2005年4月28日木曜日

長野市ものづくり支援センター(通称UFO Nagano)がオープンしました


 UFO Naganoとは「University Factory
Of Nagano」の略です。

 平成15年8月、長野市が国有地に市有施設を造る「ものづくり
研究開発促進特区」(注1)の申請が認められ信州大学工学部の敷
地内(国立大学法人の土地)に建設した「長野市ものづくり支援セ
ンター」が完成し、4月6日(水)オープニングセレモニーが行わ
れました。

 このセンターは、産学官(注2)各方面の代表により構成された
「長野市産学官連携支援施設検討ワーキンググループ」から提出さ
れた「産学行連携試作・開発センター基本構想」を基に、「新たな
リーディング産業の創出」を目指して取り組んできた事業です。長
野市とすれば、試作・開発工場であるという位置付けに大きな魅力
を感じ、支援することを決めたものです。

 完成した建物は5階建てで、UFOを連想させ、洗練された雰囲
気です。1・2階はクリーンルーム等を備えた試作工場、3・4階
は企業や信州大学イノベーション(注3)研究・支援センターが入
居するレンタルルーム、5階は交流施設になっており、また、隣の
CRC(地域共同研究センター)とも廊下でつながり、信州大学の
教授陣がいつでも指導、共同研究に当たれる環境が整えられていま
す。運営は長野市が(株)信州TLO(Technology
Licensing Organization)に委託しました。
(株)信州TLOとは、信州大学が持つ特許やノウハウを産業界が
利用して新製品等の開発をする、併せて信州大学も収益を上げて研
究費を得ようという会社です。

 UFO Naganoのオープンを契機に、次の目標は、産学行
連携の拠点として、将来の地域経済を牽引するベンチャー企業を効
果的・効率的に育成することです。そこでセンターには起業を支援
するインキュベーションマネジャー(注4)が常駐し、地域経済の
活性化に努力していくことになっています。

 すでに、上田市ではAREC(浅間リサーチエクステンションセ
ンター)という産学官連携支援施設が平成14年2月に開設され、
信州大学繊維学部の高機能材料を中心とした基礎・応用から事業化
に至る共同研究が行われ、有機LED(注5)など様々な研究成果
を上げているそうです。

 当然ながら長野市のUFO Naganoは後発部隊ですので、
先行するARECを見習いながら頑張ることになりますが、機能的
には充分な機能を備えている、欲張った施設であることが売りです。

 過日、「長野・上田地域知的クラスター創成事業」についての中
間評価が文部科学省により公表されました。それによると、長野・
上田地域は全国12地域の中でも高い評価を受けております。これ
らの取り組みは長野県テクノ財団と信州大学が中心となって行って
いる産学官連携事業で、新産業の創出を目指しているものですが、
UFO Naganoも、この知的クラスター創成事業を支援する
施設として整備したものです。

 4月9日(土)、この施設のオープン記念として、「産学行連携
シンポジウム」が行われました。冒頭、私が、長野市の産業政策に
ついて、基調講演をさせていただきました。基本的には長野市の産
業の現状と税収の落ち込みを説明し、そして行政として取り組んで
いる様々な政策を説明しました。そして当面の産業政策として、も
のづくりの面でのUFO Naganoへの期待と「観光」を当面
の最大産業に育てたいという話をしました。

 その後のパネルディスカッションでは、コーディネーターとして
大学院イノベーション・マネジメント専攻長の鈴木智弘氏を迎え、
パネリストとして地域共同研究センター長・工学部教授の三浦義正
氏、大学院イノベーション・マネジメント専攻教授の茂木信太郎氏、
UFO入居企業であるMEFS(株)研究員の飯生悟史氏、そして
私の4人で行いました。

 教授陣からは、様々な経験から、長野市ものづくり支援センター
及び大学院イノベーション・マネジメント専攻の皆さんが果たす役
割の中で、いかに地域貢献が大切かということが強調されました。
私からは、改革を行う場合、「制度の壁」「物理的な壁」「意識の
壁」があるけれど、「意識の壁」を破るのが一番大変であること、
信大改革も市役所改革も同じということを語りました。そして、ぜ
ひ研究してほしいこととして、民間活力導入と財政問題に絡んで、
永久債と株式の話をさせてもらいました(この話はもう少し研究し
て将来メルマガに書きたいと思っています)。

 終了後、大学院イノベーション・マネジメント専攻の学生さんや
そのOB、UFO Naganoに入居される企業の代表の方々も
参加して交流会が開かれました。いろいろな話を聞かせていただき
ましたが、イノベーションの意味が少し理解できました。学生さん
は、ある程度社会を経験し、もう一度勉強したいとの思いから入っ
てきた方が大勢学んでいますので、意識が高く、真剣な方が多いと
感じました。新しい産業を興す人材あるいは企業そのものが生まれ
るか、新しい提案が出てくるか・・・・楽しみな大学院です。

(注1)ものづくり研究開発促進特区
特区とは構造改革特別区域(内閣府の事業)の略で、長野市の場合
は、国有財産の使用申請の手続きが簡素化されたり、土地が廉価に
使用することが可能となるものです。

(注2)産学官(産学行)
産とは産業界、学とは大学等の研究機関、官とは国、県及び市等の
行政機関
一般的には「産学官」という形で使われていますが、長野市はあえ
て行政が絡むということで、「産学行」という名称を使用していま
す。

(注3)イノベーション
技術革新、経営革新の意です。

(注4)インキュベーションマネジャー
技術的、経営的能力があり、かつ、ビジネス経験がある者で、企業
へのアドバイス、問題解決をタイムリーに効率的に行う。また、人
とのつながりを活用し、人材の紹介や企業と研究機関(大学教官等)
との仲介役を担う者です。

(注5)有機LED
有機材料を用いて比較的低電圧で動作する有機発光素子で、次世代
ディスプレイ素子として注目されているものです。


※次週のメールマガジンは、5月6日(金)に配信予定です。