少し前の話になりますが、2月24日(火)に国土交通省関東地
方整備局道路部の皆さんをお迎えして、道路整備に関する意見交換
会を開催しました。
関東地方整備局からは、道路部長をはじめ、地域道路調整官や路
政課長、長野国道事務所長等7名が、市町村関係からは、長野市、
信州新町、豊野町、信濃町、牟礼村、三水村、戸隠村、鬼無里村、
小川村、中条村、大岡村、そして長野土木振興会が参加し、それぞ
れの首長や担当の部課長が出席しました。
国の部長さんから、三位一体改革期の道路整備手法等について講
演をお聞きしました。各首長にすれば、道路整備は現段階の地方の
まちづくりにとって大切な事業ですから、真剣な面持ちでお聞きし、
いろいろな意見交換をさせていただきました。
この中で、関東地方整備局の皆さんにぜひ実情を見て欲しい、と
いう話が持ち上がり、国の課長さん方もぜひ見たいと応じてくださ
ったので、一番整備が遅れている国道406号を見てもらおうとい
うことで、鬼無里村行きが合意されました。
さて、本年度に入って5月18日(火)、国、そして関係首長等
が国道406号などを視察し、鬼無里村に集合しました。
鬼無里村のバスに乗って視察に出発、国道406号の未整備箇所
について、同盟会の会長として要望をしました。さらに、県道小佐
出西京線と奥裾花ダムを視察しながら裾花川の源流へ向かいました。
何年か前に来たことがありますが、その時は道が狭く、バスがすれ
違いできず、延々と時間がかかったことを覚えていますが、現在は
ダム湖の両側に道路が整備され、一方通行になっており、すれ違い
できないようなことはありませんでした。
バスの終点からは、有名な鬼無里の水芭蕉群生地まで歩きました。
奥裾花自然園の中にある81万本の水芭蕉の群生地は、尾瀬より大
きく、日本一を誇っているとのことです。花の時期としては少し遅
かったようですが、それでも水芭蕉の花が一面に咲いており、カメ
ラを抱えた人たちが沢山散策していました。今年の最盛期は5月初
旬だったようです。
それとブナ林もなかなかの規模で、素晴らしい場所でした。以前
信越県境の関田山脈のブナ林の見事さに感激したことがありますが、
鬼無里のブナ林も見事です。ゆっくり散策したら、きっと関田山脈
を上回る素晴らしさを味わえるかもしれません。トレッキングコー
スとしても最高でしょう。また、地元の皆さんに温かいお心遣いを
いただきました。短時間でしたが、関東地方整備局の皆さんには、
長野市から鬼無里村に通じる国道406号の整備の遅れと、鬼無里
村の自然の素晴らしさを認識していただけたと思っています。
話は変わって、6月6日(日)若穂の太郎山の登山に参加しまし
た。地元の皆さんから、「山歩きにお出掛けください」というお誘
いを受け、気楽に出掛けたのですが・・・。
集合場所には100人以上の方が集まっておられたでしょうか。
みんなで太郎山の頂上に向かって歩きはじめました。途中までは軽
自動車なら通れる道でしたが、登山道に入ってからが大変な急坂。
私は簡単なトレッキングのつもりで参加したのですが、頂上に着く
までの約40分間の苦しさ、大変でした。最初は私が先頭を歩いて
いたのですが、後ろから子どもさん達は元気にどんどん追い越して
いくし、大人の人も私が立ち木にもたれて苦しんでいるのを横目で
みながら、急坂をすいすい・・・・。とうとう私は最後尾になって、
役員の方々が心配してくださって、待っていてもらったほどでした。
何とか太郎山の頂上にたどり着くと、役員の皆さんから「太郎山
から城ヶ峰へのトレッキングコースの整備をお願いします」という
要望がありました。トレッキングコースの整備は、お金のかかる話
では無さそうですので、ぜひ私もやりたいとお答えしました。
太郎山の頂上(標高約1000m)から善光寺平を見下ろす景色
は素晴らしいものがありました。前に行った七二会の陣場平からの
景色は、善光寺平を西側から見下ろす景色でしたが、この太郎山か
らの景色は東側からの景色です。ホワイトリングの大きなドーム、
