年末になりました。今年最後のメールマガジンです。少し長くな
ってしまい恐縮ですが、お付き合いください。
さて、市長に就任して以来、早いもので4年間という任期も残す
ところ10カ月余りとなりました。この3年間、市民生活の充実と
長野市の発展を念頭に置きながら、私なりに懸命に職責を全うして
きたつもりです。また、もんぜんぷら座や市立高等学校のあり方、
浅川治水・泰阜村・住基ネット等々の諸課題の対応に悩む日もあり
ました。特に市長としては市民の皆さんにとって厳しい発言をせざ
るを得なかったこともありますが、その中にあって市政を運営する
ことができたのは、市民の皆さん、議員の皆さんのご理解、ご支持、
そして、共に苦労してくれた職員のおかげであると心から感謝をし
ています。
来年は、4年間の集大成の年として、1町3村との合併で生まれ
る新市のまちづくり、「長野市版都市内分権」の具体的な検討、行
政改革の着実な実行、さらに、直面する福祉、環境、教育などの諸
課題の解決に向けて全力を尽くします。開催が迫っている2005年
スペシャルオリンピックス(SO)冬季世界大会の成功に向けても
全力を挙げてまいります。
また、これらの課題に機敏に対応していくためには、職員一人ひ
とりの意識改革が不可欠と考え、昨年度から人事制度改革に取り組
み、このたび人事評価マニュアルがまとまりました。能力評価と業
績評価を計画的に実施し、行政課題に積極的に挑戦できる職員の育
成に努めてまいります。
今年度のまちづくりアンケートでは、住み良い長野市をつくるた
め、特に力を入れてほしい施策として、
第1位は「高齢者福祉サービスの充実」で、12年連続でトップ
となりました。高齢者が激増している時代、安心して生活できるた
めの方策(セーフティーネット)の重要性を痛感しています。
第2位は「中心市街地の活性化」であり、一昨年7位、昨年5位
から更に上位となりました。中心市街地の衰退に対し、市民が心配
している結果でしょう。
第3位は「子育て支援と子どもが夢を持てる社会」で、3年連続
で第3位です。将来を担う子どもが夢を持てる社会が大切であると
いう点は、すべての人が同意するテーマですし、少子化に歯止めを
かける施策の必要性を感じています。
第4位は「犯罪防止の推進」、今回新しく追加した項目ですが、
いきなり上位になりました。信じられないような凶悪犯罪事件が日
常茶飯事の如く発生し、市民が不安を感じている。防犯は「警察」
の役目と考えていた従来の市行政の取り組みではいけないという警
告かもしれません。
第5位は「生活道路・幹線道路の整備」、毎年上位にランクされ、
各地の市民会議でも常に出されるテーマです。地域社会にとって、
道路の建設・改良・整備は大切であるということでしょう。典型的
な公共事業であり、財政改革の真っ只中、予算的には厳しいものが
あります。
さて本年度、取り組んできたテーマを報告させていただきます。
市行政は総花的ですべての施策・事業が大切なものでありますが、
私は、その中で敢えて次の5項目を今年度の重点課題に据えて、全
力を挙げて取り組んでまいりました。予算額の大きさではなく、数
年以内にきちんと実行しなければならないことを基準に考え、取り
組んできた事柄です。
一つ目は、市町村合併と都市内分権の推進であります。
豊野町・戸隠村・鬼無里村・大岡村との合併につきましては、去
る11月18日、総務大臣による「市町村の廃置分合」の告示があ
り、来る1月1日に長野市と合併することが決定いたしました。
都市内分権につきましては、今年1年間、「調査・研究の内容」
を市民の皆さんにお示しし、説明と議論をしてまいりましたが、こ
の度、いただいたご意見を反映し、長野市としての原案を庁内で決
定し、報告書としてまとめました。来年度早々この「原案」をもとに、
議会の了承を得ながら、市民の代表や市議会議員、学識経験者等で
構成する都市内分権の審議会を設置し、市民の視点に立った議論を
していただき、長野市にふさわしい都市内分権の具体的な内容を検
討していただこうと考えております。
二つ目は、行政改革と民間活力の導入です。
4月に、松代斎場の火葬業務、第二学校給食センターの一部給食
業務、9月には上下水道料金徴収業務等の民間委託をしてまいりま
した。それぞれ実績を上げています。県内では初めての試みである
温湯温泉のPFI(注1)事業は、事業者選定委員会で事業者の選
定が行われました。PFI事業については、その手法を学びながら
実施しており、今後の行政システム改革の手段として更に研究し、
増やしていきたいと考えています。
注1:PFI=Private Finance Initiativeの略。民間の資金、経営能力
および技術的能力を活用して公共施設等の設計、建設、維持管理、
運営等を行う手法
指定管理者制度につきましては、地方自治法の改正の趣旨を踏ま
え、長野市行政改革推進審議会に「市有施設の見直し検討部会」を
