの議員の皆
様のご理解をいただき、万全の態勢ができたと思っています。
5月25日の知事の決定(住所は泰阜村であること)を受けて、
その後の対応については、議会開会の前日まで、悩みに悩みました。
正直言って、こんなことで訴訟を起こすことは避けたい、というの
が本心でした。県都の市長が県知事を訴えるというのは、異常事態
であり、好ましいことではないことは当然です。放置すべきか、最後
まで戦うか、その選択に最後まで迷ったということです。
しかし、結局このまま放置したなら、すなわち公認されてしまっ
たら、全国の自治体が困る、地方自治の原点が崩れてしまうと判断
し、提訴に踏み切ったわけで、まさに「義を見てせざるは勇無きなり」
の心境でした。「勇気」とは正しい事を行うことであります。
社会の混乱を防ぐ「正義」と、混乱を防ぐために敢然と戦う「勇気」。
この「正義」と「勇気」の二つの言葉を私の励みにして、今後、裁判
に臨んでまいりたいと思っております。
「単身赴任の方のように住民票が現実と一致していない人はたく
さんいるではないか」「知事は5月に市内のマンションを引き払った
のだから、もういいではないか」というご意見がありました。しかし、
知事のこの住所決定を受け入れると、生活実態が伴わない場所でも、
意図的に本人の意思で、住所地となり得ることになり、市町村は、
公平・公正な住民サービスを行うことができなくなってしまいます。
この懸念は、先の長野県市長会においても各市の市長全員一致で、
知事の決定に抗議したことからも明らかです。
また、税金の無駄遣いではないかというご意見もありました。確
かに、訴訟を起こすには多額の費用がかかります。この訴訟に貴重
な財源を使わなければならないことにも「ためらい」がありました。
しかし、私は、公人である知事が、「好きなまちに住民税を納め
たい」と法律を無視し、意図的に住民票だけを移したことに一番の
原因があり、知事の決定をこのまま放置することはできないと考え、
熟慮の結果、提訴するという意思を固め、皆様のご理解を求めたわ
けです。
今回、皆様にご理解いただくために長野市の考え方をホームペー
ジに掲載いたしました。問題点や、問題を放置した場合に起こりう
る社会的混乱、司法の判断を仰ぐ理由、そしてこれまでの経過も掲
載いたしましたので、ご覧いただければ幸いです。
☆ホームページ☆
http://www.city.nagano.nagano.jp/topics/index.html
なお、この件については①できるだけ事務的に、粛々と進めてい
くことが必要であること、②提訴となった以上、問題は司法の場に
移るため、重大な変化がない限り、私からコメントは差し控えたい
と思っています。
また、長野市の提訴とは別に、知事が長野市と泰阜村の選挙人名
簿に二重登録されている問題で、「泰阜村選挙管理委員会が知事を
選挙人名簿に登録しているのは誤りだ」として、長野市内の有権者
5人が同村選挙管理委員会に登録取り消しを求めた訴訟の判決が
24日、長野地裁でありました。
この中で裁判長は、選挙人名簿の二重登録の原因となった知事の
住所について、知事の昨年9月26日から今年3月1日までの長野市、
泰阜村の滞在日数等の生活実態を基に「生活の中心が泰阜村に移った
とは認められない」と指摘した上で、「(知事は)名簿への登録資格
を充足していない」「名簿に誤載があったと言わざるを得ない」との
判断を行いました。
このことは、知事の住民基本台帳法に基づく住所の決定を、否定
する形になったことを意味しており、長野市としては、今後の裁判
の行方が大変明るくなってきた思いであります。
訴訟を起こすという勇気ある行動を起こしていただいた5人の市
民の方々に、心から感謝します。
なお、今回のメールマガジンの配信が一日遅れたことは、誠に申
し訳なく思っています。理由は24日(木)に前記の判決が出るこ
とが予定されていましたので、その結果をきちんと入れたかったた
めに配信を遅らせたものです。