千曲川、そして中心市街地の街並・・・善光寺平一望の景色は、天
気が良ければ遠く飯山市まで見えるそうで、苦労して登ってきた甲
斐があったと思いました。
長野にとって自然が一番の宝かもしれないと感じて以来、「トレ
ッキングをしましょう」とみんなに語りかけてきました。そして七
二会、若槻等を、地域の皆さんと一緒に歩き、目標は善光寺平一周
トレッキングコースを作りたいと主張してきましたが、今回の若穂
の山歩きで目標へ一歩前進したと感じています。でもかなりきつい
山で、「疲れた!」というのが実感です。
2004年7月29日木曜日
山歩き、二題
2004年7月22日木曜日
プロ野球オールスターゲームが開催されました
7月11日(日)、2004サンヨーオールスターゲームが長野
オリンピックスタジアムで開催されました。当日の朝は雨が降って
心配されましたが、昼からは素晴らしい天気になり、朝の雨が気温
を下げてくれたのでしょうか、素晴らしい野球日和になりました。
このゲームは、長野市が長年待ち望んでいたもので、塚田前市長
の時代から(社)日本野球機構を含め各方面にお願いした活動が
実ったものです。当日、スタンドを埋め尽くした約3万人のお客さ
んを見て、オリンピックの開閉会式以来だなあ!と感激を覚えまし
た。満員のスタンドを見るのは、本当に嬉しいものです。
今年はオリンピックイヤーということで、プロ野球からもアテネに
選手を参加させる都合から、少し開催が早まったようです。第1戦
は名古屋ドームで行われ、6-3でオールパシフィック(全パ)の
勝ちでした。第1戦がドームというのは意味があるそうで、もし屋根
の無い長野で第1戦を予定して雨に降られると順延になる、当然
名古屋の予定も変わらざるを得ない・・・・。なるほどそうなると
オールスターゲームは、2回やるとすれば常にドームが第1戦とい
うことかと変なことに感心してしまいました。
夕刻、スタジアムでは花火を合図に、まず松代の真田鉄砲隊、真
田勝鬨太鼓、槍振り隊、のぼり旗隊が出演して、素晴らしい演技を
披露し、松代を大いに宣伝してくれました。鉄砲隊の撃つ音は、花
火に負けないぐらいの凄い音でびっくりしました。続いてホームラン
競争が行われ、オールセントラル(全セ)が勝ちました。
開会式では、両リーグの選手が、地元の子どもたちとハイタッチ
をしながら、一人ひとり紹介を受けてカッコ良く入場。そして松田
聖子さんが艶やかな着物姿で登場し、国歌「君が代」を歌いました。
私は、地元の市長として、各球団にリンゴを差し上げるという名誉
ある機会をいただき、その目録を全パの王監督、全セの岡田監督に
お渡しいたしました。
王監督は昭和34年当時、投手として早稲田実業から巨人軍に入
団、私も同年に大学入学で在京中だったことを懐かしく思い出しま
したし、岡田監督は大学の後輩です。短い時間でしたがそんな会話
を交わすことができました。
試合は第1戦と違って投手戦になりましたが、パリーグの人気者
SHINJO選手が意表をついたホームスチールで先行、さすがの
パフォーマンスでした。全パはさらに1点を加え、全セは巨人の高橋
選手のホームランによる1点だけ。2-1で第2戦も全パが勝ちま
した。
私は当日が参議院議員選挙の投票日だったため、残念ながら途中
退席せざるをえませんでしたが、市民の皆さんにあれだけ喜んでい
ただけたことで、オールスターゲームを長野に招致できて、本当に
よかったと思います。中央通りのセントラル・スクゥエアでも、大型
画面での野球中継を行いましたが、約1,000人の方が楽しんで
くださいました。
今回のオールスターゲーム開催までの主な経過を少し紹介させて
いただきます。
(1)招致活動は、平成12年4月にオープンを予定していた
日本唯一のオリンピックの名を冠した野球場、「長野オリ
ンピックスタジアム」のオープン記念事業の一環として、
平成12年のオールスターゲームの長野開催を日本野球
機構 川島コミッショナーへ平成8年9月と平成11年