設置し、523の市有施設のあり方をご審議いただきました。同審
議会から検討結果の提言を受けましたので、今後、この提言を尊重
してまいります。来年は合併町村の施設についてもご審議いただく
ことになります。
行政評価につきましては、今年度は1,840件の事務事業につ
いて評価いたしました。今後、この評価結果を平成17年度予算編
成に生かすわけですが、懸案事項である外部評価についても検討し
たいと考えています。
日曜開庁につきましては、10月から月1回第3日曜日に本庁の
証明書等発行の窓口を中心に、16課で試行的に実施しております。
今後、来年3月までの試行期間の中で市民ニーズの把握に努め、市
民の目線に立ったより充実したサービスの向上を目指し、本格実施
に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
三つ目は、廃棄物処理対策の充実であります。
本市に設置する長野広域連合の焼却施設の建設候補地につきまし
ては、「長野市ごみ焼却施設建設地検討委員会」において、委員の
皆さんに精力的にご審議をいただいております。検討委員会は、現
在、候補エリア選定の最終段階に入っております。今後、選定され
た候補エリアから、建設候補対象地を抽出し、比較評価するための
指標や基準をご審議いただき、建設候補地を選定していただきたい
と考えております。市民コンセンサスが得られる候補地選定は重要
ですので、十分なご審議をお願いしたいと考えております。
さて、本市では、4月から全市でプラスチック製容器包装の分別
収集を開始いたしましたが、上半期の結果は順調です。加えて可燃
ごみ、不燃ごみとも、予定以上の減量効果が見られ、昨年度より約
7パーセント減っております。市民の皆さんのご協力に感謝すると
ともに、引き続き分別の徹底、ごみの減量、再資源化の取り組みを
お願いしてまいります。
四つ目は、教育環境・内容の充実であります。
平成17年度以降の小学校高学年の35人学級編制事業につきま
しては、県と市町村のあり方懇談会の中で「4年生までは県が負担
する」併せて「5・6年生については、県と市町村の協働方式によ
る35人学級や少人数学習・ティームティーチング(注2)、加配
教員の振替方式などの中から選択・併用等も可能」とする提案があ
りました。これらの提案に対し、県市長会で討議の結果、来年度に
ついては県の提案を受け入れ、各市の判断により進めるという方向
になりましたので、長野市としても保護者や学校の意向を考慮しな
がら、選択肢の中で最適な方策を考えてまいります。
注2:ティームティーチング=学級の児童・生徒の状況に応じて、
複数の教員が役割分担をして、きめ細かく指導を行う方法の一つ。
中心市街地3小学校の統廃合計画につきましては、学校説明会や
地区懇談会を開催して関係校の保護者や住民の皆さんと話し合いを
行ってまいりました。その中で、住民の皆さんからいただいたご意
見やご要望を反映することにより、保護者の意向を尊重しながら緩
やかなかたちで将来の方向を決定していく移行措置の導入という考
え方を10月にお示しいたしました。この移行措置は、後町・鍋屋田・
山王小学校の3校を通学区域特例校と定め、通学区域の弾力化を図
ることにより、来年度から市内全域の新入学児童がこの3校のうち
から選択して通学することができるようになると同時に、3校の在
校児童や新入学児童もそれぞれ限定した隣接学校を選択して通学す
ることができるという学校選択制を実施するものです。そして、導
入後はその動向を検証して将来的に1学年複数学級が見込めるかど
うかを判断基準として、最終的な方針を決定するという考え方であ
ります。
この考え方を10月下旬から3校の保護者や住民の皆さんに説明
し話し合いを行ってまいりました結果、一部には依然として統廃合
そのものの白紙撤回を求める反対意見がありますが、これまで反対
されていた皆さんからも今回の考え方を評価するご意見をいただい
ております。また、多くの皆さんから移行措置の導入を肯定的に受
け止めていただいておりますので、来年度から実施できるよう努力
してまいります。
市立高等学校の改革につきましては、本年8月に改革モデルプラ
ンを作成し、広報ながの及びホームページを通じて広く市民の皆さ
んのご意見をお聞きしたところ、多岐にわたる建設的なご意見をい
ただきました。現在、これらのご意見も踏まえ、学校現場と一体と
なって具体的な教育内容について検討を進めております。また、よ
り魅力ある学校づくりに向け、高校生が在学中に大学等の講義を受
講できる「高大連携」の協力を信州大学及び清泉女学院大学等へ要
請したところであります。
五つ目は、バス路線網再編計画であります。
公共交通の活性化を目指して策定中であります「バス路線網再編
基本計画」につきましては、長野市交通対策審議会、同都市交通部
会においてご審議いただいております。現在、本年度中の最終報告
