今年の中核市サミットは、九州宮崎市で開催されました。
中核市制度というのは、前にも申し上げたことがあるかと思いま
すが、政令指定都市以外で、人口30万人以上(人口50万人未満
の市は面積100平方キロメートル以上)の市に対し、政令指定都
市に次ぐ事務権限を認め、できる限り住民の身近なところで行政を
行うことができるようにした都市制度です。
この中核市制度は平成7年に施行され、翌年12市でスタートし
ました。長野市は冬季オリンピック終了後の平成11年4月に中核
市に移行し、サミットに仲間入りしました。中核市は現在、全国で
35市ありますが合併が進むともう少し増えるかもしれません。
(財)地方自治研究機構理事長の石原信雄さんの基調講演では、
市町村合併が一段落すると、地方公共団体の中で力のある所と無い
所の二極分化が起こる、そして道州制論議が盛んになって、都道府
県の空洞化は進む。その中で地方分権の旗手は中核市だ、その責任
を覚悟をしてほしいという内容の講演をいただき、中核市の果たす
役割の重要性を説明していただきました。
その後、第4分科会に出席、「市民との協働によるまちづくり」
について意見を述べさせていただきました。できるだけ具体的にと
いう注文がついていましたので、私は理念の話はやめて徹底的に具
体論を展開しました。
他市の市長さんたちの話を聞いてみると、総合計画に位置付けた
り、指針を策定しているのはどこも同じように感じました。
具体的に長野市では、「市民と行政とのパートナーシップによる
まちづくり」を掲げ、あらゆる分野において市民との協働を進めて
いること。一例として、市内の中心市街地の空き店舗を改修し設置
した「こども広場(じゃん・けん・ぽん)」では、企画段階から
NPO法人が積極的に関与し、開設後の管理・運営をこのNPO法
人に委託していること。自由な発想と柔軟な対応により、大変評判
の良い施設となっており、開設後1年5ヶ月余りで利用者が10万
人を突破したことなど。また、「市民公益活動促進のための基本方
針」を平成15年3月に策定し、協働によるまちづくりに必要な基
本的なルールや具体的な方策の骨子等を定めたことや、平成15年
4月には、市民自らの知恵と責任による自主的なまちづくりを資金
面で支援するために、「ながのまちづくり活動支援事業」を創設し、
市民の代表により組織された公開審査会で補助金の決定を行うなど、
事業の透明性・公平性を保ちながら実施していることなどについて
発表し、実際にどのようなNPO等がどのような事業のために、ど
の位の資金を獲得したか、実例をお話しました。
次に、市民公益活動や交流を行う上で必要な場所の提供として、
「市民公益活動センター」を中心市街地の空き店舗に設置し、活動
の支援、情報の共有化を図っていること。また、このセンターには、
「NPO共同オフィス」として12のブースを設け、月5千円の使
用料で貸し出していることもお話しました。
市職員に対しては、「市民公益活動団体との協働をどのように進
めるか」をテーマとした研修会を実施するとともに、市民公益活動
団体が市政への協働提案を行いやすくするため、福祉、環境、まち
づくり等、協働活動に関わりの深い41の所属に協働推進員43名
を配置し、協働に適した事業の事務手順を定めた、職員向けの「協
働マニュアル」を作成して、庁内におけるソフト面での環境整備を
進めていることを発表しました。
次に、地域における取り組みについては、長野市は過去の合併の
経緯により26の地区に分かれており、地域の行政運営を円滑に進
め、地域の声を迅速に行政に反映させるため、都市内分権を提案し
ていること。NPOの専門性と地縁団体の人間関係のネットワーク
をいかに融和していくかが、今後の課題と考えていることなどにつ
いてお伝えしました。
長野市は、自治会加入率が91%と非常に高く、各自治会の代表
者の集まりである区長会は、地区住民の合意形成を行うための組織