5月に要望書を市長名で提出したことから始まりました。
(2)平成12年5月にオリンピックスタジアムで開催されたプロ
野球公式戦の折、川島コミッショナーがスタジアムを視察。
(3)平成13年6月、塚田市長がコミッショナーを訪問。
「オールスターゲーム長野市開催の要請文」を直接手渡し、
地元マスコミと協力して招致活動を展開。
(4)平成14年のフレッシュオールスターゲームの招致を行い、
7月に開催。
(5)同年、愛媛県松山市で開催されたオールスターゲームの大
会視察を行い、長野市開催招致に向けての準備をすすめる。
(6)平成15年3月、プロ野球実行委員会の開催前に川島コミ
ッショナーを訪問し、長野市での開催について要請を行う。
(7)平成15年3月、プロ野球実行委員会で長野市開催が決定。
(8)平成16年3月、コミッショナーに就任した根來(ねごろ)
氏を訪問し、オールスターゲームの長野市開催決定につい
て御礼を申し上げる。
準備段階で苦労したのは、スタジアムの設備関係です。オリンピ
ックでは開閉会式場として使われましたが、もともと野球場として
造った施設であります。しかし、オールスターという最高の舞台と
してはいろいろ問題がありました。観客収容数が3万人以上必要、
バックネットの支柱が観客の邪魔になる、放送ブースが足りない、
スピードガンが故障している・・・、数え上げたら切りが無いので
すが、可能な限り手直しをして、日本野球機構の了解をいただき、
開催にこぎ着けました。正直かなりのお金が掛かりましたが、今後
も大きな試合を招致するための投資として、ご理解いただきたいと
思っています。
昨今、プロ野球チームの合併・統合の話が浮上してきています。
このまま進展すると、現在の2リーグ制が1リーグ制になるのでは
ないか・・、そうとすれば今年のオールスターゲームの長野開催は、
プロ野球にとって最後のオールスターゲームではないか?なんて話
題にする人もいました。結論はまだ分かりませんが、いずれにしろ
多くの野球ファンの夢が膨らむような解決に導いてほしいものです。
話は変わりますが、社会人野球の最高峰、東京ドームでの都市対
抗野球大会へ、NTT信越硬式野球クラブの2年連続出場が決まり
ました。皆さん応援しましょう。
2004年7月15日木曜日
年金改革に思うこと(その3)
2週にわたり年金問題について書いてきて、たとえ稚拙であって
も、私なりの改革案を書かなくてはならないのではないかと思いま
した。しかし、年金問題を勉強すればするほど私案作成の難しさを
実感させられましたので、今回は年金問題に関する原則的なものを
まとめてみました。決して完璧ではありませんし見当違いの改革案
と言われるかもしれませんがご容赦ください。
さて、年金問題に対する私の考え方の基本は、
1.年金は、高齢者にとってセーフティーネットであること。
2.年金制度は決して払い損でないことを理解してもらうこと。
3.公的な支援は万人に平等であるべきこと。
この3点です。
1.は最低いくらあれば良いかという問題ですから、財政の可能
性も含め、決めればよい話です。2.も若い人が年金を払わないの
は、払えば損をすると感じているからで、それを打破すればよい話
ですから、国が責任を持つと宣言すれば済む話です。
一番やっかいなことは、3.です。万人が平等であるべきという
点は、総論としては賛成していただけるのですが、実際の場面にな
るとあまりにも違いが大きいために、有利な年金に入っている方か
らすれば、とんでもないという話になるのだと思います。
年金には大別して、(1)厚生年金(2)共済年金(3)国民年
金がありますが、(1)(2)に比べ(3)が著しく不利であると
いう印象がありますので、若干比較してみました。
1.厚生年金や共済年金は、会社員や公務員が入る年金で、その人
の所得の約6.8%が給料から天引きされています。すなわち、
40万円の所得に対し約27,000円の保険料となり、結構大