に向け、合併町村における今後の交通体系整備も含めご審議いただ
いており、今後、市民の皆さんのご意見もお聞きしながら、実効性
のある計画策定を進めてまいります。
地域内をこまめに回る地域循環コミュニティバスにつきましては、
本年9月1日から市内2路線で小型バスを使用して運行を始めまし
た。地域の利用者の皆さんには大変好評でありますので、今後も地
域の皆さんとともに、一層のPRに努め、定着を図ってまいりたい
と考えております。今は、マイカーが普及し、バスの利用度が低い
地域でも、バス運行が継続されることによって、高齢者をはじめ地
域に住む大勢の皆さんがバスに目を向けてくれるものと信じており、
今後もバスが生活に密着した移動手段として利用していただけるよ
う創意工夫を凝らしてまいりたいと考えております。
以上、16年度に取り組んできた重点項目についてお話しいたし
ました。本年度内に片付きそうもないテーマもありますが、今後も
全力を挙げて取り組みます。
今年あった大きな出来事といえば、やはり災害です。この秋は災
害が全国各地で相次ぎました。新潟県中越地方の大地震による被害
は言葉では言い尽くせないものがあります。本市でも信更町安庭の
地滑りや台風23号による大変多くの被害がありました。被害があった
河川・道路などの公共施設につきましては、国の支援をいただいて、
現在できるところから復旧作業を行っております。
新潟県中越地方の大地震による被災地では、現在でも避難勧告が
4千人余りに対して出されたままとなっており、こうした方々の大
半は、仮設住宅で雪の季節を迎えることとなります。本市からも被
災地の援助として、消防救助隊をはじめ、給水車、水槽車、バキュー
ムカーによる支援活動、また、保健師や「応急危険度判定士」の資
格を持つ技術職員のほか、「炊き出し」など現地で支援するために
職員を派遣いたしました。今後は新潟県災害対策本部からの要望・
要請に基づき、国・県・市長会などと連携しながら、適切な支援活
動をしていくつもりです。また、大勢の長野市民がボランティアと
して被災地で支援活動をしていただいています。心から敬意を表し
ます。
浅川治水問題についても簡単に触れさせていただきます。
国が「継続扱い」とし、「従来の計画」に基づいた「河川改修工
事」につきましては、護岸工事などが予定している一部で再開され
ています。しかし、整備計画につきましては依然として先送りされ
ているため、10月には県知事に対し、また、11月には県土木部
長に対し、河川管理者として県自らの責任で、一刻も早く、安全で
信頼のおける整備計画を進めるよう要望いたしました。しかし、県
からは「広く意見を聞きながら進める」という趣旨の答えがあった
だけで時期などは示されませんでした。私は従来から申し上げてい
るとおり、
(1)基本高水流量450トンを下げることは、市民の安全を値切
る話ですから、絶対に死守する。
(2)造るかどうかは別として、ダムは危険という論拠の無い意見
については議論しない。
この2点を変える理由は無いと思っています。このまま議論に進
展がないと、北陸新幹線の進捗にとって大きな支障となる可能性が
出てきます。
少し長くなりすぎましたので、終わりにさせていただきます。本
当は三位一体改革によって長野市の財政はどうなるか、入札制度の
改革、スペシャルオリンピックスなどもお話ししたいのですが、次
の機会にさせていただきます。
「一隅(いちぐう)を照らす」という言葉があります。約1,200年前、
伝教大師最澄が説いた言葉で、「金銀財宝などは国の宝ではない。
自分が生きているところ、あるいは、自分が置かれたその場所で努
力し、明るく光り輝くことのできる人こそ、かけがえのない国の宝
である。一人ひとりがそれぞれの立場で全力を尽くすことによって、
世の中が明るくなる」という意味だそうです。
この言葉を市役所にあてはめてみますと、職員が、本庁や支所な
ど自分の置かれている職場や立場で、日々ベストを尽くし職務を遂
行することによって、職員一人ひとりが光り、そしてその職場が光り、
やがては市役所全体が輝きます。そして、長野市にとっては、市民の
皆さん一人ひとりが光り、それによって各地域が輝き、やがて、長野市
全体が光り輝くことになると考えます。
長野市は、合併により約738平方キロメートルという大変広大
な面積を保有することになります。合併する1町3村を含めた住民
の皆さんや各地域が光り輝くことができるよう、さらに、観光・
スポーツ・自然など全国に誇れる魅力を最大限に引き出し、そして、
補完しあう、そんな「多軸型のまちづくり」を目指し、
「人が輝く 地域が輝く 多軸都市ながの」
「都市と自然が調和する 多軸都市ながの」
を新市のイメージとして、職員と一丸となって頑張ってまいりた
いと考えております。
市民の皆様にはどうぞ良いお年をお迎えくださいますようご祈念
申し上げます。
※次号のメールマガジンは、1月6日(木)に配信します。