として、重要な役割を果たしている。また、各地区には、当市が抱
える課題を解決するために、環境美化連合会、交通安全推進委員会、
青少年健全育成地区会議など、市の要請によって分野別の団体を設
置していただき、地区内での活動を促している・・・ということを
お話しましたが、終了後、91%の加入率は驚異だという市の方が
いました。
次に、市民との協働によるまちづくりにおける課題につきまして
は、市民公益活動促進のためには、市民と市職員が互いに協働に対
する認識を一層深め、自主性・自立性を尊重した対等な立場で、地
域における様々な課題の解決に向けて、どう取り組んでいくか。ま
た、協働の相手となる市民公益活動団体の人材育成や資金調達に対
する支援等も大切と申し上げました。
地域における区長会や各種団体による取り組みにつきましては、
全国的な傾向として、従来の住民組織は役員の高齢化や自治会活動
への意識の低下などにより、活動の担い手が不足し、地区内の課題
を地区自らが解決することが難しくなっており、行政への依存が強
まっております。一方、行政側も、少子・高齢化や核家族化の進行
などにより、住民ニーズが複雑化・多様化しており、行政サービス
の領域が拡大している状況です。
長引く景気低迷や人口減少時代の到来に伴い、右肩上がりの税収
増加は見込めず、行政が全てを担うことが難しくなっているため、
今後は市民の自治意識の高揚を図り、市民と行政との協働関係を構
築することが重要であると訴えました。
NPOの持つ専門性と地縁団体が持つ地域内の人的ネットワーク
を生かしながら、連携・協働を進めることは、地域の課題解決にと
って有意義と考えられることから、今後どのような方法でこれらの
団体の連携を図るか、そのためにどのようなシステムを構築するか
が、市民との協働によるまちづくりを成功させる上で重要であると
捉えていることをお話しました。
最後に、都市内分権を実施するためには、市民の皆さんの理解と
協力が不可欠であり、市民の「自らの住む地域を良くしたい」「自
分もまちづくりに参加したい」という意識を高める方策や市民が地
区活動に積極的に参加できるよう、企業等の協力を得ることが重要
と主張しました。
翌日は、バスに乗って行政視察に出掛けました。宮崎市はスポー
ツに力を入れてまちづくりをやっていることが良く分かりました。
宮崎市立の「生目(いきめ)の杜運動公園」は、1万1,000人
収容の野球場「アイビースタジアム」を中心に、第2野球場、多目
的グラウンド、雨天練習用の「はんぴドーム」などがある立派な公
園ですが、まだ半分しか完成しておらず、平成21年の完成に向け
て工事中でした。
宮崎県総合運動公園は、プロ野球巨人軍のキャンプ地で有名です
が、サンマリンスタジアムを中心にあらゆるスポーツができるよう
な施設が整っている広大なものでした(さすがに冬季スポーツ関係
の施設はありませんでしたが)。木の花ドームでは巨人軍の秋季キ
ャンプの最終日で、打撃練習をやっていました。
野球場を中心とする施設を視察させていただきましたが、施設使
用料が非常に安いというのが率直な感想です。
日南海岸の青島方面も視察しましたが、この時期でもサーフィン
に興じる若者が沢山いるのにはびっくりです。聞くと通年可能だそ
うで、サーファーの大部分は宮崎県人ではなく、関西、そして関東
からの人であり、みんな働きながらサーフィンを楽しんでいるそう
で、中には住み着いてしまう人もいるそうです。
宮崎市は平成18年の1月1日に周辺4町と合併する予定だそう
ですが、いろいろお聞きすると大変なようです。周辺の4町は、約
9万人と人口が結構多く、合併後は40万都市になるそうですが、
全国的にも先駆的に合併特例区及び地域自治区の設置に向け準備を
進めており、地方分権の目指す自治体の強化にしっかりつながって
行くのかどうか、宮崎市の担当者も迷い、苦心しながら事務処理を
続けているように感じられました。