きな金額を納めています。国民年金の場合は、所得に関係なく保
険料として納める制度で、現在は月額13,300円となってい
ます。
2.現在の制度で単純な計算(20歳加入で40年間保険料を払い、
65歳から80歳まで受給した場合)を行ってみますと、厚生年
金や共済年金は受給額が支払額の約2倍なのに対し、国民年金で
は約1.9倍と私は試算しました(現行制度による試算を行った
もので、実際には様々な要因がここに加味されると思いますので、
専門家の皆さんには御不満の声もあると思います・・・)。
3.厚生年金や共済年金では、事業者(企業ないし公共団体等)も
個人と同額を保険料として負担しているのに対し、国民年金の場
合は、今回の年金改革関連法で、国庫負担率を平成21年度まで
に、現在の3分の1から2分の1へ段階的に引き上げるというこ
とが決定しましたので、厚生年金や共済年金の方が 国庫負担が
小さいこと思われます。
4.ただし、国会議員年金の場合は、10年在職で15年間年金を
受給した場合、受給額が支払額の約4.8倍となるうえ、国庫負
担が3分の2もあるというのは、やはり公平さを欠いていると思
います。
さて、具体的に私案を考えてみます。
(1)個人の年金がいくらになるかを検討するとき大切なことは、
過去自分が積み立てた年金保険料に一定の利息を加えた金額
は保障されるべきです(この金額をA円とします)。
(2)65歳が受給開始年齢としたら、その時点で個人が積み立て
た年金保険料とその利息の総額(A)を確定させる。そして、
我々の平均寿命が80歳であると仮定するならば、平均15
年間受給するわけですから、A÷15がその人の年間受給額
の基礎(B)となります。現在受給している方も65歳時に
さかのぼって計算するものとします。
(3)年金は25年加入していないと受給資格が無いことはやむを
得ないことと思います。その代わりきちんと義務を果した人
には、国は必ず報いることが大切です。また、生まれた時か
ら親が子どもの年金保険料を払っても良いと思います。
(4)ここまでの原則は、あくまで個人の積み立て分をはっきりさ
せ、国の責務をはっきりさせることです。
(5)次に、セーフティーネットとして、年金の最低額をいくらに
すべきか、公的資金の投入額をどうするか、という問題です。
これは難しい問題です。きちんとしたデータに基づいた議論
が必要で、個人の負担能力、長期の国家財政状況そして最低
生活費等を勘案して、国が決めるべきでしょう。私の希望的
な数字を言わせていただけば、(B)+(公的年金)の額が、
夫婦で月額15~20万円ぐらいになれば、セーフティーネ
ットとしては、合格ではないでしょうか。
(6)さて、公的資金の原資をどう確保するかですが、それは今後
50年間ぐらいの財政状況、人口動態を検討して国が決める
べきです。消費税を年金会計に入れるのは有力な案です(小
泉首相が自分の任期中は、消費税を上げないと宣言したこと
は、消費税を年金に入れようということの議論を止めてしま
ったという意味では問題でしょう。確かに景気のことを考え
ると、今、増税のことを話すべきではないということも分か
りますが・・・)。ただし、大切なことは、危機的な年金会
計のバランスを取り戻すこと、公的支援金額は本来全国民が
同じ金額であるべきだということです。現役中にたくさん保
険料を納めている方は、私の案でもそれなりに(B)の部分
が多いはずですから、悪平等ではないはずです。
(7)もうひとつの重要なテーマは年金の一本化です。一本化の必
要性は大部分の方が認めていることです。しかし、実際に一
本化の具体論をやると、損をする人、それも年金が相当減額
される人が出てきますので、その人たちの説得に時間がかか
るでしょう。でも、年金会計は待ったなし破綻寸前ですから
早急に取り組まなければならない重要なテーマです(将来に
わたった詳細な赤字額を試算し国民に公表すべきだと思いま
す)。この問題については、あまりにもいろいろな制度が混
