2006年1月26日木曜日

道州制 8、9、11の区分案について


 1月14日の朝刊に、道州制の区割り3案について記事が載りま
した。そこで今回は道州制、特に8、9、11の区分案について書
いてみたいと思います。

 首相の諮問機関である第28次地方制度調査会の専門小委員会は
13日、「道州制」についての論点整理をまとめ、区域例として、
全国を8、9、11の道州に分けた3案を示すなど、具体的な内容
が盛り込まれました。これを軸に最終調整を行い、2月下旬に首相
に答申を提出する方針とのことです。

 論点整理にある基本的な制度設計では、道州の位置付けについて、
地方公共団体は道州及び市町村の2層制とすることや、設置される
道州の区域は、複数の都道府県を合わせた区域とすることとし、区
域の画定方法や東京圏に係る道州の区域等についても記載されてい
ます。また、道州の事務については、現在の都道府県が実施してい
る事務を大幅に市町村に移管し、道州は「圏域を単位とする主要な
社会資本形成の計画・実施」などの広域事務を役割とし、国も地方
との事務配分のあり方を抜本的に見直し、国が本来果たすべき役割
に係るものを除き、できる限り道州に事務を移譲するとし、この他
にも道州の議会、執行機関などについて明記されています。

 更に、道州の区域について詳しく申し上げますと、北海道及び沖
縄県については、地理的特性又は歴史的事情から、一の道県の区域
をもって道州を設置することも考えられることや、区域の画定方法
は、地域の自主性を生かしつつ、国が道州の予定区域を示し、都道
府県、市町村の意見を尊重して法律で定めるとしています。また、
東京圏については、東京都及び周辺の県の区域を合わせて一の道州
とすることを基本として、中心部については、特例的な制度を設け
ることが適当としています。

 具体的な区域例は、「8道州制」案として、北海道、東北、関東
甲信越、中部、近畿、中国・四国、九州、沖縄に分ける。この案で
は長野は関東甲信越に入っています。「9道州制」案としては、8
道州案の関東甲信越を東京、神奈川などの1都4県からなる「南関
東」とそれ以外の長野、新潟両県など5県による「北関東」に分割
する。「11道州」案としては、9道州制を基にさらに細分化、中
部を福井、石川、富山、新潟の4県の「北陸」と、残りの愛知、岐
阜、三重、静岡の4県の「東海」に分割し、中国・四国も「中国」
と「四国」に分けるというものです。

 以上の内容です。数カ月前にも同様の内容の記事が新聞に載った
ことがありますが、その時点ではあまり話題になりませんでした。
私もいずれもっときちんとした発表があるだろうと感じましたので、
特に気にとめていませんでしたが、今回同じ内容の記事が大々的に
発表されたので、ちょっとびっくりしました。長野市にとって重要
な問題を含んでいますので、私見を述べさせていただきます。

 道州制の採用については、個人的には大賛成であり、是非実現し
たい。ただ、この8、9、11の区分け案は、どうも違和感がある。
総論賛成・各論反対は世の習いみたいなことではありますが・・・。

(1)まず前提の話として、小委員長の記者会見では「答申でどの
 ような区域例を示すかは決まっていない」とおっしゃったようで
 すが、それはどうなのか。普通の場合、本当に白紙からの議論は
 難しく、一定の原案が重視されることになるでしょう。しかも
 「2月下旬に答申したい」というのはちょっと気になります。最
 終決定は国会の審議だろうとは思いますが・・・(議論に長い時
 間をかけると、議論百出で収拾がつかないということかもしれま
 せんが)。

(2)私は都市内分権を進めているのですが、検討いただいている
 審議会では住民自治協議会の設置などについて賛成を得ましたが、
 幾つかの地区を合わせて地域総合事務所を置くという部分につい
 ては、議論が先送りとなりました。地域総合事務所については、
 職員プロジェクトの調査報告書で幾つかの地域割案をお示しした
 段階から、どのような地域割にするのか、そしてその事務所をど
 こに置くか・・・市民の皆さんから様々な意見が寄せられ、合意
 を得ることの難しさを痛感しました。同じように道州制における
 県の統合の組み合わせと、州都をどこに置くか・・・一番の関心
 事項であり、簡単に合意は得られないと思います。

(3)今回の3案の場合、焦点は東京周辺の分け方でしょう。それ
 によって長野は、どこへ入ることになるか、将来を考えると、決
 定的に重要なテーマです。

(4)長野にとって、8つに区分けする案では、関東甲信越という
 ことで、従来のつながりで言えば、抵抗感は少ないと思います。
 でもどうでしょうか・・・この州だけが他に比べ、大きくなりす
 ぎるという意見は出ると思います。

(5)関東甲信越を北関東と南関東に分ける9つの区分け案の場合、
 長野は北関東に入るようですが、新潟、群馬、栃木、茨城のグル
 ープです。このグループは、新潟を除くと従来ほとんど長野とは
 関連の少ない県と言えるのではないでしょうか。

(6)11に分ける案は、北陸をつくる案ですが、この北陸に長野
 は入っていません。

(7)従来の付き合い、あるいは歴史的なものも考えると、北陸信
 越、あるいは中部圏という案があっても不思議はないと思います。
 北陸信越という「くくり」は、市長会、市議会議長会、全国史跡
 整備市町村協議会とか、いろいろな団体にあります、青年会議所
 や衆議院議員選挙の比例区の「くくり」でも北陸信越が一つです。
 「くくり」ということからするとほかにもあります。北陸地方整
 備局の河川の管轄は、北陸信越の5県に加え、山形・福島・岐阜
 の一部ですし、関東国道協会の範囲は、茨城、栃木、群馬、埼玉、
 千葉、東京、神奈川、山梨、長野の大部分ですし、中部森林管理
 局の管轄は、長野、富山、岐阜、愛知です。また、大手企業の管
 轄でも長野は、東京、さいたま、名古屋、新潟、富山・・・支社
 ・支店の管轄になっており、「くくり」はいろいろです。

(8)この件では昔から議論があります。東北信の人は東京圏に入
 るべきという意見が多く、南信の方は中部圏にという意見が多い
 ように思います。30年近く前の話ですが、私は「牛後になるよ
 り鶏頭になるべき」ということから、北陸信越に入るべきと主張
 したことがあります・・・・。

 いずれにしろ、これは大きな問題です。まず国民レベルで議論を
深める必要がある、すなわち、地方制度調査会で簡単に原案を作ら
れてはかなわない・・・というのが私の意見です。

追伸
 このメルマガを配信する直前の25日になって、13日の小委員
会がまとめた区割り案が変更され、全国を9、11、13の道州に
分ける区割り案を答申に盛り込むことで原則了承されたと新聞に載
りました。「8道州制」案は、関東甲信越の人口が巨大になるとい
う意見が多かったため削除され、新たに「13道州制」案が盛り込
まれましたが、この案の区域割りは北海道、北東北、南東北、北関
東、南関東、北陸、東海、近畿、中国、四国、北九州、南九州、沖
縄です。私の懸念がすぐに現実となったような感じがありますが、
いずれにしても、国民レベルで議論を深めていきたいものです。