2005年6月2日木曜日

浅川治水について


 浅川や千曲川の治水について考えておられる団体から浅川治水を
含む長野市の治水対策について、公開質問状をいただき、回答いた
しました。以前にも「浅川ダムに関する長野市の意見」というメル
マガを書いていますが、いい機会ですので今回、改めて浅川の治水
について私の考えをお話ししたいと思います。

 公開質問状には、ダムの安全性や豪雨から発生する水害から、地
域をどのような水準で守ればよいか、もっと水準を下げてもいいの
ではないかと思われるようなことが書かれていました。過去の論議
の経過を考えますと、私は、「ダムの安全性に関すること」、「基
本高水など治水安全度に関すること」、「ダムサイト及びその周辺
の地質の安全性」等については、現段階では専門的な深い知識を持
たない者が議論しても、いたずらに時間を費やすだけであると考え
ております。それは、お互い感情的な言い合いに終始するだけにな
り、問題の解決を難しくするだけだと考えるからです。それらのこ
とは、県の検討委員会や浅川部会、その後の流域協議会等の論議を
通じても充分理解できることと思います。

 さらに付け加えるならば、これらの「安全性や安全度」について
は、既にあらゆる場で専門家により論議されており、専門的見地で
の判断材料を持たない者の意見や考えが入る余地はないと思ってい
ます。したがって、現段階でまだ議論する余地があるとするならば、
専門的な知識を有する学者(国がその権威を認めておられる方々)
及び河川管理者等に、議論と判断を委ねるべきであると考えていま
す。

 また、ご質問の中には私がダムの建設を今も主張しているのでは
ないかと書かれていました。このことについては、過去に私が参加
した長野県治水・利水ダム等検討委員会の席上では、既に国が認可
した「全体計画」に沿って治水対策を行うこと(すなわちダム建設
を含む計画)が、浅川流域住民の生命や財産を守る最善の策だと申
し上げてきた経過はあります。しかし、現段階で、県はダムに替わ
る基本高水450トンの治水対策があるとおっしゃっているわけで
すから、その対策を早く示していただくように申し上げているので
あり、単純にダムを造るようにと申し上げているわけではありませ
ん。ただ平成14年6月に「ダムに替わる治水対策がある」と説明
されてから既に約3年が経過しております。本当に実現可能な代替
案が出てくる可能性はあるのでしょうか?

 また、昨年、善光寺平に大きな被害をもたらした台風23号に触
れ、浅川治水の全体計画で採用された降雨の量と同程度の雨が降っ
たにもかかわらず、富竹の流量観測地点では計画された数値に近い
流量が流れなかったから基本高水を変えたらどうかとも言っておら
れます。しかし、台風23号の降雨と流出量の関連についての判断
は、治水の責任を持つべき河川管理者(県)がきちんと検証を行な
い、住民がそのような疑問を持っているとするならば、河川管理者
はその疑問にきちっと答えるべきだと考えています。ご質問のよう
なある部分だけをとらえての検証はできないと同時に、大変危険な
判断ミスをされていると考えています。

 また、浅川の上流部に貯水ダム(河道内遊水地を含む自然調節方
式の穴開きダム)を建設することは災害を軽減するどころか、逆に
内水災害を拡大深刻化させるとのご意見を言っておられますが、こ
れは穴開きダムを提案された河川管理者(県)がお答えすべき事項
であります。ただ、流域協議会などへの説明では穴開きダムは検討
段階であり、県として確定した案ではないと前置きしての説明であ
りますので、明快な回答はないかも知れません。しかし、どんな事
情があるにせよ発表した以上は安全性や機能、事例なども含め、疑
問をお持ちの方々にきちっと説明すべきであります。なお、国や権
威ある専門家の方に非公式にお聞きした範囲では、穴開きダムでも
一定の効果は見込める可能性はあるのではないかとのことであり、
一部その研究もされている事例もあると伺っています。

 さて、平成16年度からは浅川河川改修工事が再開されましたが、
これは平成7年3月に国から認可された「全体計画」を法的なより
所(現河川法では河川工事をする場合には河川整備計画を立てなけ
れば実施出来ないとなっています)として進められています。河川
改修は、それだけでも治水安全度が少しでも上がりますので、どん
どん進めていただきたいと考え、流域にお住いの皆様の理解をより
深め、早期に完成が出来るように、本市においても浅川流域内の各
同盟会や協議会等に対し工事現場の見学会や出前講座等を開催した
り支援を行ってきました。

 次に、治水に関して全般的な事項についての質問がありましたの
で、お話しします。

 長野市は昨年(平成16年6月)「長野市洪水ハザードマップ」
を作成しました。ハザードマップは国土交通省北陸地方整備局から
公表された千曲川・犀川浸水想定区域図に基づいています。また、
土砂災害に注意すべき場所については「長野市防災マップ」として、
平成14年に、全戸配布をいたしました。しかし、千曲川支流の中
小河川については、河川管理者(県)からの浸水想定区域が公表さ
れておりませんので配布できておりません。しかし、今回、水防法
が改正され、浸水が想定される区域においては洪水予報や伝達方法、
避難場所などを住民に周知させなければならないとなりましたので、
県から浸水が予定される区域の発表があれば、それに基づいて至急
ハザードマップを作成していきたいと考えています。

 また、千曲川水系の治水対策についてのご質問がありましたが、
河川管理者(国)に対しては流域の市町村と連携をとりながら「北
陸直轄河川治水期成同盟会」及び「千曲川改修期成同盟会」等の組
織づくりをしており、連携して地域の安全を目指した努力をしてお
ります。

 堤防については、長野市内だけに限ってみますと、千曲川完成堤
防の整備率は約51%ですが、残りは暫定堤防か、あるいは暫暫定
堤防、無堤防地区になっています。これらの言葉は一般的には聞き
慣れない専門用語ですが、計画高水に対して堤防の余裕の高さが足
りているかいないか、あるいは計画どおりの線形に造られているか
いないかを表しており、犀川の安茂里地区を除き、その他の地域で
水害を防ぐ手だてが全く施してない所はないと申し上げることがで
きます。

 千曲川・犀川の堤防築造については、治水を担当している国土交
通省千曲川河川事務所に対し、長野市として用地問題、分散してい
る樋管を統合しなければいけないという問題など、解決した部分か
ら整備を行ってもらうように調整や要望を行っていますが、これも
住民の皆様や土地を所有あるいは管理しておられる皆様のご協力が
必要なことは言うまでもありません。

 以上、浅川治水や治水全般についての考え方を申し上げました。
ることが、流域住民の生命と財産を守るための最低限の条件である
ことを繰り返させていただき、また、市内全域で水害が発生しない
ように長野市としても計画的に事業を行っていることを付け加えて
終わりにいたします。