在しているために、調べれば調べるほどその難しさが分かり、
残念ながら一本化についての私案を作ることができませんで
した。
稚拙な考え方をお話しました。自分でも整合性が足りないことは
承知しています。全てのことを考えるのは、情報もありませんし、
制度を全て知っているわけではありませんので、基本的なことだけ
考えてみました。実務的に不可能、あるいは政治的に不可能という
こともあるかもしれません・・・・・・・。
年金の制度を改めるということは、現在すでに受給している人に
とっては、導入する公的資金の金額によって、受給額が減るのでは
ないかと心配されるでしょうが、一時的な激変緩和処置は別枠で考
えるべきであって、根本的な改革をしない限りどうにもならないと
私は感じています。また、受給資格者で年金以外の収入が多い方も
いらっしゃいますが、その方々に対する減額はやむを得ないのでし
ょう。
若い方が年金を払わない理由は、払えば損をするという考えが一
因になっているはずですから、やはり年金は得するものだ、少なく
とも損はしないということをベースに、信頼を取り戻す必要がある
と思います(早く亡くなった方については、遺族に対する給付の見
直しという考えも必要かもしれません)。
具体的に議論することがどうしても必要です。議論のための分か
りやすい数値を示してほしいものです。
2004年7月8日木曜日
年金改革に思うこと(その2)
前回のメルマガでは、年金制度が抱える課題(高齢化と団塊世代
の引退)、世代間助け合いの原理、バラバラにスタートした年金制
度・・・等について、(Ⅰ)~(Ⅲ)として私見を述べさせていただき
ました。今日は前回指摘できなかった問題点を、もう少し指摘した
上で、ではどうするか・・・・を書いてみたいと思います。
(Ⅳ)運用を間違えたのに、責任をとらない
年金制度には、国民の怒りをかっている問題がもう一つあります。
年金として集めたお金の運用を間違ったことです。
公的年金の積立金を使い、全国に建設された大規模保養施設「グ
リーンピア」や厚生年金福祉施設などがその例です。この計画が立
てられた70年代は、年金財政が今ほど厳しくなく、自治体も地域
活性化のために誘致を進め、政治家も後押しをしてきたのです。
しかし、その後の年金財政の悪化とバブルの崩壊により、累積赤字
が膨らみ経営難に陥りました。
バブル崩壊で不動産会社やレジャー関係に投資した会社は大部分
大損しているのですから、ある程度は仕方ないと言えるかもしれま
せんが、民間会社の場合は倒産したり、経営者交代により責任をと
らされケジメをつけているのに、年金資金を使ったこれらの施設の
破綻には、政治家や官僚を含め誰も責任をとったという話を聞いて
いません。
その外にも、保有株式の値下がりや含み損といった問題もあり、
結局は国民の税金で穴埋めせざるを得ないということなのでしょう
か。もちろん何らかの資金運用をしない限りお金は増えませんので、
多少のリスクは仕方ないのですが、これらの問題は、年金資金を本
来の目的以外に流用することの危うさを教訓として残しました。
余談ですが、私はバブル崩壊による土地の急激な値下がりは、一
種の国家犯罪だと思っています。確かに日本の土地価格の異常な値
上がりは大問題でした。でも国も税収があがり、その恩恵をかなり
受けていたことは事実で、その時赤字国債を返済するとかの引き締
め政策をすべきだったのでしょう。ところが、国も民間と一緒にな
って有り余る税収を使うことに専念し、一方で極端に土地いじめを
行った。土地神話の崩壊が起きたのです。
住宅金融専門会社(住専)問題の時、住専から金を借りて大儲け
した後、土地が値下がりして返済できなくなった社長が、証人とし
て国会に呼ばれ、土地価格の急激な値下がりは国家犯罪だという意
味のことを言っていましたが、私は妙に共感を覚えた記憶がありま
す。
(Ⅴ)制度設計の誤算
もうひとつ、制度のスタートに当たって根本的な誤りがあったの
ではないでしょうか?
公的年金の制度改正は、国立社会保障・人口問題研究所が公表す
る将来の人口推計に基づいて行われます。ところが、その推計で出
生率が将来どこまで下がるかの見通しが常に甘すぎたうえ、日本人
の平均寿命が急激に伸びたことにより、年金制度は少子高齢化への
対応が遅れてしまいました。
もちろん、長寿者が増えたこと自体は素晴らしいことであり、日本人の
生活習慣や健康志向、医療制度や社会福祉制度が格段に進歩したこと
の証明ではありますが、年金制度の運用が実態に即していなかったこと
が、制度設計という面からいえば、大誤算となってしまったのでしょう。
また、終身雇用、年功型賃金体系の崩壊など、常に所得が増える
時代ではなくなったことも誤算の一つかもしれません。
以上、問題点の羅列はこのくらいにして、年金一本化の話に移り
ましょう。
年金を一本化するという総論は、多分大部分の人が必要だと感じ
ていると思うのですが、各論に入るとどうしようもなく、難しい、
利害関係が生じるのです、でもやらなくてはならない・・・・。
税金で賄うと言っても、財政悪化問題は別にして、過去の負担の不
公平をどうするか、現在受給している高齢者層をどうするか・・・・
簡単には解決できない、解けない方程式を解こうとしているように
思えるのです。
決定した年金改革を批判することは簡単です。でも一本化という
だけでは何も解決しないので、具体的な施策で、ぜひ納得のいく再
改革を望みたいものです。
年金改革はやらなくてはならない大きな問題なのですが、でも難
しい問題であることは、ご理解いただけたと思います。今回決まった
年金改革は国民に大きな負担をかける内容ですが、通過しなくては
ならない一つの過程かなと思っています。でも根本解決にはほど遠い
内容でしょう。
今回で年金改革については完結させる予定でしたが、年金問題に
係るさまざまな問題点を述べているうちに、ついつい長くなって
しまいました。そこで、来週、年金改革に係る私案を掲載させてい
ただきたいと思います。
2004年7月1日木曜日
年金改革に思うこと(その1)
今回の参議院議員選挙で、問題になっている年金改革の本質は何
か、これが争点だと言われながら、意外に分かっていないのではな
いか?即ち「国会で新しい年金法が決まった、でも国民に大変な負
担を押し付ける法律だ」ということ。そして新しい法律が成立した
ばかりなのに、これから一本化の話し合いをする。非常に分かりに
くいというのが、実感ではないでしょうか。テレビなどで政治討論
会を聞いても、年金選挙だというばかりで具体論が何も出てこない。
根本的には財政改革の話につながることは分かっているのですが、
政治家の未加入・未納があったり、一旦合意したにもかかわらず、
その後すぐに反対したり、強行採決したり・・・。国民がきちんと
理解しているかどうか、いや国民というより役人を含む地方の政治
家だって、本当のことは分かっていないのではないでしょうか。首
相の発言だって、国民が本当に分かるようには話していない・・・
と私は感じています。
今日はこの問題について、素人の私が理解した範囲で、2週にわ
たり書いてみたいと思います。
(Ⅰ)年金制度が抱える課題(高齢化と団塊世代の引退)
昭和22年以降の数年間にかつてないほどたくさんの子供が生ま
れました。堺屋太一さんの命名でしたでしょうか「団塊の世代」と
呼ばれていますね。戦後約60年たちますが、日本の社会はこの
「団塊の世代」の動向によって動いてきたと言っても言い過ぎでは
ないようです。すなわち、ベビーブーム、入試競争、結婚ラッシュ
・・・高度経済成長やバブル崩壊も、団塊の世代の動きが世の中を
変えて来た一つの要因だったと私は思っています。
「団塊の世代」がなぜ生まれたか。それは、戦後、多くの人々が
故国に戻って生活を始め、子供達が生まれた。さらに、現在進行中
の少子化により、日本の人口ピラミッドを特異な形にしたのでしょ
う。
そして今、リストラを含め、そろそろ団塊の世代が引退期を目前
にしています。60歳定年制のもとで、多くの方がまもなく引退生
活に入ることになるからです。
年金問題がこれだけ深刻化してきた背景には、少子・高齢化が進
んで、働く世代が相対的に減ったこと、その一方で年金受給者(高
齢者)が増えて年金会計が破綻状態になっているのに、さらに一番
人数の多い世代が一挙に年金生活に入ってくるという現実があるの
です。
(Ⅱ)世代間助け合いの原理
本来、国民年金制度が発足した昭和36年当時、私たちには世代
間助け合いという意識は薄く、将来の安心を買う、自分の貯金のつ
もりだったことは事実でしょう。
それがどうもそうではないらしい。自分達の拠出金は前の世代
(この制度の設立時で言うなら、年金を積み立てていない方々)、
に支払われている。それでも人口は増えているし、右肩上がりの社
会で我々の年金は子供達の世代が払ってくれるから大丈夫だろうと
疑わなかったのです。でも現実は、少子化が進行していたのです。
(Ⅲ)バラバラにスタートした各年金制度
具体的には、公務員の恩給制度が一番古いのでしょうね。この制
度がいつから始まったか正確には分かりませんが、公務員給料から
の天引き積み立てに加えて、国の役人が大きな予算を計上して自分
達の権益を守ってきた、その有利さが世の批判を招いているようで
す。
公務員は、現役時代の給与水準が民間より低いから、恩給ぐらい
は多くてもいいではないかとか、恩給を受け取るのが役人の唯一の
楽しみだといった言葉を聞いたことがあります。現在は恩給ではな
く、共済年金と呼んでいます。また、地方公務員が加入している地
方公務員共済組合制度がありますが、市長もこの年金制度に自動的
に加入するようです。
会社勤めの方々を対象にして始まったのが、厚生年金です。これ
は個人の給料天引き分と同額程度を企業が負担しています(企業に
とって社員の厚生年金支払いは義務ですから、本来は会社で社員の
厚生年金を払っていないということは無いはずです)。公務員の共
済年金において、国や地方が半額程度負担しているのと同様に、企
業が同額程度負担していると考えれば、その負担分は企業の法定福
利費として損金扱いされていることで仕方がない面もありますが、
大不況時代、企業にとって負担が大きすぎるということで、正規社
員扱いをやめて厚生年金から脱退させ、国民年金に加入させている
という話も聞こえてきます。また、今後は企業の海外進出で、国内
が空洞になってきて厚生年金加入者が減少することもあるわけで、
厚生年金財政も厳しくなると思われます。
そして、国民年金です。政治家の未払いが分かって国民の不信を
買っていますが、これは自営業者(政治家も含まれるようです)や
自由業の人、主婦の皆さんが加入している年金です。企業を辞めた
方も60歳以下であれば、この年金に加入しなければなりません。
この年金制度の運営は、国が行っているのですが、昭和61年4
月から(国・県・市の)議員や主婦が強制加入になりました。また、
平成3年4月からは、20歳以上の人は学生であっても強制加入に
なるなど、途中で制度がいろいろ変わったために分かりにくくなっ
てしまった。あるいは他の年金に比べて掛け金や給付が低く、国の
負担が大きくなかったためか、あまり重要視されてこなかった、と
いうことでしょう。
厚生年金は給料天引きで自動的に徴収されているのに、国民年金
は加入者個人が手続きをするわけですから、忘れてしまうことや、
お金の都合で払えないことだってあるはずです。
このほか、批判の多い議員年金もあります。これは国会議員だけ
でなく、県・市の議員にも関係があり、個人積み立て以外に公的支
援も相当大きいらしく、問題視されているようです。しかし、議員
には退職金というものがありませんので、老後の生活保障はある程
度は必要なのかもしれませんが(ただ、地方議員年金と国会議員年
金の二重受給といった不可解な制度にも問題があるように思います
が・・・)また、純粋に民間運営されている年金制度もあり、問題
を分かりにくくしている要因は沢山あります。
来週は、私が考える年金制度のあり方について、私案を交えてお
伝えしたいと思います。